野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して41年の野口内科です。
  医療・健康に関する情報はもちろん、近隣の話題、音楽・本のことなどを綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:30
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
         ▶▶▶ アクセスMAP
         ▶▶▶ バス路線図

 最近のニュースから

最近新聞に載っていた記事を2つ並べてみましょう。


まずは、8日の新聞に載っていた「日本の医学部卒業生、人口比最少」という記事。
日本は人口10万人あたりの医学部卒業生数が、比較可能な35カ国のうちで最も少ない ( 6.8人 ) ということ ( 最高はアイルランドの24.9人 ) と、医師に占める55歳以上の割合が37%で平均 ( 34% ) よりも高いというものでした。
更に女性医師の割合についても最低の21%と平均48%の半分以下だったようです。
( 最高はエストニアとラトビアの74% )

もう一つは7日に掲載された「鹿児島市立病院で違法残業」というニュース。
労使間協定で「月45時間以上の残業は年6回まで」という労使間協定を超える違法残業をしていた職員が28人もいたとか。
そこで「月80時間以上の残業を年10回まで」と改めたそうです。( 改悪なのか現実に即したのか‥?? )


医療スタッフ先月の診療所ライブラリー「病院は東京から破綻する」で、国は予定通りに医学部の定員を増やす気配がないことや、医師の献身的な残業で医療現場が成り立っていることなどを書いたばかりでした。
医師が増えると医療費が更に増えるという考えがあるようです。
しかし、もう少しゆとりを持って医師が働ける環境がないと、国民の健康を安心して維持できないのではないでしょうか。

風疹の拡大防止策として、対象年齢の男性に無料で抗体検査や予防接種を受けていただけるクーポンが配られています。
このクーポンの利用率が低迷しているという報道が先週ありました。( → こちら )
鹿児島市でこの制度の開始が7月1日からと遅かった影響もあり、鹿児島県での利用者数は九州の中でも2番目に少ない数字となっています。

採血風疹で最も問題なのは、妊娠20週頃までの妊婦さんが罹った時に胎児に先天性風疹症候群 ( CRS ) を起こす可能性があること。
風疹を蔓延させないためにも、クーポンがお手元に届いた方は必ず検査を受けて、小さな命を守りましょう。
19年度の対象者は、昭和47年 ( 1972年 ) 4月2日から昭和54年 ( 1979年 ) 4月1日の間に生まれた男性です

詳しくはこちらの記事を参考にして下さい。( → 「鹿児島市の成人男性の風疹抗体検査について」)



参考 → 「鹿児島市の19年度の予算案に風疹対策」「流行中の風疹、鹿児島でも」「風疹予防摂取の重要性

現在、全国には82の医学部があります( 防衛医科大学も含む ) 。
医学部人気は相変わらずで、入るのに敷居が非常に高い状態が続いています。

医師以前から地方の大学に都会出身の学生が押し寄せて、卒業すると都会に戻っていくので、地方での若手の医師確保が問題になっていました。
それを解決する手段の一つとして「地域枠」という制度があります。
これは、地域の医師確保を目的に都道府県が大学医学部の学生に奨学金を貸与する制度で、特定の地域や医療機関に計9年勤務すれば奨学金の返還が免除されます。
鹿児島県でも、既にこの地域枠から誕生した医師が県内各地で活躍しています。


先日、お隣の宮崎県からこんなニュースが飛び込んできました。

地域枠4人に1人が県外流出 宮大医学部卒業

制度に強制力がなく、県外で働く場合は奨学金を一括返済しなくてはなりません。
しかし、制度の主旨を理解して入学したはずですから、返済すればいいという話ではありませんよね。
本年度からは、地域枠の学生は卒業後に県内の病院でしか研修が受けられなくなるようですが、研修施設の質の向上も求められます。

さて、地域に医師の頭数だけ揃えばいいという話ではありません。
診療科によっては医師不足は相変わらずです。
鹿児島県では、産婦人科・小児科・麻酔科・救急科・脳神経外科・整形外科を目指す学生にも修学資金を貸与しています ( → こちら ) 。

個人的には、地域枠同様、入学時に特定の診療科の医師になることを前提とした枠を設けてもいいのではないかと思っています。
産婦人科医や小児科医になりたいという強い意志を持ちながら、なかなか入学できないでいる人たちがいます。
医師になるのに、大学入試の際の学力はそれほど役に立ちませんから。

鹿児島市では、19年度から風疹の追加対策を始めています。
風疹の予防接種を受ける機会のなかった昭和37年 ( 1962年 ) 4月2日から昭和54年 ( 1979年 ) 4月1日の間に生まれた男性が対象です。

採血3年間かけて行われる対策で、本年度は昭和47年 ( 1972年 ) 4月2日から昭和54年 (1979年 ) 4月1日までに生まれた方に対して、6月下旬にクーポン券が発送されました。
届いたクーポンを指定された医療機関に提出し、まず風疹抗体検査を受けていただくことになります。

当院では、風疹 IgG, CLEIA法で調べます。
この数値が 20 IU/ml 以上あれば、免疫が十分にあると判断されます。
20IU/ml 未満なら、免疫をつけるための予防接種をMRワクチンにて行ないます。
抗体検査も予防接種も無料で受けられます。

風疹で最も問題になるのは、妊娠20週頃までの妊婦さんが罹った時に胎児に先天性風疹症候群 ( CRS ) を起こす可能性があることです。
CRSは、心臓の奇形・白内障・難聴を三大症状としますが、血小板減少や動脈管開存症、発育遅滞、精神発達遅滞なども起こし得ます。
この疾患は根本的な治療がありません。
風疹自体にも治療法がありませんので、予防接種が非常に重要となります。

風疹を蔓延させないためにも、クーポンがお手元に届いた方は必ず検査を受けて、小さな命を守りましょう。


参考 → 「鹿児島市の19年度の予算案に風疹対策」「流行中の風疹、鹿児島でも」「強力な麻疹 ( はしか ) の感染力」「風疹予防摂取の重要性

IB-Stim-CloseUp-Palcement-Web先日、アメリカ食品衛生局 ( FDA ) が、耳の後ろに弱い電気刺激を与えて過敏性腸症候群 ( irritable bowel syndrome : IBS ) の腹痛を緩和させるというデバイスを認可しました。

          FDAのニュースリリース ( → こちら )
          メーカーのサイト ( → こちら )

このデバイスを3週間使うと、少なくとも3割は激痛から開放されるようです。
右の写真はメーカーのHPにあったものです。

♦♦♦♦♦
 
正確なメカニズムはわかっていないようですが、電気刺激が脳の扁桃体と呼ばれる場所や脊髄をコントロールするようです。
扁桃体は、情動反応の処理や記憶形成などに重要な役割を持っていて、生命を脅かすような恐怖や苦痛を学習し、危険を予知・回避する行動に結びつける働きがあります。
慢性的に痛みが繰り返されると、痛みを学習した扁桃体が興奮しやすくなります。
また、痛みだけでなく抑うつや不安などの情動も扁桃体で処理されるので、これらの陰性の情動が痛みに大きく関わってきます。



さて、最新のIBSの診断基準を示します。
ROME IV基準によると、

週に1回以上の腹痛が3ヶ月以上続き、

 ① 排便により症状が改善すること
 ② 排便頻度が症状の変化に関連するこ
 ③ 便の形状 ( 外観 ) が症状の変化に関連すること

以上3つの排便異常のうち2つの以上の項目を満たし、症状は6ヶ月以上前から出現していること

となっています。
やや理解しにくい文章ですが、簡単に表現すると「腹痛を伴う慢性的な便通異常」となります。

腹痛症状の強い人になると、職場や学校にたどり着くまでに何度もトイレに駆け込んだり、腹痛のため不登校になってしまう場合もあります。
このように、IBSは生活の質にも大きく関わってくる疾患です。
今回米国で認可されたデバイス、確実性はないものの、痛みの軽減で救われる方が増えるようなので期待したいです。

♦♦♦♦♦

IBSは日本においては15%近くの方が罹っているとされていますが、日常生活に支障をきたしているのに病院を受診されないままの方が多いです。
ありふれた疾患なのに関心を持つ医師が少ないのも残念なことで、不必要な検査を繰り返したり、IBSでない患者をIBSと診断したりするケースも見受けます。


日本には、有り難いことにIBSにみられる腹痛や便通異常をコントロールしてくれる漢方薬が存在します。
正しく診断し、これらの漢方薬を中心に既存のIBS治療薬を上手に組み合わせると、とても楽に過ごせるようになります。
IBSに悩んでおられる方は、一度当院にご相談下さい。



なお、耳を刺激するデバイスは、最初にオピオイドの離脱症状を軽減させるために使われ始めたようです。
また、耳から迷走神経を電気刺激して、心房細動を治療しようというデバイスも開発中とか。( → こちら )
耳にはたくさんのツボがありますから、今後いろんな症状を緩和するデバイスが続々と出てくるかも知れませんね。

マイナンバーカード今月初めに、2021年からマイナンバーカードが健康保険証として利用可能になる、というニュースがありました。

マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせることについては2014年の「世界最先端 IT国家創造宣言」の中に盛り込まれており、翌年に厚生労働省から素案が発表されていました。
若干古いようですが、医療分野でのマイナンバー活用についての中間報告のPDFを見ることができます。( → こちら )

保険者間で特定検診のデータなどを連携できたり、予防接種履歴管理ができたりするなどのメリットもあるようですが、私が一番気にしているのは報道にあったこの部分です。

「2021年3月から健康保険証として使えるようにし、22年度中に全国のほぼすべての医療機関が対応するようシステムの整備を支援する」

カメラ付きの顔認証システムを組み込んだマイナンバーカード読み取り装置を病院の窓口に用意しなくてはならないようなのです。
報道では「支援する」とあるので、装置購入費用を補助するという意味だと思いますが、国が全額負担するようにしないと医療機関側での普及が進まないのではないかと思います。
日本医師会も「医療機関においては、読み取る設備を用意していなければ、患者がマイナンバーカードを持ってきたとしても保険資格を確認することはできず、その場合、当然、窓口ではこれまでのように保険証を提示する必要がある」と説明をしています。( → こちら )

東京オリンピックでは本人確認に顔認証システムが導入されるようですが、その装置の写真を見ることができます。 ( → こちら )
この位の大きさになると、小さな医療機関では受付や待合室に空間的ゆとりがなくて装置を置くスペースが確保できないとか、配線に苦慮するような問題も出てきそうです。

果たして、目標としている22年度中までに全ての医療機関が対応できるようになるのか、私は疑問に思います。

連休中に気になるニュースが。

学校で心停止になった子供に対し、救急隊が到着するまでに自動体外式除細動器 ( 以下 AED ) が装着されたかどうかを調べたところ、高校では男子生徒に比べ女子生徒で30ポイントの差 ( 男子 83.2%、女子55.6% ) があったという調査結果が公表されました。
小中学校では男女差はなかったようです。

すぐ側で人が倒れる場面にはなかなか遭遇しないと思いますが、平成20年から27年にかけて全国の学校で心停止になった子供が232人いたとか。
この数字、少ないと感じるか多いと感じるか‥。

人は緊急事態に遭遇した時に、それを楽観視して合理的な行動ができないことが知られています。
これを正常性バイアスと言います。

自動体外式除細動器人が目の前で意識を失って倒れた時に、すぐにAEDを思い浮かべることができるかどうか。
周囲の人達にも協力を仰ぎながら、AEDを取り寄せ、ためらわずに装着できるかどうか。
日頃から講習などを受けて、一刻を争う状況にしっかり対応できるようにしておかなくてはなりません。

女性の肌を露出させることに対しても、正常性バイアスが影響して躊躇するのかも知れません。
AEDをもっと普及させる上で、今回の報告で浮かんだ課題をどう克服するかも改めて考えなければなりませんね。

なお、装着する以前に使い方がわからない方も多いと思いますが、AEDは蓋を開けると音声ガイダンスが流れ、電極パッドを貼る位置なども教えてくれますし、電気ショックが必要な状態かどうか自動的に判断してくれます。

ゼンリンとの契約解除をきっかけにして、Googleマップの不具合が相次いで報告されています。
鹿児島でも、鹿児島湾上にトイレが表示されたり、山中に巨大な湖が出現したりしていたことがニュースになっていました。
いずれも改善されているようですね。

さて、当院はどうなっているでしょうか。
下の地図をご覧下さい。( クリックで拡大 )
野口内科周辺の地図

全く問題なく表示されています。

これで安心していたのですが、別のところでとんでもないことが起きていました。
それはストリートビューです。
当院の西側を南北に走る道をストリートビューで見てみるとこんなことになっています。( クリックで拡大 )
九州自動車道

真っ暗で、当院の影も形もありません。
どうやら、当院の東端のほぼ真下を走っている九州自動車道のトンネル内部が表示されているようなのです。
これでは劣化したと言われても仕方ないですね。

当院にGoogleマップを利用して来られる際、もしかしたらトンネルの途中で目的地だと示されるかも知れませんが、くれぐれもお気を付けて。

3月11日は東日本大震災から8年目となり、テレビや新聞などでは様々な特集が組まれました。
私が阪神淡路大震災を経験していることは、既にこのブログでも繰返し取り上げています。
阪神淡路大震災では火災が、東日本大震災では津波が、被害に更なる拍車をかけましたけど、同じ地震が原因になっていても個々で異なる問題が生じます。


map鹿児島では桜島の大噴火の可能性があります。
3月9日には鹿児島救急医学会等が中心となった座談会が行なわれ、大規模な噴火の際の入院患者の安全確保についての議論が行なわれたようです。

噴火時の直下型地震や津波なども想定されていますが、一番の問題はやはり火山灰でしょう。
火山灰はその時の風向きによっても堆積量が異なって来るものの、一番の人口密集地である鹿児島市は灰に埋もれてしまうのは必至。
大正噴火クラスの規模の爆発があり風向きが鹿児島市内方面だと、当診療所のある武岡地区では約1mも火山灰が降り積もる予測がなされています。
鹿児島の方ならよくご存じでしょうが、火山灰が水分を含むとセメントのように固まってしまいます。
50cm積もったまま水を含むと家屋が倒壊してしまう可能性もあるようですね。

通常の災害などでは比較的早期から行われるであろう救助活動や支援物資の供給が、降灰に阻まれてかなり遅延してしまうことは間違いありません。
3日は備えておくべきと言われている食糧や燃料も十分とは言えないでしょう。
4月になれば熊本地震の話が盛んになってくると思いますが、こういう機会を捉えてでもいいので、大噴火を見越した備えを真剣に考えてみて下さい。

昨日の新聞に、鹿児島市の19年度の当初予算案が示されていました。
その中で2つの風疹対策が目を引きました。

予防注射一つは、過去に予防接種を受けなかった7~19歳を対象に、はしか・風疹混合ワクチン ( MRワクチン ) の無料接種を3年間実施するというもの。
無料接種は夏ごろから始める予定らしいですが、対象者を約8500人と見込んでいるようです。
未接種の方、かなり多いんですね。

もう一つは、39歳から56歳の男性約6万4千人に無料で風疹の抗体検査を3年間実施するというもの。
事業所での健診や特定健診の機会を想定しているようです。

いずれも大事な施策です。
まだ議会を通ったわけではありませんが、この機会をおおいに活用して下さい。


参考 → 「流行中の風疹、鹿児島でも」「強力な麻疹 ( はしか ) の感染力」。

先月のことですが次のような研究結果がニュースになっていました。

カレー粉に含まれるスパイスがPM2.5による炎症を抑える可能性

カレーカレーをよく食べる高齢者は呼吸機能が保たれるという報告に着目して行われた実験です。
ヒトの気道上皮細胞をディーゼル排気微粒子を混ぜた溶液に浸した後、カレーに使われる様々なスパイスを添加して培養し、炎症の際に増えるインターロイキン-6や細胞外活性酸素種の変化をみたというものです。
その結果、カレー粉、クローブやウコンの抽出物、コリアンダー、桂皮に炎症反応を抑える効果が確認できたとか。

そういう報告を聞くと、カレーを買いに走る人もいらっしゃるかも知れませんが、注意が必要です。
例えば、今回の研究は培養した気道上皮細胞にスパイスを直接添加しているのですが、実際にカレーとして食べた場合にスパイスの成分がどれだけ気道に到達するのか。
また、炎症の主体は気道上皮細胞ではなく、肺胞マクロファージという細胞ではないのか。
論文になっていないので詳細がわからないのですが、報道されている断片からもいろいろ突っ込みたくなる部分がありますし、何よりプレスリリースしたのがハウス食品なのは留意したい点。
カレーを売ってる食品メーカーだからダメ、ということはありませんが、研究デザインや結果などをつぶさに検討した上で、カレーを積極的に摂るべきかどうかを判断したいものです。


ココアついでに、バレンタインデーも近いので、ココアに関する情報も見てみましょう。
ココアを飲用するとナチュラルキラー細胞の活性が上がる、という報告がありますので森永製菓のホームページ ( HP ) を参照してみて下さい。( → こちら )
それを基に、チョコレート・ココア業界でインフルエンザの予防になるという宣伝がなされていたりします。
しかし、これもどうでしょうか。
的確に問題点を捉えている厚生労働省のコラムがありますので、そちらを読んでみてください。( → こちら )
紹介した森永製菓のHP、実はココアを飲むとインフルエンザの予防になるとは一言も書いてありません。
でも、多くの方は勘違いしてしまう巧みな内容になっています。

ただ、私は風邪で漢方薬を処方する時に、ココアに混ぜて飲むといいですよ、とお勧めすることがあります。
漢方薬の独特の味がマスクされて飲みやすくなるのです。( → 小児への漢方の飲ませ方に一工夫 )
もしかしたら、相乗効果があるかも知れないとちょっぴり期待をしている部分もあります。
 

昨日、NHKの番組「日本人のおなまえっ !」で身近な病名の由来を取り上げていました。
その中で、昔の人は病気の原因が風邪 ( ふうじゃ ) にあると考えていたので、痛風や中風といった名前が付けられていたという話がなされていました。
また、インフルエンザに「印弗魯英撒」という当て字がなされていたのは、海外との交易によりもたらされたとの考えに由来しているようです。
インド・フランス・ロシア・イギリスが撒くという意味のようで、これには座布団をあげたくなります。

風邪について説明を加えておきます。
中医学の世界で「風・寒・暑・湿・燥・火」の6つの「気」が複雑に変化して、人体に影響を及ぼし病気が起こると考えていました。
発病の原因となった気は「風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪」と呼ばれるのです。

蟯虫それ以外に古代の人々は、神の怒りや怨霊、庚申信仰に基づく腹の虫などが病の原因と考えてきました。
左の図は「針聞書 ( はりききがき ) 」という書物の中で描かれた63種類の腹の虫の一つ、「蟯虫 ( ぎょうちゅう ) 」です。
多くの人の探求のおかげで、細菌やウイルス、遺伝的な素因や生活習慣などが病気の元になることがわかり、大概の疾患が治せる現代人は、とてもありがたい時代に生きているものだなと思います。


このブログでは、胃液がこみあげてくる「呑酸」ということばを考察したことがあります ( → どんさんそうそう ) が、医学用語には不思議なものがいっぱいあります。
薬を飲むことを「内服」と言いますが、なぜだかわかりますか ?
解説してもいいですが、自分で調べてみましょう。
ヒントとして、中国最古の地理書「山海経 ( せんがいきょう ) 」という書物にその由来があるとだけお伝えしておきます。

この2~3日の間に大腸に関連するニュースが続きました。
大腸がん、便潜血反応検査、大腸内視鏡検査についてです。
それぞれの話題を考察してみましょう。

♦♦♦♦♦

まず、2014年に新たにがんと診断された人の中で最も多かったのが大腸がんであった、というもの。( → こちら )
大腸がんが増えてきた理由は定かではありませんが、以前から

・運動不足や肥満が大腸がんのリスク。
・大腸がんのベースとなる大腸ポリープは糖尿病との関連が言われ、HbA1c が 1%上昇するとポリープ有病率が33%増えるとの報告。
・HDL-コレステロールが高いと大腸がんのリスクが低い。

等の報告があり、大腸がんはメタボリックシンドロームの延長にある疾患と言えそうです。

このところ、腸内細菌との関連が指摘され、大腸がんの組織からフソバクテリウムという細菌が多いという報告 ( → こちら ) や、食物繊維の多い食事でフソバクテリウムによる大腸がんリスクが減るという報告があります。( → こちら )
他に、バクテロイデス・フラジリスという細菌の関与も指摘されています。( → こちら )

ナッツや魚油、アブラナ科の植物は大腸がんのリスクを低下させるという報告もあり、大腸がんの予防は、メタボ対策を講じつつより良い食生活を目指すことに尽きるのではないかと思います。

♦♦♦♦♦

さて、大腸がんを見つけ出す手段として便潜血反応検査には高い有効性があることがわかっています。
その検査キットを市販化する動きがあるのに対し、精度管理などに懸念の声が上がっているというニュースが。( → こちら )
厚生労働省内でも意見が分かれているようで、市販化が実現するかどうかはまだ不透明。
賛成・反対どちらの意見も理解できますが、がん検診を受ける人が少なく、大腸がんが増えてきている日本の現状で、次の一手をうつ必要がある用に思います。

強調しておきますが、便潜血反応検査は1回でも陽性になれば、大腸の精密検査を受けなくてはなりません。
そのあたりの理解がなく、再検査をオーダーする医師もいるのですが、間違いです。
詳しくは、以前書いた「便潜血反応検査について」を参照して下さい。

♦♦♦♦♦
 
大腸内視鏡大腸がんの有無を調べるのに主力となっているのは大腸内視鏡検査ですが、座ったままで検査を受けると苦痛が軽減されることを自ら試して証明した研究に対し、イグ・ノーベル賞が授与されたニュースが大きく取り上げられました。( → こちら )
検査は通常、左を下にして寝てもらう左側臥位というポジションで行います。
内視鏡が挿入しづらいと仰向けになってもらっうなど、体位変換をする場合がありますが、座位になると我々と患者さんが向き合う格好になり、お互いばつの悪い雰囲気になるでしょうね。

自分で自分の大腸内視鏡をする医師を何人か知っていますが、ずっと座位で検査する先生は見たことがありません。
私は、経鼻内視鏡なら何回か自ら行い、このブログでも以前紹介しました。
大腸内視鏡を行なうとするなら、座位でもできる専用の椅子から開発に着手したいと思います。

東京医科大学の不正入試問題を発端にして、医学部入学にあたって女性差別があるのでないかという問題がクローズアップされています。
3日には文部科学省が、中間報告として各大学の過去6年間の平均の男女別の合格率の差を発表しました。
全大学の平均で男子が女子より1.18倍合格率が高く、順天堂大学は1.67倍もあったとか。
ちなみに、私の出身大学である神戸大学は1.04倍、地元の鹿児島大学は1.02倍という数値でした。( → こちら )

女性差別ただでさえ忙しい医療現場で、休職する可能性が高い女性医師の比率が高くなるのを嫌う人がいるのは事実で、入試で女子を制限しているのではという疑念に繋がっていると思います。
実際、出産前後にわずか3ヶ月の休職を申し出た後輩に対して聞くのも嫌になるような悪態をついていた先輩の男性医師がいました。
また、同じように休職を願い出た女性医師に二つ返事でOKを出しておきながら、話が終わり女性の姿が見えなくなった途端「女はこれだからな !」と吐き捨てていた別の先輩もいました。

医師が忙しい理由の一つに、医師でなくてもできる仕事を負担していることがあります。
国立の病院に勤務していた時、内視鏡の準備や洗浄などが下っ端の医師の担当だったのはその典型例です。
医師という資格がなければできない仕事に専念できる環境を整えて、男女の区別なく働き甲斐のある医療現場が実現できればと願っています。

ちなみに、私の入学時には120人中26人が女性。
これでも先輩たちの学年よりも女性の比率は多かったのですが、後輩の学年ではその比率はますます高く学部内が華やかになっていきました。
なお、当時の国立の医学部の入試は筆記試験のみで、数値化しにくい面接はありませんでした。

元々医療機関は、看護師を中心に圧倒的に女性の多い職場だからでしょうか、個人的には女性医師との仕事に違和感を感じたことはありません。
タフな世界に身を投じるだけあって頼もしい面々が揃っていたので、一緒に楽しく仕事が出来たように思います。
海外諸国と比べ女性医師の割合がとても低い日本では、まだまだ女性医師が増える余地があります。
男性に比べ女性医師が担当する患者は生存率が高いという報告もあります ( → こちら ) し、私が何らかの病気で医療機関にお世話になる時は、女性医師に担当してもらいたいと思っています。

17日に、米国ニューヨーク大学の医学部が、授業料を免除する奨学金を提供すると発表しました。
授業料は日本円にして年間610万円と言いますからかなりの負担です。( → 米NY大学 全医学部生の授業料を免除へ )

ローン地獄米国では、医学部に限らず、大学に入ると多くの学生が学生ローンを組むそうです。
返済義務のない奨学金がもらえたり、学費の割引があったりするようですが、その恩恵を得られるのはごく一部。
日本と違って勉強漬けでバイトができるわけでもなく、ローンの返済に苦しみ、不良債券化している割合も高いため社会問題化しているようですね。
ですから、今回のニューヨーク大学の英断が大きなニュースになっているのだと思います。


さて、日本の医学部の2018年度の授業料を調べてみました。
国立大学は他の学部と差がなく、年間535,800円です。
私立大学では、最も安いのが最近新設された国際医療福祉大学で6年間で1850万円 ( 年間約308万円 ) 、最も高いのが川崎医科大学で4716万5千円 ( 年間約786万円 ) です。 (  → 参考 )
私立の医学部に関しては、米国並みのところも結構ありますけど、親御さんはどうやって支払っているのでしょうか。
そして、医学部って何でこんなにコストがかかるのか、なぜ大学間でばらつきが大きいのか、他人事ながらとても気になります。

ちなみに、私の時代の大学授業料は216,000円でした。
入学年度の額がそのまま卒業まで適用されます。
半期に一度納付しますが、その都度10万円を少し超える額を納めていました。
先輩の学年はさらに安くて7万円台と9万円台のだったので、うらやましく思っていました。
今にして思えば、安い費用で医師として養成させていただいたことに感謝しなくてはなりませんね。


学習意欲が高く将来社会に大きな貢献が出来る可能性のある人が、費用を理由にあきらめざるを得ないミスマッチは我々にとっても大きな損失です。
医学の分野に限らず、優秀な人材を埋もれさせないためにも、学費の問題は真剣に考えていかなくてはならないでしょう。

↑このページのトップヘ