<< 宿便について考える 第四回 >>


大腸憩室症これまでの説明で、腸の壁に便がこびりつくなんてあり得ないことはある程度理解していただけたものと思います。
さて、ちょっと解説を加えておきたい疾患に大腸憩室症があります。

♦♦ 大腸憩室の写真解説

憩室は大腸内視鏡では右の写真のように腸の壁の窪みとして観察されます。
大腸検査を行なうと5、6人に一人位の割合で見つかり、高齢になるほど多く認められます。
ここに便がはまり込んでいるのを検査中よく見かけます ( 写真のA ) が、いつまでも溜まっているわけではありません。
検査中にポロリと外れてくる ( 写真のB ) のもしばしばで、恐らく腸の蠕動運動などで自然に出てくるものと思われます。
宿便と呼ばれているものとは全く無関係と考えますが、一応解説しておきました。

♦♦ 大腸憩室の原因・できる場所

この憩室という窪みは大腸を栄養する血管が大腸の壁を貫通する部分に一致してできます。
写真のCで憩室に向かって血管が集中している様子がわかると思います。
この部分は腸を動かす筋肉が血管を避けているため構造上弱く、これに食物線維の少ない食事や大腸の内圧が過剰に亢進する結果、生じるとされています。
欧米人ではS状結腸に多く、日本人では盲腸や上行結腸 ( 右側結腸 ) に多くできますが、近年日本においてもS状結腸の憩室が増えてきています。
個人的には神戸時代に派手なS状結腸の憩室症の症例をかなり経験しているのですが、鹿児島ではあまり見かけません。
食生活の違いによるものではないかと考えています。

♦♦ 大腸憩室に伴う症状

憩室がある方も、そのほとんどは無症状で経過します。
問題となるのは炎症と出血です。

憩室炎が起きたときの症状は腹痛です。
憩室にはまり込んだ便が簡単に取れずにそこで細菌が増え、炎症の原因の一つになるかも知れませんが、それを明確に示したデータはありません。
欧米ではナッツやポップコーンが憩室にはまって炎症の元になるという迷信があるようです。
しかし、これは科学的に否定されています。( JAMA 2008;300(8):907-14 )
S状結腸の憩室炎を繰り返すと腸の内腔が狭くなり、腸閉塞を起こすこともあります。

憩室出血を起こす頻度は 3~5%とされています。
日本人に多い右側結腸側の憩室は出血頻度が多いとする報告もありますが、多くは自然に止血します。
ただ最近、ワーファリンやアスピリンなど血液をさらさらにする薬を服用されている人が増えてきており、憩室出血を起こす方が増えてきている印象です。
こういう方がひとたび出血を起こすと、なかなか止血しにくいので内視鏡医泣かせです。

♦♦ 大腸憩室は改善する ?

かなり古い論文ですが、大腸憩室は食物線維の多い食事をとると改善するという報告もあります。( Lancet 1977;1:664-6 )
1960年代の日本の食事は健康上理想的なものだったと評価されつつあります。
特にS状結腸に憩室があると言われたことのある方は、これらの情報を念頭に今一度食生活を見直し、食物繊維を多く含む食材を意識してとってみてはいかがでしょうか。
憩室を減らしたり合併症を予防したりできるかも知れません。


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