<< 出血をきたす消化器疾患 第8回 >>


虚血性大腸炎
一般の方には「虚血性大腸炎」という病気はなじみがないと思いますが、決して珍しいものではありません。
下血を来す病気で最も多いのは痔疾患ですが、その次に多いのがこの虚血性大腸炎ではないでしょうか。

突然、強い腹痛 ( 主に左側 ) が起こり、それに引き続いて下痢、次いで下血を認めるというのが典型的な症状です。
急激に起こる大腸の血流障害によってこのような一連の症状が起こるのです。
原因としては、動脈硬化や血管の攣縮などの血管側の因子と腸管内圧の亢進や腸管蠕動異常などの腸管側の因子が考えられています。

さて、この疾患概念が提唱されたのは1963年と、頻度の高さに比べると決して古くはありません。
かつては大腸を精査する手段があまりなかったことも影響していたと思いますが、私が学生の頃に使っていた教科書には「動脈硬化や糖尿病などの基礎疾患を有する50歳以上の高齢者に多い。再発は稀。」などとあり、実際そういう認識を持って医者として働き始めました。

ところが、19歳男性でこの疾患に2度も罹ったという患者さんに巡り合うことになり、教科書の記述に疑問を抱くことになりました。
現在では「40~60歳代に多いものの10歳代から高齢者まで幅広く認める。再発率は約10%。」という風に教科書の記述も変わってきています。

たまたま検査の前日に5分程腹痛があったという患者さんの大腸粘膜のごく一部に虚血性大腸炎とそっくりの変化が起こっているのを見たこともあります。
この方の場合、下痢や下血はなかったようですが、こういう軽症例まで含めると実際にはかなり頻度が高い疾患なのではないかと思います。

大腸内視鏡を中心に検査が普及し、診断が容易にできるようになって疾患概念も大きく変化した最たるもの、それがこの虚血性大腸炎ではないでしょうか。