◆ 診療所ライブラリー 127 ◆


世界史を内科医は、今でこそカテーテルや内視鏡を使って手術をすることがありますが、診察や検査から病気を診断して薬を処方するのが基本。
その薬について十分な知識を持ち合わせていたいものだと常日ごろから思っています。
最近は薬も含めて医学の歴史について調べることが多くなっているのですが、今の医療を知る上で案外欠かせないものだと気付かされています。

今回紹介するのは、人類の歴史の中で特に大きなインパクトを与えた十種類の薬を取り上げ、その開発秘話や果たした役割などを様々な視点から描く「世界史を変えた薬」です。
個人的に面白いと思ったのは、アスピリンについての章です。
ドイツのバイエル社が発売し大ヒットしたアスピリンの商標や特許を第一次大戦後に米国が奪います。
そして4分の3世紀にわたって大儲けをするわけです。
欧米の製薬会社が今もって薬の開発競争に血眼になっているのは、一発当てれば莫大な利益がもたらされることを歴史の中で学んでいるからなのでしょうね。

日本発の創薬にも期待したいのですが、ジェネリック利用促進政策が大手メーカーの体力を削いでいる現状ではなかなか難しいように思います。
医療費削減も大事ですが、将来にわたる国益という視点も持つべきなのかも知れません。