◆ 診療所ライブラリー 101 ◆


心に効く
病気の原因がはっきりわかっていないのに治療薬は存在する、ということは結構あります。
たとえば、潰瘍性大腸炎。
適用のある薬を服用すると多くの場合で症状を緩和ることができます。
ありふれた高血圧症だってその大半は原因不明ですが、下げる薬はいくらでも存在しています。

今回紹介する本で興味を惹かれた点は、統合失調症やうつ病といった領域の薬の開発の歴史について詳しく書かれていること。
最初に開発された「クロルプロマジン」という薬剤は、最初マラリアの治療薬を探しているうちに見つけられたものだったそうです。
抗ヒスタミン作用が強く、興奮の強い統合失調症の患者に使ったら鎮まったという報告がなされ、薬物療法の道が開けたのです。
現在でも神経伝達物質を制御することを目的とした薬が次々と開発されてきていますが、実のところ統合失調症の生化学的なメカニズムがわかっているわけではないのです。

私たち医者は、実のところ病気の根源がわかっていないのにその疾患の治療を薬剤を使って治療しているケースが多いことを肝に銘じなければなりません。
副作用に留意しつつ薬剤の持つ作用を最大限に利用して、症状を和らげているだけ。
それもありなんですけどね。
薬の成り立ちを知り、臨床への導入の経緯も知った上で、安易な処方は避け上手に活用していきたいものです。