◆ 診療所ライブラリー 129 ◆


どうして今年もいろいろな災害がありました。
熊本地震があり、東北や北海道は台風で大きな被害に見舞われ、糸魚川では大火が・・。
誰もが好き好んで被災者になりたいわけではありません。
猛威に大切なものを奪われる辛い体験は一瞬に留まらず、様々な課題の克服にはかなりの時間を要します。

東日本大震災からは5年が経ちますが、まだまだ解決しなければならないことが山ほどあります。
ドクター小鷹、どうして南相馬に行ったんですか ?」は、大学を辞めて被災地の病院に飛び込んだ神経内科医と精神科医が往復書簡の形式でのやり取りを書籍化したもの。
二人のやり取りからは様々な問題点が浮き彫りになってきます。
悩みつつも類い稀なる行動力で難問を少しずつ解決していく神経内科医の姿には感銘を受けます。
被災地支援に大切なのは他人との協調であり、変化していく状況やニーズに対応するためにも人間関係の構築が大事だと繰返し述べています。

阪神淡路大震災では、復興住宅の割り振りにおいて地域のコミュニティを無視して低所得者や高齢者を優先して入居させました。
その結果、人間関係が希薄でお互いを支え合うことができない状況を生みました。
外見上、震災の傷跡が見えないように街がきれいに整備されても、心の傷を癒すわけではありません。
人と人の接点の数をできるだけ多く持つことの大切さを改めて考えさせられる、そんな一冊でした。