<< ジェネリック、大丈夫 ? 第3回 >>
三菱自動車が燃費データを偽装していた大きな問題になっています。
車を選ぶ際に参考にする数値にごまかしがあることは容認できないですよね。
これがもし我々の処方する薬について行われているとしたらどうでしょう。
人体に関わることですから、自動車の比ではない大問題になります。
その可能性が否定できないジェネリックがあります。
それは以前取り上げたことがあるファイザーのツロブテロールテープ。( → 「ホクナリンテープとジェネリックを比較」)
その疑惑に満ちた薬剤動態に関するデータを検証してみましょう。
まず、先発品であるマイラン製薬のホクナリンテープについて解説しておきます。
気管支喘息の発作は明け方に起こることが多いのですが、昔の内服薬や吸入薬は寝る前に使っても明け方にまで効果が持続することが期待できませんでした。
そんな中で開発されたホクナリンテープは、貼付して4時間ほどしてから血中濃度が上昇し始め、12時間後にピークに達するように工夫がなされています。
これは「結晶レジボアシステム」と呼ばれる薬剤放出の技術によってコントロールされているのですが、特許があるためこの部分はジェネリックメーカーが真似することができません。
ホクナリンテープ 2mg の薬物動態のグラフを見ていただきます。
ここで薬剤最高血中濃度 ( Cmax ) と Cmax に至るまでかかる時間である最高血中濃度到達時間 ( Tmax ) という大切な指標を覚えていただこうと思います。
添付文書上のホクナリンテープ 2mg のデータ。
● Cmax は 1.35 ± 0.08 ng/mL、Tmax は 11.8 ± 2.0 hr
次に沢井製薬のツロブテロールテープ 2mg の薬物動態のグラフを見ていただきます。
ホクナリンテープと同じ徐放技術が使えないため、沢井製薬のツロブテロールの血中濃度の立ち上がりも Tmax も早いのがわかると思います。
添付文書上のツロブテロールテープのデータ。
● Cmax は 1.29 ± 0.60 ng/mL、Tmax は 11.0 ± 2.7 hr
同時に調べている標準製剤 ( ホクナリンテープ ) のデータもみておきます。
○ Cmax は 1.24 ± 0.63 ng/mL、Tmax は 14.5 ± 4.5 hr
マイラン製薬のデータとの比較で Cmax の比は 96.1% (1.24/1.35) 。
更に問題のファィザーのツロブテロールテープ 2mg の薬物動態のグラフです。
さすが、世界に名だたるメーカー、結晶レジボアシステムが使えないにもかかわらずホクナリンテープとほとんどピッタリ重なるような血中動態、見事としか言いようがないですよねぇ‥。
添付文書上のツロブテロールテープのデータ。
● Cmax は 1.063 ± 0.601 ng/mL、Tmax は 12.3 ± 4.6 hr
同時に調べている標準製剤 ( ホクナリンテープ ) のデータ。
○ Cmax は 1.039 ± 0.565 ng/mL、Tmax は 12.2 ± 4.4 hr
マイラン製薬のデータとの比較で Cmax の比は 80.5% (1.039/1.35) 。
このファイザーのデータ、深く読み込むと疑問だらけなのです。
結論から先に言いますが、ファイザーが標準製剤として提示しているデータ、これはファイザー自身のツロブテロールテープなのではないでしょうか。
まず、標準製剤の Cmax があまりに低すぎ。
2割も低くなっているというのは一体どういうことでしょうか。
そして2時間値を提示していないこと。
標準製剤であれば、結晶レジボアシステムが働いるので2時間値はほぼゼロであるはずですが、それを公表すると実際には標準製剤を使っていないことがバレてしまうため隠しているのではないでしょうか。
それにグラフ上、標準製剤のTmaxはどうみても12時間のところにあるように見えません。
標準製剤を使わず自社製品を標準製剤の代用として使い、その上で自社製品と比較すりゃ、ピッタリと寄り添うようなグラフになりますよね。
実は、ファイザーはさらにおかしなことをやっています。
ツロブテロールテープには 2mg だけではなく、1mg と 0.5mg という剤形があるのですが、どういうわけか 1mg は2枚、0.5mgは4枚貼付することで合計2mgになるようにしてデータを出しているのです。 ( → 実際の添付文書を参照して下さい )
理解に苦しみます。
他のメーカーは 1mg も 0.5mg ちゃんと1枚貼付でデータを記しています。
剤形に違いがあるのは年齢に応じて使い分けをするからなのであって、複数枚貼って2mgにするのは実際の使い方とは大きくかけ離れていますし、0.5mgや1mgの製剤で示されている標準製剤のデータも2mg製剤同様信憑性が疑われるものです。
先のグラフからも分かるように、沢井製薬は標準製剤との違いがあることを素直に認めたデータ提示ですよね。
ファイザーはなぜそのようなごまかしをするのでしょうか。
そしてそのデータを見抜けずにジェネリック製品として認可してしまった厚生労働省、問題ありませんか ?
いずれにせよ、標準製剤より2割も低い血中濃度しか得られない製品を使うと喘息のコントロールが悪くなってしまいます。
使いたくないです。
なお、沢井製薬を含め他のメーカーのツロブテロールテープも標準製剤と大きく異なる血中動態を示すのにもかかわらず、先発品と同等のジェネリックとして認めているという認可のあり方もおかしいと思うのですが。
( 追記 )
ファイザーのジェネリックの件に関して、違う集団での少人数での動態パラメータを比較してもしょうがない、という意見もあるようですが、私が問題にしたいのは
① 徐放を確立するための工夫がしてある先発品となぜ血中濃度の変化にほとんど相違がないのか。ここに示していない0.5mg及び1mg製剤の寸分たがわないデータについても同様でかえって不自然。
② 2時間値を示していないのはなぜなのか。テープ剤が徐放であることを示すためのキモになる重要な部分です。
③ 1mgと0.5mgのデータの取り方はどういった意図で行われたのか。
といった点。
ホクナリンテープをジェネリックに切り替えたら、動悸がするとか喘息発作が増えたという報告はあちこちから聞かれます。
日本アレルギー学会の「喘息予防管理ガイドライン」にも「貼付剤は後発品が使用可能であるが、薬物貯留システムの違いから皮膚の状況によっては先発品とは経皮吸収速度が異なるため、注意が必要である」と明記されているのです。
添付文書上、生物学的同等性が担保されていても、臨床現場では不具合が起こっているのです。
現実をどう見つめますか ?
三菱自動車が燃費データを偽装していた大きな問題になっています。
車を選ぶ際に参考にする数値にごまかしがあることは容認できないですよね。
これがもし我々の処方する薬について行われているとしたらどうでしょう。
人体に関わることですから、自動車の比ではない大問題になります。
その可能性が否定できないジェネリックがあります。
それは以前取り上げたことがあるファイザーのツロブテロールテープ。( → 「ホクナリンテープとジェネリックを比較」)
その疑惑に満ちた薬剤動態に関するデータを検証してみましょう。
まず、先発品であるマイラン製薬のホクナリンテープについて解説しておきます。
気管支喘息の発作は明け方に起こることが多いのですが、昔の内服薬や吸入薬は寝る前に使っても明け方にまで効果が持続することが期待できませんでした。
そんな中で開発されたホクナリンテープは、貼付して4時間ほどしてから血中濃度が上昇し始め、12時間後にピークに達するように工夫がなされています。
これは「結晶レジボアシステム」と呼ばれる薬剤放出の技術によってコントロールされているのですが、特許があるためこの部分はジェネリックメーカーが真似することができません。
ホクナリンテープ 2mg の薬物動態のグラフを見ていただきます。
ここで薬剤最高血中濃度 ( Cmax ) と Cmax に至るまでかかる時間である最高血中濃度到達時間 ( Tmax ) という大切な指標を覚えていただこうと思います。
添付文書上のホクナリンテープ 2mg のデータ。
● Cmax は 1.35 ± 0.08 ng/mL、Tmax は 11.8 ± 2.0 hr
次に沢井製薬のツロブテロールテープ 2mg の薬物動態のグラフを見ていただきます。
ホクナリンテープと同じ徐放技術が使えないため、沢井製薬のツロブテロールの血中濃度の立ち上がりも Tmax も早いのがわかると思います。
添付文書上のツロブテロールテープのデータ。
● Cmax は 1.29 ± 0.60 ng/mL、Tmax は 11.0 ± 2.7 hr
同時に調べている標準製剤 ( ホクナリンテープ ) のデータもみておきます。
○ Cmax は 1.24 ± 0.63 ng/mL、Tmax は 14.5 ± 4.5 hr
マイラン製薬のデータとの比較で Cmax の比は 96.1% (1.24/1.35) 。
更に問題のファィザーのツロブテロールテープ 2mg の薬物動態のグラフです。
さすが、世界に名だたるメーカー、結晶レジボアシステムが使えないにもかかわらずホクナリンテープとほとんどピッタリ重なるような血中動態、見事としか言いようがないですよねぇ‥。
添付文書上のツロブテロールテープのデータ。
● Cmax は 1.063 ± 0.601 ng/mL、Tmax は 12.3 ± 4.6 hr
同時に調べている標準製剤 ( ホクナリンテープ ) のデータ。
○ Cmax は 1.039 ± 0.565 ng/mL、Tmax は 12.2 ± 4.4 hr
マイラン製薬のデータとの比較で Cmax の比は 80.5% (1.039/1.35) 。
このファイザーのデータ、深く読み込むと疑問だらけなのです。
結論から先に言いますが、ファイザーが標準製剤として提示しているデータ、これはファイザー自身のツロブテロールテープなのではないでしょうか。
まず、標準製剤の Cmax があまりに低すぎ。
2割も低くなっているというのは一体どういうことでしょうか。
そして2時間値を提示していないこと。
標準製剤であれば、結晶レジボアシステムが働いるので2時間値はほぼゼロであるはずですが、それを公表すると実際には標準製剤を使っていないことがバレてしまうため隠しているのではないでしょうか。
それにグラフ上、標準製剤のTmaxはどうみても12時間のところにあるように見えません。
標準製剤を使わず自社製品を標準製剤の代用として使い、その上で自社製品と比較すりゃ、ピッタリと寄り添うようなグラフになりますよね。
実は、ファイザーはさらにおかしなことをやっています。
ツロブテロールテープには 2mg だけではなく、1mg と 0.5mg という剤形があるのですが、どういうわけか 1mg は2枚、0.5mgは4枚貼付することで合計2mgになるようにしてデータを出しているのです。 ( → 実際の添付文書を参照して下さい )
理解に苦しみます。
他のメーカーは 1mg も 0.5mg ちゃんと1枚貼付でデータを記しています。
剤形に違いがあるのは年齢に応じて使い分けをするからなのであって、複数枚貼って2mgにするのは実際の使い方とは大きくかけ離れていますし、0.5mgや1mgの製剤で示されている標準製剤のデータも2mg製剤同様信憑性が疑われるものです。
先のグラフからも分かるように、沢井製薬は標準製剤との違いがあることを素直に認めたデータ提示ですよね。
ファイザーはなぜそのようなごまかしをするのでしょうか。
そしてそのデータを見抜けずにジェネリック製品として認可してしまった厚生労働省、問題ありませんか ?
いずれにせよ、標準製剤より2割も低い血中濃度しか得られない製品を使うと喘息のコントロールが悪くなってしまいます。
使いたくないです。
なお、沢井製薬を含め他のメーカーのツロブテロールテープも標準製剤と大きく異なる血中動態を示すのにもかかわらず、先発品と同等のジェネリックとして認めているという認可のあり方もおかしいと思うのですが。
( 追記 )
ファイザーのジェネリックの件に関して、違う集団での少人数での動態パラメータを比較してもしょうがない、という意見もあるようですが、私が問題にしたいのは
① 徐放を確立するための工夫がしてある先発品となぜ血中濃度の変化にほとんど相違がないのか。ここに示していない0.5mg及び1mg製剤の寸分たがわないデータについても同様でかえって不自然。
② 2時間値を示していないのはなぜなのか。テープ剤が徐放であることを示すためのキモになる重要な部分です。
③ 1mgと0.5mgのデータの取り方はどういった意図で行われたのか。
といった点。
ホクナリンテープをジェネリックに切り替えたら、動悸がするとか喘息発作が増えたという報告はあちこちから聞かれます。
日本アレルギー学会の「喘息予防管理ガイドライン」にも「貼付剤は後発品が使用可能であるが、薬物貯留システムの違いから皮膚の状況によっては先発品とは経皮吸収速度が異なるため、注意が必要である」と明記されているのです。
添付文書上、生物学的同等性が担保されていても、臨床現場では不具合が起こっているのです。
現実をどう見つめますか ?