野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

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    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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ヨード

<< 風邪薬についての考察 第2回 >>


うがい2手洗いとうがいは風邪予防の基本。
そのうがいに薬剤を使われる方も多いと思います。
そしてその代名詞的な存在が、ヨード系のうがい薬であるのは誰もが知るところでしょう。

このヨード系うがい薬に風邪の予防効果が全くない、というのは 5年前の当ブログにて解説していますのでご覧下さい。( → うがい )
改めて要点を述べますと、

・水道水だけのうがいで風邪の罹患が約3割低下
・ヨード系うがい薬を使うとうがいをしないのと罹患率に差がない

ポビドンヨードは優れた殺菌能力を示しますが、一方で組織障害性も有します。
一昔前までは褥瘡など創傷処置に盛んに使われていましたが、使わない方がきれいに早く治る事実は今や常識。( → 傷は消毒しない )
風邪の予防にもならないし、風邪をひいて炎症を起こした咽頭粘膜にはダメージを与えるわけで、どんな段階でもヨード系うがい薬の出番はないと私は考えています。
ちなみに、2011年には緑茶でのうがいに優れた風邪予防効果があると報告されています。
水だけで3割、生理食塩水で5割に対し、緑茶では7割もの風邪予防効果があるようです。( Noda T et al. J Epidemiol. 2012;22(1):45-9. Epub 2011 Nov 26 )

また、せっせとヨード系うがい薬を使い続けている人の中には甲状腺機能低下症を発症するケースもあります。
ヨード液の一部を少しずつ嚥下し、ヨード過剰の状態になるわけですね。
粘膜からもヨードが吸収されるらしいです。
甲状腺ホルモンの原料であるヨードは少なくても機能低下を招きますが、過剰であっても機能低下になります。
この理由はよく解っていませんが、Wolff-Chaikoff effect という名前で知られている現象です。

当院ではヨード系うがい薬は既に採用していませんし、市販のヨード系うがい薬を使っている人には今回のブログに書いたことを説明した上で、使用を控えるように勧めています。

 ⇨ 第3回 「アズレン系うがい薬の有用性」 

syotgv1p.gif風邪のシーズン。
予防のためにとうがいをなさっている方も多いと思います。

そのうがいについて、3年前ですがこんな研究結果が出ています。
「ヨード系のうがい薬で風邪の予防効果なし」

右のグラフは、ボランティアを「うがいをしない群」「ヨード液を用いたうがい群」「水道水でのうがい群」の三つのグループに分けて60日間にわたり風邪の発症率をみたものです。
見ての通り、一番効果があったのが水でのうがい。
ヨード液を使ってもうがいしない人と有意差が認められなかったのです。
理由として普段のどに住み着いている細菌 (常在細菌叢) や口腔粘膜の細胞がダメージを受けることなどが考えられています。
 (Satomura K. Am J Prev Med. 2005;29:302-7)

ヨード系消毒薬は最近傷口には用いない傾向にあることは以前述べました。(→ 傷は消毒しない )
風邪の際にうがい薬も処方して欲しいと希望される方もいらっしゃいます。
私はアズレン系のうがい薬を基本的に処方します。
予防的に使うならいざ知らず、炎症を起こしているのどに粘膜保護作用のある薬を使うのは当然と考えるからです。
どうしてもヨード系を希望される人には、かえって粘膜のダメージになることを説明し、最小限の使用にとどめて後は水だけでうがいするように指導しています。

さて、この研究で見逃せないこと。
それはうがいに風邪の予防効果があるとはっきり示したことです。
上を向いてガラガラ、とやるのは日本独特なんだそうですが、こんな簡便な方法で風邪になるのを 4割も少なくできるとは素晴らしいことではないでしょうか。


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