野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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 ただ今研究中

医療系のニュースをチェックしていたら、ナスのヘタから抽出された物質に子宮頸癌細胞への抗腫瘍効果があるという報告を見つけました。( → こちら )

ナス9-oxo-octadecadienoic acid という物質を子宮頸癌の細胞株に投与したり、マウスの実験モデルに投与して、その抗腫瘍効果を確認しています。

なぜ、ナスのヘタに着目したのかというと、昔から民間でナスのヘタをイボの治療に使ってきたという点にあるようです。
尋常性疣贅 ( じんじょうせいゆうぜい ) と呼ばれるイボはヒトパピローマウイルス ( HPV ) の感染によって起こります。
子宮頸癌の原因もHPVなので、検討を進めていったようです。

ちなみに、HPVは型が200種類以上あり、尋常性疣贅と子宮頸癌の原因となる型は全く異なります。
尋常性疣贅は液体窒素で凍らせて除去するというのが治療の主流ですが、ナスのヘタも試してみるのも面白いかも知れません。
時を同じくして、インドから尋常性疣贅の治療にMMRワクチンを使って6割の治療効果があったという報告がありました。( → こちら )
詳しくは、記事を参照してください。

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ヘタといえば、柿のヘタしゃっくりに対して民間療法で使われてきました。
乾燥させた柿のヘタ ( 柿蒂 ) を煎じて飲むと、しつこいしゃっくりが落ち着く可能性があるようです。
こちらに関しては、有効成分や作用機序などは未解明。
今回のナスのヘタのように、科学的に検証してほしいものですね。

潰瘍性大腸炎免疫の異常により腸の炎症を起こす炎症性腸疾患には、潰瘍性大腸炎クローン病という疾患があります。
日本では、潰瘍性大腸炎は16万人、クローン病は7万人いるとされており、消化器内科医をやっていると常に何人かの方を担当しています。


私が医療に携わるようになって、いろんな消化器疾患の病因が解明され、治療に結びついているものがいくつもあります。
ピロリ菌発見による胃・十二指腸潰瘍、C型肝炎治療の進歩による肝硬変・肝がんなどは、患者数が劇的に減り、滅多にお目にかからなくなりました。

一方、炎症性腸疾患に関しては、あまり進歩がみられません。
血球成分吸着除去法や免疫抑制剤、生物学的製剤、便移植などが応用されるようにはなってきましたが、決め手を欠いています。


そんな中、非常に注目すべき研究結果が発表されました。
潰瘍性大腸炎の患者さんの9割に認められる自己抗体が発見されたのです。( → プレスリリース )
これは、インテグリンαVβ6という接着因子に対する抗体で、同じ炎症性腸疾患のクローン病患者さんには認められないようですし、病変の活動性に対応して抗体量も変化するようです。
潰瘍性大腸炎で見られる大腸粘膜上皮障害の説明もできるので、疾患の最大の原因と考えて良さそうですね。
今後は、潰瘍性大腸炎の確定診断や治療薬の開発やその評価などに活用していけるのではないかと思います。

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柿さて、これ以外にもここ1年で面白い報告がありましたのでご参考に。
いずれも日本の大学の研究報告です。

● 亜鉛欠乏で炎症性腸疾患が増悪。( → プレスリリース )
特にクローン病患者さんで血中亜鉛濃度が低下するようですが、亜鉛欠乏で免疫細胞の機能が変化するようです。

● ブルーベリーに含まれるプテロスチルベンの経口投与で炎症性腸疾患モデルマウスの炎症抑制。( → プレスリリース )
プテロスチルベンが免疫細胞の過剰な活動を効果的に抑えるようです。

● 柿渋の経口投与で潰瘍性大腸炎モデルマウスの病態改善。 ( → プレスリリース )
柿タンニンが大腸の環境で発酵され、潰瘍性大腸炎で増加する腸内の悪玉菌と炎症を抑制するようです。

胃・十二指腸潰瘍や胃癌の原因となるピロリ菌は、かなり多くの方に認知されるようになってきました。
このピロリ菌に、近縁の菌がいるってご存知だったでしょうか。

先月末に、そのうちの一つであるヘリコバクター・スイス ( Helicobactor suis: 以下HS ) の分離培養成功とヒトの胃における病原細菌であることの証明がなされました。
非常に画期的なビッグニュースです。( 参考 → プレスリリース  )

菌の培養ができないと、その性質を調べることができませんし、研究も進みません。
今、腸内細菌の研究が盛んですが、調べているのは菌のDNA。
どんな菌がどのくらいの割合で存在しているかを見るのが中心になっています。
ほとんどの菌の培養法が確立していないので、これらの役割についてはほとんど解明されていません。

helicobactor-suisピロリ菌が発見されたのが1982年。
それ以降、近縁の菌の存在はいくつも知られていたのですが、なかなか培養ができずにいました。
HSは、ブタで高い検出率が示され、ヒトの胃MALTリンパ腫との因果関係が強く疑われていた菌です。
分離培養成功で、菌の存在を調べる方法や他の疾患との関わりなど、研究が一気に加速するものと思います。

プレスリリースにHSの電子顕微鏡像が出ていました。
ピロリ菌と比較すると、菌体のねじれが強く、ひときわ長い鞭毛が両端にある点が異なりますね。

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さて、HS以外にもピロリ菌の親戚の菌がいくつか知られており、中にはイヌやネコの口腔内や消化管に存在しているものもあります。
ペットと濃厚に接触していると、ヒトにも感染することが強く疑われています。

そんなこともあって、以前から雑誌などで取り上げられることがありました。 ( → 参考 1参考 2 )
「参考 1」の記事が出る前、私は週刊現代から電話取材を受けました。
この時、私は「培養法が確立していない現状では、推測に過ぎません」と記者に伝えました。
そのためか、記事に名前が出ることはありませんでしたし、内容も不安を煽るような過剰な表現になっていなかったので安堵したのを覚えています。


HS以外の菌についても培養法の確立が待たれます。

病院で受ける検査は、痛みやつらさを伴うものが多く、心理的にも肉体的にも負担の大きいものです。
最近得た情報の中には、そういう苦痛を回避できるように様々な研究がみてとれるものがいくつかありましたので紹介してみます。

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インフルエンザ検査まず、インフルエンザの診断について。
現在は、鼻やのどの奥に綿棒を入れる検査がほとんどです。
不快感や痛みが伴い、検査をする我々もくしゃみをまともに浴びる等のリスクが付きまといます。
今回、鹿児島大学から発表があったのは唾液を使った検査です。
2014年には手法が確立されていたようですが、今冬に臨床試験を始め、来年度中には保険適用を目指すそうです。
唾液を取るだけなので負担は少なく、検査感度も従来法より1~50万倍あるとか。
安価で普及することを期待したいですね。( 参考記事 → こちら )

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自己血糖測定次に、血糖測定について。
血糖はどうしても血液を調べなければなりません。
インスリンによる治療を受けている方などは、自分で調べる必要もあります。
この負担を軽減しようと、NTTが研究中なのが、電磁波を用いた方法。( → こちら )
皮膚に機器を押し当てて、グルコース成分に特有の周波数の電磁波を照射することで血糖値を推定するというものです。
機器が小型化できて、安価になればいいですね。

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最後は、超音波を用いたバーチャルレンズについて。
詳しく読み込んでいませんが、侵襲的な内視鏡検査にとってかわる可能性がある、と研究者は報告しています。( → こちら )
内視鏡は覗いて観察するだけではなく、治療にも欠かせない道具になっていますから、後者を代替するのは困難だと思います。


少しでも苦痛のない検査法を目指して、様々な研究が地道に行なわれているのは嬉しいことですね。

 

腸内細菌我々の大腸の中に住み着いている細菌の役割が少しずつ解明され始めています。
ここ2~3年程の間に、喘息や肥満、糖尿病、骨粗鬆症、認知機能‥、様々な疾患との関わりがわかってきましたし、食事内容によって腸内細菌叢 (腸内フローラ) に変化が起こることも分かってきています。

今月に入って私の twitter 上でのつぶやきにおいても「食事を管理しているスポーツ選手の腸内細菌を調べて成績向上に繋げる研究」「抗精神病薬リスペリドンで体重が増えるのは腸内細菌叢が変化するから」「運動で腸内細菌叢が変化し健全な脳を保つ」といった情報を取り上げています。

テレビでも10日の世界ふしぎ発見や12日のみんなの家庭医学で腸内細菌叢を特集していましたね。
いずれも食事などと絡めていましたが、ここはみなさん十分に気をつけて下さい。
腸内細菌叢についてわかってきたことはほんの一部に過ぎません。
腸にいいとされる食材を摂取すれば、皆が同じような腸内細菌叢に変化するという保証もないのです。
非常に興味ある分野であることは間違いありません。
これからも発信されるであろう情報も収集しながら、先走りして痛い目に遭わないようにする賢さも持ち合わせておきたいものです。
 

先日、水銀を使わない血圧計を当院で導入した話をしました ( → こちら ) が、まったく新しいタイプの血圧計が開発中であるという話が伝わってきました。( → こちら )
これは光センサーを用いて脈波を測定し、その波形から血圧を算出するというものなんだそうです。
従来、血圧を測定する場合、腕にマンシェットを巻きます。
しかし、腕回りがとてつもなく大きい人やけがをしている人などには上手く巻けない場合があります。
夏場で汗でべとべとした人に使った後は気を使いますし、連続して血圧を測る場合などにはその都度腕が圧迫されてるという難点もあります。
その手間がなくなるのならば、とても画期的なことになると思います。

体温計01また、皮膚に貼り付けるタイプの体温計が開発されたというニュースもごく最近ありました。( → こちら )
現在、インフルエンザワクチン接種で体温を測ってもらう機会も多いシーズンです。
最も多く使われているのは脇式体温計ですが、これを正しく使えずに実際の体温より低く測定値が出てしまう方がけっこういらっしゃいます。
今回のデバイスが実用化されると、そのような測定ミスは大幅に減ることになりそうですね。

ちなみに、正しい体温計の使い方については某メーカーのサイトに詳しく載っていますのでご参考に。( → こちら )
 

200909190001023884.gifインスリン療法は自己注射をしなければならないという点で導入にためらいが生じます。
欧米では吸入するタイプのインスリンが 3年前から使えるようになっていますが、鼻にシュッと吹き込むというインスリンも開発中です。
ただ、この経鼻インスリンは末梢へ移行しないので血糖に影響しないようです。
それでは糖尿病には役に立たないわけですが、どうやら嗅脳から脳内へインスリンが移行し認知機能の改善に繋がりそう。
そんな面白い研究が進んでいるようです。

昨日参加した講演会で話をしていただいたのは、以前にも紹介した神戸でお世話になった先生。( こちらでも紹介 )

昨日はもう一人、膵臓病の分野の大御所である大先輩の先生も講演に来られていました。
お二人の話にはとても興味ある内容が盛りだくさんで、大変勉強になりました。

終了後、座長を務めた先生 ( この先生も大学の先輩なのです ) と計 4人で食事を供にさせていただきました。
いろいろな話で盛り上がりましたが、4人とも須磨区に住居を構えている ( or いた ) という繋がりも奇遇でした。

lsz9nvjc.gif先日、神戸でお世話になった先生が鹿児島で講演をされました。
専門とする糖尿病と高齢者を中心とした話題でした。

最近糖尿病の分野で注目を集めていることの一つに、アルツハイマー病の患者さんにおいてインスリン抵抗性を示すことが高率に認められる点が挙げられます。

何かと話題になるメタボリック症候群ですが、
これは内臓脂肪が過剰になると内臓脂肪から分泌されるアディポサイトカインと呼ばれる物質に異常が生じ、インスリンの作用が十分発揮できなくなることで様々な疾患につながる病気です。

悪玉アディポサイトカインとでも呼ぶべき物質が増えると、インスリンの効きが悪くなり血糖が下がりにくくなります。これをインスリン抵抗性と呼んでいます。
インスリン抵抗性が糖尿病だけではなく、高血圧や高脂血症などにもつながっていくことは既に皆さんもご存知のことかと思います。

インスリン抵抗性がこれらの病気だけでなく、アルツハイマー病の引き金になっているとするならば、
日頃から食事や運動などの生活習慣に気をつけてお腹回りをすっきりさせることで、アルツハイマー病が防げるのかも知れません。


            □ 関連記事  メタボリック症候群から大腸がんへ


jsojvoag.gif何かと話題になっている納豆。
今回は11月の「教授のお仕事」の中でお約束していました納豆に豊富に含まれるビタミンKのお話です。

ビタミンKの働きとしてはこれまで、
血液凝固因子の合成やオステオカルシンの合成に関わり、
ビタミンKの不足で出血傾向になったり、骨粗鬆症になることが知られていました。
実際にそれらの分野の治療薬として使われています。

このビタミンKの新しい役割として、
肝癌の発生予防や、肝癌細胞の増殖、再発を抑制することがわかってきました。
現在、肝癌治療後の再発抑制に関して大規模臨床治験が行われており、
いずれビタミンKがこの分野でも治療薬として使われるようになると思います。

ビタミンKの働きを抑えて血液をさらさらにするお薬がありますが、
今のところこの薬の内服で癌を悪化させるという報告はありません。
そもそも肝癌のベースとなる肝硬変の方は元々血液が固まりにくく、この薬を服用されている方は稀だと思います。


vn67qdjl.gif年明け早々に大学の同級生が鹿大の教授に赴任することが決まり、今からとても楽しみにしています。
実は、今年に入ってから同級生がたて続けに各地の大学の教授に就任しています。

最初にG大の教授となった先生が研究しているのが、脊髄小脳変性症の遺伝子治療。
この病気は遺伝性で、歩行時のふらつきに始まり最終的に寝たきりとなるのをただ手をこまねいて見守るしかないのが現状です。

しかし、90年代に原因となる遺伝子がわかった結果、治療の道筋が見えてきました。
遺伝子の塩基配列の一部に「CAGCAGCAGCAG・・・」と「CAG」の異常に長い繰り返しが見つかったのです。この繰り返し数が長いほど症状が重くなることも知られています。

他にもいくつかの遺伝性神経疾患でこの繰り返しが見つかっており、まとめて「CAGリピート病」とも呼ばれるようになってきました。
この中の病気の一つには何と前立腺がんの治療薬が有効であることがわかり、現在臨床治験中です。この疾患に苦しむ患者さんを救える日も近いでしょう。
同級生の研究が脊髄小脳変性症の患者さんの福音となることを期待します。

「CAG」の繰り返しからはポリグルタミンという物質が合成されます。
似たような名前でポリグルタミン酸という物質があります。酸がつくかつかないかで全くの別物ですが、このポリグルタミン酸は納豆のネバネバのもとです。
納豆といえばビタミンKですね。
少し強引な話題の持っていき方ですが、次の折、このビタミンKの意外な効果について書いてみます。

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hmssk76r.gif本日の新聞に、ピロリ菌の感染者はそうでない人より5倍も胃癌になりやすいという記事が載っていました。
詳細は記事に委ねますが、消化器医の間では既に知られていたことが具体的な数字として表れました。

さて、ピロリ菌の属するヘリコバクター属には他にも何種類かの菌がいて、
そちらの研究も徐々に進んでいます。
ヘイルマニ、ビリス、ヘパティクスなどが知られており、これらが胃のリンパ腫や胆道の癌、肝癌などに絡んでいる可能性も考えられています。

将来これらの病気も「除菌」という形で防ぐことが出来るようになるかも知れません。


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