胃の内視鏡検査をするにあたってよく受ける質問の一つに「胃カメラの前にいつものお薬は飲んだ方がいいのでしょうか ? 」というのがあります。
答えはNO
なのですが、検査の紹介元の先生が「血圧の薬だけは飲んでいきなさい」などと指示されるケースもあって困ってしまう場合があります。
なぜ困ってしまうのか、これから説明したいと思います。

 溶けた薬が観察の邪魔に。そして吸引される運命に


薬の付着した胃壁 ヘマチン提示した胃の出口付近を撮った写真をご覧ください。
若干黄色みを帯びた白いものが胃の壁にべったりと付着しているのがわかると思います。
これは検査前に服用してしまった薬が、胃の中で溶けたものなんです。
胃の壁の様子をつぶさに観察する妨げになっています。
粘液や食べカスが付いている場合は、内視鏡の先端から水を吹きかけて洗い流し、そして吸引して胃壁をきれいにします。
でも、薬を吸い取ってしまえば、その日は薬の効果を十分に得られないことは容易に想像つくと思います。
私は、病変の見落としを懸念しつつも、できるだけ吸引しないように心がけています。
しかし「きれいな写真を撮れ」と教育されていて、これが薬だと気づかない内視鏡医は徹底して除去してしまうのです。

 判断に迷う胃粘膜の変化が


そして、もう一つ問題があります。
白っぽい付着物の他に、小さな赤黒い斑点が散らばっていますよね。
これは、ヘマチンと呼ばれているもので、胃の表面からじわりと血が滲んだもの。
血液は胃液と反応すると黒っぽく変化します。
ヘマチンがあると胃炎と診断することになります。
これが元々存在していたのか、空腹の胃の壁に薬が張り付いた結果として生じたものなのか、判断するのは極めて困難です。
後者ならば様子をみていれば問題ないと思うのですが、胃炎と診断されてしまい、必要のない胃薬を受け取る羽目になるケースも実際にあるのです。


例えば、昔の降圧薬などは1日2~3回服用する必要があり、薬を切らすとすぐに血圧が上がってしまうこともありました。
今は1日1回の服用でも長時間にわたり作用するものが多いので、朝飲む時間が多少ずれても血圧のコントロールが極端に乱れることはありません。
それよりも、せっかく飲んだ薬が観察の邪魔になって、吸引されて、胃炎の診断を受けてしまって‥、となる方が厄介じゃありませんか。

 ウーロン茶は是非飲んで


検査の前に水分を摂るのはOKです。
検査中に吸引してしまえばいいのですから。
ご高齢の方では、暑い時期に検査時間がお昼近くと遅い場合などで脱水が懸念されますので、むしろ飲む方が無難です。
水分を摂るにあたっては、胃の壁に付着する粘液を落として観察を容易にしてくれるウーロン茶をお勧めしています ( → 参考 ) が、いつもの内服薬は飲まないようにして下さいね。