<< 出血をきたす消化器疾患 第2回 >>


2011071219105823694.gif出血をきたす消化管疾患について話を進める前に、貧血について少し触れておきましょう。
消化管出血と貧血は切っても切れない関係にありますので。

貧血はヘモグロビン ( 血色素 ) が少なくなることを言い、赤血球数は問いません。
貧血の際には、やや強めの動作をしたときにたやすく動悸や息切れを感じるようになります。
100m全力疾走した後は心拍数が上がったり息がハーハーしたりしますが、酸素の需要が増したときに少ないヘモグロビンを有効活用して供給しようとするために、そのような症状が容易に出るわけですね。
他には疲れやすいとか頭痛、めまいといった症状あります。

ところが一般の方の中には、立ちくらみのことを貧血という言葉で表現し、医療機関を訪れるケースが結構見受けられます。
立ちくらみは、ヘモグロビンがたっぷり存在していても起こる症状なのです。
脳貧血」という俗称を医療関係者も使うことも混乱の一因だと思いますが、立ちくらみは「起立性低血圧」、小児ならば「起立性調節障害」等の疾患に該当することが多いと考えられます。

WHOの診断基準ではヘモグロビン値が、成人男性で13g/dl 未満成人女性で 12g/dl 未満を貧血と定義しています。
しかしこの基準を満たせば即治療というものでもありません。
同じヘモグロビン値でも、怪我などでの急性出血の場合と知らぬ間に緩やかに貧血が進行する場合とでは、症状が異なります。
仮にヘモグロビン値が9g/dlであったとします。
急性出血の場合なら患者さんは青ざめ、動けばフラフラ。
これに対して緩やかに進行した場合、全く症状を自覚しない方が結構いらっしゃいます。
従って、検査値だけではなく、原因や日常生活上の自覚症状の有無などを鑑みて治療法や治療のタイミングを探っていきます。

さて、臨床上もっともよく見られる貧血は「鉄欠乏性貧血」です。
さまざまな原因で生じますが、消化管からの慢性的な出血も疑っていかなくてはならない病態です。
診断基準は日本鉄バイオサイエンス学会が作成したものがあります。

 ①ヘモグロビン < 12g/dl、②総鉄結合能 ≧ 360μg/dl、③血清フェリチン < 12ng/ml

血清鉄の多寡が含まれていない点は注目ですね。
②③は鉄欠乏性貧血を疑わない限り、一般的な採血では通常調べない項目です。
しかし、①はごく普通に調べる検査項目ですし、同時に算出され赤血球の大きさをみる平均赤血球容積 ( MCV ) という指標があるのですが、これである程度鉄欠乏状態を推測することができます。
MCV の基準値は 90±10 fl 。
鉄欠乏性貧血ではどういうわけか赤血球が小さくなるので、80以下と低い数値を示すことが多いのです。
鉄欠乏性貧血の場合、ヘモグロビン値が一桁になったあたりで治療を始めることが基本。
しかし、なぜ鉄が少ない状態を招いているのか、その原因を明らかにするために一度は消化管も精査する必要があります。

  参考 → http://jbis.sub.jp/fe/04-01/0042.html