野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

         ▶▶▶ アクセスMAP
         ▶▶▶ バス路線図

 診療所ライブラリー

 ◆ 診療所ライブラリー 185 ◆


体幹の話著者は鹿児島県出身の体幹トレーニングの第一人者で、指導した12人が東京五輪に出場して大活躍をしました。

青山学院大学がいち早く体幹トレーニングを取り入れて大学陸上長距離界で躍進を遂げたのはご承知の通り。
体幹を鍛える重要性が認識され、厚底シューズの普及も相まって、美しいフォーム、怪我の減少、成績の向上が目覚ましく進歩したように思います。

今回紹介する本では、正しい姿勢を意識するだけでも体幹が鍛えられて疲れにくくなることや、親子ペアやシニアでもできる具体的なトレーニング法を図を用いてわかりやすく解説しています。
ちょっとした空き時間を活用し室内でも行えますから、実践して疲れにくい体を獲得してみましょう。

表紙が黒地に青色の文字を使っていて高齢者にはちょっと見えづらいのではないかと思います。
シニアもターゲットにしている本ですから、もう少し色彩の計画をしっかり立ててもらいたいものです。

 ◆ 診療所ライブラリー 184 ◆


認知症の困った前回に続いて認知症についての本です。

今回紹介する本も非常に素晴らしい内容になっています。
認知症でよくみられる症状を一つ一つ簡潔に解説し、その症状に対して「悪い対処」と「良い対処」を非常にシンプルな一コママンガにまとめています。
そして「笑顔でケアできる対処法」としてワンポイントの解説。
最初から最後まで4ページずつの配分を通しています。

本というのは編集の工夫次第でこんなに分かりやすくなるかととても感心する一冊です。


前回も書きましたが、認知症とわかっていても身内の方はつらく当たってしまうことが多いです。
繰り返し読むことで、困った言動にも上手に対応できるようになり、重くのしかかる負担も鬱々とした雰囲気も解消するのではないかと思います。

 ◆ 診療所ライブラリー 183 ◆


家族のための認知症ケア認知症のある方にどう接したらいいか悩んでいるご家族の方へ。

そんな前書きから始まる本書、実によくできています。

最初は、認知症でよくみられる症状とその対処法が見開きでイラストを交えてわかりやすくコンパクトにまとめてあります。
次は、認知症の種類とその特徴や治療法についての解説。
そして認知症の家族と共に暮らしていく上での工夫や介護サービスの上手な活用法について。

わずか90ページほどのボリュームですが、情報がてんこ盛りです。

認知症とわかっていても、身内はつらく当たってしまいがち。
認知症ケアのバイブルとしてこの本を手元に置いて、繰り返し繰り返し読んでみましょう。
一緒に過ごすことの負担感が軽減すること間違いなしです。

 ◆ 診療所ライブラリー 182 ◆


がん検診がん検診ってややこしいです。

対策型検診と任意型検診があって、対策型は死亡率を減少させることを目的に公費で行われるものです。
しかし、日本では死亡率減少が十分に示されていない検査を対策型検診に組み入れている自治体もあります。

任意型は、検診を受ける人が選択するものですが、ラインナップの中には結構いい加減なものがあります。
意外に思われるかも知れませんが、一番厄介なのが血液で調べる腫瘍マーカー
この数値が高くても必ずがんがあるわけではないですし、どの部位に異常があるのか特定することができません。
今回紹介する本の中にも書いてありますが、腫瘍マーカーが有意義に活用できるのは、実際にがんがある人の治療効果の判定や再発のチェックなのです。


この本は、各種のがんについての解説をしながら、広く定着している検査手段の上手な活用法や問題点を的確に理解することができます。
著者の得意とするマンガもフルに活用していて、一般の方にも非常にわかりやすいものになっています。

巻末には「がん検診懐疑派への反論」という一章があります。
対策型検診に携っている医師と臨床医の間で意見が合わないことがあって、そのあたりにも論理的な見解を述べてあります。

誰もが納得し満足のいく検査手段はないのですが、がん検診を賢く利用しながら日頃の健康意識を高めることができる。
そんな一冊です。

 ◆ 診療所ライブラリー 181 ◆


魚を食べる健康法イコサペンタエン酸 ( EPA ) やドコサヘキサエン酸 ( DHA ) というω-3不飽和脂肪酸のことは多くの方がご存知だと思います。
イヌイットになぜ心筋梗塞の人が少ないのか、日本人が賢いのは生魚を食べるからなのか、といった疑問が、ω-3不飽和脂肪酸の研究の出発点になっています。

それで、いろんなサプリメントが出回っていますが、品質の問題性が指摘されています。
表示通りの量が含まれず、酸化している可能性もあるという報告がありました。( → こちら )
やはり、生魚を摂ることを意識したいものです。

世界的に注目されている成分なのに、日本の魚食は低下傾向にあります。
今回紹介する本では、魚から摂取できるω-3不飽和脂肪酸以外の栄養素の解説もあります。
そして魚を上手に摂るために、魚種別の簡単なレシピが紹介されています。
缶詰めや練り製品を上手に活用する方法まであります。
この本を読んで、魚食の素晴らしさを見直していただきたいと思います。


大山のぶ代著の同名タイトル「新・魚を食べる健康法」も13年前に当ブログで紹介しております。

 ◆ 診療所ライブラリー 180 ◆


肥満と病気のかがく私が高校生の頃に刊行された Newton。
科学をわかりやすく解説する文章と鮮烈なイラストで読む者を魅了する月刊誌は、出るたびにワクワクしたものです。
今も続いているのは、コンセプトがしっかりしていて他の追随を許さないからでしょうね。

肥満と病気の関わりについて簡潔にまとめたムック本。
Newtonらしい文章とイラストで、脂肪細胞の役割・肥満が病気を招くメカニズム・肥満の解消法などの基本をまとめています。

横書きであることは科学系の本として望ましいですし、見開きで情報をまとめる術は、多くの医療情報を提供する本に見習ってほしいものです。

 ◆ 診療所ライブラリー 179 ◆


睡眠時無呼吸症候群10年以上前のことでしょうか、睡眠時無呼吸症候群という疾患がクローズアップされたのをご記憶の方も多いでしょう。
電車やバスの運転手が運転中に眠ってしまい、停車駅を通過したり死傷事故を起こしたりすることが続いた時だったと思います。

睡眠時無呼吸症候群は自分で見つけ出すことはなかなか困難です。
この本の中では、いびき・起床時の頭痛・日中の眠気の症状を手がかりにすることや、睡眠時無呼吸症候群が引き起こす様々な疾患、そして検査や治療法まで、見開きでイラストをふんだんに駆使してわかりやすく解説してあります。
病気の解説の本は数多くあれど、一般の方向けとしてこんな理想的な本はそう滅多に出会えるものではありません。
お勧めの一冊です。

♦♦♦♦♦

1月の水道管破裂で、外来に置いてある貸し出し用の書籍もいくつか被害に遭ってしまいました。
発行から既に10年以上も経過して、情報が古くなってしまっているものもあるので、この機会にできるだけ新しい知見を掲載した書籍に更新していく予定にしています。

 ◆ 診療所ライブラリー 178 ◆


食べることと出すこと潰瘍性大腸炎の闘病記。
ですが、今回紹介する本を書いた方は文筆家だけあって、小説・ドラマ・落語・漫画等、いろんな場面を引用しながら、食事と排泄に焦点を当てて深く洞察した中身の濃い文章を提供してくれています。
病気を患ったからこそ書ける苦しみや感覚、見えてくる光景。
患者ばかりを診ている私とは別の視点で捉えた人間社会の有り様に、どんどん引き込まれていきます。

個人的には「食コミュニケーション - 共食圧力」という章にいたく共感しました。
差し出されたものを食べると、そこに人と人のつながりができ、打ち解けていく。
逆に食べないでいたら、それは相手を拒絶すること。
そういう内容で話が展開していきます。

食事を挟んで会話を楽しむのは、私にとってはとても苦手なことです。
なぜなら、食べる口と話す口は同じじゃないですか。
両方を同時に使い分けるほど、私は器用ではありません。
おいしいものを食べている時は、悪いけど話しかけて欲しくないのです。
こういう変な人も病気で食べられない人も蚊帳の外に置かず、なぜ黙々と食べているのか、食べられないのか興味を持ってもらいたいものです。

コロナ禍で日常が掻き乱され、これまでの常識が通用しない場面も増えています。
この経験は、病気をした時と同じように社会の見え方を変えるものになると思います。
この本を読んで、当たり前のことが当たり前でなくなった時、持つべき大事な視点を磨いてみませんか。

 ◆ 診療所ライブラリー 177 ◆


ふだん漢方「医療機関を応援します」
先日、鹿児島市茶業振興会より、ほうじ茶をいただきました。
この場を借りて、改めて御礼申し上げます。

鹿児島がお茶の生産地であることは意外と知られていません。
生産量は静岡県に次いで第2位で、2019年は静岡県が29500トン、鹿児島県が28500トンでした。
2020年のデータはまだ出ていませんが、鹿児島県がトップに躍り出たのではないかと囁かれています。


今回紹介する本では、漢方の基本的な考え方をわかりやすく解説した上で、普段の食事に採り入れたい食材や工夫が紹介されています。
ほうじ茶を使ったアイデアも紹介されています。
ほうじ茶に、黒糖+シナモン+牛乳、甘酒+ゆず皮、など。
それぞれ、熱を生み出せる状態を作ったり、汗をかいた後の補給にと目的を持ったブレンドです。

我々が処方する漢方のエキス剤の紹介はほとんどなし。
普段の養生のためにも、是非活用してみたい一冊です。

 ◆ 診療所ライブラリー 176 ◆


感染症の日本史神戸在住時には、日本で最初の厄除け神社とされる多井畑厄除八幡宮の近くに住んでいたことがあります。
そこには「疫神祭塚」があり、昔は「厄除け」に「疫除け (やくよけ) 」の意味合いが大きかったのだろうと推測されます。
「疫」は流行り病のことですね。
多井畑厄除八幡宮のことは過去にも触れていますので参考に。 ( →「
和気神社の藤棚」「牛の胆石」)


そんなこともあって、昔から感染症の歴史には非常に興味を持っているのですが、歴史を分かりやすく解説してくれる磯田道史による「感染症の歴史」という本がこの秋に出版されたので、早速購入しました。
私もあまり知らなかったような様々な感染症の史実がちりばめられているだけではなく、その歴史を教訓として今の新型コロナ渦にどう立ち向かうのが賢いのかを導き出しているのが凄い所です。
歴史は過去をなぞるだけのものではありません。
今を生きる我々が、そこから教訓として学び取り、活かしていくことも大事なのです。


戦争や天災よりも、はるかに多くの犠牲者を生むことさえある感染症。
いい加減な対応では太刀打ちできません。
新型コロナの感染者数や重症患者数が過去最多を更新し続けているのに、GoTo関連事業を止めることを頑なに拒み続けるこの国のトップ。
最善策を選択できない宰相とこの愚策は、間違いなく感染症の歴史の一つに刻まれます。
後世の人々が絶対に真似しないように学び取ってくれたら、それはそれで価値があることだと思いますけれど・・。

 ◆ 診療所ライブラリー 175 ◆


残念な習慣多くの方が当たり前のようにやっている事だけど改めた方がいいぞ、という豆知識を集めて紹介している本です。
衣食住に関わることを幅広く網羅し、1~2ページに簡潔にまとめてあり、非常に読みやすい内容です。
知ってるものは復習の意味がありますし、すぐに実行に移したい情報もあり、楽しく最後まで読み切れます。

医療に関することは、歯磨きや爪の手入れなど衛生面での知識や、目薬のさし方や血圧の測り方など医師の説明が疎かになりがちなことまで書いてあります。
うがいについても、このブログで詳しく書いた内容をさらりと簡潔にまとめてあるのは好感が持てます。( → 参考「うがい」)

この本はシリーズ化されていて、続編や健康面に特化したものも刊行されています。
新型コロナで巣ごもりがちな方には、時間潰ししながら正しい常識が身につく本ではないかと思います。

 ◆ 診療所ライブラリー 174 ◆


うんこのひみつ「知られざるうんこの秘密やうんこが持つ別の顔、そしていにしえのうんこの歴史を多数紹介する」と謳うこの本。
その通り、うんこに関して非常に興味深い情報が満載の本です。

宇宙飛行士のうんこがとても臭い理由、病気や美容にうんこが使われてきた歴史など、見開きで小学生にも理解できるやさしい言葉でエピソードが綴られています。


日本においては、し尿を買い取ったり農作物と交換したりして農地の肥料にするシステムが鎌倉時代から確立していました。
買い取られるし尿にはランクが有り、一番高く買い取られるのが大名屋敷のもの。
対して安かったのが牢獄のものだったというのは、この本で初めて知りました。

欧州では路上に捨てていた時代もあったわけで、この点では日本の衛生度は高かったと言えます。
しかし、ピロリ菌を含む寄生虫感染も循環させていたことになります。( → ピロリ菌の本当の感染ルート )


また、海外ではウシやネズミ・ゾウなどのうんこが薬として活用されていたことが本書で紹介されています。
日本の例は書いてありませんが、以前紹介した「旅行用心集」という江戸自体の書物の中に、船酔いで嘔吐した後に便を飲め、とありました。
旅行用心集では、しきりに旅のお供に五苓散を勧めていますが、船酔いへの対応の項目では登場しないのが不思議。
五苓散を事前の服用すると、酔い止めに効果があるんですけどね。( → 旅行に持っていくと重宝する漢方薬 )


うんこについて大人も子供も楽しく学べる良書ですよ。


参考 → 今日のうんこ

 ◆ 診療所ライブラリー 173 ◆


健康食品・サプリ商品名の覚えやすさや名前から連想するイメージは、とても重要です。
例えば、日本において酸分泌抑制薬のH2ブロッカーのシェアでナンバーワンは「ガスター」( ファモチジン ) なのですが、胃を想起させ ( gastro = 胃 ) 、言葉に力強さがあるのが、この分野の代名詞的存在になった理由の一つだと思っています。

具体的な商品を取り上げ、そのネーミングの問題点に焦点を当てているのが今回紹介する本ですが、健康食品・サプリメントが商品名やパッケージの表示で、ここまで奸策をめぐらせて消費者を惑わせているとは知りませんでした。

鹿児島では有名な「伝統にんにく卵黄」も槍玉に上がっていますが、サプリ1日分に含まれる卵黄量が卵1個の約1/112しか含まれていない計算になるとか。
対して、メーカーからは「鹿児島の伝統的な作り方を踏襲していてつなぎの役割をしているだけ」と回答があったようです。
つなぎの役割だけなのに、ホームページでは「栄養たっぷりの飼料を食べて育った、元気な鶏の有精卵黄のみを使用」と大きく宣伝されています。
こういうのを見たら、ほとんどの人は卵黄成分もたっぷり摂れると勘違いしてしまうでしょうね。

この本の中で、複数の商品が取り上げられているメーカーがあります。
2016年の伊勢志摩サミットの際にメディアセンターで平然と水素水を提供するという愚行を演じたので、以来私はそのメーカーの飲料水は買わないようにしています。
ネーミングの問題点を指摘されても改善しようとしないメーカーの姿勢も見て取れましたので、一人不買運動は今後も続けていこうと思います。

 ◆ 診療所ライブラリー 172 ◆


シニアの逆流性食道炎胃・十二指腸の潰瘍や胃がんをどう治療していくか。
私が医者になって内視鏡をいじり始めた頃は、それが大きな課題でした。
命に関わるような潰瘍やがん治療に明け暮れていた昔は、逆流性食道炎なんてたかが胃液が食道に逆流してくるだけの話ではないか、と多くの消化器医はあまり問題にしてきませんでした。

ピロリ菌の除菌療法が普及すると景色は大きく変わり、逆流性食道炎に悩む方は本当に増えています。
胸やけだけでなく、のどの違和感・咳・虫歯・中耳炎・不眠などの原因になりうる疾患で、日常生活に支障をきたしている方も多くいらっしゃいます。
胃酸を抑える薬の内服が治療の基本になりますが、それだけでは症状が落ち着かないケースもあり、そこは消化器医の腕の見せ所になります。
逆流性食道炎の診断には経鼻内視鏡が適していますし、今の治療に満足していない方も含めて、是非私に相談して下さい。
一緒に日常の質を改善していきましょう。

10年前になりますが、逆流性食道炎について9回シリーズで書いたブログ記事がありますので、こちらも参考に。〔 → 胃食道逆流症 (逆流性食道炎) 

 
♦♦♦♦♦

さて、今回の本紹介の本は、そんな逆流性食道炎についてまとめてある本です。
シニアの方にも読みやすいように、大きな字で 図版も多くとてもわかりやすいですよ。

 ◆ 診療所ライブラリー 171 ◆


人類と病新型コロナウイルスの感染者数が最も多く世界保健機関 ( WHO ) を脱退した米国、そして2番目に多く経済最優先を掲げるブラジル。
この2か国がWHOの成立に大きく関わっていたとは何とも皮肉です。

この本では、世界的に流行したいくつかの感染症を取り上げ、世界的な協調を取りながら我々人類がいかにして克服してきたか、その歴史を学ぶことができる本です。

4月に刊行されたばかりの本で、今深刻な影響を及ぼしている新型コロナウイルスのことにも簡単に触れられており、これまでも国際的な管理がうまくいった例やその逆もあることが紹介されています。
感染蔓延の封じ込めと経済の両立についても、過去に何度も苦悩があったこともわかります。
例えば、スエズ運河が完成して問題となったコレラ。
最大の利益を享受するイギリスが検疫に消極的だったのですが、コッホによりコレラ菌が発見されて、インドと地中海で流行している菌が同一のものであることが証明され、それがやがて国際衛生協定の締結に結びついていくという話を読むと、皆が足並みを揃えて危機に立ち向かうことの重要性が改めて浮き彫りになってきます。

人類がたどってきた感染症との闘いの歴史を振り返り、新型コロナウイルスにいかに賢く対応していくべきかを考える上で、とても役に立つ本ではないかと思います。

↑このページのトップヘ