野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して41年の野口内科です。
  医療・健康に関する情報はもちろん、近隣の話題、音楽・本のことなどを綴ってまいります。

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 医療に関する雑学

◆ ABH - 口の中にできる血豆

ABHAngina bullosa haemorrhagica (ABH) という疾患があります。
名前を聞いてもピンと来ないでしょう。
一般の方は当然としても、医師にもあまり知られておらず、医学部の学生時代に習ったこともありませんし、日本語名すらないという疾患です。
この疾患、簡単に言うと食事中に口の中に血豆 ( 医学的には血疱〈けっぽう〉と言います ) ができる病態なんです。

この疾患に悩む方は潜在的には多いのではないかと思います。
ツイッターで「口の中 血豆」というキーワードを使って検索すると、1日にいくつものつぶやきがヒットします。
このコラムへのアクセスも毎日多数に及びます。
しかし、病院を受診される方は稀なので、医療者側がその実態を十分に把握できていないのが現状です。

実は、私はこの疾患を随分昔から持っています。
インターネット上でもあまり多くの情報を得られませんし、ましてや正しい内容のものが少ないので、自身の経験を踏まえながらこの疾患を解説してみたいと思います。


◆ どんな条件で口の中に血豆ができるのか

煎餅まず、発生するのはほぼ食事の最中で、舌や頬を噛んでいなくても起きます。
豚カツなどを口の中でモグモグしている際に、揚がったパン粉が口の粘膜にチクリと刺さるような痛みに襲われます。
するとその部分が瞬く間に膨れてきて赤黒い血豆が形成されます。
揚げ物以外にも、せんべいやピザの焦げた部分、ナッツ類、小魚のおつまみ、大学イモ、エビの殻などで血豆ができたことがあります。
硬くてカリカリしているような細かいかけら状のものであれば、何でも原因となり得るようです。

この血豆は、文献的には軟口蓋部分にできやすいとされています。
私の場合は、歯肉、硬口蓋、頬粘膜、舌など口の中の至る所にできますが、軟口蓋の部分にはあまりできません。
なお、舌については側面および口腔底側 ( 舌の裏側 ) にはできますが、表側にできた経験はありません。

( ※ 硬口蓋は、口の中の上の壁のうち、骨があって硬い部分。軟口蓋は、硬口蓋よりも後方の柔らかい部分を言います。)


血豆の表面を覆う膜 ( 被膜 ) は結構頑丈なので、簡単には潰れません。
何もしないで放っておくと1-2日はそのまま残るケースが多いですが、そのうち自然に潰れて中に貯まっていた血が出てきます。
血豆がある時も痛みがありますが、潰れた直後の痛みが一番つらいですね。
被膜が剥がれてびらんと呼ばれる傷となり、やがて跡を残さずに治っていきます。
なお、軟口蓋部分ののどちんこに近い部分にできると、物を飲み込む時に陰圧となる影響を受けて、被膜の中に溜まる血液が増えて次第に大きくなる上に、血豆がのどの奥の方へ這うようにずれていくことがあります。
血豆がずれていく時はたまらなく痛いです。
なお、血豆が大きくなって呼吸困難をきたした症例も報告されています。


◆ ABHの原因は・・・

なぜこのような血豆が形成されるのか、残念ながら原因ははっきりしていません。
私の場合、血縁者にABHを持つ人は全くいないので、遺伝性はないものと考えています。

熱いスープ熱で口腔内の粘膜が脆弱になることも一因とされています。
確かに、私は熱い物が大好きで、みんながフーフーして冷ましながら飲むお茶も平気です。
自分自身をよく観察してみると、確かに熱いものを食べた際に血豆ができやすい傾向があるようです。

文献的には、中年以降に多く、口腔アレルギーとの関連が言われていたり、ステロイドの吸入剤を使用している人に多いなどとされています。
しかし、私の場合、中学校の頃には既に発症していたと記憶しており、一部のエビに対しするアレルギーを持っていますが、吸入ステロイドは使用していません。


◆ ABHの予防と治療

原因がわかっていないので、確かな予防法はありません。
慌てずゆっくり食べろ、と指導する以外にないのですが、実際にそれは無理です。
原因となりそうな食材を食べる時に注意深くゆっくり噛んでいてもチクリ、と感じて血豆ができるケースもしょっちゅうです。
生きていくために摂食行動は欠かせませんので、根本的な予防法はないと考えて下さい。

治療法も確立していませんし、この疾患をしっかり理解している医師もほとんどいないので、病院に行っても特別な処置をしてくれるわけではありません。
そこで、私なりの対処法を紹介しておきましょう。

爪楊枝それは、できた血豆を爪楊枝でさっさと潰してしまうという荒技です。
先ほども述べたように、被膜は案外丈夫なので簡単には潰れませんし、場所によってはかなり痛いですけれども、頑張ってみましょう。
潰した後は中から血が出てきますが、基本的に血豆に貯まっている分だけしか出てきません。
ただし、血を残さないよう陰圧をかけるなどして絞り出すのが肝要。
少しでも残っていると治るのが遅くなります。
この処置が終わったら、アズレン系のうがい薬を使って1日に数回、口をゆすぎます。
アズレン系のうがい薬は、痛みを和らげ傷を早く治す作用を持っていますので、欠かせない作業です。
これで、1~2日の間に気にならなくなります。
最近は、うがい薬に加えて半夏瀉心湯を処方することが多くなりました。
半夏瀉心湯も、アズレン系のうがい薬同様に口の中の傷を早く治してくれる働きがあります。
両方を使うことで、痛みの緩和や治りが早いと好評です。

血豆をそのままにしておくと、いつまでも痛いだけです。
やや乱暴ですが、さっさと潰してしまうことをお勧めします。


◆ 日本語病名の提唱

個人的には、特発性食道粘膜下血腫という疾患との関連性はどうなのだろうかと注目しています。
内視鏡検査で、食道の入り口の手前の梨状陥凹という場所や食道に血豆ができている例に遭遇することもありすま。
いかんせんお目にかかるのが稀なので、今のところ関連は見い出せていませんが。

もっと多くの症例を集積して知見の積み重ねが必要な疾患だと思いますが、この ABH という疾患名は病態をしっかり表現しているとは思いませんし、日本語名がないのは残念です。
そこで、この疾患を個人的にも抱えている医師として、日本語の疾患名を提唱してみたいと思います。

突発性有痛性口腔内血疱

いかがでしょうか。


※ 2015年1月に書いた「口の中に突然できる血豆、ABH」に加筆して、新たに綴ってみました。


関連するコラム
●  口内炎を治すには



沢井製薬の販売する胃薬、エカベトNa顆粒 ( エカベトナトリウム水和物 ; 先発品名ガストローム ) にアセタゾラミドという利尿剤が微量ながら混入していたとして自主回収が始まりました。
これが判明したのは、男子レスリング選手のドーピング問題がきっかけだったようです。
尿から禁止薬物の一つであるアセタゾラミドが検出されたものの身に覚えがなく、医師から処方された薬の分析を依頼したら、この胃薬に含まれていることがわかったそうです。
選手は疑いが晴れて何よりです。
また、「ひとつ上の品質」「確固たる安全性」を謳うメーカーには混入した経緯をしっかりと洗い出してほしいものだと思います。


さて、胃薬には様々な種類のものがありますが、エカベトナトリウム水和物は防御因子増強薬というものに分類されます。
バランス説1961年に発表された「ShayとSunのバランス説」というのがあって、消化液でもあり胃自身を侵してしまう可能性のある胃酸やペプシンなどを「攻撃因子」、その攻撃因子から胃を守る粘液やプロスタグランジン・胃の粘膜の血流などを「防御因子」とし、このバランスが乱れた時に胃炎や胃潰瘍が起こるとするものです。
エカベトナトリウム水和物はプロスタグランジンを増やしたりペブシンを抑えたりする働きがあるとされています。

胃炎防御因子増強薬のほとんどは「胃潰瘍」「急性胃炎」「慢性胃炎の急性増悪期」で使えることになっています。
慢性胃炎の急性増悪期」って一体何なのでしょう。
私は、消化器を専門分野として扱っていますが、正確には答えられません。
多分、誰も答えられないでしょう。

そもそも慢性胃炎の定義からして曖昧です。
臨床症状から診断することがありますし、内視鏡や病理の分野でもそれぞれの考え方があります。
ましてや急性増悪期となるとさっぱりわかりません。
医学書に出てくるような用語でもなく、消化器医の口を衝いて出る言葉でもありません。
それなのに「慢性胃炎の急性増悪期」を治す薬がたくさん存在しています。
不思議です。

ただ、私の処方で防御因子増強薬の出番は非常に限られますし、エカベトナトリウム水和物を使わなくなって随分久しいです。
今回の回収騒ぎには巻き込まれておりませんので、ご安心を。

のむこのところ、立て続けに低ナトリウム血症の患者さんを診ました。
聞けば、意識して水分を取るようにしていると答える方がほとんど。
テレビなどで1日に1.5 ~ 2リットルは飲めと言ってるから、と判を押したような返事が返ってきます。
テレビの影響というのは本当に大きいですが、血液中のナトリウムが薄まってしまうくらいの飲水は明らかに過剰。
中には、倦怠感など低ナトリウム血症の初期の症状が出ている人もいます。

そして、多くの方が血液がサラサラになると勘違いをしています。
脱水になればヘマトクリット値 ( 血液中に占める血球の体積の割合 ) が大きくなるのですが、水分を補ってヘマトクリット値が落ち着けば、それ以上低下することはないのです。
この点については 2年前の記事で解説していますので参照して下さい。( → 「水はたくさん飲め」という指導の間違い )

そもそも水分の必要量は、体格や運動の有無、気象条件によっても異なってきます。
体に水が不足したら、「のどが渇く」という体に備わった仕組みでちゃんと知らせてくれます。
無理をしてまで飲む必要は全くありません。
そのような指導の結果、ナトリウム値が回復して倦怠感もなくなった方、多いですよ。

マダニに咬まれることで生じる重症熱性血小板減少症 ( SFTS ) の報告が、鹿児島県では2013年から毎年続いており、今年 ( 2017年 ) も既に 1例の発症報告があります。

だにSFTS については2015年に一度記事にしています ( → マムシだけでなくマダニにも注意 ) 。
マダニに刺されることで起こる感染症は、この他にもツツガムシ病や日本紅斑熱、ライム病などが知られています。
鹿児島県はツツガムシ病の多い地域でもあります。
最近は、造園関係の方などプロの方々は、夏場でも草むらに入る時に肌を露出しないように細心の注意を払っているようです。


さて、厚生労働省の「ダニ媒介感染症」というホームページにあるマダニ感染症を啓発するリーフレットがなかなか優秀です。
厚労省のもの ( → こちら ) は1枚に簡潔にまとめられていますし、国立感染症研究所のもの ( → こちら ) はイラストがお役所っぽくない出来栄え。
院内掲示用に活用してみようと思っています。


マダニはすぐに吸血行動に移ることはないようなので、ちょっとでも疑わしい場所に踏み込んだ後は、衣服をパンパンと叩く習慣を付けておくことが大事です。
また、万が一、咬まれたときは無理に引っ張らないこと。
痛いですし,入り込んだ口器だけが皮膚に残ってしまうケースが多いようです。
医療機関を受診するのが望ましいですが、ここで一つ、裏技を紹介しておきます。
咬んでいるマダニの周囲を少し濡らしてマダニを覆うように塩を盛って5分間待つのです。
そうすると痛みもなくマダニを引き抜くことができるそうですよ。

さむ今月半ばの地元の新聞紙に、鹿児島県内で2016年に起きた入浴突然死が180人いたと報道されました。
1月から3月にかけてと12月に多く、65歳以上が85.6%、独居の方が自宅で亡くなるケースが多いという傾向がデータから見て取れます。
ちなみに、2016年の鹿児島県での交通事故死亡者数は65人ですから、それを上回っているのですが、ほとんど報道されないのでその恐さが認識されていないのが現状です。

気温の大きな変化で血圧が急変することを「ヒートショック」と呼ぶようになってきました。
この和製英語、私には違和感があります。
詳しいことは省略しますが、heat shock protein などの医学用語を連想してしまうのです。
ま、何はともあれ、寒い日が続いていますので、入浴時のこのような悲劇を招かないためのポイントをまとめてみましたのでご参考に。

・脱衣所にストーブなどを用意し暖めておく
・浴槽のお湯張りはシャワーを使う (浴室が少し暖まります)
・浴槽の蓋を開けておき、浴室の床や壁もシャワーで暖める
・食事前、日没前に入浴 (食後や飲酒後・睡眠薬服用後は避ける)
・お湯の設定温度は41℃以下に
・浴槽への出入りはゆっくりと

飲水とても暑い日が続いています。
昨日は大分県の日田市で38.2℃を記録したとか。
熱中症には十分に気をつけていただきたいと思います。
熱中症の原因と対策については9年前に書いていますのでそちらを参考にしていただきたいのですが ( → 熱中症に十分ご注意を ) 、水分だけでなく塩分もしっかり摂ってくださいね。

さて、水分摂取を話題にしたついでに。
脳梗塞や心筋梗塞に罹り、医師から水をたくさん飲むように指導された経験がある方もいらっしゃることでしょう。
血液の粘性を下げて再発を予防しようという考えがあるのかも知れませんが、これに根拠はありません。
それどころか、2007年に日本の泌尿器科医が、水を過剰に飲んでも血液の粘稠度に影響はなく、排尿回数が増えるだけという報告をしています。 ( → こちら )
この報告の中では検証されていませんが、電解質バランスを崩す懸念もあります。

実際、この間違った指導を遵守して低ナトリウム血症を来たした症例を複数診ています。
いずれも体のだるさを自覚する程度で済んでいましたが、再発を恐れて水分摂取量をかたくなに変えようとしない人もいます。
水をたくさん飲んでも血はサラサラにならないということを理解していただくのには苦労します。
のどが渇いたときに我慢せずに必要なだけ摂る、それでいいのではないでしょうか。

熱中症予防においても、水だけの過剰摂取にならないように気をつけましょう。

口の中 血豆 ABH( この記事を元に加筆した新しい記事がありますので、そちらを参照して下さい → 口に中に突然できる血豆、ABHを詳しく解説 )


◆ ABH - 口の中にできる血豆

Angina bullosa haemorrhagica (ABH) という疾患があります。
一般の方は当然としても、医師にもあまり知られておらず、医学部の学生時代に習ったこともありませんし、日本語名すらないという疾患です。
この疾患、簡単に言うと食事中に口の中に血豆 ( 医学的には血疱〈けっぽう〉と言います ) ができる病態なんです。

この疾患に悩む方は潜在的には多いのではないかと思います。
実際、このコラムへのアクセスは非常に多いですし、ツイッターにて「口の中 血豆」というキーワードで検索すると1日にいくつものつぶやきがヒットします。
しかし、病院を受診される方は稀なので、その実態が十分に把握できないでいます。

実は、私はこの疾患を昔から持っています。
インターネット上でもあまり多くの情報を得られませんし、ましてや正しい内容のものもかなり少ないので、自身の経験を踏まえながらこの疾患を解説してみたいと思います。


◆ どんな条件で口の中に血豆ができるのか

まず、発生するのはほぼ食事の最中で、舌や頬を噛んでいなくても起きます。
豚カツなどを口の中でモグモグしている際に、揚がったパン粉が口の粘膜にチクリと刺さるような痛みに襲われます。
するとその部分が瞬く間に膨れてきて赤黒い血豆が形成されます。
フライ以外にも、せんべいやピザの焦げた部分、ナッツ類、小魚のおつまみ、大学イモ、エビの殻などで血豆ができたことがあります。
硬くてカリカリしているような細かいかけら状のものであれば何でも原因となり得ます。

この血豆は、文献的には軟口蓋部分にできやすいとされています。
私の場合は、歯肉、硬口蓋、頬粘膜、舌など口の中の至る所にできますが、軟口蓋の部分にはあまりできません。
なお、舌については側面および口腔底側 ( 舌の裏側 ) にはできますが、表側にできた経験は私自身はありません。

( ※ 硬口蓋は、口の中の上の壁のうち、骨があって硬い部分。軟口蓋は、硬口蓋よりも後方の柔らかい部分を言います。)

血豆の表面の被膜は結構頑丈なので簡単には潰れません。
何もしないで放っておくと1-2日はそのまま残るケースが多いですが、やがて潰れて中に貯まっていた血が出てきます。
血豆がある時も痛いのですが、潰れた直後の痛みが一番つらいですね。
被膜が剥がれてびらんと呼ばれる傷となり、やがて跡を残さずに治ってしまいます。
なお、軟口蓋部分ののどちんこに近い部分にできると、嚥下時に陰圧となる影響を受けて次第に大きくなり、血豆がのどの奥の方へ這うようにずれていくことがあって、この時はたまらなく痛いです。
なお、血豆が大きくなって呼吸困難をきたした症例も報告されています。


◆ ABHの原因は・・・

なぜこのような血豆が形成されるのか、残念ながら原因ははっきりしていません。
私の場合、血縁者にABHを持つ人は全くいないので、遺伝性はないものと考えています。
熱で口腔内の粘膜が脆弱になることも一因とされています。
確かに、私は熱い物が大好きで、みんながフーフーして冷ましながら飲むお茶も平気です。
文献的には、中年以降に多く、口腔アレルギーとの関連やステロイドの吸入剤を使用している人に多いなどとされています。
しかし、私の場合、中学校の頃には既に発症していたと記憶しており、一部のエビに対してのアレルギーはありますが、吸入ステロイドは使用していません。


◆ ABHの予防と治療

原因がわかっていないので、確かな予防法はありません。
慌てずゆっくり食べろ、と言われるのですが、それは無理です。
原因となりそうな食材を注意深く食べていてもチクリ、と感じて血豆ができるケースもしょっちゅうです。
生きていくために摂食行動は欠かせませんので、根本的な予防法はないと考えて下さい。

治療法も確立していませんし、この疾患をしっかり理解している医師もほとんどいないので、病院に行っても特別な処置をしてくれるわけではありません。
そこで、私なりの対処法を紹介しておきましょう。


それは、できた血豆を爪楊枝でさっさと潰してしまうという荒技です。
先ほども述べたように、被膜は案外丈夫なので簡単には潰れませんし、場所によってはかなり痛いですけれども、頑張りましょう。
潰した後は中から血が出てきますが、基本的に血豆に貯まっている分だけしか出てきません。
ただし、血を残さないよう陰圧をかけるなどして絞り出すのが肝要。
少しでも残っていると治るのが遅くなります。
この処置が終わったら、アズレン系のうがい薬を使って1日に数回、口をゆすぎます。
アズレン系の薬は、痛みを和らげ傷を早く治す作用を持っていますので、欠かせない作業です。
これで、1~2日の間に気にならなくなります。
最近は、うがい薬に加えて半夏瀉心湯を処方することが多くなりました。
半夏瀉心湯も、アズレン系のうがい薬同様に口の中の傷を早く治してくれる働きがあります。
両方を使うことで、痛みの緩和や治りが早いと好評です。


◆ 日本語病名の提唱

個人的には、特発性食道粘膜下血腫という疾患との関連性はどうなのだろうかと注目しています。
内視鏡検査で、食道の入り口の手前の梨状陥凹という場所や食道にも血豆ができている例に遭遇することもあるのですが、いかんせんお目にかかるのが稀で、今のところ関連は見い出せていませんが。

もっと多くの症例を集積して知見の積み重ねが必要な疾患だと思いますが、この ABH という疾患名は病態をしっかり表現しているとは思いませんし、日本語名がないのは残念です。
そこで、この疾患を個人的にも抱えている医師として、日本語の疾患名を提唱してみたいと思います。

突発性有痛性口腔内血疱

いかがでしょうか。


関連するコラム
●  口内炎を治すには



胃の模型写真に撮ったのは、胃潰瘍の説明に使ってくださいともらった胃の模型。
裏側には別の模型があり、逆流性食道炎にも使えるようになっています。

これに限らずほとんどの胃の構造模型にみられる間違いがあるのですが、わかりますでしょうか。
それは胃の中全体に気持ち悪いくらいに作られているヒダです。

周囲が赤く真ん中が白いの胃潰瘍のある部分を胃角部と言います。
これよりも左側、胃の出口である幽門にかけての部分は幽門前庭部と名付けられていますが、内視鏡で観察すると縦方向のヒダはこれほどはっきりと存在しません。

胃のヒダ実際の内視鏡画像を提示します。
上の弧を描いている部分が胃角部です。
その真下の部分から手前の胃体部にはヒダが確認できますが、その奥の前庭部ではヒダが追えなくなるのがおわかりでしょう。

ヒダにはどのような役割があるのでしょうか。
特殊な検査で確認されているのは、胃体部では食べ物が行ったり来たりしていること。
ヒダが食べ物の流れをガイドしている可能性があります。 
また、食べ物の有無で胃の大きさが変化しますが、 その際の蛇腹のような役割もあるのでないかと思います。
内視鏡検査では胃の動きを止める注射をしますし、食べ物があると視界不良なので絶食の状態で観察をします。
なので、検査中に消化の際の動きを肉眼で観察するのはまず無理。


前庭部では歯磨き粉チューブを絞るようなとでも表現しましょうか、砂時計のようなくびれができてそれが幽門へ向かって動いていきます。 
この動きは、注射していても観察できる場合があります。
幽門に近いほど輪状筋と呼ばれる胃の筋肉が発達していて、次の十二指腸へ内容物を送り込むような運動をするわけです。
この途中で縦方向のヒダが一時的に現れますが、普段はつるんとしています。
胃は入り口付近と出口付近で運動だけでなく、粘膜の細胞レベルでも随分違った性格を持っています。

胃の動きが乱れることが機能性ディスペプシアと呼ばれる疾患の一因とも考えられています。
消化管の運動と症状との関連性が簡単に調べられる検査法が開発されると面白いのになと思っています。 

♦♦♦♦♦ 温水で肛門を洗い過ぎることの弊害 ♦♦♦♦♦

2cfca00d.gif
患者さんから聞いて初めて知ったのですが、最近の洗浄付き便座には「便意リズム」というボタンがあるようです。

最近、家電が売れない世の中になってきたせいか、メーカーが何らかの付加価値をつけて物を売ろうとする必死の姿が伝わってきます。
しかし、肛門を温水で刺激して排便が促されるというのは科学的に根拠はありません。
体には排便反射という仕組みがあるのですが、直腸の内圧が高まる結果生じる反射です。
肛門が刺激されるたびにいちいち便意を催していたら、日常生活が大変じゃありませんか。

体温より高い温水で過剰にお尻を洗っていると「温水便座症候群」と呼ばれる肛門周囲の炎症を起こす場合がありますので十分ご注意を。
10秒以内の短時間なら問題ないとされていますが、必要以上に洗うと、皮脂を洗い流してしまいます。
皮脂が失われると乾燥して炎症を起こしやすくなります。
肛門も含め皮膚には常在細菌がいますが、これも皮膚を守るバリアとしての大切な役割があります。

私は、排便後に洗い落とすという本来の目的でしか使いません。
ちなみに、冬の寒い時期でも常温の水を使っています。
暖い時期から使っていれば慣れますし、逆に温水の方が気持ち悪く感じるようになります。

また、強く拭き過ぎるのも問題です。
表面を傷つけ、刺激物質や細菌の侵入を容易にしてしまいます。
洗い流したら、力を入れないで水気を取り除くだけにして下さいね。
肛門だって自分の体の大切な一部なんですから、やさしく拭いてあげて下さい。


♦♦♦♦♦ 便意を促すマッサージ ♦♦♦♦♦

ツボ便の貯留してるS状結腸付近にマッサージを施すと、便意を促すのに有効なことがあります。
私の子供たちが赤ん坊の頃、しばらく便が出ない場合に使った方法を紹介しておきます。
その名も「ウンチが出る出るマッサージ」。
おへその左下付近を1-2分軽くさすってやると10分もしないうちに排便がみられましたよ。
よくよく調べてみると、天枢大巨と呼ばれる便秘のツボがあって昔から活用されているようですね。
ツボを指圧して寝たきりの方の排便の一助にしているという報告もあります。( → こちら )
過敏性腸症候群に対して腸管のねじれた部位をマッサージすることを臨床に取り入れている先生もいます。 

排便に苦労しているのなら、水や電気を無駄遣いするより、とりあえず自分のおなかをさすってみてはいかがでしょうか。
全くコストはかかりません。
それでもダメなら、便秘薬を上手に活用することをお勧めします。( → 参考 )

2011070621475322935.gifカルテを記載しながら一瞬、この名称で良かったっけ ? と思ったので近くのスタッフに確認したけれども、誰も知らない。
誰でもそのその存在を知っているのに、使っている漢字はどちらも小学一年生で習うものなのに。

鼻と上唇の間にある縦の溝、「人中 ( じんちゅう ) 」と言います。

よくよく考えてみるとこのような形状をした人中、人間だけにしかありません。
チンパンジーやゴリラといった近縁の霊長類にもないのです。

なぜ存在するのか諸説があるようですが、これは構造物を補強するためでしょうね。
舌とともに巧みに使って言語を操るために、上唇を発達させてきた進化の証しだと思っています。

そう思ってあれこれ調べていたら、人中について深く考察しているサイトがありましたのでご参考までに。
人間の鼻の下の伸縮性が高くて口をすぼめる動作ができることや、脳の運動野で唇に関わる部分がとても発達していることなどが解説してあります。

 → 鼻の下の溝(人中)は何のため?

2011041912452520780.gif医療関係のサイトに経鼻内視鏡に関するアンケート結果が掲載されていました。
「経鼻内視鏡の挿入がスムーズにいかないときどうするか」という質問なのです。

私は、改めて反対側の鼻から挿入を試みますが、同様の答えだった内視鏡医がわずか42%だということに驚きました。
経鼻をあきらめてすぐに経口の検査に切り替える医師が46%も。

その理由として

・反対側の鼻の麻酔に時間がかかる
・操作性や解像度が悪いので施行するメリットを感じない
・無理をして鼻出血させたくない

などが挙がっていました。

確かに検査件数が多いと少しの時間のロスも負担になりますし、内視鏡の性能が経口に比べてやや劣ることは十分承知のはず。
私の経験上、経鼻ができない方は3%程度しかいないのですが、挿入を反対則に切り替えることをどうして「無理」と決めつけるのでしょうか。
楽だと聞いて経鼻内視鏡を希望される方も大勢いるのに、術者側の都合ややる気のなさで簡単に経口にしてしまうのもどうかなと思うのですが。

2010062421521215762.gifああ、ややこしや、ややこしや。

今月、興味ある新薬が発売になりました。

一つが、帯状疱疹後神経痛に対する薬。
帯状疱疹では皮膚の病変が治った後も痛みだけが残ることがあります。
私はこれまで漢方薬を利用してある程度の効果を上げてはいましたが、尾を引くとなかなか厄介で日常生活に影響を及ぼしてしまいます。

もう一つは珍しい疾患なのですが、昔 1例だけ患者さんを受け持ったことがある発作性夜間血色素尿症という病気に対する点滴薬です。
しかしこの薬、一瓶57万円だって !!
ちなみにこの疾患の病態解明には日本人が大きな貢献をしています。

さて、何がややこしいかというと疾患の略称なんです。
医療の世界ではアルファベットの略称を使うことが日常的で、急性心筋梗塞なら AMI、全身性エリテマトーデスは SLE 等と表現することの方が多いのです。

PHN ・・・ 帯状疱疹後神経痛 ( Post-Herpetic Neuralgia )
PNH ・・・ 発作性夜間血色素尿症 ( Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria )
NPH ・・・ 正常圧水頭症 ( Normal Pressure Hydrocephalus )
HPN ・・・ 在宅中心静脈栄養法 ( Home Parenteral Nutrition )

今回の新薬の対象となる疾患とそれに類似する略称なんですが、間違えそうです。

201003111036594763.gif右の絵は、昨年発売された「マイナーエマージェンシー」という本の表紙に描かれているイラストですが、耳の中 ( 外耳道 ) にゴキブリが入っています。
これを見て思い出すのが・・・

・・・医者になって 2年目のことでした。
研修先の病院で当直をしていた夜、寝ている間に耳の中にゴキブリが入ったので何とかして欲しいと来られた男性がいました。
半信半疑で耳の中をペンライトで照らしてみると、確かに黒っぽいものが。
光を嫌う習性を持つゴキブリが更に奥に入ろうと暴れたのでしょうか、その男性が右のイラストの女性のように耳を押さえながらアーッと叫んで苦悶様の表情に変わりました。
我々の世代ならわかるでしょうが、キカイダーのジローがギルの悪魔の笛に苦しみ悶える様にそっくりでした。
光を当ててはまずいと、その場のとっさの判断で看護士にぬるま湯とストローを用意してもらいました。
そして、男性を落ち着かせてベッドに横に寝てもらい、人肌ほどのぬるま湯をストローの中に吸い込んで外耳道の中へポタリポタリと数滴垂らしていきました。
すると、ゴキブリがゆっくりと後ろ足から這い出してきたのです。
何が起ったのかわからなかったのでしょうか、ゴキブリは男性の耳たぶ ( 耳介 ) の上で一瞬きょとんと動きを止めていましたが、危機を察したのか慌てて男性の耳たぶから逃走開始。
次の瞬間、ベッドから起き上がった男性は片手に靴を持って「このヤロー」と大きな声で叫びながら診察室の床を早足で逃げるゴキブリを追いかけ出したのです。
しかし、ゴキブリのすばしっこさにはかなわず、この鬼ごっこの決着はついてしまったのです。
しばらくして落ち着いた男性は、有り難うございました、と礼を言って自宅へと戻っていきました。


「マイナーエマージェンシー」の中では、鉱油 ( 顕微鏡に使うオイル等 ) を外耳道に入れて虫を窒息させろと書いてあります。
また、ゴキブリではなかったのですが、キシロカインスプレーを噴霧して処置をした後輩医師もいます。
いずれも参考になる対処法だと思います。
なお、私がぬるま湯を使ったのは、水を外耳道に入れるとめまいを起こすことがあるからです。
熱湯を入れるのは論外です。


今でも不思議に思うのは、この男性、寝ている間に耳に入ったのがどうしてゴキブリと分かったのだろうかということです。
そして、本の表紙になるくらい耳にゴキブリが入るのはよくあることなのでしょうか ?

2010012417285516198.gif寒い日が続いていますが、この時期に外来で血圧を測る場合、袖の上から血圧計のカフを巻くことも多くなります。
この場合、果たして血圧が正しく測れているのでしょうか。

これを調べた結果が昨年10月の日本高血圧学会で発表されています。( 高知大学医学部検査部山崎文靖氏ら )
報告によると、2mm厚のニットまでなら大きな影響はないものの、4mm、7mmとニットが厚くなるにつれ実際よりも高めに測定されることがわかったそうです。

普段ちょっぴりき気にしながら服の上から測っていた血圧も、こうやってきちんとデータを出してもらうと日常診療に大変役立ちますね。
現在では、半袖でなければそのまま袖をめくらずに測定することがほとんど。
皆さんもご家庭で血圧をチェックされる際はこのことを念頭にしてくださいね。

photo_2-1_1.gifひげ剃りは起床後に真っ先にやる行為だったのですが、最近は夜入浴後にするようになりました。

ひげが伸びる速度は常に一定ではなく、成長ホルモンの関係で起床後から午前中が一日の中で最も伸びる時間帯なのだそうです。
したがって、夜にひげを剃っても起きた時に伸びているのはほんのわずか。
気になるレベルではありません。
朝剃ったのとほとんどかわらない印象です。

感じているメリットが二つあります。
まず、ひげを剃らない分朝がのんびり過ごせるようになったこと。
そして、シェーバーで誤って傷を作った場合、出来立ての傷を取り繕うのには苦労しますが、一晩たっものは治癒が少し進んでいて何とか目立たなくさせることができるということです。

いつも慌ただしく朝を過ごされている男性にはお勧めです。

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