◆ 診療所ライブラリー 171 ◆


人類と病新型コロナウイルスの感染者数が最も多く世界保健機関 ( WHO ) を脱退した米国、そして2番目に多く経済最優先を掲げるブラジル。
この2か国がWHOの成立に大きく関わっていたとは何とも皮肉です。

この本では、世界的に流行したいくつかの感染症を取り上げ、世界的な協調を取りながら我々人類がいかにして克服してきたか、その歴史を学ぶことができる本です。

4月に刊行されたばかりの本で、今深刻な影響を及ぼしている新型コロナウイルスのことにも簡単に触れられており、これまでも国際的な管理がうまくいった例やその逆もあることが紹介されています。
感染蔓延の封じ込めと経済の両立についても、過去に何度も苦悩があったこともわかります。
例えば、スエズ運河が完成して問題となったコレラ。
最大の利益を享受するイギリスが検疫に消極的だったのですが、コッホによりコレラ菌が発見されて、インドと地中海で流行している菌が同一のものであることが証明され、それがやがて国際衛生協定の締結に結びついていくという話を読むと、皆が足並みを揃えて危機に立ち向かうことの重要性が改めて浮き彫りになってきます。

人類がたどってきた感染症との闘いの歴史を振り返り、新型コロナウイルスにいかに賢く対応していくべきかを考える上で、とても役に立つ本ではないかと思います。