◆ 診療所ライブラリー 88 ◆


名称未設定-1人間は必ず死を迎える存在なので、医療行為の結果が末々まで形として残ることがありません。
患者さんとともに懸命に一つの病と抗ってそれを克服したとしても、再発したり全く別の病魔が襲ってきてあっけない最後を迎えてしまった、というような無力感を感じる経験は医療経験者なら誰でもあるはずです。
本や絵画や楽譜などが後世まで残る創作活動を行なう芸術家にちょっぴり嫉妬することもあります。

見つけた病気をがむしゃらに叩くことを考えていた若い頃。
いろんな経験を積んだ今は、いくつかの訴えの中から最も患者さんが苦しんでいるものを最優先して治療し、時間を争わないものは慌てず後回しにするゆとりを持てるようになりました。
また自覚症状を伴わないような病態に対しては、治療するにあたって患者さんに時間をかけて説明し納得してもらった上で投薬などを行なうことの重要性も学んできたつもりです。
本書にはそれを後押しするような内容もありますし、認識を改めてもっと研鑽しなければと思わせる部分もあり、勉強になりました。
皆さんが質良く生きるための力添えになれれば医療を施す価値が失われることはないわけで、形が残るかどうかなんて関係ないことです。
( 私が言いたいことが上手く伝わったかどうか‥)

あと、4年前の本を引っ張り出して紹介する理由の一つは、
「くじ引き試験」という呼称で大規模臨床試験とはどういうものかが分かりやすく解説されていること。
現在世間を騒がせているパルサルタンの臨床試験問題に興味がある方には参考になる部分かと思います。
その他、様々な医療問題に対する見方、考え方が変わってくる中身の濃い本です。

 → 感染症は実在しない