ラパロ肝臓や腹膜、卵巣などを直接観察することが主な使用目的だった腹腔鏡
その腹腔鏡を用いた胆嚢摘出手術が日本で始まったのは私が研修医として仕事を始めて間もない頃のことでした。 それから瞬く間に様々な疾患を腹腔鏡下に手術する技法が普及して現在に至っています。

ある時、同期の外科医に疑問をぶつけたことがあります。 「我々の世代は胆嚢の手術を開腹で行なうのがまだまだ当たり前でトレーニングを積み、そこから腹腔鏡下の摘出術を覚えていったけど、若い世代の外科医はそのステップを踏まないケースもあり得るがそれはどうなんだ」と。 彼は「さあ、どうなんだろうね」とそれ以上答えてくれませんでした。

先日開催された大腸がん検診研修会でその気持ちがスカッとする講演を聞くことが出来ました。
大腸癌手術の第一人者によるその内容は今の腹腔鏡手術のトレンドに警鐘を鳴らすもので、傷が小さいことが必ずしも患者のQOL向上につながらないことや、視野や触覚が制限される上に医療コストを押し上げ医療廃棄物量もばかにならないという腹腔鏡手術の影の部分をえぐり出したものでした。

内視鏡で大腸のポリープをせっせと切除している私が、普段から100%納得できる手技が出来ないもどかしさを感じていることを踏まえて同期の外科医に投げかけた疑問だったのですが、著名な先生が同じような憂慮を抱いていることに心を強くしましたし、様々な技術習得を研鑽しつつ長所と短所をしっかり把握して適切な手段を選択していくことの大切さを改めて認識した夜でした。