野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡にある野口内科です。
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インフルエンザの予防接種は10月より開始する予定ですが、既に流行の兆しが見えます。十分に気をつけてください。

 大腸がん

_rvrrlfj.gif《 大腸がん 5 》      


検診においては様々な項目について検査を行っていきますが、中にはその有効性に疑問を投げかけられているものもあります。

しかし、大腸がんを見つけ出す手段として用いられる便潜血反応検査には高い有効性があることがわかっています。
これは便の中に含まれる血液の有無を調べるもの。方法としては専用の容器に付属の棒の先に便を擦り付けるだけ。
欠点は痔や消化管の他の病気でも陽性に出ることと、逆に大腸がんがあっても100%陽性にはならないという点。
それでも非常に高い評価を受けている検査です。

検診で便潜血反応検査が陽性であった場合には、次に大腸内視鏡検査などの精密検査を受けていただくという手順がとられます。
そうすることで大腸がんによる死亡が検診を受けなかった人に比べて 7割も低下するということが、この春に厚生労働省研究班から発表されました。
検診によって大腸がんが早い段階で発見される可能性が高くなることは当然のことですが、極めて高い効果が期待できることが数字で裏付けられたわけです。

便潜血検査を省略して診断精度に勝る大腸内視鏡検査を受けていただくのももちろん悪いことではないのですが、
検査の簡便性や費用の点などから検診としては便潜血反応検査に劣る位置づけとなります。
また、先にも述べたように、大腸がんは解熱鎮痛薬で予防できる可能性がかなり高いのですが、こちらも副作用などの点から今のところ推奨されている手段ではありません。

便潜血反応検査による大腸がんの検診。対象年齢の約15%の人しか受診していない現実があります。
採血のように痛い思いをせずにできる、非常に高い有効性のある検査ですから積極的に受けるようにしましょう。
注意したいのは陽性と出た場合は、必ず大腸の精査を受けること。もう一度便潜血検査をして陰性となって精査を受けない方がいます。一度でも陽性と出たならば、便潜血検査を繰り返しても意味はありません。

しかし、検診はあくまでがんを早期に見つけ出す手段に過ぎません。
大腸がんはメタボリック症候群との関連も強く示唆されます。大腸がんにならないように日頃の食事や運動に配慮することが何よりも大切であると考えます。


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znyt9nhl.gif《 大腸がん 4 》     


大腸がんについての 4回目はこれまでの補足説明です。

1回目では、メタボリック症候群と大腸がんについて述べましたが、
糖尿病との関連についてもう少し。

2004年には、糖尿病患者は大腸がんに 3倍罹患しやすいと英国で報告されています。糖尿病の方はご存知の HbA1c という指標がありますが、これが 1%上昇する毎に大腸がんの罹患率が 33%上昇するそうです。

今年の春には、厚労省の研究班から日本人を対象とした高インスリン血症と大腸がんに関するデータが示され、
ここでも 3.2倍の差があることが示されています。
インスリン抵抗性と大腸がんの関連はおおいにあるようです。

2回目においては、解熱鎮痛薬での大腸がん予防についてでしたが、
つい先月、アスピリンで大腸がんが予防できるとするデータが示されました。1日 300mg以上という比較的高用量を 5年間服用すると発生率が 37%、10年から 15年では 74%も低下するという結果です。
現在進行中の米国の臨床試験では高価な COX-2阻害薬が使用されています。こちらの方が、潰瘍などの副作用が少なく理論的に優れているからです。
しかし、COX-1も COX-2も区別なく両方とも抑えてしまう安価なアスピリンにおいても優れた効果があることが判明したわけです。でも、この研究結果からがん予防目的でのアスピリン服用を推奨するには不十分だとしています。

また、アスピリンの大腸がん予防効果は COX-2 陽性の腫瘍に限られる、とする報告もつい最近発表されています。 COX-2 陽性かどうかを簡単に知る方法が無いことや副作用の問題から、やはり予防薬としては推奨しないとしています。

日常生活に留意しメタボリック症候群を防ぎつつ、副作用はあるものの解熱鎮痛薬を飲んでいれば大腸がんをかなり高い確率で防ぐことができる可能性は十分に考えられます。

しかし、もっと大切なことがあります。それはこのシリーズの最終回となる 5回目で。


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wm_vqfyk.gif《 大腸がん 3 》          

大腸がんと食習慣について調べているうち、ちょっと目に留まったことがあります。

まず、カルシウムをたくさん摂る人は大腸がんの発症が 30% 程低下すること。
そして、牛乳をたくさん摂る人も 15% 程低下することが報告されているのです。

この二つをみるとカルシウムは大腸がんの予防になるのか、と考えたくなります。
しかし一方で、関連がないとする発表もありますし、閉経後の女性では差がないことなども言われています。

そんな中、昨年牛乳の中のラクトフェリンという成分についての研究発表がありました。
ラクトフェリンを服用させて、大腸ポリープの大きさの変化をみたものなのですが、多く服用することでポリープのサイズがわずか 5% 程ですが小さくなるという結果が出ています。
気をつけたいのが、まだ発表が 1件だけであること。そして乳製品メーカーの影がちらついていることです。

これとは別にラクトフェリンには内臓脂肪を減らす作用があることも別のメーカーから報告されています。
メタボリック症候群に有効ではないかというわけですね。
そしてラクトフェリンは酸に弱くて胃で失活してしまうため、腸で溶けるように工夫しているというサプリメントを紹介しています。でも、食後ならば胃の中も十分に低酸状態になると私は思うのですが。

牛乳、カルシウム、ラクトフェリン、このあたりはまだまだ調べて多くのデータを出していく必要があるでしょう。
多くのエビデンスを得てこそ信頼のおけるものになると考えます。


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22hykniu.gif《 大腸がん 2 》      


大腸がんにまつわる話の 2 回目です。
今回は内容がちょっと難しいかも知れません。あしからず。

慢性関節リウマチの患者さんに大腸がんが少ないことが知られ、
調べてみると約半分の頻度であることがわかりました。
またアスピリンを服用している人で 40% も低いこともわかりました。
リウマチの患者さんの多くが解熱鎮痛薬を飲んでいますので、
解熱鎮痛薬で大腸がんを予防できるのでは、と考えるに至るのは当然のことでした。

決定的だったのは次のような実験。

まず断っておきますが、大腸がんの多くが大腸ポリープをベースにして生じます。
ただし、大腸ポリープの全てががんになるわけではありません。
また、解熱鎮痛薬はサイクロオキシゲナーゼ (COX) という酵素の働きを阻害することを念頭に置いてください。

家族性大腸ポリポーシス (FAP) という遺伝性の病気があります。消化管にポリープが無数にでき、それらがやがてがん化していく確率が高いことで知られています。
遺伝子を操作して作った FAP のモデルとなるマウスがいるのですが、このマウスの遺伝子をさらに操作してCOX-2 (COXには 2種類のものが知られています) が働かなくなるようにしました。
これでFAPモデルマウスに常に解熱鎮痛薬が効いているのと同じ状態を作ったのです。
その結果、このマウスのポリープの数もがんになる確率も激減したのです。

そして米国で、COX-2 阻害薬を使って大腸ポリープが減るかどうかをみる臨床試験が始まり、かなり有望な結果が得られつつあります。
が、心臓血管系への悪影響を及ぼすことが露見し、一部の試験は中止に追い込まれています。
大腸がんを患った人に対して、アスピリンが死亡と再発のリスクを大幅に軽減させるとの報告もなされています。

解熱鎮痛薬には潰瘍などの副作用もあります。
メリット、デメリットにどのように折り合いをつけて活用していくか、それが今後の課題と考えます。



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《 大腸がん 1 》


これから何回かに分けて大腸がんについて述べてみたいと思います。


というのも、悪性新生物による死亡数をみると
2003年から日本人女性では大腸がん (結腸がんと直腸がんの和) が第1位。
また部位別のがんの罹患数をみても、地域によっては男性で第1位となった所も。
日本において増加の一途をたどっている疾患だからです。

大腸がんがどうして増えているのか。
dngmlsg7.gif腸がんの危険因子として様々な要因が取り沙汰されています。
ただし、確実とされているものは、予防因子としての「身体活動」と危険因子としての「肥満」だけなのです。

最近、厚生労働省の研究班からも、
運動量の多い人は、ほとんど運動しない人に比べ発症危険度が 30% も低くなるという報告がなされました。
ちなみに、運動することで乳がんや前立腺がんも減らせる可能性が示唆されています。
また、太り過ぎ (BMI 27 以上) は男性で 1.4 倍も大腸がんリスクを高くする、との報告もあります。

実はメタボリック症候群と大腸がんの関連を示すような因子が次々と知られるようになってきました。
食べることばかりで運動をせず、どんどん内臓脂肪を溜め込む。
その結果、動脈硬化に絡むものだけでなく、実に様々な病気が発症するのだという認識を新たにして、
日頃から、自制心のある食行動と意識的に体を動かすことに励んでください。




訂正) 以前、生活習慣病、その常識で防げますか? の本の紹介のところで
食物繊維はいくら摂っても大腸がんの発症率に変化はないとしていました。事実この本にはデータが示してあります。
その後調べてみると、摂りすぎても変化はないものの、摂取が少なすぎると発症率が高くなるとの研究結果がありました。
また、野菜や果物の摂取自体は大腸がんの予防因子としての可能性が高く、食物繊維以外の成分が注目されています。



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