<< ジェネリック、大丈夫 ? 第1回 >>


国策で医薬品のジェネリックへの切り替えが進んでいます。
私も日常の臨床の中でジェネリックを活用していますが、先発品にこだわって処方しているものもあります。
それにはちゃんとした理由があります。
3年前に「ジェネリック薬品を考える」というタイトルで一度考察していますが、今回は剤形を中心にして改めて考えていきたいと思います。


初回は ラベプラゾール について。
これはプロトンポンプインヒビター ( PPI ) というジャンルに属する薬です。
胃の細胞の中で塩酸を作る壁細胞の水素イオンの出口のことをプロトンポンプと呼ぶのですが、この働きを抑えることで胃潰瘍や逆流性食道炎などの治療に活躍している薬剤です。

パリエットPPIは酸分泌を強力に抑えるのに、『酸にはとても弱い』という摩訶不思議な性質があります。
中でもラベプラゾールは酸で極めて分解されやすいとされています。
そのまま服用してしまえば胃液中の塩酸で失活してしまうのです。
胃という最大の関門を無事に通り抜けて小腸から血液へと移行してもらう必要があります。
先発品であるパリエットの錠剤は、ラベプラゾールを守るべく胃では溶けず腸に届いてから溶ける腸溶性被膜で表面をコーティング。
しかし、ここでも問題があります。
実は腸溶性被膜自体も酸性物質なのです。
そこでラベプラゾールが直接腸溶性被膜に触れないよう、中間皮膜を設けて難題をクリアしているのです。
(こういう構造をしているので、割って飲んでしまうのはダメってわかりますよね。)
 
錠剤が三層構造をしていることに関して、先発メーカーはジェネリック製品が出回るようになってから強調するようになった気がします。
これ、ジェネリック製品の構造に問題があることの裏返しだと思って間違いないでしょう。
製薬業界には他社製品を中傷・誹謗してはならないというルールが敷かれているため、直接欠点をあげつらうことはできません。
自社製品の錠剤の構造をアピールすることで、ジェネリック製品には不備があることを暗喩しているのでしょうね、きっと。
実際、ジェネリック製品の中には二層構造のものがあるという情報を得ているのですが、どのメーカーのものなのかまで把握できていません。
全てのジェネリック製品を割ってみたらわかることでしょうが、薬の添付文書などで調べてみても層構造について書いてないのでもどかしい気持ちです。
二層構造で先発品と同等の薬効を得ているのならば、その技術を自信を持っておおいにアピールしたら良さそうなものなのですが。

国は先発品と後発品は同等だとお墨付きを与えているわけですが、現実にはパリエットをジェネリックに替えて症状がコントロールできなくなったという話は伝え聞きます。
ラベプラゾールを酸から守る構造がしっかりしているのかどうか、その情報が十分に得られない現状で後発品を使う勇気は私にはとてもありません。
少々お高くなりますが、確実に症状を改善したいという思いをご理解いただきたいと思います。 


なお、実際にパリエットをジェネリックに替えることで逆流性食道炎の症状が悪化したと綴ってあるブログを見つけましたのでご参考までに。 ( → こちら )

最後に、内視鏡検査前にうっかりパリエットを飲んで来られた方の貴重な写真を。
「パリエット」の印字が読めると思いますが、胃の中で全く溶けずにそのままの形で残っていて、さすがは腸溶錠と感心した記憶があります。

パリエット