野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して41年の野口内科です。
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胃の内視鏡検査前に薬を飲んではいけません ( 提示写真を更新しました )


 ピロリ菌

HPヘリコバクター・ピロリ ( 以下 ピロリ菌 ) の検査や除菌について、お問い合わせをいただくことがあります。
今回は、ピロリ菌の検査法と除菌の際の注意点について述べてみたいと思います。

検査法には

血液による抗体検査
尿による抗体検査
便による抗原検査
④ 検査薬を服用して前後の呼気を比較する尿素呼気試験
⑤ 生検組織を用いる迅速ウレアーゼテスト
⑥ 生検組織を病理医に顕微鏡でチェックしてもらう鏡検法 
⑦ 生検組織を使って培養する方法

などがあります。

① ~ ④ の方法は内視鏡を用いることなく感染の有無を確認することができます。
ピロリ菌がいるとわかった場合、除菌療法を行なうことになりますが、除菌をするにあたっては次のようなルールがあります。
ピロリ菌の感染診断および除菌治療の対象は『内視鏡検査によってヘリコバクターピロリ胃炎の確定診断がなされた患者』と決められているのです。
ですから、内視鏡はしたくないけどとりあえずピロリ菌に感染しているか簡単な方法で知りたい、というご要望にお応えすることはできません。
人間ドックなどで、採血だけでピロリ菌が陽性であったと来院される方もいらっしゃるのですが、そういう場合でも、内視鏡検査が必須であるということを十分理解していただきたいと思います。


当院では、経口よりも楽に受けていただける経鼻内視鏡を積極的に行なっています。
現在用いているフジの製品は柔らかく先端の径が均一なので、鼻にとてもやさしい内視鏡です。
他社製のものを使ったことがありますが、硬いため鼻の奥の痛みを訴える方が多く、不均一な径のため鼻の粘膜をガリガリこすって出血させやすいです。
私自身は他社製のものでは絶対に検査を受けたくありません。

これまでの経験を駆使して、苦痛をできるだけ起こさせない内視鏡操作も心がけております。
ピロリ菌のことが気になる方は、是非当院の経鼻内視鏡をご利用下さい。

今月、ピロリ菌についての大きなニュースが続きましたのでまとめてみました。

◆ 本年度から鹿児島県で高校1年生を対象にピロリ菌検診開始

本年度から、鹿児島県の高校1年生を対象としたピロリ菌検査事業が始まります。
医療関係者に対しての説明が近々行われる予定ですので、詳細がわかり次第お知らせします。

日本人の胃がんの9割はピロリ菌感染が原因とされており、早期に除菌を行うと胃がん発症が防げると考えられています。
中高生を対象にしたピロリ菌検診は、市町村単位では2013年に岡山県の真庭市、都道府県単位では2016年に佐賀県が最初に始め、現在では複数の自治体が取り組んでいます。( モデル校を指定しての事業は2015年の京都府が最初です。 )
今回、地元でも始まるわけですが、微力ながらこの検診には積極的に関わって行こうと思っています。

◆ ピロリ菌除菌を妨げる意外な因子

ピロピロリ菌除菌では酸分泌抑制薬と2種類の抗菌薬を組み合わせて服用してもらいますが、全ての人で除菌が成功するわけではありません。
胃酸の分泌抑制が不十分であったり、ピロリ菌自体が抗菌薬に耐性を持っていたりすることがうまくいかない原因と考えられてきました。

しかしつい最近、別の因子が大きく関与していると報告されました。
それは何と食事中のコレステロールやω3多価不飽和脂肪酸。
除菌した人の食事摂取状況を背景因子として解析したらこの2つが浮き上がってきたのです。
これらの摂取量が多いほどピロリ菌の除菌率が低下するという関連性がみられたようですから、今後は除菌の際の食事指導も大事になってくるでしょうね。
日本感染症学会での九州大学からの発表演題なので、必ず論文にまとめて発表していただきたいと期待しています。
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本年度から鹿児島県で高校1年生を対象にピロリ検診開始するという話は先月もお伝えしました。
その事業内容についての説明が先週ありました。

大雑把な流れですが、
① 通常行われる学校での健康診断の尿を活用して、県の費用負担でピロリ抗体を調べる。
② この検査で陽性または判定不能であった場合、希望者は自己負担で二次検査を受ける。
③ 二次検査でも陽性であった場合、希望者は自己負担で治療を受ける。

当院も二次検査以降について受託医療機関として登録予定です。
詳細はまた改めて書こうと思います。


除菌説明を聞いて、ちょっと引っかかることがありました。
ピロリ菌除菌を行う理由は、将来の胃・十二指腸潰瘍や胃がんの発生を極力防ぐ可能性が大きいからです。

二次検査や除菌療法を受けたかどうかや、その後の胃の疾患の発生具合などを追跡調査して、この検診は意義があるものなのかを検証する必要があると思います。

しかし、鹿児島県としては一次検査で陽性または判定不能であった生徒に通知するだけで、それ以降は一切関与しないという立場なのです。
そのあたりについて様々な質問が出たのですが、担当者の歯切れは終始悪いものでした。
これはどうやら予算の付き方にありそうだな、と推測しました。
担当者の口から出た「子育て支援、がん教育の一環」というキーワードをヒントにしてみました。

恐らく、国から子育て支援関係の補助金が下りることが決まり、その使途について知恵を絞り、各地で普及しつつある中高生のピロリ検診に活用しようとなったのでしょう。
子育て支援の主旨を逸脱しないように、がん教育の一環という理由付けをして予算が使えるようになったものの、その後のデータ収集までは予算も理由付けもできなかった、ということではないでしょうか。

でも、一次検査での陽性率くらいはデータとして公表すべきでしょう。
高校一年生でのピロリ菌の陽性率を知ることは、がん教育の一環としても大事だと思いますので。
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ピロ本年度から鹿児島県で始まった高校1年生を対象としたピロリ検診で、陽性率は3.7%だったことが先日の地元紙に載っていましたね。
陽性であった生徒のご家庭には既に通知が届いていると思います。
ピロリ菌がいると、将来胃・十二指腸潰瘍や胃がんになる可能性があるため、放置せずに若いうちに除菌するのが望ましいでしょう。

当院は、二次検査以降の受託医療機関として登録しています。
既に問合せもいただいておりますが、除菌を希望される方には、検査・治療の手順や費用についての説明を行ない、資料をお渡ししています。
電話で連絡の上、一度ご来院下さい。
その際は、ご家族の方のみでかまいません。
基本的に自費となります。
胃の症状がある場合、保険診療になりますが、除菌にあたっては内視鏡検査が必要です。
自費と内視鏡検査の加わる3割負担の保険診療を比較すると、後者の方がわずかに高くなります。

当院での検査・治療の流れについては、PDFファイルにまとめましたので、参考にして下さい。

( スマホでは表示されない場合があります )
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最近、ピロリ菌に関して、非常に興味深い報告が相次ぎましたのでまとめてみました。


イド♦︎ 低下し続ける日本人のピロリ菌感染率

一つは、日本におけるピロリ菌感染率を出生年別にみたものです。( → こちら )
それによると

 1910年 60.9%  1920年 65.9%
 1930年 67.4%  1940年 64.1% 
 1950年 59.1%  1960年 49.1%
 1970年 34.9%  1980年 24.6%
 1990年 15.6%  2000年   6.6%

となっており、特に1998年生まれ以降での感染率は10%を切っているようです。
ご存知のように、ピロリ菌感染が原因となって胃・十二指腸潰瘍胃がんといった疾患が生じます。
感染率の低下や、ピロリ菌の除菌療法の普及などで胃・十二指腸潰瘍に遭遇する機会が随分減ってきています。
将来は、これらの疾患は珍しいものになっていくものと予想されます。
しかし、若年者でここまで大幅に感染率が下がってきた理由も知りたいところです。


♦︎ ピロリ菌感染の原因は本当に井戸水なのか

我々がピロリ菌にどうやって感染するのか、実は謎が多いのです。
というより明確にはわかっていません。

長らく井戸水が感染源として疑われており、上水道の整備に伴って感染率が低下したのだと半ば定説化していて、多くの医療関係者がそう信じています。
また、一般の方もそういう情報をよくご存じで、時々幼少時の井戸水摂取を心配して来院される方もいます。
しかし、あくまで仮説のレベルであってきっちり証明した報告はありません。

例えば、ピロリ菌感染者の家の井戸水を採取したところ、9.3%の井戸水からピロリ菌のDNAをPCR ( polymerase chain reaction ) 法で検出できたけれども、培養は全くできなかったという報告があります。( → こちら )
PCR法って検体中のごくごくわずかな核酸も増幅することが可能です。
細菌感染には一定量の菌が必要と考えられています。
DNAは増幅したら検出されるけど培養ができないというような極めて少ないレベルで、井戸水世代の6割以上の人々の胃にピロリ菌感染が果たして起こるものなのでしょうか。
私は疑問に思っています。



♦︎ 新たな研究から見えてくるもの

ピロリ菌感染率の報告があった同じ日に、同じ医学雑誌にピロリ菌に関する新たな研究報告が二つなされました。
いずれも非常に注目に値する内容です。


一つは、13%のハエがピロリ菌を保菌しているというものです。( → こちら )

ピロリ菌は糞便に排泄されます。
糞便に触れたハエがピロリ菌を運び、食べ物にたかり、それが感染源になっているという可能性が今回の研究で強く示唆されます。
上水道の整備よりも、下水道の整備で感染が減った可能性の方が高いように思えますね。


そして、口腔内のピロリ菌についての総説です。( → こちら )

この総説を読んでみると、歯のプラークに潜んでいるピロリ菌が口から口へと感染するのが案外深刻であるというのが見て取れます。
そして、口腔内も含めた除菌の重要性を説いています。


井戸水からの感染も全く否定はできないと思いますが、井戸水の中にピロリ菌がウジャウジャと存在しているわけではないことは理解していただけたものと思います。
それよりも、ハエやゴキブリなどの小動物がピロリ菌を媒介するケースや、人間の口から口への感染の方が、可能性としてよほど高いのではないでしょうか。

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