◆ 診療所ライブラリー 85 ◆


日本人
以前にも触れたことがありますが、日本には言霊 (ことだま) という概念があります。
言葉に発したことが現実になる、という考えと言っていいのでしょうか。
だから死について語ろうとしても、縁起でもないと忌避してしまうのです。
で、大災害など想定外のことが起きてあたふたしている昨今の日本人がいるのだと思います。
一度学習して大脳に刻んでおくと、対応は随分違ってくるのですが。

第83回でも書いたばかりですが、死を学ぼうとしてもその存在が遠いものになってしまいました。
昔のように大家族でもないので死に目に会う機会も限られ、自宅から葬送することもないので下手したら近所の方が亡くなったのをしばらく知らなかったということもあり得ない話ではありません。

死と知って向きあうことがそれを乗り越えてよく生きることに繋がるとして、宇宙誕生の話から始まるという意表をつかれた展開をみせる本書。
死に対しての拠り所を失った皆さんに是非手に取っていただきたい一冊です。
この本を読みながら生命に既定された死について考えていくと、案外怖いものじゃないんだな、と思えてくるのが不思議です。

 →  死を忘れた日本人