野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して41年の野口内科です。
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大腸

  << 宿便について考える 第三回 >>


juumou.gif宿便や滞留便についてまことしやかに書かれた文章を読むと、腸のヒダの間に便が溜まるとする表現が目に付きます。
このヒダに関しては、どうやら二通りの物が語られているようです。

♦♦ 小腸にしかない絨毛

一つは、絨毛
私の場合、大腸内視鏡を回腸末端にも必ず挿入しますが、粘膜面を水に浸すと絨毯の毛足にそっくりの絨毛を観察することができます。
表面積を大きくして効率的に栄養分を吸収するための小突起なのですが、これは小腸にだけ存在し、大腸にはありません。

そして重要なポイントなのですが、小腸の消化内容物って液状なのです。
小腸に続く大腸の役割は、栄養分を吸い取られた液状の食べかすから水分を吸収することです。
これによって内容物が、液状から泥状、軟便、固形便へと変化していくわけです。
上行結腸や横行結腸など大腸の奥の方では、お尻から出てくる固形便には程遠い内容物なのです。
ですから、そのさらに奥の小腸において、絨毛の間に便が付着するなんてあり得ないことなのです。

♦♦ 大腸にしかない半月ヒダ

もう一つは大腸にある半月ヒダを指している場合があります。
小腸の絨毛は顕微鏡レベルの構造物なのに対し、半月ひだは肉眼でしっかり確認できるものです。
半月ヒダは内容物の移送に関係していることは以前に書いていますが、このヒダ丈が高いほど大腸の移送力があり、食べかすが直腸の方までスムーズに移動できると考えられています。
逆にヒダが低く、蛇腹が伸び切ったような大腸では圧倒的に便秘であることが多いのです。
大腸からは腸液も分泌されていて、いつも表面はぬるぬるになっています。
便秘の方はヒダがあまりないケースが多いわけですし、大腸の粘膜面がが乾燥しているわけではありません。
大腸のヒダとヒダの間に便がとり残されるなんて考えられないことです。

但し、ヒダがしっかりあっても大腸の収縮が強くて便をせき止めてしまうことがありますが、これは後ほど。

また、便が腸の壁にはまり込んでいる状態というのはありますので、次回はそのあたりを解説してみます。


宿便について考える 第二回 「宿便の定義を調べてみる」
宿便について考える 第四回 「大腸憩室症について」

t0jokuzh.gif内視鏡検査にウーロン茶
ちょっと前に当ブログでもとりあげましたが、いま内視鏡医の間でかなり話題になっているようです。
先月聞きにいった講演会でも紹介されましたし、製薬会社のMRさんも情報提供してくれるなど、またたく間に認知されるようになってきました。


当院でこの3ヶ月、ウーロン茶を使用してみて次のようなことが言えると思います。

まず、経鼻内視鏡よりも大腸内視鏡においてより効果が高いようです。
大腸内視鏡で先端に透明フードを使われる方は、これもあらかじめウーロン茶に浸しておくと汚れが付きにくくなります。

経鼻内視鏡でも水に比べるとはるかにレンズ面の汚れの落ちはいいです。
ただし、吸引力の弱い経鼻内視鏡で唾液を取り除こうとすると唾液が納豆の糸のように伸びて処置に困ることがありますが、これはウーロン茶といえども解決しません。
検査中、唾液は嚥下せずに外に出してもらうようにしなければなりません。

施設によっては、安価な物とはいえウーロン茶の代金を誰が負担するかという問題も生じるでしょう。
実際、内視鏡医がポケットマネーから捻出している所もあるようです。
この点はウーロン茶を水で半分に希釈しても効果に変化が感じられませんので、コストを気にされる場合は参考にしてください。
もっとも市販のウーロン茶の濃度も種類によって様々なのでしょうが。

ウーロン茶よりもプーアル茶の方が効果が高いという話もあるようですが、今後多くの医師によって色々な工夫がなされていくことでしょう。





rpa20qkb.gif ◆ 診療所ライブラリー 19 ◆


タイトルは何だか仰々しいのですが、
大腸ポリープからがんになったり、クローン病から腸閉塞を起こしたりと、
一つの病気が別の疾患を併発していくさまをこのタイトルに込めているようです。

腸のメカニズムや大腸疾患によって引き起こされる様々な症状、検査、治療法などを
数多くのイラストを交えて大変わかりやすく解説してあり、
この一冊で大腸に関する様々な知識を得ることができます。

大腸疾患は生活様式の西洋化に伴って増加の一途をたどっています。
この本にざっと目を通して思い当たる節があれば、是非大腸の検査を積極的に受けていただきたいと思います。

監修に当たったのは、弁護士の肩書きも併せ持つ消化器内科の分野では知らぬ者がいない先生です。


( ライブラリ充実のために .. ご協力いただければありがたいです )  → 腸の病気は連鎖する (健康ライブラリー)

4t4gmyqo.gifコロナビのデモ機を使う機会を得ました。

正式には挿入形状観測装置と言うそうですが、大腸内視鏡がおなかの中でどのような状態になっているのかを X線透視を使わずに確認できる装置です。
内視鏡の形を把握することで患者さんの苦痛を軽減し、短時間で容易な挿入を目指そうというものです。

屈曲が多く可動性のある大腸の奥へ内視鏡を進めていくのは容易なことではありません。
昔は二人がかりで透視を見ながら検査をする時代が確かにあったのですが、現在は挿入技術の理論も進んできて一人でかつ無透視で行うのが一般的です。ただしその技術を習得するには多くの経験と時間を要します。
コロナビは若手医師の訓練や挿入困難例には大変役に立つものだと思います。

さて実際に使った感想を述べますと、コロナビの画面を併用すると気が散って、途中からは鬱陶しく感じました。
慣れないせいもあるのでしょうが、いつも通りにモニター画面に集中している方がかえって早く挿入できるように思いました。

でも役に立ったことが一つ。
それは病変部のおおよその位置を把握するのが容易なことです。
通常のモニター画面だと内視鏡の挿入長などからその場所を推測するしかありません。
挿入時よりも観察時に利用価値が高いとは考えもしませんでした。


22hykniu.gif《 大腸がん 2 》      


大腸がんにまつわる話の 2 回目です。
今回は内容がちょっと難しいかも知れません。あしからず。

慢性関節リウマチの患者さんに大腸がんが少ないことが知られ、
調べてみると約半分の頻度であることがわかりました。
またアスピリンを服用している人で 40% も低いこともわかりました。
リウマチの患者さんの多くが解熱鎮痛薬を飲んでいますので、
解熱鎮痛薬で大腸がんを予防できるのでは、と考えるに至るのは当然のことでした。

決定的だったのは次のような実験。

まず断っておきますが、大腸がんの多くが大腸ポリープをベースにして生じます。
ただし、大腸ポリープの全てががんになるわけではありません。
また、解熱鎮痛薬はサイクロオキシゲナーゼ (COX) という酵素の働きを阻害することを念頭に置いてください。

家族性大腸ポリポーシス (FAP) という遺伝性の病気があります。消化管にポリープが無数にでき、それらがやがてがん化していく確率が高いことで知られています。
遺伝子を操作して作った FAP のモデルとなるマウスがいるのですが、このマウスの遺伝子をさらに操作してCOX-2 (COXには 2種類のものが知られています) が働かなくなるようにしました。
これでFAPモデルマウスに常に解熱鎮痛薬が効いているのと同じ状態を作ったのです。
その結果、このマウスのポリープの数もがんになる確率も激減したのです。

そして米国で、COX-2 阻害薬を使って大腸ポリープが減るかどうかをみる臨床試験が始まり、かなり有望な結果が得られつつあります。
が、心臓血管系への悪影響を及ぼすことが露見し、一部の試験は中止に追い込まれています。
大腸がんを患った人に対して、アスピリンが死亡と再発のリスクを大幅に軽減させるとの報告もなされています。

解熱鎮痛薬には潰瘍などの副作用もあります。
メリット、デメリットにどのように折り合いをつけて活用していくか、それが今後の課題と考えます。



《 大腸がん 1 》


これから何回かに分けて大腸がんについて述べてみたいと思います。


というのも、悪性新生物による死亡数をみると
2003年から日本人女性では大腸がん (結腸がんと直腸がんの和) が第1位。
また部位別のがんの罹患数をみても、地域によっては男性で第1位となった所も。
日本において増加の一途をたどっている疾患だからです。

大腸がんがどうして増えているのか。
dngmlsg7.gif腸がんの危険因子として様々な要因が取り沙汰されています。
ただし、確実とされているものは、予防因子としての「身体活動」と危険因子としての「肥満」だけなのです。

最近、厚生労働省の研究班からも、
運動量の多い人は、ほとんど運動しない人に比べ発症危険度が 30% も低くなるという報告がなされました。
ちなみに、運動することで乳がんや前立腺がんも減らせる可能性が示唆されています。
また、太り過ぎ (BMI 27 以上) は男性で 1.4 倍も大腸がんリスクを高くする、との報告もあります。

実はメタボリック症候群と大腸がんの関連を示すような因子が次々と知られるようになってきました。
食べることばかりで運動をせず、どんどん内臓脂肪を溜め込む。
その結果、動脈硬化に絡むものだけでなく、実に様々な病気が発症するのだという認識を新たにして、
日頃から、自制心のある食行動と意識的に体を動かすことに励んでください。




訂正) 以前、生活習慣病、その常識で防げますか? の本の紹介のところで
食物繊維はいくら摂っても大腸がんの発症率に変化はないとしていました。事実この本にはデータが示してあります。
その後調べてみると、摂りすぎても変化はないものの、摂取が少なすぎると発症率が高くなるとの研究結果がありました。
また、野菜や果物の摂取自体は大腸がんの予防因子としての可能性が高く、食物繊維以外の成分が注目されています。



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