野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
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    院長   野口 仁

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半月ヒダ

  << 宿便について考える 第三回 >>


juumou.gif宿便や滞留便についてまことしやかに書かれた文章を読むと、腸のヒダの間に便が溜まるとする表現が目に付きます。
このヒダに関しては、どうやら二通りの物が語られているようです。

♦♦ 小腸にしかない絨毛

一つは、絨毛
私の場合、大腸内視鏡を回腸末端にも必ず挿入しますが、粘膜面を水に浸すと絨毯の毛足にそっくりの絨毛を観察することができます。
表面積を大きくして効率的に栄養分を吸収するための小突起なのですが、これは小腸にだけ存在し、大腸にはありません。

そして重要なポイントなのですが、小腸の消化内容物って液状なのです。
小腸に続く大腸の役割は、栄養分を吸い取られた液状の食べかすから水分を吸収することです。
これによって内容物が、液状から泥状、軟便、固形便へと変化していくわけです。
上行結腸や横行結腸など大腸の奥の方では、お尻から出てくる固形便には程遠い内容物なのです。
ですから、そのさらに奥の小腸において、絨毛の間に便が付着するなんてあり得ないことなのです。

♦♦ 大腸にしかない半月ヒダ

もう一つは大腸にある半月ヒダを指している場合があります。
小腸の絨毛は顕微鏡レベルの構造物なのに対し、半月ひだは肉眼でしっかり確認できるものです。
半月ヒダは内容物の移送に関係していることは以前に書いていますが、このヒダ丈が高いほど大腸の移送力があり、食べかすが直腸の方までスムーズに移動できると考えられています。
逆にヒダが低く、蛇腹が伸び切ったような大腸では圧倒的に便秘であることが多いのです。
大腸からは腸液も分泌されていて、いつも表面はぬるぬるになっています。
便秘の方はヒダがあまりないケースが多いわけですし、大腸の粘膜面がが乾燥しているわけではありません。
大腸のヒダとヒダの間に便がとり残されるなんて考えられないことです。

但し、ヒダがしっかりあっても大腸の収縮が強くて便をせき止めてしまうことがありますが、これは後ほど。

また、便が腸の壁にはまり込んでいる状態というのはありますので、次回はそのあたりを解説してみます。


宿便について考える 第二回 「宿便の定義を調べてみる」
宿便について考える 第四回 「大腸憩室症について」

qr1hyrup.gif ○○ 学会レポート 4 ○○


内視鏡で大腸を観察すると、上行結腸から下行結腸にかけての内腔がおおよそ三角形をしておりヒダがあるのがわかります。
このヒダを半月ヒダといいます。

便秘の方や高齢者ではこのヒダの丈が低いか無くなっている場合が多いなという印象を、普段の検査を通して持っていました。
この半月ヒダが腸内容の移送に重要であると着目し、特殊な注射を用いてこの半月ヒダの形態変化をみた上で、
便秘薬を上手に選択すると結果的に下剤を減らせるという報告がありました。

一口に便秘といっても、このような弛緩性便秘や排便に関わる筋肉群の機能低下による直腸性便秘、
そして過敏性腸症候群に関連する痙攣性便秘等があり、それらに応じて治療法を選択しなくてはいけません。
アントラキノン系の大腸刺激性下剤や浣腸を繰り返し使うと習慣性になって、便秘を助長すると言われています。
大腸の形態を内視鏡で観察し、その人に合った薬剤で便秘を治療するということも一般化するかも知れません。

ヒトにおいて上行結腸は腸内容を肛門の方へ向かって移送させるのに重力に逆らって働かなければなりません。
他の動物でどうなっているのか全く知りませんが、ヒトでは大腸の中で最も半月ヒダが発達している場所です。
「体の形態には意味がある」・・・私は以前からそう思っています。

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