nxsm_x7v.gif《 心窩部にまつわる話 2 》


我々は、患者さんの訴えをあれこれ聞き取りながら、病気が何であるかを絞り込んでいきます。
上手に聞き出すことで、疾患を8割方診断できるとも言われています。
そして、症状から疑った疾患を元にして必要な検査を行い、結果に応じて治療法を選択していきます。

心窩部に症状があって、患者さんが胃が悪いのだと思い込んで病院に来られても、我々は即、胃に病気があると疑うわけにはいきません。
もちろん、胃の疾患である場合が多いのですが、他の疾患でも心窩部に痛みが出ることがあるからです。
心筋梗塞で心窩部に痛みがくることがありますし、急性虫垂炎や胆石症、尿路結石、子宮付属器炎などで心窩部痛を初発症状とすることもあります。

このように、痛みの原因となっている場所とは異なる部位に痛みがでることを「関連痛」と呼んでいます。
なぜこのようなことが起こるかは、はっきりしたことはわかっていません。
現時点で最も有力な説を簡潔に言うと、脳の勘違いということになるでしょうか。
皮膚や内臓に分布する末梢神経の情報が脊髄に伝えられますが、圧倒的に皮膚からの情報が多いので、脊髄に入ってきた情報を脳が誤認識するから、と考えられています。

強い心窩部痛があるのに調べても何も見つからないことがあります。
この場合、安倍元首相もかかった (!?) という機能性ディスペプシアである可能性があります。
最も新しい Rome III という国際的診断基準では、機能性ディスペプシアは「食後愁訴症候群」と「心窩部痛症候群」に大別されます。
心窩部痛があるのに調べても何もない場合に、このRome III の診断基準を満たせば、心窩部痛症候群ということになります。
治療は投薬が主体となりますが、一定した治療法はありません。
何度か薬を変えてみてようやく症状が落ち着く場合もあります。
これまでの経験上、柴胡桂枝湯という漢方薬が劇的に効くことが多いですから、一度試してみる価値があると思います。
中には症状が改善せずに病院をころころ替わる方もいらっしゃいますが、内服薬だけに頼るのではなく、食事や日常のストレスなど生活習慣を見直すことも必要になってくる場合があります。