今月5日の新聞に、人間ドックでの血圧やコレステロールなどの基準値を緩和する、という記事が載っていました。
今週の外来では、多くの患者さんからこの話が出ましたが、この基準値には大きな問題があると思います。

何が問題かというと「健康な人」の定義です。
過去に大きな病気をしたことがない▽喫煙習慣がない▽高血圧や糖尿病の薬を服用していない、などを条件に、"スーパーノーマルな人" としているのです。
しかし、この三番目の条件が本当に健康な人の定義として妥当なのか疑問を呈さざるを得ません。
なぜなら、病気を持っているのに通院するのが面倒くさい、薬を飲むのが嫌だ、といって治療していない人がかなり含まれているのではないかと思われるからです。
こういった人達を含んだ基準値では今までより上がってしまうのは当然のことと思います。

bdy14040500370000-n1血圧、コレステロール、血糖等が高いのを放置すると脳血管疾患や心疾患につながりますが、どのくらいの数値を目標にするとこういう疾患が防げるのかは、各専門分野で研究がなされてガイドラインなどで示されています。
長年の臨床で積み重なってきたものを全く無視したような人間ドックの基準値算出法は各方面から反論必至でしょう。

ま、血糖の平均値であるHbA1cの基準が5.5%というのは国民の半分くらいが引っかかるのではというくらい厳しい値でしたが、その他の基準はあまり緩め過ぎると、病気を持っているのに未治療の人を見つけるという人間ドックの目的の一つが霞んでしまいます。

今回の発表はあくまで中間報告だそうです。
この基準値を作るのに人間ドック学会だけでなく、危機的な収支にある健康保健組合連合会が加わっていることを頭の隅に入れて、近いうちに発表される最終報告を待ちましょう。