野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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 傷の治し方

2_k1tmx9.gif今回のテーマは「人工イクラと胃薬」、「アルギン酸塩の話の続き」、「傷は消毒しない」の続きとして読んでください。

唾液の中には上皮成長因子 (EGF) が含まれています。名前からも推測される通り、
体の表面を覆う細胞である上皮の細胞の増殖を促す働きがあります。
皆さんの経験上、口の中の傷は皮膚の傷に比べると早く治る気がしませんか。
実はこの EGF の働きによるところが大きいのです。

ここから先は私見です。
動物の餌のとり方を考えてみましょう。
人間が口にする食べ物と違い、地面に落ちていて砂の着いたものを食べたり、舌をからめて草をむしり取ったり、
木の幹を噛み砕いたり骨を砕いたり・・・。
口の中あるいは食道などが常に傷つきやすい状況にあります。
そして野生に生きる動物には、いつでも次の食べ物にありつける保証はありません。
そんな中、せっかくの食べ物を目の前にした時に口の中の傷がなかなか治らずに痛くて食べられないとあれば、
生命の維持に大きく影響します。
唾液に EGF が含まれ、口の中の傷が早く治ることはとても理にかなったことだと私は思います。

そしてもう一つ。
動物が傷を舐めている光景を見たことがあると思います。
これまでの医学の常識なら、口の中の雑菌を傷にこすりつけていいことはない、となるでしょう。
しかし傷を舐めることでまず第一に、傷口に付いた汚れを落としている。
第二に唾液中の EGF で細胞の増殖を促している。
こう考えると全くばかげた行動ではなく、自然に備わった傷を癒す手段だと考えます。
ちなみに、唾液中には免疫グロプリンも含まれますし、
口腔内雑菌に傷を化膿させるほどの強いものが含まれていることも希でしょう。
「傷は消毒しない」の項で述べたことが一番の方法と考えますが、
応急処置のままならない状況下であればとりあえず、傷を舐めること、間違いではありません。

幼い頃、転んで傷を作った時、両親や祖父母につばを付けてもらった経験のある方、
愛情たっぷりの行為に感謝しなくてはいけません。


         □ 関連記事  EGFに関するこんな商品が出回っているようですが・・・


f7rr15rh.gif今回は「アルキン酸塩の話のつづき」の続きになる話です。

欧米の教科書には、傷口は消毒してはならないと記載されているそうです。
消毒薬の使用目的は、もちろん傷口からの感染予防。
今使われている消毒薬は、ばい菌を殺すのにとても優秀なものばかりなのですが。
では、なぜ消毒してはいけないとなったのでしょうか。

傷口から出てくる血液や浸出液には、
 ・ばい菌から体を守る、白血球や免疫グロブリン
 ・傷を治す成分
などが含まれているのですが、これらが消毒薬でダメージを受けてしまうからです。
衛生上よかれと思ってやっていたことが、自然に備わった機能も阻害し、かえって傷の治りが遅くなり、傷跡も目立ってしまう結果となることがわかったのです。

消毒の第一はとにかく傷口をきれいにすること。
傷口についた異物やはがれかけた皮膚等が感染の元になるので、徹底的に洗い流したり、切り取ったりすることがとても大切になります。
そして「アルキン酸塩の話のつづき」で紹介したような湿潤療法を行えばいいのです。

さて、この "傷を治す成分" の代表格として、皮膚や血管等の細胞の増殖を促す「成長因子」というものがあって、たくさんの種類があることが知られています。
成長因子で刺激を受けた細胞は、移動していったり、分裂して数を増やすなどして傷を塞ぎにかかります。
湿潤療法では滲み出してきた成長因子を、ハイドロコロイドが壊すことなくトラップして逃がさないので、傷が早く治るというわけです。

成長因子の一つに「上皮成長因子」(EGF)というものがあります。
これを発見した学者はノーベル賞を貰っていますが、
次の機会にこのEGFから見た、教科書にも載っていない意外な傷の治し方をお話します。

                                        続きはこちら




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