野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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ゾルピデム

先月、ゾルピデム ( 先発品名 : マイスリー ) の使用上の注意の改定がありました。

警告として
本剤の服用後に、もうろう状態、睡眠随伴症状 ( 夢遊症状等 ) があらわれることがある。また、入眠 までの、あるいは中途覚醒時の出来事を記憶していないことがあるので注意すること

禁忌として
本剤により睡眠随伴症状 ( 夢遊症状等 ) として異常行動を発現したことがある患者 [ 重篤な自傷・他傷行為、事故等に至る睡眠随伴症状を発現するおそれがある ]

などが追加となっています。


何のことだか分からないと思いますので具体例を提示しましょう。

【 症例 1 

夜な夜な、突然起きて雄叫びを上げる。そのことを全く覚えていない。

【 症例 2 
夜中に起き出し、冷蔵庫を開けて物色。そして料理を始める。自分で食べた後、ごみ出しまでする。しかし、そのことを本人は全く覚えておらず、朝は空腹感がなく胃もたれがすることを主訴に病院を受診。

 症例 3 
日中は自宅でも車椅子生活。ポータブルトイレにかろうじて自力で移動できる。ところが、夜中に起きて歩いて散歩に出かける。 

いずれもゾルピデムを服用している方々でした。

【 症例 1 
 は、ご家族がかなり困っておられたので、 試しにゾルピデムを10mgから5mgに減量したところ、雄叫びがみられなくなりました。
【 症例 2  は、夜の行動について母親の証言が得られたことで、ゾルピデムを中止した結果、夜間に料理をすることもなくなり、胃もたれも解決しました。
【 症例 3  は、睡眠導入剤の変更で、夜中に散歩することがなくなりました。 

夢遊病大事なポイントは、いずれのケースも同居人がいたために夜間の異常行動が判明したことです。
独居だと、夢遊症状を起こしたとしても誰も気付いてくれません。
十分に覚醒しないまま車の運転をして人をはねでもしたら大変と思っていたら、実際にそのような報告例があるようです。


今回の警告が出る前に色んな症例を経験したので、私は、数年前からゾルピデムを新規に処方していません。
既に内服中の方々についても、説得して10mgを5mgに減らしたり、他剤への変更を促したりしてきています。
特に、独居の方には注力してきました。

ゾルピデムは世界で最も売れている睡眠導入剤のようですが、積極的に選ぶ理由はありません。

 ◆ 診療所ライブラリー 159 ◆


睡眠の教科書その1。
患者さんのご家族からの相談。
「毎晩のように突然ベッドから立ち上がり、ひとしきり雄叫びを上げた後、また寝入りますが、本人はそれを全く覚えていないというんです。」

その2。
全く食欲が湧かないというので、胃を中心に様々な検査をするも異常なし。
機能性ディスペプシアという診断でしばらく治療していたら、ご家族からこんな証言が。
「うちの子、夜中に食べてるんです。冷蔵庫をあさったり、料理を始めたり。その姿がちょっと怖かったもので、お話するのをためらっていたのですが・・。」

♦♦♦♦♦

上に書いた症例は、いずれもゾルピデム ( 先発品名 マイスリー ) という睡眠導入剤を服用していました。
ゾルピデムでは、このような夜間異常行動を起こすことが知られるようになってきています。

その1は睡眠時遊行症 ( 夢遊病 ) として、その2は睡眠関連摂食障害として、今回紹介する本できっちり解説がなされています。
睡眠時運転なるものも存在するようですが、本人は眠ったままですから怖いですよね。
これらの行動は、同居する人の指摘がない限りわかりません。
一人暮らしの方で見出すことはほぼ不可能でしょうから、知らぬ間に怪我をしたり火をつけっ放しにして火事になったりする危険もはらんでいるのは大きな問題です。

この本は「睡眠専門医が教える快眠メソッド」というサブタイトルが付いていますけど、このような睡眠障害に付随するような問題点を中心に書かれているように思います。

我々も、安易に睡眠導入剤を処方するのではなく、不眠の要因の有無や、同居する方がいれば夜間に問題行動はないかなどをしっかり聴取して適切に対応したいものだと思います。

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