◆ 診療所ライブラリー 109 ◆


世界一優しい
「発達障害」「ひきこもり」「対人恐怖」「摂食障害」・・・という順で書かれていたり、噛み砕いたとてもやさしい文章で読みやすく工夫されたりしているのは、元々が中学生向けの本として出されたからでしょう。
それでいて内容はしっかりしていますので、成人の方にもお勧めできる一冊「世界一やさしい精神科の本」。

この分野がカバーする疾患は原因がはっきりせず、治療法も確立されたものはないのだけれど、そんな未開拓な分野だからこそ面白いのだ、という意味のことが前書きに記されています。
同じ疾患でも国によって特徴があったり、時代と共に流行り廃りがあったりするのも精神科領域の疾患の特徴です。
拒食症を例にとると、以前は成熟拒否型が多かったけれど、最近はダイエット型が増えて命に関わるレベルの患者をあまりみなくなったという話。
女性の社会的地位の変化などに目を向けた明快な分析には感心し切りです。

家族や周囲の環境などだけでなく
文化的な側面も考え、人の多様性を重んじながら精神疾患患者を治す糸口を探っていく仕事も本当に面白い。
そう思わせるなかなかの名著です。

  → 世界一やさしい精神科の本