<< 宿便について考える 第十回 >>

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2月から書き始めたこのシリーズもいよいよ最終回。
宿便とは何かに結論を出してみたいと思います。

♦♦ 「宿便」とは何かを解くヒントはここにあった !

さて、効能・効果欄に「宿便」の記載があるのは桂枝加芍薬大黄湯という漢方薬です。( 参照 → 宿便の定義を調べてみる )
この薬にこそ宿便とは何かを解くヒントがありました。
この漢方薬、一体どんな病態に使うのでしょうか。
それがわかれば宿便の正体もおのずと分かることになります。

実は第八回の「過敏性腸症候群の治療薬」で桂枝加芍薬湯という薬を紹介しました。
この薬に緩下作用のある大黄という成分を加えたものが桂枝加芍薬大黄湯で、過敏性腸症候群 ( Irritabel Bowel Syndrome ; IBS ) の中でも便秘型の人にとても重宝する薬です。
便秘型 IBS の方の訴えで、便意はあるのにすっきり出ずにおなかに不快感や痛みがあるというものが多くあります。
便秘型 IBS では腸管内容物のスムーズな流れを妨げる腸の運動が誘発され、残便感を伴う不完全な排泄になってしまいますが、この漢方薬を服用すると症状が随分と緩和するのです。
まさしくこれが宿便と呼ばれるものではないのでしょうか。

もう一度「宿」という漢字を漢和辞典で調べてみました。
すると「宿酔」という言葉に突き当たりました。
これ、要するに二日酔いのことを指します。
アルコールの中間代謝物であるアセトアルデヒドが代謝しきれずに体に残って引き起こされる不快な状態ですよね。
出すべきものが出されずに体に「宿」しているわけですが、どうも「宿便」と「宿酔」の「宿」は同じ意味合いではないかと思えてきました。
出すべき便がすっきり出ないことによって引き起こされる不快な症状を、昔から宿便という言葉で表現してしたのだと考えられます。

♦♦ 「宿便」とは ( 私の結論 )

さあ、全くの私見ではありますが、ここで宿便とは何か、勝手に定義してしまいましょう。
宿便とは
便意があっても便がすっきり出ず、腹部不快や腹痛、残便感を伴う便秘型過敏性腸症候群における一病態


宿便でお悩みの方は、しっかり過敏性腸症候群の治療をしていきましょう


宿便について考える 第九回 「医療現場で見かける「宿便」という言葉」
宿便について考える 番外  「映画の中の過敏性腸症候群」