野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して42年の野口内科です。
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メントール

<< 風邪薬についての考察 第5回 >>


病院で処方されるトローチの添加物の中に鎮痛効果が期待されるものがあります。
一つは「カンゾウエキス」。
市販の漢方薬に「甘草湯」という商品があります。
生薬を複数組み合わせるのが基本の漢方薬の中にあって甘草だけという異色の薬ですが、これは激しい咳やのどの痛み・腹痛などに即効性があるとされます。
医療用として存在しないため、私自身使用経験がないので
効果の程は知りませんが、甘草についてはステロイドホルモンが分解されるのを防いで抗炎症作用を高めていることが知られています。

TRP次に「l - メントール」の働きをみていきますが、それを理解するのに必要な「TRPチャンネル」についてごく簡単に触れておきます。
TRPは transient receptor potential の略でトリップと読むのが一般的です。
外部の環境温度を感知するセンサーで哺乳類では9種類が知られており、それぞれ担当する温度領域があるようです。
43度以上を感知する TRPV1 と17度以下を感知する TRPA1 が活性化すると温度を感じると同時に痛みというシグナルにもなります。
生物が至適温度で生きていく上でとても大切な仕組みです。
TRPチャンネルは温度だけでなく、植物由来の成分等でも活性化されることがわかっており、メントールはおおむね25度以下を感知するTRPM8 を活性化しますが、高濃度だと TRPA1 を抑え込んで痛みを感じにくくしてしまいます。
ちなみに、TRPV1 はトウガラシや酸などで、TRPA1 はワサビやシナモンなどでも活性化されます。

前回書いた通り、病院で処方されるトローチの主成分「デカリニウム塩化物」は痛みを緩和する作用を持ち合わせませんが、添加物で鎮痛…。
いや、ちょっと待ってください。
まずトローチには若干メントールの香りを感じとることができますが、舐めていても口の中がスースーする気配は全くありません。
恐らく香りづけ程度の含有量でしかないのでしょうか。
カンゾウについても、甘草湯では一包に1.425gものカンゾウエキスが含有されています。
トローチの大部分がカンゾウの成分なのであれば痛みに効果があるでしょうが、これも甘味料としてわずかに加えられているだけのようで、鎮痛効果が期待できるほどのものではありません。
実際、病院で処方されるトローチを舐めても、のどの痛みは改善しないのが何よりの証拠です。

さて、市販のトローチに目を向けてみると各社の商品には様々な工夫がなされています。
次回はそれをみていきたいと思います。


 ⇨ 第4回 「トローチはのどの痛みをとる ??
 ⇨ 第6回 「医療用より多彩な市販のトローチ」 

61ufftzo.gif先月末の新聞に、手を温めると他人への評価や行動が優しく親切になるという記事が載りました。
その研究結果の詳細は記事に委ねますが、この実験では温湿布と冷湿布も使われています。

内科であっても日常の診療でよく湿布を処方します。
ほとんどの方が温湿布は患部を温かくし、冷湿布は冷やしてくれると勘違いをされています。
温湿布自体に使い捨てカイロみたいに熱を発生させる働きはないこと、逆に冷湿布に氷枕と同様の作用がないこと等を説明すると驚かれています。

温湿布にはトウガラシの成分カプサイシンが使われています。
実際には温度が上昇していないのにカプサイシンで神経が刺激され、暖かく感じるのです。
温湿布を貼っても実際の皮膚温は下がっているとも言われますし、カプサイシンで毛細血管が開いて皮膚温が上がるとも。
しかし正確なデータは調べた範囲では見つけられませんでした。

またカプサイシンには痛みを感じにくくする作用もあるようですが、実際にはそれほど劇的なものでもないようです。(http://www.bmj.com/cgi/content/full/bmj%3b328/7446/991 )

冷湿布に使われるのはメントール。
これも神経がごまかされ冷たく感じているだけですが、メントール自体にも鎮痛効果があるとされます。
痒みや痛みを冷やすことで和らげるのは手っ取り早い方法でもあります。

よく温湿布と冷湿布、どちらを使うべきかを問われることがありますが、貼って気持ちよく感じる方をと私は答えています。

それにしても温湿布も温かいコーヒーカップもどちらも人を優しくするというのは面白い実験結果ですし、何よりこれがサイエンスという超一流誌に掲載された論文であるというのには驚きです。(http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/322/5901/606 )


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