<< 風邪薬についての考察 第4回 >>


トローチ
風邪をひいて医療機関を受診された際、のどの痛みに対して医師がトローチを処方したり、患者の側から所望されたりする場面はよくあります。
でも、トローチを使ってのどの痛みが劇的にとれた経験ありますか ?
そんなことがあったらおかしい、というのが今回の話です。


病院で処方されるトローチ( SPトローチ ) の中に含まれる薬効成分はたったの一種類、それは「デカリニウム塩化物」。
この成分の働きは、殺菌消毒であって消炎鎮痛作用は持ち合わせていません。
効能書きにも「咽頭炎、扁桃炎、口内炎、抜歯創を含む口腔創傷の感染予防」とあり、痛みをとるなどとは一言も書かれていないのです。
市販のトローチで「殺菌することでのどの炎症を抑え、痛みを和らげる」といった文言で宣伝しているものもあるため誤解が生じているのでしょうが、この文章をよく読んでみて下さい。
菌がいなくなってのどの炎症が落ち着いたら痛みもなくなるでしょう、ということです。
痛みに対する直接作用はないと理解していただけるのではないでしょうか。

デカリニウム塩化物は界面活性剤です。
界面活性剤が細胞膜に吸着すると、流動性が大きくなり細胞膜が壊れたり、細胞膜表面の酵素を不活化したりすることで殺菌作用を示すと考えられていますが、詳しいメカニズムは解っていません。
なお、細菌や真菌には作用しますが、結核菌やウイルスには無効です。
成人の場合、風邪の原因のほとんどはウイルスですし、薬を使って口腔内の常在細菌にダメージを与えるとかえって感染を促してしまう可能性があります。

また、炎症を起こして膿や分泌物などのタンパクが増えている状況にあると、
デカリニウム塩化物の効果が極端に落ちてしまいます。

そう考えていくと、SPトローチを一体どういう場面で使ったらいいのかさっぱりわかりません。
なので、私は全く処方しなくなりました。
なお、界面活性剤といえば石鹸が代表的ですので、私はトローチを「舐める石鹸」と呼んでいます。


ただし、添加物に注目してみると痛みに効果がありそうなものが含まれています。
それは「カンゾウエキス」と「l - メントール」です。
次回はこの二つの添加物について考察してみましょう。( 以下の記事も併せてお読み下さい )

 ⇨ 第3回 「アズレン系うがい薬の有用性
 
⇨ 第5回 「トローチの添加物の鎮痛作用を考えるけど‥」 
 ⇨ 第6回 「医療用より多彩な市販のトローチ」