◆ 診療所ライブラリー 140 ◆


希望のごはん クリコ今回紹介する「希望のごはん」は、いくつかのメディアに取り上げられていたのが目に留まっていました。

病気によって噛む行為が困難になった夫のために作った介護食。
病状を考えながら食事に工夫を凝らす試行錯誤の顛末も書かれていて、単なるレシピ本でもなく、単なる闘病記でもないという新鮮な感覚の本に仕上がっています。
夫婦で取り組む闘病という非日常を、日々創造しながら楽しんでいたのではないか、そうも思える爽やかな読後感でした。

これまでいろんな患者さんを診てきましたが、食べることがしっかりできている人とそうでない人では大病後の生活のクオリティーがまるで違います。
また、高齢者では健康であっても低栄養状態になっているケースも多く、蛋白質をしっかり摂るように推奨されています。
そうは言っても、食事のメニューを変えていくのもなかなか大変な作業です。
この本を通じて、マニュアル化されたようなレシピではなく、一人一人の病状に応じた工夫を凝らして美味しく楽しい食生活を過ごすことがとても大事であると改めて考えさせられました。
また、医療界ではクリティカルパスなどで、治療や検査を標準化しようとする流れが以前からあるのですが、食に限らず個々の状態に合わせて適宜最適化していく努力を回避してはいけませんね。

今回の本から、様々なことを学ばせてもらったように思います。