22hykniu.gif《 大腸がん 2 》      


大腸がんにまつわる話の 2 回目です。
今回は内容がちょっと難しいかも知れません。あしからず。

慢性関節リウマチの患者さんに大腸がんが少ないことが知られ、
調べてみると約半分の頻度であることがわかりました。
またアスピリンを服用している人で 40% も低いこともわかりました。
リウマチの患者さんの多くが解熱鎮痛薬を飲んでいますので、
解熱鎮痛薬で大腸がんを予防できるのでは、と考えるに至るのは当然のことでした。

決定的だったのは次のような実験。

まず断っておきますが、大腸がんの多くが大腸ポリープをベースにして生じます。
ただし、大腸ポリープの全てががんになるわけではありません。
また、解熱鎮痛薬はサイクロオキシゲナーゼ (COX) という酵素の働きを阻害することを念頭に置いてください。

家族性大腸ポリポーシス (FAP) という遺伝性の病気があります。消化管にポリープが無数にでき、それらがやがてがん化していく確率が高いことで知られています。
遺伝子を操作して作った FAP のモデルとなるマウスがいるのですが、このマウスの遺伝子をさらに操作してCOX-2 (COXには 2種類のものが知られています) が働かなくなるようにしました。
これでFAPモデルマウスに常に解熱鎮痛薬が効いているのと同じ状態を作ったのです。
その結果、このマウスのポリープの数もがんになる確率も激減したのです。

そして米国で、COX-2 阻害薬を使って大腸ポリープが減るかどうかをみる臨床試験が始まり、かなり有望な結果が得られつつあります。
が、心臓血管系への悪影響を及ぼすことが露見し、一部の試験は中止に追い込まれています。
大腸がんを患った人に対して、アスピリンが死亡と再発のリスクを大幅に軽減させるとの報告もなされています。

解熱鎮痛薬には潰瘍などの副作用もあります。
メリット、デメリットにどのように折り合いをつけて活用していくか、それが今後の課題と考えます。