野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して42年の野口内科です。
  医療・健康に関する情報はもちろん、近隣の話題、音楽・本のことなどを綴ってまいります。

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アスピリン

 ◆ 診療所ライブラリー 127 ◆


世界史を内科医は、今でこそカテーテルや内視鏡を使って手術をすることがありますが、診察や検査から病気を診断して薬を処方するのが基本。
その薬について十分な知識を持ち合わせていたいものだと常日ごろから思っています。
最近は薬も含めて医学の歴史について調べることが多くなっているのですが、今の医療を知る上で案外欠かせないものだと気付かされています。

今回紹介するのは、人類の歴史の中で特に大きなインパクトを与えた十種類の薬を取り上げ、その開発秘話や果たした役割などを様々な視点から描く「世界史を変えた薬」です。
個人的に面白いと思ったのは、アスピリンについての章です。
ドイツのバイエル社が発売し大ヒットしたアスピリンの商標や特許を第一次大戦後に米国が奪います。
そして4分の3世紀にわたって大儲けをするわけです。
欧米の製薬会社が今もって薬の開発競争に血眼になっているのは、一発当てれば莫大な利益がもたらされることを歴史の中で学んでいるからなのでしょうね。

日本発の創薬にも期待したいのですが、ジェネリック利用促進政策が大手メーカーの体力を削いでいる現状ではなかなか難しいように思います。
医療費削減も大事ですが、将来にわたる国益という視点も持つべきなのかも知れません。

大腸がんを解熱鎮痛薬で予防できるのではないか。
以前から臨床試験などが行われてきましたが、このブログでも 8年前に触れています。( → 薬で大腸がんの予防 !? )

アスピリン紆余曲折がありましたが、15日に米国感染予防医療サービス対策委員会から「心血管疾患およびがん予防のためのアスピリン使用」に関する勧告案が発表されました。( → 参考 )
この中で『50歳から59歳について、10年以内の心血管疾患リスクが10%以上で出血リスクが小さく余命が10年以上の場合、心血管疾患と大腸がんの初発予防を目的とした低用量アスピリン使用を勧告する』としています。
ついに大腸がん予防にアスピリンが使えるようになる、と思ってはいけません。
心血管疾患リスクが全くない人には使えません。
大腸がんだけをターゲットにアスピリンを服用することを勧めているわけではないのです。
米国は日本と異なってがんよりも心血管疾患で亡くなる人が多い国ですしね。
そして出血リスクや余命をどう判断するのか、難しい問題です。

実は10年以上昔、胃や大腸にポリープがたくさんある人にご本人同意の上である解熱鎮痛薬を飲んでもらったところ、劇的にその数が減った印象的な症例を経験しています。
大腸がんのほとんどはポリープから生じますので、解熱鎮痛薬による大腸がんの予防効果を私は随分早い段階から確信していたのですが、心置きなく使えるようになるにはもう少し時間がかかりそうです。

胃今週、相次いで酸分泌抑制薬 (プロトンポンプ阻害薬 : PPI ) が新規に発売されます。

このPPIというジャンルの薬、消化器医以外の医師には敬遠されがちなんですね。
いくつかの要因があると思います。

まず、強い薬、というイメージがあるようです。
従来のH2ブロッカーという薬との比較でそのように感じるのでしょうが、強力というよりより確実、というふうに解釈してもらいたいものです。

また、適応となる疾患名が複雑すぎる点もあると思います。
「胃・十二指腸潰瘍」「逆流性食道炎」はまだわかります。
「ヘリコバクターピロリの除菌」となると消化器医以外には関係ない、となるでしょう。
「非びらん性胃食道逆流症」て何? とイメージが湧きませんよね。
「非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制」「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制」となるともう面倒臭いとなってしまいます。
PPIの種類によって適応や用量が微妙に違っていて、消化器医でも間違ってしまうことがあります。

近年、特に高齢者においてたくさんの薬を併用していることが問題となってきています。
そこで、不必要な処方を減らすべく提唱されている STOPP Criteria という基準がよく使われるようになってきました。( → 日本語訳はこちら )
使用すべきでないケースが列挙されている中において、薬が併用されていないことを咎めている項目があります。
心血管イベントの中の2つ、
 ⑨ アスピリンとワーファリン併用患者にH2拮抗薬 ( シメチジンは除く ) もPPIも併用していない
 ⑪ 胃十二指腸潰瘍既往のある患者にH2拮抗薬かPPIを処方せずにアスピリンを投与
です。
消化管系の副作用を極力避けるために、酸分泌抑制薬の処方が必須なのです。
しかし、循環器医や脳外科医が適応病名を付けるのを煩わしく思って、酸分泌抑制薬を投与してくれないことが多いのが現状です。

改善する一つの方法として私からの提案があります。
PPI の適応を全部まとめて「酸分泌関連疾患」とシンプルにしてはどうでしょうか。
これならば、厄介に思う医師は少なくなるはずなんですが。


〖 今月のつぶやきから 1 〗
ツイート

4年にわたって綴ってきた「医療情報 Pick Up」に代わって、今回から「今月のつぶやきから」をスタートさせます。
ちょうど 1年前から始めた 
Twitter も最初のうちはどのように活用したらいいのかさっぱりわからず、主に情報収集用に使っていましたが、8月ごろからできるだけつぶやくよう心がけました。
今ではブログを補完するような形で、自分のつぶやきだけではなく面白そうな話題をリツイートするなどして発信しております。

Twitter の欠点はすぐに情報が埋没してしまうことなので、月に一回つぶやきを振り返ってみようというのが連載の趣旨です。

今月は、日経メディカルのニュース「アスピリンの一次予防効果は出血リスクに相殺される」( http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201201/523293.html ) にツイートしたものに対して、多くのリツイートやお気に入りへの登録をしていただきました。

この内容に対する意見はまた別の機会に述べようかと考えていますが、リツイートされると俄然さらにいいつぶやきをしようと思わせてくれるのが Twitter のいいところですね。

また、昨日リツイートしたもので『成人式でピロリ菌感染検査、町挙げて胃癌対策に・長野県飯島町』( http://www.m3.com/news/GENERAL/2012/1/24/147419/&pageFrom=tb ) というのがありました。
この長期間の取組みで、未だ結論がはっきりしないピロリ菌除菌による胃癌の一次予防についてのエビデンスが得られるものと思います。
非常に興味深い取組みですね。

さて、一番気になったのは1月11日にリツイートさせていただいた『認知機能の低下が45歳からもう始まっている、と検証結果です』( http://www.m3.com/news/THESIS/2012/01/11/11879/?rUrl=http://www.m3.com/open/thesis/article/11879/&portalId=simpleRedirect&pageFrom=tb ) 。
私も思い当たる節があるものですから。 

2010103023473624036.gif〖 医療情報 Pick Up おさらい 34 〗


だいたい 3日に一度の記事更新を目標にしている当ブログですが、実際はそれより多く書いてきました。
しかし今月は意識したわけではないのですが見事に 3日ごとに記事が並びました。
どうでもいい話でした。

今月の医療情報 Pick Up で紹介した情報は以下の通りです。

・人工甘味料入り/炭酸飲料を/1日2杯以上摂取で/腎機能低下リスクが/上昇 ( Clin J Am Soc Nephrol. 2010 Sep 30 )

・低用量アスピリンで/大腸がんの発生率が/70%低下/20年の追跡調査で ( Lancet. 2010 Oct 22 )


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甘味料については、この春に加工食品の甘味料を多量にとると善玉コレステロールが低下し、中性脂肪が上がるというデータが示されています。( JAMA 2010; 303: 1490-1497)
糖だけではなく脂質系や腎臓の働きにも影響を及ぼすわけですから、甘いものを摂り過ぎることのないように十分気をつけましょう。

また、解熱鎮痛薬を用いた大腸がんの予防については 3年前に当ブログで詳しく解説しています。 ( → こちら )
安価なアスピリンで癌がある程度予防できるのですが、一方で胃潰瘍や腸からの出血という時に命取りになる大きなリスクも背負うことになるので十分留意する必要があります。



         □ 関連記事  医療情報Pick Up  33

2010082514073811596.gif先月、ランソプラゾールという胃薬が「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」の目的で使えるようになったことを当ブログで話題にしたばかりでしたが、今度は同じランソプラゾールが「非ステロイド性抗炎症薬 ( NSAIDs ) 投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」という目的でも使えるようになりました。

特にご高齢の方で体のあちこちの痛みのために NSAIDs を連用せざるを得ない方にはビッグニュースです。
ただ、肩に痛みには H2ブロッカーと呼ばれるタイプの胃薬との併用がいい場合もあるでしょうが。(→ こちら)

それにしてもアスピリンだって NSAIDs の一種。
効能追加はまとめてやっちゃえばいいのにと思いますが、国の許認可を得るって一筋縄ではいかないのでしょうね。

201007252223199784.gif胃酸分泌抑制薬の一つで PPI (proton pump inhibitor)と呼ばれる薬について、日本では使用期限が厳しく設定されていることを以前このブログで嘆いたことがありました。( → こちら )

しかし7月23日、PPI の一種ランソプラゾールが「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」の目的で使えるようになりました。
低用量アスピリンを服用している限り、潰瘍の再発予防目的で期間の制限なく継続して使えるわけです。
ピロリ菌除菌の適応拡大に続いて、消化器分野においての朗報です。

起こる確率は高くないものの、アスピリンに起因する消化管出血は簡単に止めることができないため、酸分泌抑制薬が併用可となる時が待ち望まれていました。
処方する方も飲む方も低用量という言葉に妙な安堵を感じるかも知れませんが、アスピリンの抗血小板作用は強力ですから是非 PPI を合わせて飲んで下さい。

2010033011492315798.gif〖 医療情報 Pick Up おさらい 27 〗


「貼告」というブログパーツを活用して当ブログの左側のカラムで様々なミニ情報をお知らせしておりましたが、お彼岸頃からこのパーツのサーバーが反応しなくなっています。
スクロールする機能を活用して一行10文字以内にまとめてニュース速報風に医学分野の話題をお届けしていた「医療情報 Pick Up」もこのため今月は以下の 2点だけしかお届けできませんでした。
非常に重宝していただけに貼告の回復を待ちたいところですが、かなり長引いていますので違った形で情報をお届けすることも思案中です。


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・乳癌治療後の/アスピリン服用で/転移及び死亡の/リスクが半減 ( J Clin Oncol. Feb 16 2010: doi:10.1200/JCO.2009.22.7918 )

・高齢者が入院すると/認知症のリスクが/非重篤疾患で1.4倍/重篤疾患で2.3倍増加 ( JAMA. 2010 Feb 24;303(8):763-70. )



         □ 関連記事  医療情報Pick Up  26

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