野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡にある野口内科です。
  医療・健康に関することはもちろん、近隣の話題や音楽・本のことなどについて綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:30
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
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今年のお盆休みはは8月11日 (土) から15日 (水) です。

7月24日から9月15日頃まで、外壁工事のため駐車場が使えなりますのでご了承下さい。



⑥ 医療関係の情報

7月6日にあすか製薬から、高血圧の治療薬であるバルサルタン錠『AAに発がん性があるとされる物質が混入していたため自主回収するという通知がありました ( → こちら ) 。
バルサルタン 大丈夫です既に問い合わせもいただいておりますが、当院で採用しているバルサルタンは別会社のものであり、問題はありませんのでご安心下さい。

後発医薬品は一般名の後に、アルファベットや仮名・漢字などで製薬会社名が記されています。
これをなぜかブランド名とは言わず屋号と呼んでいますが、
AAはかつて存在したあすか製薬の子会社「あすかActavis製薬」製品を示すものです ( → ちょっと古いですが、屋号対照表 ) 。
この屋号が異なっていれば、該当する製品ではないわけです。
なお、今回回収される製品自体は昨年9月で製造中止となっています。

問題となっている製品は中国企業の原薬を使っていたようですが、それに「N-ニトロソジメチルアミン」という物質が混入していたと、スペインから厚労省に情報が寄せられたそうです。
欧州やカナダなど22か国でもバルサルタン及びバルサルタンを含む配合剤の回収が始まっており、スペインでは100以上の銘柄に及ぶようです。( → 資料 1資料 2 )
N-ニトロソジメチルアミンは、タバコの煙や薫製製品などに含まれることがある物質ですが、なぜそのようなものが混入したのか、原因究明が待たれます。

コスト面のメリットから中国製品が使われるケースがあると思いますが、ちゃんとした成分が入っているのか、余計な物が含まれていないのか、独自に調べてみなければ何もわからないなんて恐ろしい話です。
今回は、医薬品だからこそこのような事実が判明したし、それに対して適切な対応がなされていると考えます。

問題は、皆さんが安易に手にするサプリメント。
その多くが中国に発注をかけているのですが、注文通りの成分が規定量含まれているのかどうか、調べる体力は発売元にはありません。
アミノ酸の原料が人毛であったり、鉄剤として鉄粉が入っていたりしてもわからないのです。( → 参考 サプリメントの正体 )
ましてや、考えもしない不純物が入っていたとしたら・・。
実際、某アスリートが表示には記されていなかったにもかかわらず禁止物質を含んでいたサプリをネットで購入して服用し、ドーピング違反に問われた事件もあります。( → 参考 サプリメントの危険性 アスリートは肝に銘じて
サプリメントの宣伝文句を盲目的に信じて服用していたら、体にどんな悪影響があるかわかりませんし、競技人生を棒に振ることだって起こり得るのです。
サプリメントに期待もお金もかけてはダメです。

国は少しでも医療費を削減しようと、ジェネリック医薬品の使用を推奨し、その薬価にも厳しい要求を課しています ( 先発品の4割から5割の価格 ) 。
ジェネリックの製薬メーカーも競争が激しく、利益を上げるために安価な中国メーカーの製品に手を出さざるを得ないのかも知れません。
アセトアミノフェンに、無届けで中国製のものを混入させていた問題も昨年起きましたね。
医療費抑制の至上命題は理解できますが、サプリメント並みに安全性の低い医薬品が出回るような事態だけは何としても避けてほしいものです。

( 大原薬品工業のバルサルタン80mgも、問題の中国企業から原薬を仕入れているようですが、大丈夫でしょうか ? → 資料 ) 。

♦♦♦♦♦ 誤解されてる貧血 ♦♦♦♦♦

7月2日に宮内庁から「天皇陛下が脳貧血によるめまい・吐き気の症状がありしばらく安静と経過観察が必要」と発表がなされました。
立ちくらみのことを「脳貧血」と表現する場合がありますが、これは医学用語ではなく、本当の医学的な「貧血」とは全く異なるものです。

ヘモグロビン貧血は、酸素を運ぶ役割を担っている血液中のヘモグロビン ( 血色素 ) が減ることを言います。
全身に酸素を運ぶ力が落ちるので、階段を上がるなどの強めの動作で全身の酸素要求量が増えた時に、動悸や息切れといった症状が起きます。

一方、脳貧血は「起立性低血圧」 ( 小児ならば「起立性調節障害」) という疾患に該当すると考えられます。
急に立ち上がると、血液は重力で下半身の方に行ってしまい、心臓より上にある脳は一時的に血液不足になります。
この時に、自律神経の一種である交感神経が働いて血管を収縮させ心拍数を増やすなどで血圧を上げることができれば問題ないのですが、その働きが不十分だと脳の虚血状態が改善できずにクラクラしてしまうわけです。
この現象はヘモグロビンがたっぷりあっても起こり得ます。

しかし、貧血という言葉から「脳貧血」を想起する方が3人のうち2人 ( 67.6% ) もいるそうなんです。
実際、立ちくらみがしたから採血で貧血のチェックをお願いしたいとして、外来を訪れる方が少なくありません。
医療関係者も平気で脳貧血という言葉を使う場面が多く ( 特に高齢医師 ) 、貧血の正確な意味が浸透せず脳貧血との混同が続いているのではないでしょうか。

貧血の定義などにつては、過去の2つのコラムである程度詳しく取り上げているので参考にして下さい。

本題に入る前に貧血について
貧血大国・日本


♦♦♦♦♦ ピロリ菌と鉄欠乏貧血について、改めて ♦♦♦♦♦
 
さて、7年前に「ピロリ菌と鉄欠乏性貧血」というコラムを書き、ピロリ菌感染が原因の鉄欠乏性貧血とラクトフェリンなどに絡んだ情報を提供しました。

最近の知見では、ピロリ菌感染によって胃粘膜萎縮が起こり、アスコルビン酸の吸収が低下することが原因ではないかとされています。
アスコルビン酸は、三価鉄を吸収のいい二価鉄へ変換するのに関わっているため、アスコルビン酸の低下によって鉄不足に陥りやすくなるというわけです。

また鉄収奪能の高い遺伝子変異を持つピロリ菌がいるとされており、このタイプのピロリ菌に感染することで鉄欠乏性貧血が起こる可能性が指摘されています。
特に小児や10代の若年者で鉄剤投与でも貧血の治療に難渋する場合は、ピロリ菌の有無をチェックする必要があり、中には除菌だけで貧血が治ることもあるようです。


♦♦♦♦♦ ヘム鉄についてプチ情報 ♦♦♦♦♦

なお、鉄欠乏性貧血の際に、吸収がいいからとヘム鉄のサプリの摂取を勧められるケースもあるようですが、最近の研究で、ヘム鉄摂取が多いと2型糖尿病の発症リスクが高くなるという報告がありました。
絶対にヘム鉄でなければ治療できないというわけではないので、気をつけたいところですね。

どこぞやのグループの「メンバー」が、アルコールが元で道を外してしまったようですね。
その報道の最中、非常に興味深いニュースが飛び込んでました。( → 酒に弱い日本人が増えるよう「進化」 遺伝情報から判明 )

げこアルコールを飲むと顔が真っ赤になってすぐにダウンする人もいれば、まったく底なしの人もいます。
これは、アルコールを分解する酵素の働きの強弱という遺伝的な要因に依存しています。

アルコールの分解には、アルコールをアセトアルデヒドに変えるADHB1と、アセトアルデヒドを酢酸に変えるALDH2と呼ばれる2つの酵素が関与しています。
日本人を含む黄色人種では他の人種に比べてこの酵素の働きが弱い人が多いのです。
白人や黒人では酵素の働きが弱い人はまず存在しないので、お酒を飲んで顔が真っ赤になってしまうことがないのです。

酵素の働きが弱い人では、
● 脳梗塞になる人が多い
● アルコールに加えて喫煙すると咽頭がんや食道がんになりやすい
ことなどが既に知られています。
食道がんの人に飲酒と喫煙の状況を聞き取るのは、我々医者にとって当たり前の作業です。

利点はないばかりように思えるのですが、今回の研究報告によると、酵素の働きが弱くなる遺伝子変異を積極的に受け継いできた跡が遺伝子解析から分かったのだそうです。
進化の過程で何らかのメリットがあった可能性がうかがえます。
アルコール飲用の際の糖代謝がわずかに改善するという報告がありますが ( → こちら ) 、他にも生存に有利に働く作用がきっと潜んでいるでしょうね。
そのあたりを探っていくのも楽しそうです。

ちなみに、日本人の中でも酒に強い弱いに地域差があると以前報告されていました。
都道府県別にみた酒に強い人が多いベスト3は、秋田、岩手、鹿児島の順なんだそうですよ。 ( → こちら )

先月、沖縄で発症が確認された麻疹 ( はしか ) の感染拡大が続き、18日現在沖縄県内だけで63人を数えています。
きっかけとなったのは台湾からの旅行者の持ち込みでした。
麻疹という疾患の恐ろしさはあちこちで解説されていますのでその点は省略して、今回はその感染力の強さに的を絞って書いてみます。


はし麻疹の潜伏期間と発症のプロセスをみてみましょう。
まず潜伏期間は10~12日間あります。
潜伏期間を経て発熱などの症状が出てきますが、カタル期と言ってこの時期ではなかなか麻疹と診断できません。
2~4日のカタル期を経て一旦熱が下がり、再び熱が出ると同時に特徴的な皮疹が出ます ( 発疹期 ) 。
典型的な症状が出て麻疹と診断されるのに時間がかかるのもさることながら、カタル期の前日くらいから周囲への感染が始まるとされている点も非常に厄介な点です。
潜伏期間の間に、人はタンポポの種のようにあちこちに散らばっていきますし・・。

そして、感染力の強さ。
感染力の強さを表すのに「基本再生産数」という数値が使われます。
これは『ある感染者がその感染症に免疫を全く持たない集団に入ったとき、感染性期間に直接感染させる平均の人数
』を示すものです。
皆さんがよく遭遇するインフルエンザではこの数値、2~3 であるのに対し、麻疹は 16~21
身近にインフルエンザ患者さんがいるだけでも大騒ぎしますが、麻疹はとてつもなく強力な感染力を持っているのだとご理解いただけるでしょう。


日本も10年ほど前までは「麻疹輸出国」という恥ずかしいレッテルを貼られていました。
1回では十分に抗体が得られない場合もあるため、2006年からMRワクチンの2回接種が始まりました。
その効果が出て、2010年5月以降、国内発症は認められていません。

しかし、最近は海外からの持ち込みが問題となっています。

1回のみの接種だったのは1990年4月2日以前に生まれた方。
40歳以上の方はワクチン接種の機会がなくても、自然感染でほとんどの人が抗体を持っているようです。( → 参考 )
この狭間に該当する方は、予防接種を検討してみて下さいね。

のむこのところ、立て続けに低ナトリウム血症の患者さんを診ました。
聞けば、意識して水分を取るようにしていると答える方がほとんど。
テレビなどで1日に1.5 ~ 2リットルは飲めと言ってるから、と判を押したような返事が返ってきます。
テレビの影響というのは本当に大きいですが、血液中のナトリウムが薄まってしまうくらいの飲水は明らかに過剰。
中には、倦怠感など低ナトリウム血症の初期の症状が出ている人もいます。

そして、多くの方が血液がサラサラになると勘違いをしています。
脱水になればヘマトクリット値 ( 血液中に占める血球の体積の割合 ) が大きくなるのですが、水分を補ってヘマトクリット値が落ち着けば、それ以上低下することはないのです。
この点については 2年前の記事で解説していますので参照して下さい。( → 「水はたくさん飲め」という指導の間違い )

そもそも水分の必要量は、体格や運動の有無、気象条件によっても異なってきます。
体に水が不足したら、「のどが渇く」という体に備わった仕組みでちゃんと知らせてくれます。
無理をしてまで飲む必要は全くありません。
そのような指導の結果、ナトリウム値が回復して倦怠感もなくなった方、多いですよ。

日本の医療保険制度において、保険診療として提供したサービスに対する対価として全国一律に適用される「診療報酬」が定められています。
日々進歩する医療や世の中の経済状況を鑑みて、2年に一度改定が行われます。
最近の改定の傾向同様、2018年度の診療報酬改定でも医薬品の適正使用を推進しようという姿勢が見えています。

すやすや注目したいのが、「不安や不眠の症状に対しベンゾジアゼピン系の薬剤を12ヶ月以上連続して同一の用法・用量で処方されている場合」に処方箋料が減額されることです。
処方する医師側に漫然と薬を出さないように促しているのです。

これは非常にいい対策だと思います。
海外では、不眠を訴える方に睡眠薬を短期間だけ処方して、改善がみられたら中止する、というやり方が一般的なのです。
米国ではかつて「睡眠薬は一生で最大35日しか出してはいけない」という規制すらありました。

ここ数年、私は睡眠薬としてベンゾジアゼピン系の薬を新規に処方するケースはほとんどなくなりましたし、日常での過ごし方のアドバイスなどを通して投薬に頼らない睡眠の質の改善にも取り組んでいます。
これまでも、処方している方には睡眠状況を定期的に聞き出して薬の調節を適宜行なうように努めていましたが、4月以降は更に減薬などを進めて行くケースも増えてくると思います。
ご理解の程よろしくお願い申し上げます。

ただ、少ない処方・用量で安定し、大きな副作用もない方に対して、無理矢理処方変更をする必要があるのかどうか、十分に考慮しつつ対応したいと考えています。


なお、トリアゾラム ( ハルシオン ) 、ブロチゾラム ( レンドルミン ) 、エチゾラム ( デパス ) は依存性を生じやすい薬の代表格です。
薬を中止すると、服薬前よりも強い不眠が出る場合があります。
これを反跳性不眠と言いますが、これを経験することで薬への依存度が高まってしまう悪循環に陥ってしまいます。
エチゾラムは軽い薬、と勘違いしいてる医師もいまだに多いので要注意です。 

花粉ずっと寒い日が続いており、例年なら2月の初めから飛散するスギ花粉も鳴りを潜めていました。
しかし、ここ数日は気温も緩み今日は日差しが暖かく感じられました。
まだ花粉は多くないようですが、そろそろ対策が必要でしょうね。
鹿児島では2015年以来、花粉が少ない傾向が続いています。
今年は昨年よりもやや少ない予報ですので、花粉症の方にはありがたい話ですね。

私も花粉症持ちなので、これまで試行錯誤してきた薬の使い方のノウハウを蓄積しております。
お困りの方は是非ご相談下さい。
また、花粉症の時期は経鼻内視鏡をやめておけ、と説明する医師がいるようです。
しかし、前処置に使用する血管収縮剤が、花粉症にはプラスに働き鼻の通りが良くなります。
ただ花粉症の症状がある期間は若干出血しやすい傾向にはある印象です。

花粉症の情報はこちらから。( → こちら )
21日以降は急に増える予報です。

節分今日2月3日は節分。
恵方巻きにかぶりつく人も多いと思います。
この風習は私が神戸に住んでいる頃に関西地方で広まったもので昔から親しんでいます。
鹿児島に戻ってきた現在でも、近所にあるお寿司屋の恵方巻きが格別においしいので毎年ありがたくいただいております。

立春をはさむこの時期は一年で最も寒い時期にあたります。
鹿児島は明日から3日間雪の予報が出ているように、例年にない厳しい寒波に覆われるみたいですね。

この寒さの影響なのか、ワクチン供給不足が影響したのか、インフルエンザの流行が続いています。
1月15日から21日の週で定点医療機関からの報告数で鹿児島が86.53人と全国トップに立ちました。
次の週では62.66人で全国6位へと若干落ち着いてきましたが、まだまだ侮れない数値です。

例年以上にインフルエンザの患者さんに対応していますが、私はここ17、8年インフルエンザに罹ったことがありません。( 他の一般的な風邪などはもらってしまうのはよくあるのですけどね )
これは毎年ワクチン接種をしているからだと考えています。
効果の持続するのが5ヶ月くらいと言われているワクチンも、毎年打っていると年間を通して免疫が維持されているという報告もあります。

インフルエンザは罹って辛いばかりでなく、少し症状がよくなっても蔓延させないように一定期間学校や職場を休まなくてはならず、社会的な損失も無視できません。
今シーズン、インフルエンザで痛い目に遭った方は、来期以降の継続したワクチン接種をお勧めします。

におい膵臓のβ細胞には、インスリンを分泌する働きがあることは多くの方がご存じかと思います。
そのβ細胞に嗅覚受容体があって、その受容体が刺激されるとインスリンを分泌する、という報告が昨日ありました。( → 論文はこちら )

膵β細胞や小腸に、味覚 ( 甘味受容体 ) があることが数年前に発見されています。
膵臓や腸で感じた甘味の情報は脳には伝えられないそうです。
また、β細胞の甘味受容体が刺激されるとインスリン分泌が起こったり、糖尿病の方では腸の甘味受容体に異常があったりするという報告などがあります。

今回は嗅覚受容体も発見されたわけですが、消化管に存在する味覚や嗅覚が刺激されるとどんな変化が起こるのか、新たな発見に期待したいですね。
糖尿病やメタボの新たな予防法や治療法や繋がるかも知れませんし。


「腸は第二の脳」という言葉をよく耳にすることがあると思いますが、消化器系に脳が持っている味覚や嗅覚が備わっていても何らおかしくない・・。
ですが、私は日頃「脳は第二の腸」と言っています。
発生学的に脳よりも消化管が先に形成されるのも、そう主張する理由の一つです。
消化管という生き物が、効率的に食べ物を捉えるために集中神経系を発達させて、その過程において消化管が持ち合わせていた味覚や嗅覚という機能を脳が取り込んだのではないか。
そして本来、腸で働いていたホルモンもそのまま脳で活用して、脳腸相関と呼ばれるものができ上がってきたのではないか、というのが私の勝手な推論なのですけどね。

年が明けてからの外来は、例年になく患者さんが多く猫の手も借りたい状態が続いています。
ブログのネタになる医療情報の収集もままなりません。

はな17日に鹿児島県内全域にインフルエンザ警報が出ましたが、インフルエンザはもちろん多く、例年よりもB型が目立っています。
これとは別に、軽いのどの痛みから始まり次いで鼻水がタラタラと流れ出といった症状の方が相次いでいます。
発熱はほとんどないものの、頭重感や倦怠感も伴うので皆さんつらそうです。

今週は比較的暖いいい天気が続いていますが、来週はまた厳しい寒さが予想されています。
引き続き体調管理には万全を期して下さい。

診察時に iPad が活用できるのではないか。
特に図版を溜め込んでおくと、疾患の解説に便利だろう・・。
と思ってはや数年経ちます。
でも iPad はほとんど引き出しにしまい込んだままです。
説明するのにわかりやすい図版が少ないのが理由の一つですし、操作が単純化されているがゆえ、かえって必要なものが瞬時に呼び出せないじれったさがあるからです。

パットでも一つだけ重宝しているのが、聾唖者との筆談です。
普通に紙と筆記具があれば事足りますが、iPadを使うと、書いたことをスタッフやご家族にも読んでもらいやすいのです。

「筆談パット」という対面での筆談に特化した優れたアプリを入れているのですが、いかんせん書き込むスペースが狭くであまり実用的ではありません。

ホワイトそこで、よく使っているのは「ホワイトボード」というアプリ。
非常に人気があったのに、残念ながらもう入手できなくなっています。
でも、私の臨床現場ではいまだにに現役で活躍中です。
タッチペンで書き込むだけですし、画面を無駄なく活用できます。

なお、類似のアプリで現在入手できるものとしては「筆談ボード」という機能がとてもシンプルなものがあります。 

最近、ピロリ菌に関して、非常に興味深い報告が相次ぎましたのでまとめてみました。


イド♦︎ 低下し続ける日本人のピロリ菌感染率

一つは、日本におけるピロリ菌感染率を出生年別にみたものです。( → こちら )
それによると

 1910年 60.9%  1920年 65.9%
 1930年 67.4%  1940年 64.1% 
 1950年 59.1%  1960年 49.1%
 1970年 34.9%  1980年 24.6%
 1990年 15.6%  2000年   6.6%

となっており、特に1998年生まれ以降での感染率は10%を切っているようです。
ご存知のように、ピロリ菌感染が原因となって胃・十二指腸潰瘍胃がんといった疾患が生じます。
感染率の低下や、ピロリ菌の除菌療法の普及などで胃・十二指腸潰瘍に遭遇する機会が随分減ってきています。
将来は、これらの疾患は珍しいものになっていくものと予想されます。
しかし、若年者でここまで大幅に感染率が下がってきた理由も知りたいところです。


♦︎ ピロリ菌感染の原因は本当に井戸水なのか

我々がピロリ菌にどうやって感染するのか、実は謎が多いのです。
というより明確にはわかっていません。

長らく井戸水が感染源として疑われており、上水道の整備に伴って感染率が低下したのだと半ば定説化していて、多くの医療関係者がそう信じています。
また、一般の方もそういう情報をよくご存じで、時々幼少時の井戸水摂取を心配して来院される方もいます。
しかし、あくまで仮説のレベルであってきっちり証明した報告はありません。

例えば、ピロリ菌感染者の家の井戸水を採取したところ、9.3%の井戸水からピロリ菌のDNAをPCR ( polymerase chain reaction ) 法で検出できたけれども、培養は全くできなかったという報告があります。( → こちら )
PCR法って検体中のごくごくわずかな核酸も増幅することが可能です。
細菌感染には一定量の菌が必要と考えられています。
DNAは増幅したら検出されるけど培養ができないというような極めて少ないレベルで、井戸水世代の6割以上の人々の胃にピロリ菌感染が果たして起こるものなのでしょうか。
私は疑問に思っています。



♦︎ 新たな研究から見えてくるもの

ピロリ菌感染率の報告があった同じ日に、同じ医学雑誌にピロリ菌に関する新たな研究報告が二つなされました。
いずれも非常に注目に値する内容です。


一つは、13%のハエがピロリ菌を保菌しているというものです。( → こちら )

ピロリ菌は糞便に排泄されます。
糞便に触れたハエがピロリ菌を運び、食べ物にたかり、それが感染源になっているという可能性が今回の研究で強く示唆されます。
上水道の整備よりも、下水道の整備で感染が減った可能性の方が高いように思えますね。


そして、口腔内のピロリ菌についての総説です。( → こちら )

この総説を読んでみると、歯のプラークに潜んでいるピロリ菌が口から口へと感染するのが案外深刻であるというのが見て取れます。
そして、口腔内も含めた除菌の重要性を説いています。


井戸水からの感染も全く否定はできないと思いますが、井戸水の中にピロリ菌がウジャウジャと存在しているわけではないことは理解していただけたものと思います。
それよりも、ハエやゴキブリなどの小動物がピロリ菌を媒介するケースや、人間の口から口への感染の方が、可能性としてよほど高いのではないでしょうか。

来年、診療報酬改定が控えており、今回の改定で医師の技術に関する部分では報酬を引き上げるものの、薬に関する部分では引き下げようという方向性が見えています。

♦ 若い女性への処方が急増したヒルドイド

軟膏薬に関して、最も槍玉に上がっていると思われるのが、「ヒルドイド」などの名称で知られるヘパリン類似物質の外用剤の適正使用について。

一般報道もなされているのでご存知の方も多いと思いますが、某モデルが化粧の下地に使っていると紹介したのをきっかけに、美容目的で医療機関で薬を求める人が男性に比べて女性で5倍以上も急増したとか。
特に25~29歳に限ると女性の増加数が男性の33.9倍というかなりいびつな状況になっています。
そして一度に50本以上処方する例もあったという事態に、保険適用を外すように求める意見もあったとか。

好ましくない情報を流したモデルさんには大いに反省してもらいたいですし、真に必要とする患者さんの使用の妨げにならないように議論がなされることを望みたいです。


♦ なぜか多用される降圧薬、ARB

もう一つ議論に上がっているのが、高血圧治療におけるアンギオテンシンII受容体拮抗薬 ( 以下 ARB ) の使用実態です。
この系統の薬は、今年に入るまでジェネリック医薬品が解禁になっているものが少なかった上に、元々の薬価が他の系統の降圧薬に比べて高いのです。
ARBとカルシウム拮抗薬を投与されている患者さんを比較しても両者間で入院の発生率に差がないというデータを基にして、ARBをカルシウム拮抗薬に置き換えれば800億円程の医療費が削減できるという主張が出てきています。
これは薬理作用を無視したいささか乱暴な意見で、性質の違いを考慮して個々に応じた適切な降圧薬を選択すべきだとは思います。

しかし、この議論の中で提示されたデータの中にかなりがっかりしたものがあります。
それはACE阻害薬の使用割合が極端に低いことなんです。
単独処方での割合をみると、Ca拮抗薬・ARB・ACE阻害薬の順に、57.0% ( 33.5% )・37.9% ( 63.1% )・1.7% (1.1%) だったのです。( 数値は構成割合でカッコ内の数値は処方額の割合 ) 

高血圧の治療をするのは、血圧の目先の数値を下げるのが目的ではなく、高血圧が元で起こる心臓や脳血管の疾患を予防する点にあります。
ARBとACE阻害薬は同じレニン・アンギオテンシン系を抑制するという共通点があるものの、心筋梗塞後の予後や全死亡、心血管死など様々な点においてACE阻害薬が優れているのです。
そのため、ARBはACE阻害薬に忍容性のない患者向けの代替品というのが欧米での位置づけ。
なのに、日本ではARBの処方が圧倒的なのです。
循環器の医師たちもその点は十分に理解しているのですが、ACE阻害薬の副作用である咳が生じるのを嫌ったり、院内に採用されていないからといった消極的な理由でARBの方を選択しているのが現状です。

当院では、エビデンスをしっかり持っているACE阻害薬を積極的に処方しています。
ARBをカルシウム拮抗薬ではなくACE阻害薬に置き換える、という議論なら私はおおいに歓迎します。
今回の議論をきっかけに、日本の血圧治療に携わる医師の意識が変わってくれることを望みたいですね。

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きも『ピロリ菌除菌後、プロトンポンプ阻害薬 ( 以下 PPI ) を長期に服用すると胃がんのリスクが高まる( 本論文はこちら ) 。

先日、このような論文が Gut という雑誌に掲載されました。
PPIを長く連用するほど胃がんのリスクが高まり、ハザード比が1年以上で5.04、3年以上で8.34にもなるというもの。
PPIと同様に胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカーという種類の薬ではハザード比が0.72で、このような傾向はなかったようです。

我々、消化器医には衝撃的な内容です。
ピロリ菌の除菌は、胃・十二指腸潰瘍の再発や胃がんの発症を予防するために行うものです。
でも、菌がいなくなると胃が本来の働きを取り戻して酸分泌が活発になるため、胃もたれや胃食道逆流症 ( 逆流性食道炎 ) を起こすことがあります。
そのため、どうしても酸分泌を抑える薬が必要になるケースがあるのです。


以前から、酸分泌抑制薬の長期連用の安全性には疑問が投げかけられていました。
「手術で胃を全摘しても生きていられるし問題はないのでは」とは消化器疾患の分野で高名な先生の言葉なのですが、実際、臨床の場において長らく処方していて困る場面に出くわしたことはほとんどありません。
しかし、これまでに
・ビタミンB12や鉄の吸収阻害
・胃酸による殺菌作用の低下に伴う肺炎や腸管感染症の増加
・骨折や認知症の増加
などの可能性が指摘されています。

丁寧にみていくと、ビタミンや鉄の吸収阻害、感染症の増加のエビデンスはありませんし、骨折については増加と変化なしの相反する報告があります。
認知症に関しても、診療記録からPPIの服用の有無で認知症の発生率の差をみた研究で、因果関係をはっきりさせたものではありません。


今回の報告で、ハザード比があまりに大きいのには驚いたのですが、作用機序はまだ未解明ですし、あくまで『ピロリ菌除菌後』という状況下での話です。
今後の研究の進展を見守りたいと思います。

骨折先日、大腿骨近位部骨折の地域差についての調査結果がニュースになっていました。

それによると西高東低の傾向がくっきりと表れました。( 右の表はクリックで拡大します )
その原因として、ビタミンKを含む納豆の消費量など、食生活の関連性があるのではないかと推測していました。


骨、というとカルシウムやビタミンDを思い浮かべる人も多いと思いますが、ビタミンKも大事なんです。
骨の形成を司る骨芽細胞は、オステオカルシンという蛋白質を作ります。
この蛋白質の働きは未解明の部分もあるのですが、まず第一に骨形成を促す作用が考えられています。
このオステオカルシンを作るのにビタミンKが必要なのです。
オステオカルシンには膵臓のインスリン分泌を促す作用や、糖や脂質の代謝を促す作用、記憶力の改善作用などがあることも分かってきています。


今回の報告での地域差と納豆の消費量を色分けした地図を並べてみましたが、確かに逆の相関がありそうですね。( 右が都道府県別の納豆の消費額。どちらもクリックで拡大します ) 
地図納豆













私は、男性5位・女性1位の兵庫県と、男性40位・女性39位と西日本で男女とも最も低い鹿児島県での診療経験をしています。
言われてみると、確かに大腿骨近位部の骨折は鹿児島に帰ってきてからあまり診なくなったように思います。
神戸時代は人工骨頭手術を受ける患者さんがたくさんいたのですが。


骨折とは別の話になりますが、消化器を中心に診療している私が最も感じている地域差は、S状結腸の憩室症です。
兵庫県で仕事をしていた時の方が明らかに多かったです。
大腸憩室症も食事との関連が言われていますが、食事と絡めて疾患の地域差を調べるとその病気の予防法も見えてくるではないでしょうか。
でも、周辺地域に比べてどうして鹿児島県で大腿骨近位部骨折が少ないのか、謎です。
納豆の消費量もそれほど多いわけではないですしね。
その原因を探っていくと、また違った要因が見えてくるのでしょう。


なお、骨粗鬆症を予防しようと、カルシウムのサプリメントを摂取するのはご法度です。
カルシウムをサプリで補っても骨折予防効果はないばかりか、心筋梗塞や脳卒中、認知症リスクが増加するなどの報告が次々になされています。
何一ついいことはありません。
サプリではなく、食材でカルシウムやビタミンD・Kを多く含むものを摂りましょう。
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