野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡にある野口内科です。
  当ブログは13年目に入ります。医療・健康に関することや近隣の話題、音楽・本のことなどを綴ってまいります。

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 診療所ライブラリー

 ◆ 診療所ライブラリー 150 ◆


尿酸値は下げられる尿酸が高いと痛風になる。
多くの方はそのように理解されていると思いますが、尿酸の治療ほど悩ましいものはありません。

尿酸値は7.0mg/㎗までは基準範囲内とされており、薬を必要とするのは9.0mg/㎗以上から、高血圧や腎障害・糖尿病などの合併症がある場合は8.0mg/㎗以上から、と日本のガイドラインで示されています。
しかし、欧米では尿酸が高いというだけでは治療をしません。
痛風発作を一度起こした人の再発予防として薬を使用するのです。
2016年に米国の内科学会は、痛風発作が再発していなければ内服治療は推奨しない、とまで言っています。( → こちら )

尿酸は血液から尿に排泄されますが、不思議なことに一度捨てた尿酸を途中で再吸収する仕組みが腎臓に備わっています。
尿酸は抗酸化作用を持っていて、それはビタミンCよりもはるかに強力なのです。
多くの動物は体内でビタミンCを合成できますが、それができないヒトにおいて、尿酸がビタミンCの代役を担っているのではないかという説もあります。
また、尿酸には神経保護作用があって、高い人ほどパーキンソン病になりにくいという報告もなされています。
一方、尿酸が低いと運動後などに急性腎不全や尿路結石が起りやすいこともわかってきました。
尿酸ってまだ未解明な部分が多いのです。


ただ、メタボな人ほど尿酸が高い傾向にあるのは確か。
健康診断などで尿酸が高いと指摘された人は、生活習慣を見直すきっかけにしてもらいたいと思います。
今回紹介する本では、尿酸値を下げるための食事や飲酒を含めた日常生活の改善のヒントが数多く書かれています。
先に紹介した米国内科学会の痛風治療のガイドラインでは「痛風と診断された人が食事内容、節酒、減量の指導を受けることで尿酸値が下がると言える十分な証拠はない」としているのですが、尿酸を下げるための生活習慣改善は、他の疾患予防にも大いに役に立つものばかりですから。

 ◆ 診療所ライブラリー 149 ◆


IBSサブタイトルに「IBSの治療はカンタン !」とあるので手に取った本です。
昔から過敏性腸症候群 ( Irritable bowel syndrome ; IBS ) に興味を持って接してきた私に言わせると、決して簡単な疾患ではありませんし、読んでも全くしっくりとしませんでした。

この著者の本「女はつまる 男はくだる」は、このシリーズで以前紹介しています。
この中で、欧米人に比べて日本人には大腸の走行異常が多く、それが便通異常に繋がっていると述べています。
これには非常に共感するところが多いのですが、それを今回の著書の中で「腸管形態型 IBS」と分類してしまっている点が気になります。

また、便秘型 IBSよりも通常の便秘の方が治療が難しいととれる記載がありますが、そんなことはありません。
この両者は、腹痛の有無と便の性状を聞くことでほぼ区別することができます。
しっかり鑑別できれば通常の便秘の方がはるかに治療がやさしいのです。
便秘型 IBSなのに、自己判断で市販の便秘薬を用いているにもかかわらず、排便に苦労している方が多いのが現状なんです。
一方、通常の便秘であれば、市販薬の頓服程度でも十分なケースが大半を占めます。
ちょっと古い記事になりますが、便の性状の分類については「ウンチの種類」、便秘型 IBSについては「過敏性腸症候群 その2」を参考にして下さい。

さらに、IBSの治療薬については、私が最も基本的に使う漢方薬については一切触れられていません。
IBSは診断がついても、治療にあたっては個々に応じた薬剤の組合せを見つけるのに非常に苦労し、決して「カンタン」なものではありませんが、漢方薬をベースにすると患者さんの治療満足度が全然違うのです。

苦言ばかりを呈しましたが、胆汁性下痢型 IBSにきっちり言及し、その治療法も示していることは評価できます。
平易な文章で書かれており、IBSや便通異常について理解するのにはいい本だと思います。
なお、胆汁と便通に関しては「胆汁酸をコントロールして便通改善 そしてメタボにも !?」を参考にして下さい。

♦♦♦♦♦

この本が出た時には、日本消化器病学会による「慢性便秘症診療ガイドライン」がまとまる前だったので致し方ないのかも知れませんが、便秘の分類で「直腸性」「けいれん性」「弛緩性」という日本独自の分類を用いて解説がなされています。

ここで現在の便秘の分類についてみてみたいと思います。
現在は、症状からは「排便回数減少型」と「排便困難型」に、病態からは「大腸通過正常型」「大腸通過遅延型」「器質性便排出障害」「機能性便排出障害」というふうに分類がなされます。
大腸通過正常型では、食物繊維を多くとることで症状が改善することが多く、大腸通過遅延型では下剤を必要とします。
器質性便排出障害は、女性にみられる直腸瘤などが原因で、手術を要する場合があります。
機能性便排出障害は、排便しようとすると逆に肛門が締まったり、肛門・直腸近辺の感覚が鈍ったりしているものです。



当院では、医療・介護・健康などに関する書籍を取り揃えて貸し出しも行なっています。
是非ご活用下さい。( → 当院の書籍の貸出しについて )

 ◆ 診療所ライブラリー 148 ◆


中井久夫私が学んだ医学部の精神科には中井久夫という先生がいました。
日本の精神医療の分野を切り開き、究極の知性とも言われ、多くの人々を魅了している人物です。
その先生の講義を、目を爛々と輝かせながら熱心に聴く同級生たち。
が、精神科領域にあまり興味のなかった私には、話が耳の右から左に抜けていくだけの時間を過ごしていました。
後から中井先生の凄さを知るにつれ、何てもったいないことをしていたのかと後悔しています。


そんな私にも、中井先生の言葉で記憶に残っているものが2つあります。
まず一つ目が

芍薬は女性には喜ばれますな

ポリクリという名の学生臨床実習でのことです。
患者さんの診察をしながら、横に座らせた中国人留学生に漢方薬のアドバイスを受けていたのです。
女性の患者さんが診察室から退いた後に、我々学生の方に顔を向けて発したのがこの言葉でした。

調べてみると、更年期障害などで女性に処方する機会の多い漢方薬のほとんどに芍薬という成分が含まれているではありませんか。
漢方薬に興味を持つきっかけの一つとなったこの短いフレーズは、今でも私の頭に鮮明に刻まれています。
既存の薬は精神科領域の病を根本的に治すものではないと知っていた先生が、人間的に配慮する治療の一環として漢方薬の活用を考えていたのだと思いますが、その際に見せた若い留学生からさえ謙虚に学ぼうとする姿勢にも感心した場面でした。


もう一は、ポリクリの最中に先生ご自身がカルテを書きながら発した言葉

医者の文字は破壊されますな

ガリ版に刻むような文字も書けていた私は、先輩方のカルテの記載を追うのに四苦八苦していました。
しかし、多忙を極める臨床現場に身を置くと、自分自身の字も時間が経つにつれ自分でも読めないような状態に変化してきました。
未だに紙カルテなのですが、自分の手書き文字を見るにつけ思い出す言葉です。
医師の筆遣いの劣化を、見事に普遍的に表しているのではないでしょうか。

的を射た言葉を選んで短いフレーズに凝縮する達人である先生の講義の中には、もっともっと今の臨床に活きる言葉がたくさん詰まっていたはずで、それを真面目に聴いていなかった自分を悔いる次第です。


今回紹介する「中井久夫 精神科医のことばと作法」は、様々な人が先生について語り合い論考したムック。
本人のエッセイなども掲載されており、多彩な内容で先生の考えや業績が理解できるようになっています。
掲載されている鼎談を通して、中井先生が思考や概念に色や匂いを感じ取っていたと知りました。
このゴールデンウィークに訪れたハンガリーを代表する天才ピアニスト、リスト・フェレンツ ( フランツ・リスト ) も音を色彩で捉える「共感覚」を持っていたとされます。
ハンガリー訪問を機に興味を持ち始めたこの共感覚を、中井先生も持ち合わせていたのなら・・。
天才の感覚に触れる機会を十分に活用できなかったことを返す返すも口惜しく思う今日この頃です。
( 私、悔やんでばかりですね )

中井先生のことを知らない方も、この本を是非手に取って読んでみて下さい。
新しい覚醒の糧となるはずです。


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 ◆ 診療所ライブラリー 147 ◆


汗はすごい梅雨のまっただ中、湿度が高くて少し動くと汗ばんできます。
鬱陶しい時期が過ぎると、これまた日本独特の蒸し暑い夏が待っていて、汗をびっしょりかく機会が格段に増えてきます。

人類が独自に発達させてきた汗について細かく解説している「汗はすごい - 体温、ストレス、生体バランス戦略」。
汗という生理現象一つで、こんなに分厚い内容の本が書けるなんて驚きです。
専門的な用語が多くて、一般の方には若干わかりづらい部分もあるかも知れませんが、個人的には非常に興味を持って最後まで読み進めることができました。

発汗というメカニズムは体温調節に重要な役割を果たしていますが、その汗の機能の視点から熱中症についても詳しく書かれています。
小児や思春期までの時期は、汗の機能 ( 後述 ) が十分に発達しておらず、暑い環境の中で汗による熱放散の機能が低いんだそうです。
また高齢者、特に70歳以上では汗腺の数が減ってくるため、暑熱順化が成立しにくいんだとか。
暑熱順化とは、人体に繰返し暑熱負荷がかかると暑さに対する反応が強化されて熱放散能が強化されることを言います。
暑熱順化で大きく向上するのは汗の機能。
汗の発現が早くなり、発汗速度も上がり、最大発汗量も増えることを汗の機能の向上と言います。
しかし、空調の発達した現代ではなかなか暑熱順化が起きにくい環境にあります。
熱中症の時期にしっかり体温調節ができるよう、梅雨の時期に1日少なくとも2~3時間は外で汗をかくかとが大事のようです。
暑熱順化の成立しにくい思春期までの若年者や高齢の方は、熱中症の予防として水分補給を始めとするさまざまな対策は必須だと思います。
なお、エマルジョン入りの発泡入浴剤は暑熱順化の成立に対しての補助的役割が期待できそうです。
活用してみたいですね。

私は、3年ほど前からジョギングを始めましたが、夏の暑さにへこたれなくなってきました。
この時期にジョギングすると大量の汗をかきますが、それが日本の夏への適応になっているのでしょうね。
皆さんも、今の時期に汗をかくのを疎まずに暑い季節に備えてみましょう。


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 ◆ 診療所ライブラリー 146 ◆


笑って付き合う認知症 榎本睦郎これまで様々な疾患に関する本を紹介してきましたけど、専門家の書く文章は兎角堅苦しくて重々しい内容になりがちなのが常です。
今回紹介する本「笑って付き合う認知症」は、認知症という治療するにも介護するにも課題の多い疾患を取り扱っているものであるにもかかわらず、読後感がとても爽やか。
認知症に向き合うのはそんなに負担になることではないんだな、と思わせてくれる不思議な魅力があります。

認知症の診療は避けて通ることはできません。
進行していくのを食い止めるのは現時点で難しい疾患なので、診察にあたっては気の重い部分もあります。
しかし、それはかなり症状が進行してから治療にとりかかる例が多いからのように感じます。

この著者が言うように、早期に適切な治療を受けるなら認知症はそれほど怖いものではないのも確かです。
そのためには認知症を早い段階で捉える必要があります。
外来診療の短い時間の中で患者さんと向き合っていても、なかなか気付きにくい場合がほとんどなので、これについてはご家族の視点が大事になってきます。
本書では、ご家族が「あれっ?」と思った時に、認知症外来を受診すべきかどうかを見分ける簡単なテストを紹介しています。

1つは、最近のニュースで印象に残っているものを尋ねてみること。
そして、1分間で動物の名前をいくつあげられるか、という1分間スクリーニングテストです。
前者では、正常であれば何らかの答えが返ってくるのに、アルツハイマー型認知症ではわずか2%しか答えられないばかりか、答えられない理由を挙げて取り繕おうとするケースが4割ほど認められるようです。
後者では、13個以上の名前が出てきたらOKですが、十二支順に答えるのだけはダメとします。
このテストについては昨日 ( 2018年5月23日 ) 放送のNHKの番組、ガッテン ! の中でも取り上げられていましたね。
いずれも非常に簡便な方法なので、ご家庭でもすぐに実践できるのではないかと思います。

その他にも、かかりつけ医のメリット、一人一人の症状に合わせた薬の処方、息抜き介護のススメ、施設入所や最期の看取り方などについて、平易な文章で解説がなされています。
個人的にも、認知症という言葉を使わずに患者さんを治療に前向きにさせるテクニックは参考にさせていただこうと思っています。


当院では、医療や介護、健康に関する書籍を取り揃え、貸し出しも行なっています。
認知症関係の本もいくつか用意してありますので、是非ご活用下さい。( → 当院の書籍の貸出しについて )
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 ◆ 診療所ライブラリー 145 ◆


大腸がんと診断されました今回紹介するのは、週刊誌に連載された大腸がんに関する情報をまとめたムック本です。
大腸がんと診断されました」とは、なかなかインパクトのあるタイトルですね。

あらかじめ大腸がんと診断されていることを前提にしているため、巻頭は大腸がんとの向き合い方や治療の流れについてから始まります。
ムックらしく豊富なカラー図版でわかりやすく解説してあります。
また、大腸がんの体験談をもとにした病気との向き合い方や、セカンドオピニオン、緩和ケア、費用、治療後の生活等における悩みや疑問に答えるという、治療や療養の上で実用的な記事もふんだんにあります。
個々のがんの性質や患者さんの体質に合わせる個別化医療についても触れられています。
これらの特集は、一般的な大腸がんを解説した本にはあまりみられないもので、非常に好感が持てます。

一方で「いい病院」リストという記事もあります。
ここでいい病院の根拠にしているのは、手術件数なんですね。
私の経験から言うと、手術の数だけでは病院の善し悪しは推し量れるものではありません。
実際、信用に値する病院がリストに掲載されていなかったり、その逆で・・。
また、主たる医師が転勤してしまうと、その病院の様相が全く変わってしまうこともあります。
ま、一つの参考にはなるかと思います。

大腸がんは増加の一途をたどっています。
特に女性においては、がんの中で死亡数が最も多く、罹る方の数も乳がんに次いで2位となっています。
男性では死亡数、罹患数ともに3位です。
早期発見には、便潜血反応検査が有用です。
ちょっと古い記事になりますが、こちらで便潜血反応検査について解説してあります。


「よくわかる! がん最新治療シリーズ」として、乳がん・胃がん・肺がんについても出版されているようなので、少しずつ揃えていこうと思っています。

 ◆ 診療所ライブラリー 144 ◆


エコノミークラス症候群の原因と予防ストレッチ 原幸夫もう一ヶ月もするとゴールデンウィーク。
飛行機や車を使った長旅を計画されている人も多いと思います。
長時間の座位を強いられる時に気をつけたいのが「エコノミークラス症候群」。
すっかり市民権を得た呼称ですが、誤解を招く可能性があるため、「ロングフライト血栓症」「旅行者血栓症」と呼ぶことも提唱されています。

実は私も過去に一度経験しています。
大学の定期試験が終わった直後でした。
突然胸に激痛が走り、浅い息がしか出来なくなり、身動きが全く取れなくなりました。
高校の試験の時に目覚ましのつもりで飲んだコーヒーのカフェインが原因で、試験の最中にトイレが我慢できなくなったのです。
2、3分とはいえ、このタイムロスを経験して以降、試験の際には極力水分を取らないようにしていたのです。
幸い大したことはなく、今ではマラソンも走れる体ですけど、二度と味わいたくない疾患です。

誰にでも起りうる疾患で、場合によっては死に至る可能性もありますが、どのような仕組みで起こるのかを理解し、予防対策を講じれば防げる疾患でもあります。
豊富なイラストでそのあたりをわかりやすく解説してある「エコノミークラス症候群の原因と予防ストレッチ」。
旅行の前に一読しておいて損はないと思います。

 ◆ 診療所ライブラリー 143 ◆


減塩当院の待合室には、疾患の理解に役立つようなチラシや小冊子などの資材を取り揃えています。
その中で特に人気なのがレシピなどが載っている食事関係のもの。
置いたらすぐになくなってしまうものもあります。

ライブラリーの方にも食生活に役に立つ本を複数用意しています。
糖尿病や高血圧はもちろん、おなかの手術後の献立、嚥下困難の際の工夫・・・、できるだけ広いジャンルをカバーできるように品揃えを心がけています。

最近もいくつか手に入れましたが、その中の一冊「賢い減塩の技。」。
有名な雑誌の特別編集版で、単なるレシピ本に留まっておらず、読み物としても楽しめるようになっています。
無造作に並べてある本棚なので申し訳ないのですが、探してみて是非手に取ってみて下さい。
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 ◆ 診療所ライブラリー 142 ◆


恥ずかしがらずに便の話をしよう 佐藤満春前回紹介した「低気圧女子の処方せん」は気象予報士がメインで書いた本でしたが、今回紹介する「恥ずかしがらずに便の話をしよう」の著者はお笑い芸人でもあり放送作家でもある方。
トイレに関しての造詣が深いという著者による内容はいたって真面目で、医療関係者の記す専門用語をちりばめた堅苦しい文章ではなく、平易な言葉で書いてあるのでとても分かりやすいです。
もし私も何か医療関係の本を書くとしたら、このような文章を心がけたいと思います。

便や排便にまつわる一般的な解説がなされているのはもちろんですが、特に力点が置かれているのは第六章の「現代社会が抱えるうんこ問題」ではないでしょうか。
日本は便座や下水道の整備では世界最高水準にあるそうなんですが、その一方で「便育」という分野の遅れを著者は危惧しています。
排便というと、どうしてもネガティブなイメージを持ちがちです。
しかし、それを払拭して食べることと同じくらい尊い行為であると子供たちにしっかり学んでもらい、学校などでの排便をためらわない環境作りを提唱しています。
かく言う私も、学校で排便するとからかわれたりするので恥ずかしくてとてもできなかったのですが、日常的に排便を我慢することが習慣になると便秘につながっちゃいますしね。

他にも腸内環境の整え方やおしりの拭き方、介護現場での排便問題など非常に役立つ情報も多く含まれています。

♦♦♦♦♦

なお、本文中に「便秘の定義ははっきりしない」という項目がありますが、ちょうどこの本が発行された昨年秋に日本消化器病学会で「本来排出すべき糞便を十分量かつ快適に排便できない状態」と定義されました。
非常に単純明快なすっきりした定義ですよね。
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 ◆ 診療所ライブラリー 141 ◆


低気圧女子の処方せん 小越久美British Medical Journal ( BMJ ) という医学誌では、毎年クリスマスにユニークな研究論文を掲載します。
今年はその中に、雨が降ると関節痛の受診が増えるかどうかを調べたものがありました。


雨が降る前などに頭痛や関節痛などが悪化する、というのは昔から知られていた現象ですが、最近は「気象病」「天気痛」といった言葉が定着しつつあります。
今回紹介する「低気圧女子の処方せん」は、その気象病について、若い女性にターゲットを絞って書かれたものです。
面白いのは、大半を気象予報士が書いている点。
著者も天気が悪くなると古傷が痛み出すそうなんですが、自身の体験談などをベースにして、気象に密接に関連する病気についてはもちろんのこと、普段の過ごし方などがふんだんに盛り込んであります。

日本において季節ごとに異なる低気圧の発生する仕組みなどを90ページにも渡って記載している点は、気象予報士ならではですね。
ドイツでは、ネット上で当日の天気で起こりやすい気象病まで知らせる「気象病予報」まで発信しているようですね。
鹿児島だと、桜島や新燃岳上空の風向きも天気予報の一部として知ることができ、生活にとても役に立っていますが、単に晴れか雨かという予想だけではない細部に至る情報はありがたいものです。
普段、医師や薬剤師が書いた文章に接する機会が多い私にとってはとても新鮮な内容でした。


さて、先のBMJの論文の報告によりますと、予想に反して関節痛や背部痛を訴えて受診する患者さんは雨の日の方がわずかながら少ないそうです。
天気が悪いと外出するのも辛くなるからではないか、と私は推測するのですが、いかがでしょうか。

 ◆ 診療所ライブラリー 140 ◆


希望のごはん クリコ今回紹介する「希望のごはん」は、いくつかのメディアに取り上げられていたのが目に留まっていました。

病気によって噛む行為が困難になった夫のために作った介護食。
病状を考えながら食事に工夫を凝らす試行錯誤の顛末も書かれていて、単なるレシピ本でもなく、単なる闘病記でもないという新鮮な感覚の本に仕上がっています。
夫婦で取り組む闘病という非日常を、日々創造しながら楽しんでいたのではないか、そうも思える爽やかな読後感でした。

これまでいろんな患者さんを診てきましたが、食べることがしっかりできている人とそうでない人では大病後の生活のクオリティーがまるで違います。
また、高齢者では健康であっても低栄養状態になっているケースも多く、蛋白質をしっかり摂るように推奨されています。
そうは言っても、食事のメニューを変えていくのもなかなか大変な作業です。
この本を通じて、マニュアル化されたようなレシピではなく、一人一人の病状に応じた工夫を凝らして美味しく楽しい食生活を過ごすことがとても大事であると改めて考えさせられました。
また、医療界ではクリティカルパスなどで、治療や検査を標準化しようとする流れが以前からあるのですが、食に限らず個々の状態に合わせて適宜最適化していく努力を回避してはいけませんね。

今回の本から、様々なことを学ばせてもらったように思います。

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 ◆ 診療所ライブラリー 139 ◆


手洗いの疫学とゼンメルワイスの闘い 玉城英彦10月15日は「世界手洗いの日」であることは先日もブログに書きました。( → 手洗い )
今回取り上げるのも、手洗いが主題となっている本です。

手洗いという簡便な作業が、基本的な感染予防の手段で、一定の効果を持っていることは皆さんもよくご存知だと思います。
でも、それが当たり前でない時代があったのです。
手袋もせずに病理解剖をしたその手を洗わないまま、引き続き妊婦の診察をして産褥熱を引き起こし、次々に死に追いやっていた・・。
当時の医学の最先端にあったウィーン大学病院ですら、そんな時代があったのです。
まだ細菌が病気を引き起こすと解明されていなかった19世紀の半ばにあって、手洗いの重要性を説きながらも、それが当時の医学界に受け入れられず、非業の死を遂げたイグナーツ・ゼンメルワイス

今回紹介する「手洗いの疫学とゼンメルワイスの闘い」においては、彼の生涯を描きながら、手洗いを中心とした感染対策や疫学の重要性を非常にわかりやすく伝えてくれる、中身の濃いなかなかの名著です。
医学関係の本は横文字や図版が多く入るので横書きがいいと私は常に言っていますが、この本は文章が中心なのに横書きなのも評価が高い点です。
それにしても、手洗いをするようになって産褥熱が激減したにも関わらず、自らの手が産褥熱を引き起こしていることを頑なに認めようとしなかった当時の医師たちは、ゼンメルワイスが去った後に手洗いを止めてしまい、再び産褥熱の増加を招いても手洗いの重要性を認識できなかったというのは不思議でなりませんね。

彼の功績は、彼の死後にジョゼフ・リスターによって脚光を浴び、評価されるようになります。
今では「感染防護の父」と崇められ、ハンガリーの首都ブダペストの医科大学はその偉業を称え、彼の名前を冠しています。( ハンガリーの現地読みでは「センメルワイス」のようです )
時代が追いついていなかった面があるとはいえ、成した仕事が生きている間には全く評価されないなんて悲しいですし、まだまだ彼の名前を知らない人が多いのも残念でなりません。
このすばらいし本に目を通していただき、イグナーツ・ゼンメルワイスの名前を是非覚えていただきたいと思います。
そして、普段から手洗いをしっかりと励行していただきたいと願っています。


【産褥熱】 分娩終了24時間以降、産褥10日以内に2日以上、38°C以上の発熱が続く場合と定義されています。臨床的には子宮を中心とした骨盤内感染症とほぼ同義語として使用されます。

 ◆ 診療所ライブラリー 138 ◆


胃がんの原因はピロリ菌です 内藤裕二怪しげな健康情報を載せた本ならともかく、ちゃんとした医学的情報に基づいた本で「胃がんの原因はピロリ菌です」と、ここまで断定的なタイトルをつけたものは珍しいのではないでしょうか。
一般向けとしてはかなりボリュームがある情報量で、我々も教科書として使えるくらいの内容ながら、図版も駆使してピロリ菌除菌の重要性をわかりやすく説いています。

私が研究室にいる頃、消化器の分野ではピロリ菌に関する研究が花盛りでした。
ピロリ菌が胃粘膜を傷めるメカニズム、除菌にはどのような薬剤の組み合せと期間が良いか、除菌によって胃がんの発症は防げるか・・・。
様々なことがわかってきて、今は中学生や高校生の頃に早めに除菌しましょうという流れが出来つつあります。
鹿児島県でも本年度から高校1年生を対象としたピロリ菌検診が始まりました。( → ピロリ菌検診、そして除菌を妨げる因子 )
こういった取り組みが全国的に広がると、日本から胃がんという疾患がほとんど駆逐されると思います。

それにしても未だによくわからないのが、ピロリ菌にどうやって感染するのかということ。
井戸水が、なんて話もありますが、人間の体外でピロリ菌はどうやって過ごしているのか、さっぱりわからないのですから。

 ◆ 診療所ライブラリー 137 ◆


下肢静脈瘤発生頻度としては10人に1人と言われている下肢静脈瘤
決して珍しくない疾患だけに、通院中の患者さんからも時々相談を受けることがあります。
残念ながら内科では対応の難しい疾患なのですが、おおまかに静脈瘤の成因や日常での過ごし方などを説明し、必要があれば処置のできる病院を紹介しています。

今回紹介するタイトルもズバリ「下肢静脈瘤」という本では、この疾患について写真やイラストを交えてわかりやすく解説がなされています。
治療法については、レーザー治療の説明にかなり偏り過ぎているのですが、他の方法についても簡単に触れられているので、まあ良しとしましょう。

下肢静脈瘤が気になる方は、待ち時間の間にこの本を手に取ってみて下さい。
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 ◆ 診療所ライブラリー 136 ◆


天気天気が悪くなると関節が痛む、という訴えを臨床現場で数多く聞いてきました。
私の膝は天気予報ができる、とまでおっしゃった方もいました。
なぜだろう、と思いながらもその原因を深く考えたことがないのは平凡な医者の証ですね。

気圧や湿度と慢性的な痛みとの関連が徐々に分かってきていますが、今回紹介するのは、長年の研究から「天気痛」という概念を提唱した医師の著書です。
やや専門的な内容も含まれますが、ポイントは、気圧のセンサーが内耳 ( 前庭神経 ) にあり、酔い止めや漢方薬を服用すると、天気に絡む症状を緩和することができるという点です。

五苓散という漢方薬は頭痛に効く場合があるのですが、頭痛に対してもう一つ使い方のコツを掴めないでいました。
しかし、この天気痛という概念を知ってからは、五苓散を効果的に活用できるようになりました。
なぜ効くかは、本書を読んでいただければわかるのではないかと思いますが、関節リウマチの方にも天気が悪くなる前に服用してもらって効果を上げています。
五苓散は、嘔吐や下痢といった消化器症状によく使いますが、非常に応用範囲が広く、お気に入りの漢方薬の一つです。
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