野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

         ▶▶▶ アクセスMAP
         ▶▶▶ バス路線図

 薬・注射の話

ISSこの前、勉強会で某MRさんにブログのネタにどうでしょうかと振られたので、折角ですから記事にしてみますね。

宇宙飛行士若田光一さんが国際宇宙ステーションに長期滞在中、色々な実験を行なっていたことはご存知だと思いますが、そのうちの一つに無重力空間での骨密度の低下を防ぐための研究を行なっていたようです。( → こちら )
通常 1ヶ月で 1~1.5%減少する骨密度が、2時間の筋力運動とビスフォスフォネート製剤を服用することでむしろ増えていたそうです。
運動と薬剤のどっちが良かったのか、あるいは併用が大事なのか若田さんの実験だけでは判断は難しいですね。

ところでビスフォスフォネート製剤は服用上の注意事項があります。
「服用後少なくとも30分は横にならず、飲食 (水を除く) 並びに他の薬剤の経口摂取も避けること」
これは食道に薬が引っかかって粘膜傷害を起こすことがあるのでその予防のための注意なんですが、無重力では意味をなしません。
実際のところこの注意事項、どこまで必要なんでしょうか ?

鬼の目にも涙まもなく、胃薬の目薬が出ます。

普通に読んだらよく分からない文章ですが、元々胃炎・潰瘍治療薬として発売されているレバミピド ( ムコスタ ) がドライアイ用の点眼薬となって登場するのです。
元々胃粘液が増えることが知られていたのですが、角膜や結膜でも粘液を増やす作用が確認されたとのこと。
面白いですね。
ただ白濁した液体なので点眼後しばらく目がかすむのと苦味があるのが玉に瑕のようです。

元来ドライアイ治療薬の王道はヒアルロン酸の点眼薬でした。
ヒアルロン酸分子内に水分子を保持する作用があるのです。
ヒアルロン酸は医療用に昔から使われてはいますが、点眼薬の他は関節への注射薬しか存在しません。( 注射薬は内視鏡治療時の粘膜下注入剤としても応用されています。)
なぜ内服薬がないかというと、内服では効果の程がはっきりしないからです。
最近ヒアルロン酸を含んだサプリメントの宣伝を盛んに見聞きしますが、どういう利点があるのか明確でないことはしっかり理解しておいてください。

さて、胃薬の中には唾液の分泌を促すものもあります。
ニザチジン ( アシノン ) という胃炎・潰瘍治療薬ですが、ドライマウス症状のある胃炎や潰瘍、逆流性食道炎の方には喜ばれることが多いですね。

HPV.gif夏休みの期間は子宮頸癌予防ワクチンを接種される方が多数いらっしゃいました。

子宮頸癌予防ワクチン接種事業に基づき、鹿児島市では対象年齢の方は無料で予防接種を受けていただくことが可能であることはご存知かと思いますが、注意点があります。( 事業の詳細はこちら → 子宮頸癌予防ワクチン接種について )

① 現高校2年生は特例として、9月までに1回目の接種を受ければ事業の対象として無料となります。10月以降は一切対象となりません。

② その他の対象年齢の方については来年3月末までに接種する分については無料となります。ワクチンは合計3回接種していただく必要があります。3回目は初回接種の6ヶ月後に受けていただきますので、初回はやはり9月中に受けていただかないと、全てが無料の対象となりません。

以上の点を十分ご留意下さい。


9月15日からはこれまでの「サーバリックス」に加えて「ガーダシル」というワクチンが接種可能となります。
サーバリックスは 2価のワクチンで、子宮頸癌の原因となる HPV ( ヒトパピローマウイルス ) の16型・18型の感染を予防します。
そして新しい免疫増強剤が付加されているためワクチンの効果が長く、20年は続くのではと推定されています。( → 参考 )
これに対し、ガーダシルは 4価のワクチンで、16型・18型に加え、6型・11型にも有効です。
6型・11型は子宮頸癌には関係しませんが、尖圭コンジローマという皮膚疾患の原因となるもので、このワクチンにより HPV疾患を広くカバーすることができます。
有効期間は 5年となっています。

9月15日以降に初回接種を受けられる方は、どちらかを選択していただくことになります。


いずれにせよ、この予防接種事業での無料接種の恩恵を最大限に享受していただくためには 1回目を今月中に受けていただく必要がありますので、希望される方は早めにご予約くださいね。

2011061022304312524.gif昨年度末で中学1年生から高校1年生相当年齢の女性に対しての子宮頸癌予防ワクチン接種事業が実施されています。

無料とあってかワクチンがすぐに品薄となってしまい、受けたくても受けられないまま4月に高校2年生なってしまった方も多くいらっしゃると思います。
現高校2年生については特例として、9月までに1回目の接種を受ければ事業の対象として無料となります。
と言ってもワクチンそのものが無くて為す術もなかったのですけれど、数日前に少しずつ納入できるとの連絡がありました。
既に予約を入れておられた方に対して順次電話を差し上げている最中です。
まだ予約数を満たすだけの数が揃っているわけではないので、順番が来るのをもうちょっとお待ち下さいね。

2011052312212222145.gif「粉薬は苦手なので錠剤をください」とおっしゃる方が少なからず存在します。
剤形として粉末しか存在しないものを処方しようとする場合、我々としては困ってしまうことがありますし、飲む側もかなり辛い思いをすることになります。
医師や薬剤師からは市販のオブラートやカプセルを利用することくらいしか助言してもらえないことがほとんどだと思うのですが、これまでの経験から粉薬を苦手とする理由がどうやら見えてきました。

粉薬がダメという人に確かめてみると、薬を口の中いっぱいに広げてしまう傾向が強いようです。
頬の内側や歯茎と唇の間等に粉を付着させてしまい、水を飲み込んだ後も粉が口腔内に残ってしまい薬の苦さに涙しているのです。
また、薬を口に入れる際に鼻で呼吸してしまい粉を鼻へ吸い込んだり、逆に鼻息でまき散らしたりするケースもあるようですね。

以上を踏まえて上手な粉薬の服用法をアドバイスしてみます。

① 水を先に含みますが、この際大量に含まないことが大事です。
  少量含んで、顔を少し上に向けてみましょう。
  その時に下の歯列を堤防にそして舌の前の部分を底にした部分から水がはみ出ない程度が適量です。
  それ以上の水を含むと薬を口の中に広げてしまう原因となりえます。

② ①で口の中に作った水のプールに息を止めて粉薬を入れます。
  唇や歯など余計な部分に粉をつけないよう、あくまで水の部分にだけ薬を浮かべるようにします。

③ 息を止めている間に一気に飲み込みます。
  粉薬を飲むというより、最初に溜めた水を飲み込む感覚で。
  途中で息をすると頬や舌の筋肉が緩んでしまい薬を広げてしまう原因になります。
  若干は粉が残りますが、それは水を追加して流し込んでください。

粉薬を口の中に広げずに留まる時間を短かくすることが大切なポイントです。
嫌がらずに練習してみてくださいね。

2011052622491620631.gif東日本大震災の影響でいくつかの医薬品の入手が困難となっていましたが、徐々に状況も好転してきています。
最もご迷惑をおかけしていたのが「モーラステープ L」という貼付剤だと思いますが、先日より生産が軌道に乗ったという情報を得ました。
小さなサイズのテープ剤で何とか凌いでいただいていた皆様には朗報かと思います。

湿布と違って水分を含まない医療用外用鎮痛消炎テープ剤が登場したのは1988年のこと。
私が医師免許を取得した前の年なのですが、意外と歴史が浅いのですね。
私もたまにテープ剤の恩恵にあずかっている身なので、いい時代に生まれたなと思っています。

2011040617270817109.gif東日本大震災で医薬品にも影響が出ていることを既に2回お知らせしました。

書き漏れたのですが、湿布の一部が工場被災で出荷できなくなっています。
小さなサイズのものは問題ないのですが、大きなサイズのものが作れない状況のようです。
大判サイズは一定のニーズがあるため、他のメーカーのものも品薄状態になっています。
当院でも一度に多くの数を処方するのを控えておりますのでご了承ください。

さて、影響の出た医薬品もある程度供給体制の整備がなされつつあります。
最も心配されたチラーヂンSも今月中には生産一部再開と輸入品とで賄えそうな気配。
他の医薬品も5月、6月には・・・というアナウンスが聞こえてきております。

2011032810373316187.gif
先日、震災による甲状腺機能低下症に対して用いる薬「チラーヂンS」の供給停止の話をしましたが、工場の再開のめどが立ち、輸入品と相まって 4月中旬からは問題は解決しそうです。

それ以外にもいくつか影響があります。
当院では漢方薬の一部、インスリン自己注射用の針、経腸栄養剤などにしばらく影響が出そうです。

内視鏡関係では前回お伝えしたオリンパスの修理サービス以外に一部の内視鏡洗浄剤の製造・出荷停止が生じています。
当院はフジノン製の内視鏡の上、電解酸性水を用いた内視鏡消毒を行っているため全く支障をきたしていませんので、安心して検査を受けていただきたいと思います。

2011031816445923421.gif今回発生した大震災の影響が一般医療にも影響を与え始めています。
甲状腺機能低下症に対して用いるチラーヂンSという薬が工場の被害で供給がストップしてしまいました。
甲状腺疾患はおよそ30人に 1人存在し、その中で機能低下症は半数を占めると言われているほど患者さんの多い疾患ですが、実際に服用されている方は60万人ほどとのこと。
本当はTSH ( 甲状腺刺激ホルモン ) 値をみながら投与量を調節する必要があるのですが、この緊急事態のもと供給が再開されるまで減量せざるをを得ないかと思われます。
この方法でも重篤な機能低下症状は防げるとされていますのでご理解の程よろしくお願いします。
なお、「チラージンS」ではなく「チラーヂンS」が正しい商品名です。

また、当院は直接関係ありませんが、内視鏡トップシェアのオリンパスの工場が被災し修理などが出来ない状況のようです。
消化液や消毒液に晒されるなど過酷な環境下で働く精密機械、結構修理する頻度が高いだけに今後各地の内視鏡検査に影響が出てくる可能性があります。

201103050851499399.gif一部報道でご存知の方も多いと思いますが、子宮頸癌予防ワクチンが品薄状態となっています。
昨年、国の補正予算がついて全額公費負担することが決定し各地で接種事業が順次始まってきていますが、任意接種ということもあってかメーカーが需要予測を見誤ったことが原因のようです。
3回打つという接種スケジュールが決まっているため、既に 1回目を受けた人を優先し、未接種の方は供給が安定するまで待っていただくという形になりそうですが、まだメーカーや行政からの正式なアナウンスがありません。
我々も情報が欲しいところでありますが、現時点でわかっている範囲で対応させていただきますのでご了承ください。

政権が変わって予防接種事業に関してだけは積極性がみられていただけに残念な事態です。

2010082514073811596.gif先月、ランソプラゾールという胃薬が「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」の目的で使えるようになったことを当ブログで話題にしたばかりでしたが、今度は同じランソプラゾールが「非ステロイド性抗炎症薬 ( NSAIDs ) 投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」という目的でも使えるようになりました。

特にご高齢の方で体のあちこちの痛みのために NSAIDs を連用せざるを得ない方にはビッグニュースです。
ただ、肩に痛みには H2ブロッカーと呼ばれるタイプの胃薬との併用がいい場合もあるでしょうが。(→ こちら)

それにしてもアスピリンだって NSAIDs の一種。
効能追加はまとめてやっちゃえばいいのにと思いますが、国の許認可を得るって一筋縄ではいかないのでしょうね。

201007252223199784.gif胃酸分泌抑制薬の一つで PPI (proton pump inhibitor)と呼ばれる薬について、日本では使用期限が厳しく設定されていることを以前このブログで嘆いたことがありました。( → こちら )

しかし7月23日、PPI の一種ランソプラゾールが「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」の目的で使えるようになりました。
低用量アスピリンを服用している限り、潰瘍の再発予防目的で期間の制限なく継続して使えるわけです。
ピロリ菌除菌の適応拡大に続いて、消化器分野においての朗報です。

起こる確率は高くないものの、アスピリンに起因する消化管出血は簡単に止めることができないため、酸分泌抑制薬が併用可となる時が待ち望まれていました。
処方する方も飲む方も低用量という言葉に妙な安堵を感じるかも知れませんが、アスピリンの抗血小板作用は強力ですから是非 PPI を合わせて飲んで下さい。

2010060613031415353.gif子供手当ての支給が鹿児島でも始まりました。

使われ方も様々でしょうが、使い道の一つとして念頭に置いて欲しいのが子宮頸がんワクチン接種です。
これまでのワクチンは感染症を防ぐ目的のものばかりでしたが、このワクチンはがんを予防する画期的なものです。
厳密にはウイルス感染を防ぐのですが、子宮頸癌はウイルスが引き起こすのものなので結果としてがんになる可能性をうんと減らすことができるわけです。

詳しくはこちらのサイトをご覧下さい。  http://allwomen.jp/


世界的に10代前半の女性への接種が行なわれていますが、日本では始まったばかり。
3回接種する必要がありますが、金額が大きなネックになっています。
接種費用の助成が行なわれる自治体もあるようですが、鹿児島市はまだ。
1回当たりの費用がちょうど子供手当て一月分程度なので、お子様の将来のために是非ご検討してみてはいかがでしょうか。

花粉症の季節真っ最中。
私自身も花粉症ですし、通院中の患者さんの中にも結構いらっしゃるので、それに関連したお薬を処方する機会の多い時期です。
アレルギー性結膜炎に対す目薬も処方しますが、上手に点眼できない方もおられるようです。
専門外ながら、今回は目薬の差し方のポイントを。

2010030611402910968.gif① 容器を不潔にしないようにまず手を洗います。

② 顔を上向きにしたら、下まぶたを指で軽く引き下げます。アッカンベーをする要領です。眼球よりもむしろ下まぶたに落とし込むように差してみると、溶液が確実に目に入りこぼれることもほとんどありません。

③ 容器の先を直接目やまつ毛につけないようにして下さい。

④ 目をしばらく閉じておきます。まばたきすると涙と一緒に溶液が目頭から鼻へ逃げていってしまうからなので、目頭を押さえておくのも効果的です。

なお、抜けたまつ毛が目に入った時、まばたきを繰り返していると涙の流れに乗ってまつ毛が目頭の方へ移動してきます。
そうすると除去しやすくなりますので、これもお試しください。

2009121121095930527.gif全国的にも武岡周辺も新型インフルエンザの勢いは落ち着きつつあるようです。
この間、いろいろな物が品薄となりました。
治療薬、検査診断キットはもちろんのことですが、市販もされている消毒薬はポンプが不足したそうです。
また、圧倒的に子どもの感染が多かったので子供用のタミフルが不足し、大人用のタミフルカプセルの中身を取り出して使わざるを得ない状態。
タミフルは賄えても苦味を緩和するために使用する乳糖が底をついてしまったようです。
タミフルの苦味はココアの粉末で紛れるらしいので一つの方法かと思います。


インフルエンザにかかったときに肺炎を併発しては大変と、どこかのマスコミが紹介したようで、この結果「肺炎球菌ワクチン」も不足しています。
この肺炎球菌ワクチンに関してはかなり多くの方が誤解しておられるようです。
以前にもこのブログで書いたことがあるのですが、改めていくつかのポイントを説明しておきます。

このワクチンは肺炎全てを予防するものではないこと。
肺炎球菌は肺炎を引き起こす原因菌としては第1位で、肺炎全体のおよそ2~3割を占めます。
残りの肺炎は他の原因菌によるものということになります。
ただ、肺炎球菌は抗生物質に対して抵抗性を持つものが大部分を占めるようになってきました。
すなわち肺炎球菌が原因の肺炎にかかってしまうと治療に窮することになります。
ワクチンで予防することはこのあたりに意味があるのです。

細菌の名前に肺炎の文字があるのが勘違いの元になっていると思いますが、以上をご理解いただいた上で接種をお願いします。
しかし、現在も品薄状態が続いていますので予約してしばらくお時間をいただきます。

肺炎球菌ワクチンは1回の接種でおよそ5年は有効とされていますが、日本においてはどういうわけか同じ人には2度接種してはならぬという決まりがありました。
つい最近のことですが、2度目も大丈夫と方針転換がなされました。
ワクチン後進国・日本、ですけれど、このように少しでも世界の標準に近づいてもらいたいものです。

↑このページのトップヘ