野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して41年の野口内科です。
  医療・健康に関する情報はもちろん、近隣の話題、音楽・本のことなどを綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:30
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
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⑥ 医療関係の情報

インフルエンザ世間は新型コロナウイルスの話題で持ち切りです。
マスクや携帯できる消毒剤などの品切れが続出しているようです。

一方で、インフルエンザ。
あまりに身近な感染症なのであまり怖さを抱かないかも知れません。
でも、日本では年間に1000万人単位で罹患し、1万人程度がインフルエンザが原因で亡くなっていると言われています。
ちなみに2017/18年のシーズンでは2249万人がインフルエンザで医療機関を受診したと推計されています。

そのインフルエンザですが、昨年10月初めに流行り出して今年はどうなることかと思いました。
しかし、今シーズンは暖冬傾向にあるせいでしょうか、あまり流行していません。
鹿児島県のインフルエンザ定点医療機関を受診した患者数の推移を12月後半からみてみると

 2019年第51週 ( 12/16~12/22 )  23.64
 2019年第52週 ( 12/23~12/29 )  25.95
 2020年第01週 ( 12/30~01/05 )  18.15
 2020年第02週 ( 01/06~01/12 )  23.72
 2020年第03週 ( 01/13~01/19 )  22.13
 2020年第04週 ( 01/20~01/26 )  23.68

と、概ね横ばい傾向にあります。

また、全国的には既にピークアウトしたのではないかという観測も出ています。
( ピークは感じてませんが。)
ただし、B型の割合が増えてきており安心はできません。( グラフは日経メディカルオンラインから )

インフルエンザ動向

少なくとも新型コロナウイルスによる死亡例は日本ではまだなく、九州では発症例もありません。
しかし、インフルエンザなど身近な感染症を防ぐ意味でも、手洗いやうがいなどの感染予防の基本を徹底して下さいね。


口内炎の治療に欠かせないものになっているのが、漢方薬の半夏瀉心湯 ( はんげしゃしんとう ) です。

口内炎もう10年以上も前のこと、自分自身が口内炎になった時に、試しに内服してみた半夏瀉心湯。
驚くことに翌日には痛みが気にならないレベルになり、4日目には口内炎が跡形もなく治ってしまいました。
それまで使っていたのは、口腔用のステロイド軟膏ですが、口の中はネバネバするし、痛みはちっとも引きません。
ステロイド軟膏を使っても使わなくても治るのに 1週間以上かかっていましたから、半夏瀉心湯の効果には本当にびっくりでした。

少なくとも、抗がん剤の副作用で口内炎が生じた際に半夏瀉心湯の含嗽 ( うがいのこと ) が有効であることは、これまでに多くの報告があります。
口内炎が起きる前から始めて、休薬期間も含嗽するという予防的な使い方もなされているようです。
比較的基礎研究も進んでいる漢方薬で、抗炎症作用や鎮痛作用、組織修復作用、抗菌作用などが示されています。

半夏瀉心湯は下痢などに対しても有効なので、内服すると便秘になってしまう場合があります。
そういう場合は、やはり含嗽がお勧め。
1日分をぬるま湯で溶かしておいて、痛みが出た時に適宜うがいをする方法も紹介されています。

口内炎に対しては、アズレン系のうがい薬を併用することもあります。
こちらも痛みを緩和し、組織修復作用があることがわかっています。
逆に使ってはいけないのがポピドンヨード ( イソジン ) 。
一応、口内炎の適用があるのですが、患部を刺激して痛みは増すだけですし、治りを遅くしている可能性があります。
本当に口内炎への効果を検証したデータがあるのでしょうか。

他にも黄連解毒湯茵ちん蒿湯など口内炎に効能のある漢方薬がありますし、レバミピドイルソグラジンという胃薬も口内炎に効くという報告があります。



( 2008年8月11日の「口内炎を治すには」の内容を改変して新しい記事にしました )

最近新聞に載っていた記事を2つ並べてみましょう。


まずは、8日の新聞に載っていた「日本の医学部卒業生、人口比最少」という記事。
日本は人口10万人あたりの医学部卒業生数が、比較可能な35カ国のうちで最も少ない ( 6.8人 ) ということ ( 最高はアイルランドの24.9人 ) と、医師に占める55歳以上の割合が37%で平均 ( 34% ) よりも高いというものでした。
更に女性医師の割合についても最低の21%と平均48%の半分以下だったようです。
( 最高はエストニアとラトビアの74% )

もう一つは7日に掲載された「鹿児島市立病院で違法残業」というニュース。
労使間協定で「月45時間以上の残業は年6回まで」という労使間協定を超える違法残業をしていた職員が28人もいたとか。
そこで「月80時間以上の残業を年10回まで」と改めたそうです。( 改悪なのか現実に即したのか‥?? )


医療スタッフ先月の診療所ライブラリー「病院は東京から破綻する」で、国は予定通りに医学部の定員を増やす気配がないことや、医師の献身的な残業で医療現場が成り立っていることなどを書いたばかりでした。
医師が増えると医療費が更に増えるという考えがあるようです。
しかし、もう少しゆとりを持って医師が働ける環境がないと、国民の健康を安心して維持できないのではないでしょうか。

風疹の拡大防止策として、対象年齢の男性に無料で抗体検査や予防接種を受けていただけるクーポンが配られています。
このクーポンの利用率が低迷しているという報道が先週ありました。( → こちら )
鹿児島市でこの制度の開始が7月1日からと遅かった影響もあり、鹿児島県での利用者数は九州の中でも2番目に少ない数字となっています。

採血風疹で最も問題なのは、妊娠20週頃までの妊婦さんが罹った時に胎児に先天性風疹症候群 ( CRS ) を起こす可能性があること。
風疹を蔓延させないためにも、クーポンがお手元に届いた方は必ず検査を受けて、小さな命を守りましょう。
19年度の対象者は、昭和47年 ( 1972年 ) 4月2日から昭和54年 ( 1979年 ) 4月1日の間に生まれた男性です

詳しくはこちらの記事を参考にして下さい。( → 「鹿児島市の成人男性の風疹抗体検査について」)



参考 → 「鹿児島市の19年度の予算案に風疹対策」「流行中の風疹、鹿児島でも」「風疹予防摂取の重要性

インフルエンザ当院周辺では、今週に入ってインフルエンザに罹る方が急激に増えています。
最高気温が30℃を超える日もあと数日続くようですが、十分に気をつけて下さい。

インフルエンザの予防接種は10月1日から開始しています。
接種をご希望の方は必ず予約をお願いいたします。

予防接種の料金についてのお知らせです。
10月から消費税が10%に上がりましたが、窓口でのお支払いは昨年と同じです。

昨年、一部のメーカーが販売しているバルサルタンという降圧薬に発がん性があるとされる「N-ニトロソジメチルアミン」という物質が混入していたため自主回収するという通知がありました。
それに続いて、これまた一部のメーカーが販売するアムバロ配合錠にも同じ物質が混入していることが判明して、自主回収となっています。( → こちら )

胃さて、今回は胃薬の中でH2ブロッカーと呼ばれる種類のものの一つ、「ラニチジン」にも全く同じ物質が混入していたことが欧米から報告があったようです。
この報告を受けて、厚労省はとりあえず、製造販売業者に新たな出荷を行わないように指示を出したようです。
今のところ、既に市場に出回っている分に関しては自主回収は行われないようです。

世界的に見るとラニチジンは世界で最も使われているH2ブロッカーです。
日本ではファモチジンが一番売れています。
私は、ファモチジンを処方することはたまにありますが、ラニチジンは処方しません。
よく処方するのはラフチジンとニザチジン。
この2者は、胃酸分泌を抑える以外に多用な働きを持っているためです。
そのことについては当ブログで「まだまだ使えるH2ブロッカー」というシリーズで説明していますので、是非読んでみてくださいね。

先日、鹿児島市内の小学校でインフルエンザによる学級閉鎖があったというニュースがありました。
実は、8月末から鹿児島市近隣の地区でインフルエンザが小流行しているという話が流れてきていました。
また、9月18日には大分県での流行期入りの発表がありました。
そんなこともあってでしょうか、インフルエンザワクチンについての問い合わせが増えています。
予防接種
当院では、例年10月1日からインフルエンザの予防接種を始めるようにしています。
しかし、現段階で卸業者からいつ手に入るのか、はっきりしていません。

予防接種の料金についてですが・・。
当院では2014年に消費税が5%から8%に上がった際も、2015年にインフルエンザワクチンが3価から4価になって納入価が約1.5倍上昇した際も、価格を据え置いてきました。
今年は10月から消費税が10%になるため、現在検討中です。


開始時期や料金は、決定次第、当ブログでお知らせしていく予定にしていますので、今しばらくお待ち下さい。

現在、全国には82の医学部があります( 防衛医科大学も含む ) 。
医学部人気は相変わらずで、入るのに敷居が非常に高い状態が続いています。

医師以前から地方の大学に都会出身の学生が押し寄せて、卒業すると都会に戻っていくので、地方での若手の医師確保が問題になっていました。
それを解決する手段の一つとして「地域枠」という制度があります。
これは、地域の医師確保を目的に都道府県が大学医学部の学生に奨学金を貸与する制度で、特定の地域や医療機関に計9年勤務すれば奨学金の返還が免除されます。
鹿児島県でも、既にこの地域枠から誕生した医師が県内各地で活躍しています。


先日、お隣の宮崎県からこんなニュースが飛び込んできました。

地域枠4人に1人が県外流出 宮大医学部卒業

制度に強制力がなく、県外で働く場合は奨学金を一括返済しなくてはなりません。
しかし、制度の主旨を理解して入学したはずですから、返済すればいいという話ではありませんよね。
本年度からは、地域枠の学生は卒業後に県内の病院でしか研修が受けられなくなるようですが、研修施設の質の向上も求められます。

さて、地域に医師の頭数だけ揃えばいいという話ではありません。
診療科によっては医師不足は相変わらずです。
鹿児島県では、産婦人科・小児科・麻酔科・救急科・脳神経外科・整形外科を目指す学生にも修学資金を貸与しています ( → こちら ) 。

個人的には、地域枠同様、入学時に特定の診療科の医師になることを前提とした枠を設けてもいいのではないかと思っています。
産婦人科医や小児科医になりたいという強い意志を持ちながら、なかなか入学できないでいる人たちがいます。
医師になるのに、大学入試の際の学力はそれほど役に立ちませんから。

病院で受ける検査は、痛みやつらさを伴うものが多く、心理的にも肉体的にも負担の大きいものです。
最近得た情報の中には、そういう苦痛を回避できるように様々な研究がみてとれるものがいくつかありましたので紹介してみます。

♦♦♦♦♦

インフルエンザ検査まず、インフルエンザの診断について。
現在は、鼻やのどの奥に綿棒を入れる検査がほとんどです。
不快感や痛みが伴い、検査をする我々もくしゃみをまともに浴びる等のリスクが付きまといます。
今回、鹿児島大学から発表があったのは唾液を使った検査です。
2014年には手法が確立されていたようですが、今冬に臨床試験を始め、来年度中には保険適用を目指すそうです。
唾液を取るだけなので負担は少なく、検査感度も従来法より1~50万倍あるとか。
安価で普及することを期待したいですね。( 参考記事 → こちら )

♦♦♦♦♦

自己血糖測定次に、血糖測定について。
血糖はどうしても血液を調べなければなりません。
インスリンによる治療を受けている方などは、自分で調べる必要もあります。
この負担を軽減しようと、NTTが研究中なのが、電磁波を用いた方法。( → こちら )
皮膚に機器を押し当てて、グルコース成分に特有の周波数の電磁波を照射することで血糖値を推定するというものです。
機器が小型化できて、安価になればいいですね。

♦♦♦♦♦

最後は、超音波を用いたバーチャルレンズについて。
詳しく読み込んでいませんが、侵襲的な内視鏡検査にとってかわる可能性がある、と研究者は報告しています。( → こちら )
内視鏡は覗いて観察するだけではなく、治療にも欠かせない道具になっていますから、後者を代替するのは困難だと思います。


少しでも苦痛のない検査法を目指して、様々な研究が地道に行なわれているのは嬉しいことですね。

 

痛風フェブキソスタットという尿酸を下げる薬があります。
米国では今年2月、古くからある薬・アロプリノールよりも死亡リスクが高いとして「アロプリノールが無効または重篤な副作用が生じたために使用できない患者にのみ使用する」よう用途を制限しました。
更に7月17日、英国においても「心血管疾患既往例には他に選択肢がない場合を除き、用いない」よう勧告が出されました。
日本では、厚労省が7月9日に注意喚起を呼びかけたに留まっています。

これらの措置は、2018年秋にNew England Journal of Medicineで発表されたCARES試験の結果が基になっています。
しかし、一部からは試験の脱落例が多く、その扱い次第では評価が変わる可能性が高いという指摘もなされています。

一方で、本年3月にはEuropean Heart Journalに「高尿酸血症のある高齢患者で脳心腎血管関連イベントを減少させることができ、特に慢性腎臓病の発症や進展予防が期待できる」とする日本発の多施設共同ランダム化比較試験 ( FREED研究 ) が発表されています。( → こちら )


以前にも指摘しましたが、海外では痛風発作の再発予防目的で尿酸を下げる薬を使います。
これに対して、日本では尿酸が高いというだけの「無症候性高尿酸血症」に対しても薬が使われます。
この点については、当ブログでも以前解説をしました。( → 大丈夫 ! 何とかなります 尿酸値は下げられる )
なので、CARES試験とFREED研究では、対象となった患者さんの背景が違います。
メタボリックシンドロームと関連が深い痛風の既往のある方を扱った前者とそうでない後者。
それで結果に差があるのかも知れません。
欧米では、今のところ高尿酸血症治療薬に心臓や腎臓の疾患の予防効果は認められないという立場でいます。
無症候性高尿酸血症を積極的に治療している日本から、欧米を納得させるデータをもっともっと発信していかなくてはならないと思います。
根拠がなければ、私もあまり積極的にはなれません。

鹿児島市では、19年度から風疹の追加対策を始めています。
風疹の予防接種を受ける機会のなかった昭和37年 ( 1962年 ) 4月2日から昭和54年 ( 1979年 ) 4月1日の間に生まれた男性が対象です。

採血3年間かけて行われる対策で、本年度は昭和47年 ( 1972年 ) 4月2日から昭和54年 (1979年 ) 4月1日までに生まれた方に対して、6月下旬にクーポン券が発送されました。
届いたクーポンを指定された医療機関に提出し、まず風疹抗体検査を受けていただくことになります。

当院では、風疹 IgG, CLEIA法で調べます。
この数値が 20 IU/ml 以上あれば、免疫が十分にあると判断されます。
20IU/ml 未満なら、免疫をつけるための予防接種をMRワクチンにて行ないます。
抗体検査も予防接種も無料で受けられます。

風疹で最も問題になるのは、妊娠20週頃までの妊婦さんが罹った時に胎児に先天性風疹症候群 ( CRS ) を起こす可能性があることです。
CRSは、心臓の奇形・白内障・難聴を三大症状としますが、血小板減少や動脈管開存症、発育遅滞、精神発達遅滞なども起こし得ます。
この疾患は根本的な治療がありません。
風疹自体にも治療法がありませんので、予防接種が非常に重要となります。

風疹を蔓延させないためにも、クーポンがお手元に届いた方は必ず検査を受けて、小さな命を守りましょう。


参考 → 「鹿児島市の19年度の予算案に風疹対策」「流行中の風疹、鹿児島でも」「強力な麻疹 ( はしか ) の感染力」「風疹予防摂取の重要性

◆ ABH - 口の中にできる血豆

ABHAngina bullosa haemorrhagica (ABH) という疾患があります。
名前を聞いてもピンと来ないでしょう。
一般の方は当然としても、医師にもあまり知られておらず、医学部の学生時代に習ったこともありませんし、日本語名すらないという疾患です。
この疾患、簡単に言うと食事中に口の中に血豆 ( 医学的には血疱〈けっぽう〉と言います ) ができる病態なんです。

この疾患に悩む方は潜在的には多いのではないかと思います。
ツイッターで「口の中 血豆」というキーワードを使って検索すると、1日にいくつものつぶやきがヒットします。
このコラムへのアクセスも毎日多数に及びます。
しかし、病院を受診される方は稀なので、医療者側がその実態を十分に把握できていないのが現状です。

実は、私はこの疾患を随分昔から持っています。
インターネット上でもあまり多くの情報を得られませんし、ましてや正しい内容のものが少ないので、自身の経験を踏まえながらこの疾患を解説してみたいと思います。


◆ どんな条件で口の中に血豆ができるのか

煎餅まず、発生するのはほぼ食事の最中で、舌や頬を噛んでいなくても起きます。
豚カツなどを口の中でモグモグしている際に、揚がったパン粉が口の粘膜にチクリと刺さるような痛みに襲われます。
するとその部分が瞬く間に膨れてきて赤黒い血豆が形成されます。
揚げ物以外にも、せんべいやピザの焦げた部分、ナッツ類、小魚のおつまみ、大学イモ、エビの殻などで血豆ができたことがあります。
硬くてカリカリしているような細かいかけら状のものであれば、何でも原因となり得るようです。

この血豆は、文献的には軟口蓋部分にできやすいとされています。
私の場合は、歯肉、硬口蓋、頬粘膜、舌など口の中の至る所にできますが、軟口蓋の部分にはあまりできません。
なお、舌については側面および口腔底側 ( 舌の裏側 ) にはできますが、表側にできた経験はありません。

( ※ 硬口蓋は、口の中の上の壁のうち、骨があって硬い部分。軟口蓋は、硬口蓋よりも後方の柔らかい部分を言います。)


血豆の表面を覆う膜 ( 被膜 ) は結構頑丈なので、簡単には潰れません。
何もしないで放っておくと1-2日はそのまま残るケースが多いですが、そのうち自然に潰れて中に貯まっていた血が出てきます。
血豆がある時も痛みがありますが、潰れた直後の痛みが一番つらいですね。
被膜が剥がれてびらんと呼ばれる傷となり、やがて跡を残さずに治っていきます。
なお、軟口蓋部分ののどちんこに近い部分にできると、物を飲み込む時に陰圧となる影響を受けて、被膜の中に溜まる血液が増えて次第に大きくなる上に、血豆がのどの奥の方へ這うようにずれていくことがあります。
血豆がずれていく時はたまらなく痛いです。
なお、血豆が大きくなって呼吸困難をきたした症例も報告されています。


◆ ABHの原因は・・・

なぜこのような血豆が形成されるのか、残念ながら原因ははっきりしていません。
私の場合、血縁者にABHを持つ人は全くいないので、遺伝性はないものと考えています。

熱いスープ熱で口腔内の粘膜が脆弱になることも一因とされています。
確かに、私は熱い物が大好きで、みんながフーフーして冷ましながら飲むお茶も平気です。
自分自身をよく観察してみると、確かに熱いものを食べた際に血豆ができやすい傾向があるようです。

文献的には、中年以降に多く、口腔アレルギーとの関連が言われていたり、ステロイドの吸入剤を使用している人に多いなどとされています。
しかし、私の場合、中学校の頃には既に発症していたと記憶しており、一部のエビに対しするアレルギーを持っていますが、吸入ステロイドは使用していません。


◆ ABHの予防と治療

原因がわかっていないので、確かな予防法はありません。
慌てずゆっくり食べろ、と指導する以外にないのですが、実際にそれは無理です。
原因となりそうな食材を食べる時に注意深くゆっくり噛んでいてもチクリ、と感じて血豆ができるケースもしょっちゅうです。
生きていくために摂食行動は欠かせませんので、根本的な予防法はないと考えて下さい。

治療法も確立していませんし、この疾患をしっかり理解している医師もほとんどいないので、病院に行っても特別な処置をしてくれるわけではありません。
そこで、私なりの対処法を紹介しておきましょう。

爪楊枝それは、できた血豆を爪楊枝でさっさと潰してしまうという荒技です。
先ほども述べたように、被膜は案外丈夫なので簡単には潰れませんし、場所によってはかなり痛いですけれども、頑張ってみましょう。
潰した後は中から血が出てきますが、基本的に血豆に貯まっている分だけしか出てきません。
ただし、血を残さないよう陰圧をかけるなどして絞り出すのが肝要。
少しでも残っていると治るのが遅くなります。
この処置が終わったら、アズレン系のうがい薬を使って1日に数回、口をゆすぎます。
アズレン系のうがい薬は、痛みを和らげ傷を早く治す作用を持っていますので、欠かせない作業です。
これで、1~2日の間に気にならなくなります。
最近は、うがい薬に加えて半夏瀉心湯を処方することが多くなりました。
半夏瀉心湯も、アズレン系のうがい薬同様に口の中の傷を早く治してくれる働きがあります。
両方を使うことで、痛みの緩和や治りが早いと好評です。

血豆をそのままにしておくと、いつまでも痛いだけです。
やや乱暴ですが、さっさと潰してしまうことをお勧めします。


◆ 日本語病名の提唱

個人的には、特発性食道粘膜下血腫という疾患との関連性はどうなのだろうかと注目しています。
内視鏡検査で、食道の入り口の手前の梨状陥凹という場所や食道に血豆ができている例に遭遇することもありすま。
いかんせんお目にかかるのが稀なので、今のところ関連は見い出せていませんが。

もっと多くの症例を集積して知見の積み重ねが必要な疾患だと思いますが、この ABH という疾患名は病態をしっかり表現しているとは思いませんし、日本語名がないのは残念です。
そこで、この疾患を個人的にも抱えている医師として、日本語の疾患名を提唱してみたいと思います。

突発性有痛性口腔内血疱

いかがでしょうか。


※ 2015年1月に書いた「口の中に突然できる血豆、ABH」に加筆して、新たに綴ってみました。


関連するコラム
●  口内炎には半夏瀉心湯



IB-Stim-CloseUp-Palcement-Web先日、アメリカ食品衛生局 ( FDA ) が、耳の後ろに弱い電気刺激を与えて過敏性腸症候群 ( irritable bowel syndrome : IBS ) の腹痛を緩和させるというデバイスを認可しました。

          FDAのニュースリリース ( → こちら )
          メーカーのサイト ( → こちら )

このデバイスを3週間使うと、少なくとも3割は激痛から開放されるようです。
右の写真はメーカーのHPにあったものです。

♦♦♦♦♦
 
正確なメカニズムはわかっていないようですが、電気刺激が脳の扁桃体と呼ばれる場所や脊髄をコントロールするようです。
扁桃体は、情動反応の処理や記憶形成などに重要な役割を持っていて、生命を脅かすような恐怖や苦痛を学習し、危険を予知・回避する行動に結びつける働きがあります。
慢性的に痛みが繰り返されると、痛みを学習した扁桃体が興奮しやすくなります。
また、痛みだけでなく抑うつや不安などの情動も扁桃体で処理されるので、これらの陰性の情動が痛みに大きく関わってきます。



さて、最新のIBSの診断基準を示します。
ROME IV基準によると、

週に1回以上の腹痛が3ヶ月以上続き、

 ① 排便により症状が改善すること
 ② 排便頻度が症状の変化に関連するこ
 ③ 便の形状 ( 外観 ) が症状の変化に関連すること

以上3つの排便異常のうち2つの以上の項目を満たし、症状は6ヶ月以上前から出現していること

となっています。
やや理解しにくい文章ですが、簡単に表現すると「腹痛を伴う慢性的な便通異常」となります。

腹痛症状の強い人になると、職場や学校にたどり着くまでに何度もトイレに駆け込んだり、腹痛のため不登校になってしまう場合もあります。
このように、IBSは生活の質にも大きく関わってくる疾患です。
今回米国で認可されたデバイス、確実性はないものの、痛みの軽減で救われる方が増えるようなので期待したいです。

♦♦♦♦♦

IBSは日本においては15%近くの方が罹っているとされていますが、日常生活に支障をきたしているのに病院を受診されないままの方が多いです。
ありふれた疾患なのに関心を持つ医師が少ないのも残念なことで、不必要な検査を繰り返したり、IBSでない患者をIBSと診断したりするケースも見受けます。


日本には、有り難いことにIBSにみられる腹痛や便通異常をコントロールしてくれる漢方薬が存在します。
正しく診断し、これらの漢方薬を中心に既存のIBS治療薬を上手に組み合わせると、とても楽に過ごせるようになります。
IBSに悩んでおられる方は、一度当院にご相談下さい。



なお、耳を刺激するデバイスは、最初にオピオイドの離脱症状を軽減させるために使われ始めたようです。
また、耳から迷走神経を電気刺激して、心房細動を治療しようというデバイスも開発中とか。( → こちら )
耳にはたくさんのツボがありますから、今後いろんな症状を緩和するデバイスが続々と出てくるかも知れませんね。

マイナンバーカード今月初めに、2021年からマイナンバーカードが健康保険証として利用可能になる、というニュースがありました。

マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせることについては2014年の「世界最先端 IT国家創造宣言」の中に盛り込まれており、翌年に厚生労働省から素案が発表されていました。
若干古いようですが、医療分野でのマイナンバー活用についての中間報告のPDFを見ることができます。( → こちら )

保険者間で特定検診のデータなどを連携できたり、予防接種履歴管理ができたりするなどのメリットもあるようですが、私が一番気にしているのは報道にあったこの部分です。

「2021年3月から健康保険証として使えるようにし、22年度中に全国のほぼすべての医療機関が対応するようシステムの整備を支援する」

カメラ付きの顔認証システムを組み込んだマイナンバーカード読み取り装置を病院の窓口に用意しなくてはならないようなのです。
報道では「支援する」とあるので、装置購入費用を補助するという意味だと思いますが、国が全額負担するようにしないと医療機関側での普及が進まないのではないかと思います。
日本医師会も「医療機関においては、読み取る設備を用意していなければ、患者がマイナンバーカードを持ってきたとしても保険資格を確認することはできず、その場合、当然、窓口ではこれまでのように保険証を提示する必要がある」と説明をしています。( → こちら )

東京オリンピックでは本人確認に顔認証システムが導入されるようですが、その装置の写真を見ることができます。 ( → こちら )
この位の大きさになると、小さな医療機関では受付や待合室に空間的ゆとりがなくて装置を置くスペースが確保できないとか、配線に苦慮するような問題も出てきそうです。

果たして、目標としている22年度中までに全ての医療機関が対応できるようになるのか、私は疑問に思います。

「高齢者診療におけるポリファーマシー」と題する論文が載っているのは、日本内科学会5月号。(日内会誌 108 : 971 ~ 977, 2019
具体的な事例を挙げ、その問題点を洗い出し、高齢者に複数処方されている内服薬の適正化の過程を示しています。


♦♦♦♦♦ 高齢者に処方されている薬の現実に論文ではどう対応したか ♦♦♦♦♦

論文に書かれているその症例の概略をみていきましょう。

入院症例 : 87歳、男性。
経過 : 施設入所中に発熱・低酸素血症あり、誤嚥性肺炎と診断され入院。
既往歴
: 高血圧症・脂質異常症・高尿酸血症・アルツハイマー型認知症・不眠症・骨粗鬆症・変形性膝関節症・前立腺肥大症。
脳梗塞や心筋梗塞の既往はなし、アルコール・喫煙習慣はなし。

そして、入院時の投薬内容です。
1日に12種類、計18錠も服用しています。

( 内科クリニックより )
 ① バルサルタン           80mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ② トリクロルメチアジド         1mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ③ ロスバスタチン         2.5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ④ 酸化マグネシウム       330mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑤ フェブキソスタット        10mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑥ エチゾラム           0.5mg     1回1錠 1日1回 就寝前
 ⑦ ドネペジル塩酸塩           5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑧ オメプラゾール          10mg     1回1錠 1日1回 朝食後

( 整形外科クリニックより ) 
 ⑨ ロキソプロフェンナトリウム    60mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑩ レバミピド          100mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑪ エルデカルシトール        0.5μg     1回1錠 1日1回 毎食後

( 泌尿器科クリニックより )
 ⑫ シロドシン             4mg      1回1錠 1日1回 朝食後

入院中に抗菌薬の点滴治療を行なったが、経口摂取が十分にできず、一時的に全ての内服薬を中止。
すると・・・、
・降圧薬
中止後も収縮期血圧は100~110mmHg前後を推移、そのまま中止
・利尿薬中止で頻尿も目立たなくなり、排尿障害治療薬も中止
・ふらつきの原因と考えられた抗不安薬
を中止しても不眠は起こらず
・適応疾患不明のPPI
も中止

その結果、以下の7種類、13錠に減らすことができたようです。

( 内科クリニックより )
 ③ ロスバスタチン         2.5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ④ 酸化マグネシウム       330mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑤ フェブキソスタット        10mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑦ ドネペジル塩酸塩           5mg     1回1錠 1日1回 朝食後

( 整形外科クリニックより ) 
 ⑨ ロキソプロフェンナトリウム    60mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑩ レバミピド          100mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑪ エルデカルシトール        0.5μg     1回1錠 1日1回 毎食後


♦♦♦♦♦ 私なら、こう考えてもっと減薬する ♦♦♦♦♦

薬を飲むこの症例では、入院をして血圧の推移や睡眠の状態を把握できたため、減薬に繋がりました。
しかし、私が思うにそれ以外にも減らせるものがあり、それは入院に関係なくできそうなものです。

具体的に考えてみましょう。


■ 高齢者へのスタチン投与について

まず、高コレステロール血症治療薬
について。
この方は、既往歴に脳梗塞や心筋梗塞がないので、この薬は一次予防(
※)に使っていると思われます。
スタチンと呼ばれるこの種類の薬は、75歳以上の方が服用しても
脳梗塞や心筋梗塞の予防効果がないとされています。
ただし、2型糖尿病のある75歳から84歳の高齢者での有用性の報告はあります。
今回の症例は、87歳で糖尿病もありませんから、もはや服用する意味はないと思われます。

また、
は下剤と併用すると血中濃度が約50%低下したという報告もありますので、この両者を併用する場合は、服用するタイミングをずらす工夫が必要となります。

( ※ 一次予防 : 疾患を引き起こさないための予防。対して疾患の再発を防ぐものを二次予防と呼ぶ。)


■ 高尿酸血症は治療すべきか

次に、高尿酸血症治療薬
について。
日本では、尿酸が高いと心臓や腎臓の疾患に繋がるという理由で、積極的に薬が使われる傾向があります。
しかし、欧米では高尿酸血症治療薬には心臓や腎臓の疾患の予防効果は認められないとして、痛風発作を起こした方の二次予防として使われるだけです。
いろいろ議論のあるところですが、この方については、尿酸を上げてしまう降圧薬
と利尿薬の2つの薬剤を中止できたわけですし、無理をして服用することはないでしょう。

従って、私だったら
も中止しちゃいます。


■ 酸化マグネシウム錠剤の工夫と注意点

次に、下剤
について。
これには500mgという剤形もありますので、500mgを1日2回・朝夕食後、とすれば1錠減らすことが可能です。
注意したいのは、PPI
を中止したのでの作用が増強し、軟便 ~ 下痢になってしまう可能性があること。
便の性状を見ながら投与量を加減する必要が出てきます。


■ 解熱鎮痛薬の功罪

整形外科から出ているロキソプロフェン
について。
87歳という高齢の方に対して、消化管や腎臓などに影響の大きい薬をフルドーズ使っても大丈夫なのか疑問を感じます。
私だったら怖くて処方できません。
鎮痛効果は劣るものの、副作用が少なく1日2回投与で済むセレコキシブへの変更はできないでしょうか。
アセトアミノフェンという手もありますが、錠数が多くなってしまうのは高齢者には負担だと考えます。
この症例の男性については、「何とかつたい歩きが可能」という記載がありますので、積極的に鎮痛薬を活用すべきなのかどうか検討が必要です。


■ 解熱鎮痛薬に併用される胃薬について

そして、胃薬
について。
レバミピドは、整形外科領域の医師が、鎮痛薬を出す際に併せて処方することの多い薬です。
でも、鎮痛薬で一番懸念される胃潰瘍などを含む胃粘膜障害の予防には全く歯が立ちません。
正直、無駄な処方です。
本当にこの副作用を予防したいのなら、中止した
PPIの方が望ましいのです。
適応疾患不明ということで切り捨てられた
の代わりに復活させたいところです。

日本の保険診療のおかしなところなのですが、鎮痛薬と併せてやテプレノンを処方することには何のお咎めもありません。
一方、副作用予防が期待できる
を併用すると、必ず処方理由を問われます。
本当はあってはならないことで、逆になぜ
を併用しないのか、を処方する意味は何なのかを問うようにして、処方の適正化を図っていくように促すのが本筋だと私は思うのですが。

なお、
には鎮痛薬による小腸粘膜障害を予防する効果があるとされています。
小腸粘膜障害を予防する効果は、イルソグラジンマレイン酸塩という胃薬にも認められています。
この薬ならば、1日1回の投与も可能で、
のように3回服用してもらう煩わしさはありません。
どうしても胃粘膜防御因子増強薬にこだわりたいのであれば、考慮してみたい薬です。



以上のことを踏まえて、私なりに更に減薬を進めると、次のようになります。
1日5種類、7錠まで減らすことになりました。
昼食後の服用がなくなるのもポイントです。
ただし、この高齢者の腎機能に異常を認めないという前提です。
腎機能の低下があれば、
の減量やの中止も考えないといけないからです。

( 内科クリニックより )
 ⑬ 酸化マグネシウム       500mg     1回1錠 1日2回 朝夕食後
 ⑦ ドネペジル塩酸塩           5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑧ オメプラゾール          10mg     1回1錠 1日1回 朝食後
     (又はイルソグラジンマレイン酸塩 4mg     1回1錠 1日1回 朝食後)

( 整形外科クリニックより ) 
 ⑭ セレコキシブ                           100mg     1回1錠 1日2回 朝夕食後
 ⑪ エルデカルシトール        0.5μg     1回1錠 1日1回 毎食後


♦♦♦♦♦ 減薬についての私の考え ♦♦♦♦♦

長々と書きましたが、私は以前から減薬には積極的です。
遮二無二、薬を減らすことだけを目的にしてはいけません。
患者さんの状態と薬の効果・副作用・相互作用をよく吟味し、投薬の必要性の評価を折りに触れて行ない、適切な処方を心がけたいものです。


「筋の通った処方箋はシンプルで美しい」

これが私のモットーです。

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