<< 出血をきたす消化器疾患 第5回 >>


2011091615225431721.gif1980年代初頭までは、胃・十二指腸潰瘍は治療の難しい疾患でした。
出血や繰り返す潰瘍、そして繰り返した結果十二指腸などによって狭窄を来した場合は外科的手術の対象でしたし、胃癌の際に「潰瘍ですから切りましょう」といったウソが通用した時代でもありました。
その後、H2ブロッカーPPI ( proton pump inhibitor ) といった酸分泌抑制薬の登場やピロリ菌と潰瘍の関連がわかり、胃・十二指腸潰瘍は基本的に薬で治る疾患になりました。

食道静脈瘤同様に昔に比べて減ってきているとはいえ、ひとたび潰瘍から出血すると緊急を要し、内視鏡医の出番が回ってきます。

潰瘍ができると必ず出血するわけではありません。
潰瘍の底にたまたま太めの血管が通っていてそれが破れて出血、というのが典型的なパターンです。
出血源を見つけてそこへ止血操作を施すのが我々の仕事ですが、一筋縄ではいかないのが臨床です。
胃の中が血液だらけで取り除かないと出血部位の特定ができないのに、血液の一部が固まっていて内視鏡の吸引口を詰まらせて作業が立ち往生するというようなことはしょっちゅうです。
出血源を特定したら止血操作。
クリップをかけたり、純エタノールや高張ナトリウム・エピネフリン液を注射したり、焼き固めたりという方法でほとんどの場合は血を止めることができます。