<< ジェネリック、大丈夫 ? 第2回 >>


2回目は降圧薬のアダラートCRについて述べてみたいと思います。

一般名ニフェジピンと呼ばれる成分はその強力な血管拡張作用を有し、アダラートカプセルとして1976年に日本で発売された歴史ある薬剤です。
降圧作用も強力で、カプセル内の液体を口に含ませて血圧を短時間で下げてしまうという舌下投与法が一時臨床現場で広く利用された時期もありました。
その後、急激な血中濃度の立ち上がりを抑えて効果を持続するアダラートL錠が1985年に発売されます。
これで1日2回の内服で済むようになりました。
しかし1993年に登場したアムロジピンという1日1回の服用で血圧コントロールを可能としたライバルの登場で、存在が次第に霞んでいきます。
そこでへこたれなかったのはメーカーの意地なのでしょうか、1日1回の服用で血圧をコントロールできるアダラートCRという錠剤を1998年に売り出します。
その1回服用を実現させるため、アダラートCR錠は内核部と外層部を有する二層構造をしています。
外層部がゆっくりと溶け、その後露出した内核部が溶け出すという二段ロケットなのです。
そのため、血中濃度の変化を示すグラフも、3時間と12時間のあたりにピークのあるフタコブラクダのようになっています。

CR02

この特性を上手に活用して、早朝高血圧のコントロールに活用する方法があります。
具体的にはこの薬を夕食後ないし寝る前に飲んでもらい、朝にふたこぶ目の血中濃度上昇がが来るように照準を合わすのです。
降圧薬の夜間服用の有効性の報告は多くありますし、寝てる間に血圧が下がり過ぎることはないこともわかっています。

CR01さて、アダラートCRのホームページを覗いてみると製造工程について書かれているのですが、後から効果を発揮する内核の位置に細心の注意を払っていることがわかります。
内核の位置がずれていると内核が早く露出してしまい、血中濃度が安定しない可能性があります。
そのため、特殊な装置を使って内核の位置のずれたものは不良品として排除するんだそうです。

1回目を読んでいただいた方はわかると思いますが、こういう点をアピールしているのは、ジェネリックに問題があることを暗に示唆したものと考えられます。
品質管理が不十分で内核の位置がばらばらな製品を服用すると、フタコブ目の位置がずれてしまって早朝高血圧のコントロールが日によってばらついてしまう・・・皆さんにも容易に想像がつくのではないでしょうか。
そればかりではありません。
色々な情報を集めてみると、驚くようなものもあります。
ジェネリック製品であるニフェジピンCRの中には二層構造ではなく三層構造をしたものがあるし、それどころか全く層構造をなしていないものもあるというのです。
どれがそれに該当するのか、添付文書にある血中濃度のグラフを見てもアダラートCRと同じようにフタコブラクダなのでわかりません。
そんな内部構造でどうやって血中濃度を維持しているのか不思議でならないのですが。

先発品メーカーが相当な苦労をして作り出した製品です。
血圧コントロールを乱してしまう可能性のあるニフェジピンCRへの切り替えをためらている理由をご理解いただけたでしょうか。