野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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<< ジェネリック、大丈夫 ? 第2回 >>


2回目は降圧薬のアダラートCRについて述べてみたいと思います。

一般名ニフェジピンと呼ばれる成分はその強力な血管拡張作用を有し、アダラートカプセルとして1976年に日本で発売された歴史ある薬剤です。
降圧作用も強力で、カプセル内の液体を口に含ませて血圧を短時間で下げてしまうという舌下投与法が一時臨床現場で広く利用された時期もありました。
その後、急激な血中濃度の立ち上がりを抑えて効果を持続するアダラートL錠が1985年に発売されます。
これで1日2回の内服で済むようになりました。
しかし1993年に登場したアムロジピンという1日1回の服用で血圧コントロールを可能としたライバルの登場で、存在が次第に霞んでいきます。
そこでへこたれなかったのはメーカーの意地なのでしょうか、1日1回の服用で血圧をコントロールできるアダラートCRという錠剤を1998年に売り出します。
その1回服用を実現させるため、アダラートCR錠は内核部と外層部を有する二層構造をしています。
外層部がゆっくりと溶け、その後露出した内核部が溶け出すという二段ロケットなのです。
そのため、血中濃度の変化を示すグラフも、3時間と12時間のあたりにピークのあるフタコブラクダのようになっています。

CR02

この特性を上手に活用して、早朝高血圧のコントロールに活用する方法があります。
具体的にはこの薬を夕食後ないし寝る前に飲んでもらい、朝にふたこぶ目の血中濃度上昇がが来るように照準を合わすのです。
降圧薬の夜間服用の有効性の報告は多くありますし、寝てる間に血圧が下がり過ぎることはないこともわかっています。

CR01さて、アダラートCRのホームページを覗いてみると製造工程について書かれているのですが、後から効果を発揮する内核の位置に細心の注意を払っていることがわかります。
内核の位置がずれていると内核が早く露出してしまい、血中濃度が安定しない可能性があります。
そのため、特殊な装置を使って内核の位置のずれたものは不良品として排除するんだそうです。

1回目を読んでいただいた方はわかると思いますが、こういう点をアピールしているのは、ジェネリックに問題があることを暗に示唆したものと考えられます。
品質管理が不十分で内核の位置がばらばらな製品を服用すると、フタコブ目の位置がずれてしまって早朝高血圧のコントロールが日によってばらついてしまう・・・皆さんにも容易に想像がつくのではないでしょうか。
そればかりではありません。
色々な情報を集めてみると、驚くようなものもあります。
ジェネリック製品であるニフェジピンCRの中には二層構造ではなく三層構造をしたものがあるし、それどころか全く層構造をなしていないものもあるというのです。
どれがそれに該当するのか、添付文書にある血中濃度のグラフを見てもアダラートCRと同じようにフタコブラクダなのでわかりません。
そんな内部構造でどうやって血中濃度を維持しているのか不思議でならないのですが。

先発品メーカーが相当な苦労をして作り出した製品です。
血圧コントロールを乱してしまう可能性のあるニフェジピンCRへの切り替えをためらている理由をご理解いただけたでしょうか。

種痘01連休中に鹿児島市立美術館で行なわれていた「京都市美術館名品展」に出掛けました。

展示されていたのはすべて女性を描いた日本画だったのですが、私が一番興味をそそられたのは太田聴雨の「種痘」という作品です。
右側の種痘を受ける若き女性の不安げな姿ももちろんですが、左端の接種する白衣の女性の緊張した面持ちも見事に描かれています。
今でも採血や注射って誰も好きではないと思うのですが、なぜか針先をじっと見つめてしまう方がほとんど。
余計に力が入って体が硬くなってしまいます。
描かれた女性も肩や指先に力が入ってますね。
なお、特徴的な脚を持った椅子は、当時世界的に大流行したものなんだそうです。

この作品が描かれた昭和9年当時はごく普通に見られた光景の一部だったに違いないのでしょうが、よくこのような場面を題材にしようと思ったものです。
おかげで、種痘の方法を全く知らない私には、医療の歴史を知る上での非常に貴重な資料にもなりました。
罹患すると半数近くが亡くなるという天然痘が種痘という手段で撲滅できたため、今では全く行われていない医療行為なのです。
種痘02
父に聞いたところ、種痘の方法を詳しく教えてくれました。
種苗の液を上腕に塗って、ペンのような形をしたメスで皮膚に十字の切れこみを4ヶ所入れるんだそうです。
基本的な原理はBCGと同じなんですね。

インターネットで情報が簡単に手に入る時代ですが、種痘に関して詳しいものはそう多くありません。
当たり前すぎて誰も記録しないような普段の何気ない日常の生活の様子は、時代の変化とともに徐々に忘れられ、案外後に残らないもの。
日常を切り取った絵や直接聞ける経験談を疎かにすることはできません。

種痘が廃止されて今年でちょうど40年。
そして5月14日は種痘の日です。
先人たちの努力で、今に生きる人たちが天然痘を始めとする多くの感染症の脅威を知らずに済むことに改めて感謝をしたいと思います。

熊本地震の前震から20日ほどが経ちました。
阪神淡路大震災を教訓として、大規模災害時の対応は進歩を遂げています。
しかし、まだまだ不十分な点もあるように思います。
そのうちの2点について考えます。

今回は、震度7に二度襲われた益城町を始めとして熊本城や南阿蘇村など、絵になる場所に報道が集中しています。
救援物資の供給やボランティアなど支援の偏在が問題となっていますが、この報道の偏りに因るところが大きいと思います。
先日、大分県竹田市の方と話す機会がありました。
自宅の離れの物置が半壊状態になったり食料品などが一時不足したりがあったそうですが、全く見向きもされない状態に少々憤りぎみでした。
阪神淡路大震災の時も、被災地は広いエリアに及ぶのに長田区にばかり報道が集中していた気がします。

トイレまた、避難所のあり方もどうでしょう。
地震による災害では多数の方が損壊した自宅に簡単には戻れず、長期にわたる避難生活を強いられます。
プライバシーへの配慮もなく空調設備もない硬い床の上で身を寄せあって過ごすのは、かなりのストレスとなるのはわかりきったこと。
そして仮設のトイレ。
私も阪神淡路大震災の経験しましたが、びっくりしますよ。
排泄物とほぼ同量の紙が便器から溢れるように山盛りになっていたりします。
臭いもひどく、とても用を足す気にはなれません。
水分摂取が十分でない女性が多いのも、ノロウイルス集団感染が出たのも、劣悪なトイレ環境に起因するのではないでしょうか。

今後も起こるであろう大規模災害に向けて、このような課題への対策を考えておくべきです。
被災者をサポートする立場の人たちもまた被災者です。
起きてからの対応が後手後手に回ってしまうことは極力避けたいものです。

 ● 薬の説明書のイラスト 234 ●


我々が米国に行って不便を感じることの一つに単位の違いがあります。
日本は尺貫法を捨ててメートル法に完全に移行しているため、馴染みのないマイルやポンド、ガロン等と聞くと感覚的にもさっぱり捉えづらいですよね。
温度も同じ。
華氏なんていうのを使っていて、天気予報を見ていて明日は暑いのか寒いのかまったく分かりません。
他の国ではほとんど使われない華氏を使い続けいている理由は一体何なのでしょう。

華氏という温度の計測法の生みの親、ファーレンハイトの誕生日である5月14日は温度計の日となっています。
一般に使われる摂氏を作ったセルシウスに敬意を表さず、ファーレンハイトを選んだ理由というのは何なのでしょうね。
5月からの薬の説明書のイラストは
温度計です。


温度

走る〖 今月のつぶやきから 52 〗


今月は熊本地震がありましたけど、震災関連の情報に関してツイッターの威力を改めて実感しました。
そんな中で収集した医療関係の情報の中からいくつかをピックアップして振り返ってみます。

最初は、サプリメントについてです。
被災地にサプリを送るという話題もあったのですが、緊急性も必要性もないものを現地のスタッフが配るのはかえって負担になるように思いますけれど…。



次に、痛み止めを安易に使うと痛い目に遭うという話。



それから、心臓に悪い話。




最後に、薬に関するちょっと気になる話題を3題。



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