野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡にある野口内科です。
  医療に関することはもちろん、近隣の話題や音楽・本のことなどについて綴ってまいります。
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    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
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過去のお勧め記事 → ほらね、やっぱり

⑥ 医療関係の情報

来年、診療報酬改定が控えており、今回の改定で医師の技術に関する部分では報酬を引き上げるものの、薬に関する部分では引き下げようという方向性が見えています。

♦ 若い女性への処方が急増したヒルドイド

軟膏薬に関して、最も槍玉に上がっていると思われるのが、「ヒルドイド」などの名称で知られるヘパリン類似物質の外用剤の適正使用について。

一般報道もなされているのでご存知の方も多いと思いますが、某モデルが化粧の下地に使っていると紹介したことから、美容目的で医療機関で薬を求める人が男性に比べて女性で5倍以上も急増したとか。
特に25~29歳に限ると女性の増加数が男性の33.9倍というかなりいびつな状況になっています。
そして一度に50本以上処方する例もあったという事態に、保険適用を外すように求める意見もあったとか。

好ましくない情報を流したモデルさんには大いに反省してもらいたいですし、真に必要とする患者さんの使用の妨げにならないように議論がなされることを望みたいです。


♦ なぜか多用される降圧薬、ARB

もう一つ議論に上がっているのが、高血圧治療におけるアンギオテンシンII受容体拮抗薬 ( 以下 ARB ) の使用実態です。
この系統の薬は、今年に入るまでジェネリック医薬品が解禁になっているものが少なかった上に、元々の薬価が他の系統の降圧薬に比べて高いのです。
ARBとカルシウム拮抗薬を投与されている患者さんを比較しても両者間で入院の発生率に差がないというデータを基にして、ARBをカルシウム拮抗薬に置き換えれば800億円程の医療費が削減できるという主張が出てきています。
これは薬理作用を無視したいささか乱暴な意見で、性質の違いを考慮して個々に応じた適切な降圧薬を選択すべきだとは思います。

しかし、この議論の中で提示されたデータの中にかなりがっかりしたものがあります。
それはACE阻害薬の使用割合が極端に低いことなんです。
単独処方での割合をみると、Ca拮抗薬・ARB・ACE阻害薬の順に、57.0% ( 33.5% )・37.9% ( 63.1% )・1.7% (1.1%) だったのです。( 数値は構成割合でカッコ内の数値は処方額の割合 ) 

高血圧の治療をするのは、血圧の目先の数値を下げるのが目的ではなく、高血圧が元で起こる心臓や脳血管の疾患を予防することにあります。
ARBとACE阻害薬は同じレニン・アンギオテンシン系を抑制するという共通点があるものの、心筋梗塞後の予後や全死亡、心血管死など様々な点においてACE阻害薬が優れていることがわかっています。
そのため、ARBはACE阻害薬に忍容性のない患者向けの代替品というのが欧米での位置づけ。
なのに、日本ではARBの処方が圧倒的なのです。
循環器の医師たちもその点は十分に理解しているのですが、ACE阻害薬の副作用である咳が生じるのを嫌ったり、院内に採用されていないからといった消極的な理由でARBの方を選択しているのが現状です。

当院では、エビデンスをしっかり持っているACE阻害薬を積極的に処方しています。
ARBをカルシウム拮抗薬ではなくACE阻害薬に置き換える、という議論なら私はおおいに歓迎します。
今回の議論をきっかけに、日本の血圧治療に携わる医師の意識が変わってくれることを望みたいですね。

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きも「ピロリ菌除菌後、プロトンポンプ阻害薬 ( 以下 PPI ) を長期に服用すると胃がんのリスクが高まる」( 本論文はこちら ) 。
先日、このような論文が Gut という雑誌に掲載されました。
PPIを長く連用するほど胃がんのリスクが高まり、ハザード比が1年以上で5.04、3年以上で8.34にもなるというもの。
PPIと同様に胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカーという種類の薬ではハザード比が0.72で、このような傾向はなかったようです。

我々、消化器医には衝撃的な内容です。
ピロリ菌の除菌は、胃・十二指腸潰瘍の再発や胃がんの発症を予防するために行うものです。
でも、除菌を行うことで胃が本来の働きを取り戻して酸分泌が活発になるため、胃もたれや逆流性食道炎を起こすことがあるので、どうしても酸分泌を抑える薬が必要になるケースがあるのです。

以前から、酸分泌抑制薬の長期連用の安全性には疑問が投げかけられていました。
胃を全摘しても生きていられるし問題はないのでは、とは消化器疾患の分野で高名な先生の言葉ですが、実際、臨床の場で処方していて困る場面に出くわしたことはほとんどありません。
しかし、ビタミンB12や鉄の吸収阻害、胃酸による殺菌作用が低下することでの肺炎や腸管感染症の増加、骨折や認知症の増加などの可能性が指摘されています。
丁寧にみていくと、ビタミンや鉄の吸収阻害、感染症の増加のエビデンスはありませんし、骨折については増加と変化なしの相反する報告があります。
認知症に関しても、診療記録からPPIの服用の有無で認知症の発生率の差をみた研究で、因果関係をはっきりさせたものではありません。

今回の報告はハザード比があまりに大きいのには驚いたのですが、作用機序はまだ未解明ですし、あくまで『ピロリ菌除菌後』という状況下での話。
今後の研究の進展を見守りたいと思います。
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骨折先日、大腿骨近位部骨折の地域差の調査結果がニュースになっていました。
それによると西高東低の傾向がくっきり。( 右の表はクリックで拡大 )
ビタミンKを含む納豆の消費量など、食生活の関連を推測していました。

骨、というとカルシウムやビタミンDを思い浮かべる人も多いと思いますが、ビタミンKも大事なんです。( 詳しいメカニズムは省略します )
今回の報告での地域差と納豆の消費量を色分けした地図を並べてみましたが、確かに逆の相関がありそうですね。( 右が都道府県別の納豆の消費額。どちらもクリックで拡大 ) 
地図納豆













私は、男性5位・女性1位の兵庫県と、男性40位・女性39位と西日本で男女とも最も低い鹿児島県での診療経験をしています。
言われてみると、確かに大腿骨近位部の骨折は鹿児島に帰ってきてからあまり診なくなったように思います。
消化器を中心に診療している私が最も感じている地域差は、S状結腸の憩室症。
兵庫県で仕事をしていた時の方が明らかに多かったです。
大腸憩室症も食事との関連が言われていますが、食事や疾患の地域差を調べるとその病気の予防法も見えてくるでしょうね。
でも、周辺地域に比べてどうして鹿児島県で大腿骨近位部骨折が少ないのか、謎です。

なお、骨粗鬆症を予防しようと、カルシウムのサプリメントを摂取するのはご法度です。
カルシウムをサプリで補っても骨折予防効果はないばかりか、心筋梗塞や脳卒中、認知症リスクが増加することが次々に報告されています。
サプリではなく、カルシウムやビタミンD・Kを多く含む食材を摂りましょう。
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選択健康食品を手にする方は多いと思いますが、先日、消費者庁が健康食品に関するパンフレットを公開しました。
健康食品 Q&A」と「健康食品 5つの問題」です。

医薬品と違って、食品と名付けられているせいか健康食品には抵抗感を持たずに摂取している人が多いようです。
しかし、有効成分に科学的根拠がないことがほとんどですし、粗悪品があったり、表示されている通りに成分が含まれているか疑わしかったり、推奨されている摂取量に根拠がなかったり。
正直、とんでもない物ばかりです。
そして健康被害が案外多いのです。
医薬品は市場に出る前に、徹底的に調べられ、用量が定まり、副作用の種類や頻度も事前に情報としてわかっています。
薬が原因と思われる副作用がみられた場合には直ちに中止することができます。
しかし、健康を損ねている原因が健康食品にあるとたどり着くのには時間と労力がかかってしまいます。

消費者庁が発表したパンフレットを参考に、必ず自分で成分の有効性を調べ、利用する場合はパンフレットにある健康手帳を参考に記録をつけるように心がけましょう。
それにしても、なぜ厚労省じゃなくて消費者庁の仕事なんでしょうね。
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音今日、ツイッター上で話題になっていたのが、咳止めの副作用。
服用すると音が半音低く聞こえるというものです。( 参考 → 咳止め薬で「音が半音下がって聞こえる」副作用? )

これはベンプロペリン ( 商品名 フラベリック ) という咳止めによって起きる副作用ですが、絶対音感がないとなかなか気づきにくいものですよね。
この薬に限らず、てんかんや三叉神経痛などに使うカルバマゼピン ( 商品名 テグレトール ) や感冒薬のPL顆粒などに含まれる塩酸プロメタジンという成分によっても引き起こされることが報告されています。

私は音楽やってる人の咳止めとして半夏厚朴湯をお勧めすることがあります。
聴覚への影響はありませんし、何といっても声が出しやすくなるというメリットがありますので。


咳止めといえば、この6月にコデインという成分について、厚生労働省が12歳未満への使用を段階的に制限することを決めました。
2018年度末までは注意喚起を促し、2019年度から全面的に禁忌とするようです。
重篤な呼吸抑制を起こし死亡する例が相次いだ欧米では2013年頃より規制が少しずつ始まっていましたが、今年の4月に米国で12歳未満への使用を禁忌としたことを受けての日本での措置です。
米国では肥満や重度の睡眠時無呼吸症候群を有する12~18 歳への使用についても警告が付いています。

専門的になりますが、CYP2D6 の ultrarapid metabolizer ( UM ) においてはコデインの代謝産物の血中濃度が急速に上昇し、中毒を起こすのです。
このCYP2D6のUMの方は日本では0.8%程度と少ないのですが、白人で10%、エチオピア人に至っては29%も存在すると言われています。
なので日本では欧米ほどの発症頻度ではないと思いますが、0.8%と言えども無視できる数字ではありません。

長期に服用しても副作用のそれほど起きない高血圧やコレステロールの薬を服用するのには抵抗感を示すのに、副作用のやたらと多い風邪薬には安易に手を出す傾向の強い日本人。
風邪薬に含まれる成分って本当に恐いものが多いので、気をつけて下さいね。

なお、CYP2D6については、以前当ブログで解説していますので参考にして下さい。( → CYP2D6からPL顆粒を考える その2 )
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のむ昨日、『「豊胸サプリ」で健康被害200例以上』というニュースがありました。

問題となっているプエラリア・ミリフィカは、タイのマメ科の植物の塊根で、強力なエストロゲン類似活性を有しています。
そのため、乳房痛・膣出血・イライラ・頭痛・嘔吐など有害事象が報告されています。
私は今年の3月にその情報をキャッチし、すぐにツイッターに流しました。
ツイッターは速報性が高いので、興味ある方は私のアカウントをフォローして下さいね ( @wash_omu ) 。

驚くべきは「業者の半数近くがサプリメントに含まれる成分の正確な量を量らずに販売」していることです。
極論すれば、何が入っているかを全く把握せずに売っているということ。
今年の初めには盛んにテレビCMを打っていた日本サプリメントの「ペプチドエース」や「豆鼓エキス」に有効成分がほとんど入っておらず、消費者庁が措置命令を出しています。
サプリを利用している人は増えていますが、業界の実態は実にいい加減なものなのです。


ついでに、先日ある人との間で話題にのぼったプラセンタについても触れておきます。
更年期障害・冷え性・貧血・美容によいとして、医療機関でも勧めている所があるようです。
しかし、科学的にそのような効果は証明されていません。
そもそも、どの哺乳類の胎盤を使っているやら正体がわからないのに、よく口にするもんだと私は思っています。
魚類にはプラセンタ ( 胎盤 ) がないのに、鮭プラセンタなるものも売られています。
2ヶ月ほど前の英語の記事になりますが、感染症のリスクがあるという報告もあります。( → こちら )
これもツイッターにはすぐに載せました。

安倍政権の既製緩和一環で「セルフメディケーション」の名の下に、健康食品などの分野のビジネスが勢いを増しています。
しかし、デタラメがまかり通っています。
そして現実に健康を害する人が多くいます。( → 健康食品で薬物性肝障害、国民生活センターが注意呼びかけ )
自分の健康を守ろうと思ったら、奸策を弄して甘い宣伝文句を並べた健康食品やサプリを相手にしないことです。
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名称未設定-1先日、観光客の無理な要求に疲弊している竹富島の診療所の記事を読んで、嘆かわしく思いました。( → 軽症なのに「救急ヘリを」竹富診療所、観光客対応に疲弊 )

旅行の際には、少々の体の不調に対応できるだけの薬を持って行くべきだと思いますが、私が特にお勧めする漢方薬を紹介しておきます。

① 五苓散
酔い止め・航空中耳炎・嘔吐・下痢・頭痛・二日酔い など応用範囲の広い薬です。
航空中耳炎とは、飛行機に搭乗中の圧変動に伴う耳痛や詰まった感じなどの障害のことです。

② 葛根湯
風邪の初期症状・肩こりなどに。
重い荷物などを持っての移動も多くなると思いますが、葛根湯が効くのは風邪だけではないのです。

③ 芍薬甘草湯
腹痛・筋肉痛などに。
横紋筋、平滑筋のどちらの痛みにも効いてくれます。

この3つの漢方薬だけでかなりカバーできます。
いずれも一般の薬局でも入手可能かと思います。
お盆休みの旅のお供に是非。

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ピロ本年度から鹿児島県で始まった高校1年生を対象としたピロリ検診で、陽性率は3.7%だったことが先日の地元紙に載っていましたね。
陽性であった生徒のご家庭には既に通知が届いていると思います。
ピロリ菌がいると、将来胃・十二指腸潰瘍や胃がんになる可能性があるため、放置せずに若いうちに除菌するのが望ましいでしょう。

当院は、二次検査以降の受託医療機関として登録しています。
既に問合せもいただいておりますが、除菌を希望される方には、検査・治療の手順や費用についての説明を行ない、資料をお渡ししています。
電話で連絡の上、一度ご来院下さい。
その際は、ご家族の方のみでかまいません。
基本的に自費となります。
胃の症状がある場合、保険診療になりますが、除菌にあたっては内視鏡検査が必要です。
自費と内視鏡検査の加わる3割負担の保険診療を比較すると、後者の方がわずかに高くなります。

当院での検査・治療の流れについては、PDFファイルにまとめましたので、参考にして下さい。

( スマホでは表示されない場合があります )

胃薬先日、胃薬のテプレノンにうつ症状の改善効果が認められたという報告がありました。( → こちら )
テプレノンには、ヒートショックプロテイン ( HSP ) という物質を誘導することが20年以上前から知られており、私も研究室にいる頃に自分の実験系で使ったことがあります。
HSPは熱や細菌感染などでストレスに晒された細胞に発現し、細胞を保護する役割があります。
今回の報告によると、うつ病のマウスの海馬でHSPが減ることに着目してテプレノンを投与したら、うつ症状が改善したそうです。
HSPにはアルツハイマー型認知症への効果も期待されていて、現在治験が行なわれていると思います。( まだ継続しているかどうかは把握していません )

( なお、家の中の急激な温度差で血圧の大きな変動をきたすことを「ヒートショック」と言いますが、あれは医学用語ではないのでご注意を。恐らく建築関係の業界から出てきた言葉。HSPと混同しかねないので本当は使ってほしくないのですが。)


特定の病気に対して使われている既存の薬に、全く別の病気に対しての有効性が見出されるケースがあります。
古くはインフルエンザ薬として開発されたアマンタジンがパーキンソン病にも有効であると分かり、日本ではもっぱらパーキンソン病治療薬として使われてきたのは有名な話。
胃薬関係では、レバミピドがドライアイの治療薬として既に点眼薬が発売されています。
ラフチジンには、ある種の痛みを緩和させる可能性があり、抗癌剤の副作用による舌痛症に対しての治験が現在進行中です。

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じゃある方に麦門冬湯 ( ばくもんどうとう ) を処方したら、「私は小麦アレルギーなのだが大丈夫か」と聞かれました。
「麦」という字が含まれるので気になったのでしょうけど、初めて受けた質問でした。
麦門冬は、植栽などにあちこちで活用されているジャノヒゲ ( リュウノヒゲ )  の根っこ。
主として咳を鎮める作用があります。
知っていたので即座に問題ないと回答できまましたけど、漢方に限らず処方薬の知識はしっかり持っていたいなと改めて感じました。

麦門冬湯は痰が切れにくい咳を目安に処方することが多いのですが、実は唾液や涙の分泌促進作用もあります。
ドライマウスやドライアイに悩む方にも概ね好評です。

なお、甘麦大棗湯 ( かんばくたいそうとう ) には小麦がたっぷり含まれるので、アレルギーのある方には処方できません。
また、半夏白朮天麻湯 ( はんげびゃくじゅつてんまとう ) には麦芽が含まれていますので、場合によっては注意が必要かと思われます。

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マダニに咬まれることで生じる重症熱性血小板減少症 ( SFTS ) の報告が、鹿児島県では2013年から毎年続いており、今年も既に 1例の発症報告があります。

だにSFTS については2015年に一度記事にしています ( → マムシだけでなくマダニにも注意 ) が、最近は造園関係の方などプロの方々は夏場でも草むらに入る時に肌を露出しないように細心の注意を払っているようです。

さて、厚生労働省の「ダニ媒介感染症」というホームページにあるマダニ感染症を啓発するリーフレットがなかなか優秀です。
厚労省のもの ( → こちら ) は1枚に簡潔にまとめられていますし、国立感染症研究所のもの ( → こちら ) はイラストがお役所っぽくない出来栄え
院内掲示に活用してみようと思います。

マダニはすぐに吸血行動に移ることはないようなので、ちょっとでも疑わしい場所に踏み込んだ後は、衣服をパンパンと叩く習慣を付けておくことが大事です。
また、万が一、咬まれたときは無理に引っ張らないこと。
痛いですし,入り込んだ口器だけが皮膚に残ってしまうことが多いようです。
医療機関を受診するのが望ましいですが、裏技を紹介しておきます。
咬んでいるマダニの周囲を少し濡らしてマダニを覆うように塩を盛って5分間待つのです。
そうすると痛みもなくマダニを引き抜くことができるそうですよ。

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 続いているアニサキスの話題  


ここ数日、アニサキスに関するニュースが続いています。
5月8日にアニサキスによる食中毒の報告がここ10年程で20倍以上に激増していること ( → こちら ) が報道されました。
これを受けて、5月10日には芸能人もアニサキス症に罹っていたというもの ( → こちら ) が続きました。
朝のワイドショーでもこのことを報道していましたね。
そしてCNNもアニサキスのことを取り上げています ( → こちら )。


 アニサキスとは 


アニサキスアニサキスはサバやアジ、イカなどの魚介類に寄生している長さが1~3cm台の白っぽく細長い虫で、我々が刺身などで生食することが発症の原因になります。
最も多くアニサキスを抱えているのは最終宿主のクジラですが、さすがに刺身を食べることはないでしょう。
学生時代の医動物学の実習で、買ってきたサバのアニサキスをチェックしたことがありますけど、結構いるんです。
右のイラストは決して大袈裟なものではありません。
あるレストランで出されたサーモンのマリネに1匹見つけたことがあります。
だいぶ弱ってましたけど。

鹿児島では首折れサバの旬の時期にアニサキス症が多い印象です。
私にとって最も印象的だったのは、魚市場から直接買ってきたサバを自分で捌いて生じたアニサキス症で、元気なアニサキスが7匹もいた症例です。
中には体を1cmくらい胃の壁に潜り込ませて尾をグルグル振り回しているものもいました。

でも、ニュースにあるようにアニサキス症が激増している印象は全くありません。
2013年からアニサキス症も保健所への届出対象となったことが大きな要因だと思います。


 アニサキス症の症状は ?


生きたアニサキスが胃壁に食らいつくことで激しい腹痛が起こるものを胃アニサキス症と言います。
飲み込んでも食いつかれなかったり、既に死んでいるものであったりすれば症状が出ないと考えられます。

ただし、過去にアニサキスが消化管に入ってきた既往がある場合、アレルギー症状が出ることがあります。
サバにあたる、という原因の一つがこのアニサキスアレルギーです。
なお、サバにはヒスチジンという成分が多く、これが体内でヒスタミンに変化することで生じるヒスタミン中毒が多いです。

また、胃を通り越して小腸や大腸の壁に食らいつくことがありますが、この場合は診断や治療に難渋するケースが多いです。
私の記憶に間違いがなければ、森繁久彌は腹痛で手術し、その結果小腸アニサキス症と診断されたはずです。


 アニサキス症の治療は ?  


私は内視鏡医なので、アニサキス症を疑った場合は内視鏡を行い、虫体を確認して除去します。
手技としてはそれほど難しいものではありません。
除去した途端に症状は全く消えてしまいます。
これが手っ取り早い治療法ですが、いつでも内視鏡ができるとは限りません。

最近注目されているのは、ステロイドと抗炎症薬による治療。
アニサキス症による腹痛は虫体からの分泌物による局所のアレルギーだと考え、薬の投与で症状緩和がみられたという報告があり、実績を上げています。
病歴からアニサキス症が疑われ、直ちに内視鏡検査ができない場合にはこの方法もありだと思います。

また、漢方薬の安中散の液をアニサキスに振りかけると3時間ほどで死んだり動けなくなったりするという報告があります。
安中散の成分の一つ、茴香 ( ウイキョウ ) にこの作用があることがわかっていますが、キャベジンコーワなど市販の胃薬にも茴香が含まれるものがあります。
でも、市販薬ではアニサキスに対する効果は調べられていないと思いますのであしからず。


 アニサキスの対策やアニサキスの絡んだ話題  


アニサキス対策として刺身などを冷凍するのはとても有効な手段です。
また、2014年に当時の高校生が、サバをワサビやショウガ、料理酒、ウイスキー、醤油に漬け込んだらほぼ100%防虫効果があったという報告を日本寄生虫学会で行い話題を呼びました。
刺身を食べる時のワサビやショウガって案外大事なものなのですね。

生の魚介類を提供する現場では、毛抜きなどを使ってアニサキスを除去するのは日常的だと思います。
肉眼ではちょっとわかりづらいアニサキスを簡単に検出できる装置が開発されていますので、食中毒予防に一役買うのではないかと思います。( → こちら )。

2015年には線虫ががん患者の尿の臭いに集まる習性が発見され、簡便ながんの早期発見法として期待されていましたが、2年後をめどに装置が開発される見込みです。( → こちら )
アニサキスが胃がん部分に食らいついていたのを観察したのがきっかけで線虫の嗅覚に着目し、この検査法の研究につながったとか。
先に紹介した7匹のアニサキス症例でも、ちょっと出血していた場所に何匹かが集中していたように記憶しています。
でもこういう研究の発想に繋げることができないのは、凡人の証しですね。 

本年度から鹿児島県で高校1年生を対象にピロリ検診開始するという話は先月もお伝えしました。
その事業内容についての説明が先週ありました。

大雑把な流れですが、
① 通常行われる学校での健康診断の尿を活用して、県の費用負担でピロリ抗体を調べる。
② この検査で陽性または判定不能であった場合、希望者は自己負担で二次検査を受ける。
③ 二次検査でも陽性であった場合、希望者は自己負担で治療を受ける。

当院も二次検査以降について受託医療機関として登録予定です。
詳細はまた改めて書こうと思います。


除菌説明を聞いて、ちょっと引っかかることがありました。
ピロリ菌除菌を行う理由は、将来の胃・十二指腸潰瘍や胃がんの発生を極力避けることができる可能性が大きいからです。

二次検査や除菌療法を受けたかどうかや、その後の胃の疾患の発生具合などを追跡調査して、この検診は意義があるものなのかを検証する必要があると思います。

しかし、鹿児島県としては一次検査で陽性または判定不能であった生徒に通知するだけで、それ以降は一切関与しないという立場なのです。
そのあたりについて様々な質問が出たのですが、担当者の歯切れの悪いこと。
これはどうやら予算の付き方にありそうだな、と推測しました。
担当者の口から出た「子育て支援、がん教育の一環」というキーワードをヒントにしてみました。

恐らく、国から子育て支援関係の補助金が下りることが決まり、その使途について知恵を絞り、各地で普及しつつある中高生のピロリ検診に活用しようとなったのでしょう。
子育て支援の主旨を逸脱しないように、がん教育の一環という理由付けをして予算が使えるようになったものの、その後のデータ収集までは予算も理由付けもできなかった、ということではないでしょうか。

でも、一次検査での陽性率くらいはデータとして公表すべきでしょう。
高校一年生でのピロリ菌の陽性率を知ることは、がん教育の一環としても大事だと思いますので。

今月、ピロリ菌についての大きなニュースが続きましたのでまとめてみました。

◆ 本年度から鹿児島県で高校1年生を対象にピロリ菌検診開始

本年度から、鹿児島県の高校1年生を対象としたピロリ菌検査事業が始まります。
医療関係者に対しての説明が近々行われる予定ですので、詳細がわかり次第お知らせします。

日本人の胃がんの9割はピロリ菌感染が原因とされており、早期に除菌を行うと胃がん発症が防げると考えられています。
中高生を対象にしたピロリ菌検診は、市町村単位では2013年に岡山県の真庭市、都道府県単位では2016年に佐賀県が最初に始め、現在では複数の自治体が取り組んでいます。( モデル校を指定しての事業は2015年の京都府が最初です。 )
今回、地元でも始まるわけですが、微力ながらこの検診には積極的に関わって行こうと思っています。

◆ ピロリ菌除菌を妨げる意外な因子

ピロピロリ菌除菌では酸分泌抑制薬と2種類の抗菌薬を組み合わせて服用してもらいますが、全ての人で除菌が成功するわけではありません。
胃酸の分泌抑制が不十分であったり、ピロリ菌自体が抗菌薬に耐性を持っていたりすることがうまくいかない原因と考えられてきました。

しかしつい最近、別の因子が大きく関与していると報告されました。
それは何と食事中のコレステロールやω3多価不飽和脂肪酸。
除菌した人の食事摂取状況を背景因子として解析したらこの2つが浮き上がってきたのです。
これらの摂取量が多いほどピロリ菌の除菌率が低下するという関連性がみられたようですから、今後は除菌の際の食事指導も大事になってくるでしょうね。
日本感染症学会での九州大学からの発表演題なので、論文にまとめていただくことを期待します。

くのーさっきからパソコンに向かって唸っています。
ブログに書くネタがないのです。
3日に1つは書くというノルマを課して10年以上続けてきたので、今日はどうしても書かなきゃ、と妙な強迫観念に駆られています。

毎週毎週、テレビ番組で情報を提供し続けることはとても大変なことだと思います。が‥
2月22日のNHKの番組「ガッテン !」で、ある種の睡眠薬で血糖が改善するというような放送がなされ、物議を醸しました。
翌週の番組冒頭に謝罪を入れましたが、次いで取り上げたコラーゲンについても実験内容に批判が上がっています。
来週の放送でも、虫垂炎の手術をすると大腸がんのリスクが高まる、という内容が含まれているようです。
私もこの情報には注目しましたけど、番組でどのような取り上げ方になるのか・・・。

ネタのない時に、無理して質の低い内容を書いてもしょうがない、無理して書く必要はない。
これからはそうしていこうかな、と思わせる騒動でした。
( 何とか書けた‥ )
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いたい先日、東京マラソンを前にして発信された「安易な服用は危険 レース時の痛み止め」という記事を見つけました。
ロキソニンなどの鎮痛薬 ( 非ステロイド系抗炎症薬 : NSAIDs ) と芍薬甘草湯は、マラソンランナーの間では半ば必需品とみなされている医薬品のようですね。

◆ 腎臓とNSAIDs

NSAIDs はプロスタグランジンという物質の合成を阻害します。
元々、子宮を収縮させる物質として前立腺 ( prostate gland ) から同定されたのでプロスタグランジン ( prostaglandin ) と呼ばれますが、最も豊富に存在する臓器は腎臓。
腎臓においては血流量を維持して水や電解質を調節するのに欠かせない成分なのです。
マラソンのように長い間負荷のかかる運動では、この水や電解質バランスの調節はとても重要な意味を持っています。
また、十分に鍛練していない人で上昇しやすいとされる尿酸や、赤血球・筋組織のダメージも腎臓に負担をかける要因となります。

( 追記 ) 最近の研究で、マラソンレース後に82%の人が一時的に急性腎障害を起こしているという報告がありました。( → こちら )
ただでさえ腎臓に負担がかかっているのに、NSAIDsを服用してプロスタグランジンの合成を抑え、腎臓が本来の働きを発揮できないまま走りつづければどうなるか、語るまでもないでしょう。

◆ 芍薬甘草湯の使い方

芍薬甘草湯は、古くから競輪選手など自転車の世界ではこむら返りの予防として知られた存在でしたが、ランナーにも知られるものになってきたようですね。
事前に服用することで競技中の筋肉の攣りを予防するだけでなく、翌日以降の筋肉の痛み ( 遅発性筋痛 ) も軽減してくれます。
こむら返りが起こってから服用する際には、倍量飲むと一層効果が高まります。
注意したいのは、市販の芍薬甘草湯は医療用に比べて有効成分が半分のものが多いこと。
その点はしっかり確認しておいて下さい。
理論上はカリウム低下を招く恐れがありますので、スポーツドリンクを併せて飲むのがいいのかも知れません。
また、筋肉を弛緩させてパフォーマンスを低下させてしまうのではないかという懸念はありますが、この点はよくわかりません。( ならば、成績が生活に直結する競輪選手は使わないと思うのですが )

◆ 遅発性筋痛に効きそうなある薬

遅発性筋痛に関しては、「ある胃薬」が効く可能性があります。
適応外の使い方になるので薬の名前は伏せておきますが、この論文にヒントが隠されています。( → こちら )
この薬は腎機能への影響がないので、競技中に生じる痛みにも効くならば理想的なのですが、それは試してみないとわかりませんのであしからず。


東京マラソンの翌週、3月5日は鹿児島マラソンがあります。
出場される皆さん、がんばって下さいね。
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すっきり新しい薬に対しては慎重なスタンスをとることが多いのですが、久しぶりに早く使ってみたいなと思う新薬が来月発売されます。
一般名がリナクロチドという便通の改善が期待できるものです。

一般の方が手にしやすい便秘薬としてセンナ系のものがありますが、これはあくまで頓用に留めるべき。
私はまず酸化マグネシウムを使い、これに漢方薬や坐薬、液体のピコスルファートを加えていく方法をとっています。
ルビプロストンという薬も時々処方しますが、便秘薬としては薬価が高すぎるのが難点です。

ほとんど問題ないとはいえ、これらの薬には副作用が付きまといますが、リナクロチドには副作用がほとんどないようです。
14個のアミノ酸ががっちりと組み合った構造をしていて、体内に吸収されない上、最終分解産物も小ペプチドやアミノ酸なのでかなり安心です。

最初は過敏性腸症候群 ( IBS-C ) という疾患にのみ使えるのですが、半年程すると一般的な便秘にも使えるようになると聞いています。
ここにメーカーの戦略が見て取れる気がします。
現在、IBS-C に適応のある薬剤が全くないので、画期的な新薬というイメージを持たせることができます。
私自身、IBS-C に対しては漢方薬と酸化マグネシウムを組み合わせて治療することが多いのですが、単剤で治療出来ればそれに越したことはありません。
また、一般的な便秘に対しての適応を最初から取ると薬価を低く抑えられてしまう懸念があるはずです。
実際に決まった薬価は92.4円で、これを1日に2錠使うので1日薬価としては184.8円になります。
1日300円を超えるルビプロストンに比べると高くはないけど、安くもないといった感じですね。
でも、裏技が使えそうな気もします。
この薬は食後に服用すると下痢の副作用が多くみられるため、食前に服用することになっています。
ということは、1日1錠だけを食後に飲むのもありなんじゃないかと思うわけですが。

当ブログでは、これまで便秘薬などについていくつか書いてきましたのでご参考までに。

 ■ ニガリダイエットの正体
 ■ 男女の違い その2
 ■ 過敏性腸症候群の治療薬
 ■ 酸化マグネシウム錠剤の比較
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さむ今月半ばの地元の新聞紙に、鹿児島県内で2016年に起きた入浴突然死が180人いたと報道されました。
1月から3月にかけてと12月に多く、65歳以上が85.6%、独居の方が自宅で亡くなるケースが多いことなどがデータから見て取れます。
ちなみに、2016年の鹿児島県での交通事故死亡者数は65人ですから、かなり多いことがわかると思います。

気温の大きな変化で血圧が急変することを「ヒートショック」と呼ぶようになってきました。
この和製英語、私には違和感があります。
詳しいことは省略しますが、heat shock protein などの医学用語を連想してしまうのです。
ま、何はともあれ、寒い日が続いていますので、入浴時のこのような悲劇を招かないためのポイントをまとめてみましたのでご参考に。

・脱衣所にストーブなどを用意し暖めておく
・浴槽のお湯張りはシャワーを使う (浴室が少し暖まります)
・浴槽の蓋を開けておき、浴室の床や壁もシャワーで暖める
・食事前、日没前に入浴 (食後や飲酒後・睡眠薬服用後は避ける)
・お湯の設定温度は41℃以下に
・浴槽への出入りはゆっくりと
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日本漢字能力検定協会による年末恒例の「今年の漢字」。
今回は「」でしたね。
一方、ある医療系のサイトで「医師が選ぶ今年の漢字」という募集があって、そこで選ばれたのは「」でした。( → こちら )

へろろ今年ほど薬剤の価格に注目が集まった年はないと思います。
米国ではダラプリムという薬の価格が一気に55倍も値上げされ、大統領選でも議論されました。
日本ではニボルマブ ( オプジーボ ) などの高薬価の薬剤がクローズアップされ、原則 2年に一度だった薬価改定を毎年にする方針を政府が推し進めようとしています。

我々が処方する薬の値段は、新薬として登場以降は基本的にどんどん切り下げられていきます。
卸が医療機関に納入する金額を定期的に調査して2年ごとに改定していくのですが、そこで奇妙な現象が起きてきます。
一つの薬を複数のメーカーが異なる名称で販売する日本独特の商習慣である「一物二名称」。
例えば糖尿病治療薬であるシタグリプチンには「ジャヌビア」「グラクティブ」がありますが、現在前者の50mgの薬価が136.50円に対して後者は138.20円です。
前者の実勢納入価が安かったということですね。
また、降圧薬であるアジルサルタン ( アジルバ ) 20mgの薬価は139.8円。
このアジルサルタンにアムロジピンという成分を加えた「ザクラス配合錠」という合剤があります。
アムロジピンの用量が2.5mgと5mgの2種類の品揃えなのですが、その合剤の薬価はいずれも131.6円なのです。
加えられているアムロジピンの量が異なるのに薬価は同じで、しかも単剤のアジルサルタンより安くなっているというややこしい状況を呈しています。

古くからある薬でも、ウルソデオキシコール酸やスクラルファートのように評価が衰えないものもあります。
機械的に薬価を下げていくばかりではなく、医療の現場で高く評価されている薬剤については相応の値付けをする仕組みがあってしかるべきだと思うのですが。
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ワクチンテレビの影響は大きいものです。
インフルエンザの流行が早いとの報道に、ワクチン接種を希望される方が急に増えています。
また、午前中の接種が効果的との情報も流れたようで、実際に午前中に来られる方が例年になく多いですね。

午前中の予防接種に関する研究報告が、今年相次ぎました。
まず、インフルエンザワクチンを65歳以上の高齢者を午前と午後に注射するグループに分けて打ったところ、午前のグループで抗体の上昇が大きかった、というイギリスからの報告。( → こちら )
そして、大阪大学からマウスを使った研究報告。
マウスは夜行性なので、交感神経の活動の高まる夜間にワクチンを打った方が免疫応答が強かったというものです。( → こちら )

このように複数の報告があると、午前中に予防接種を受けたくなりますよね。
でも注意点もありそうです。
例えば、前者では65歳未満でも同様の結果が得られるのかどうか‥。
後者では、生活スタイルの違うマウスでの結果から本当にヒトでは日中が効果的と言えるのか、ワクチンの種類は問わないのか‥。
私は普段から論文の報告を額面通りに受け止めないようにしていますので、そういう疑問をはさみたくなります。
そう言いながら、午前中にワクチン接種を受けた私でした。

インフルエンザワクチンの接種はお早めに。

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