◆ 診療所ライブラリー 155 ◆


たたかうきみのうた手術を通して出会った子供たちとは付き合いが長くなるようで、成人してからも外来で嬉しそうに手術痕を見せようとする女性がいたり、同じ医療の道に進んで頑張っている人がいたり。
そんなエピソードを軽妙かつ味わい深いタッチの文章で綴るエッセイ。
ほぼ見開きで一つ一つが完結している短い物語ですが、著者が患者に寄り添い長きにわたって良好な関係を築いている様子を伺い知ることができます。
多くの人を惹きつける温かいお人柄なのでしょうね。

甲状腺疾患を扱う病院に勤務している時は若い人と接する機会も多かったのですが、内科医は比較的高い年齢層の方を相手にします。
なので、この著者とは見える世界が若干異なります。
しかし、転勤ばかりで長期に同じ方を診ることがほとんどなかった勤務医時代と比べ、開業医となってからは、患者さんとの長いお付き合いが格段に増えました。
著者と同じように、皆さんと年月を重ねていけるような存在になりたいと思った次第です。

この他にも、ご自身の母親の介護の話、上司から受けた薫陶や後進への温かなまなざしなど多岐にわたる内容のいずれもが心に染みる名著です。
続編もあるので、是非手に入れて読んでみるつもりです。