野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して42年の野口内科です。
  医療・健康に関する情報はもちろん、近隣の話題、音楽・本のことなどを綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:30
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
         ▶▶▶ アクセスMAP
         ▶▶▶ バス路線図

湿潤療法

柿の葉寿司〖 今月のつぶやきから 24 〗


2013年もいよいよ今日までですね。
今年も当ブログを覗きに来ていただいて本当に有難うございました。

この「今月のつぶやきから」も24回目を迎えた、ということはツイッターを使った医療関係の情報提供も 2年が経過したということになります。
ツイッターを利用されていない方でも、当ブログの右側のカラムに設置してあるブログパーツで私が何をつぶやいているかが分かる仕組みになっていますので、時々覗いてみて下さい。

今月は、とりとめもなく以下の 5つをピックアップしてみました。







それでは、皆様よいお年をお迎え下さいませ。

名称未設定-1 ◆ 診療所ライブラリー 74 ◆ 


2006年に始まった当ブログの最初の頃に取り上げたことのある傷の湿潤療法
従来の傷の手当ての仕方では治りを遅くするし苦痛を強いるだけなのですが、この画期的な湿潤療法が医療現場に完全に定着したとはまだまだ言えない状況です。

今回ご紹介するのは、傷をきれいに早く治すこの湿潤療法を確立した著者が一般向けに解説を加えた本。
内容がその紹介だけにとどまらず、傷の治療の歴史的考察もなされていますし、新しい知見が出てきても従来の手段から簡単に抜け出せない医学界の問題点にまで鋭く踏み込むなど、同じ世界で仕事をする立場として非常に興味を持って読むことのできた本です。
一般向けとしてはやや難しい内容かも知れませんが、本の最後の方で生物の進化の過程から皮膚という人体組織がどういうものであるかにまで踏み込んで、湿潤療法がより自然な傷の治し方であることを説いていますが、なかなか説得力があります。


当院では、貸し出し可能な本を400冊以上を揃えています。
是非ご活用下さい。( → 詳しくはこちら

 → 傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学

≪ 過去記事ウォッチング 4 ≫


徐々に認知され普及しつつある傷の湿潤療法。
これをブログを始めた2006年に
傷の治し方というシリーズで簡単に解説いたしました。
古い記事にも関わらず比較的よくアクセスを頂いております。 

15a70456.gifそのシリーズの最後「傷は舐めるに限る」は、傷を治すのに大切な成分のひとつである上皮成長因子 ( Epidermal growth factor: EGF ) について、研究生活時代にこの成分と関わった身として私見を述べさせたもらったものでした。
EGFの持つ作用とほとんどか唾液腺から分泌されるという意味を考えてのことです。

別の機会にはその EGF が美肌成分だとして化粧品に配合されて売られている現状を問題視しました。
EGFに関するこんな商品が出回っているようですがEGF配合化粧品って )

さて、昨年8月の後者の記事で「近いうちに EGF について語ってみましょう」としておきながらそのままで申し訳ありませんでした。
これを機に少しばかり書いてみますね。

EGF がとてもデリケートな物質で仮に化粧品に入っていても成分としての有効性はとても疑問であることは述べましたが、胃液にも弱いのです。
胃液によって活性がおよそ 1/4 に弱まることがわかっています。
それを申し訳なく思うのか、胃の壁細胞と呼ばれる細胞は胃酸とともに EGF とほぼ同じ役割のある TGF-α ( Transforming growth factor-α ) という物質を分泌しています。
さらに十二指腸と膵臓からわずかばかり EGF が出ていることも知られていますが、これは胃で失活する分をある程度補っているのでしょうね。

成長因子は局所で作られその局所で作用するものが多く、これは外分泌 ( exocrine ) とも内分泌 ( endocrine ) とも違い、その様式は paracrine と呼ばれています。
日本語化されていませんが、強いて言えば「側分泌」あるいは「傍分泌」になるでしょうか。
しかし EGF は唾液腺という特定の臓器で作られ唾液中に分泌される外分泌の形をとりますし、一部は口腔粘膜から血液中に移行します。
それだけではなく、初乳にも多く含まれることがわかっています。
それなりの役割が考えられますが、親から赤ん坊へ渡り歩くという非常にダイナミックな物質です。
EGF は成長因子と呼ばれる物質の中で最も早く発見された物質にも関わらず、paracrine 様式でない点が非常に面白いと思います。 

また、 発売当初副作用問題が新聞でも騒がれたイレッサという抗癌剤があります。
これは EGF 受容体という EGF の刺激を受け取って細胞内に情報を伝える物質の働きを抑えるものです。
他にもいくつかの成長因子の働きを抑える物質が抗癌剤として使われています。
成長因子そのものも再生医療への応用が実践されつつあり大きく期待されていますので、EGF を含め成長因子について色々知っておくのは決して損ではありません。

なお growth factor を直訳して成長因子と言っていますが、 その中心的な役割を考えて「( 細胞 ) 増殖因子」と呼ぼうと提唱する先生もいます。
私は大賛成です。 

f7rr15rh.gif今回は「アルキン酸塩の話のつづき」の続きになる話です。

欧米の教科書には、傷口は消毒してはならないと記載されているそうです。
消毒薬の使用目的は、もちろん傷口からの感染予防。
今使われている消毒薬は、ばい菌を殺すのにとても優秀なものばかりなのですが。
では、なぜ消毒してはいけないとなったのでしょうか。

傷口から出てくる血液や浸出液には、
 ・ばい菌から体を守る、白血球や免疫グロブリン
 ・傷を治す成分
などが含まれているのですが、これらが消毒薬でダメージを受けてしまうからです。
衛生上よかれと思ってやっていたことが、自然に備わった機能も阻害し、かえって傷の治りが遅くなり、傷跡も目立ってしまう結果となることがわかったのです。

消毒の第一はとにかく傷口をきれいにすること。
傷口についた異物やはがれかけた皮膚等が感染の元になるので、徹底的に洗い流したり、切り取ったりすることがとても大切になります。
そして「アルキン酸塩の話のつづき」で紹介したような湿潤療法を行えばいいのです。

さて、この "傷を治す成分" の代表格として、皮膚や血管等の細胞の増殖を促す「成長因子」というものがあって、たくさんの種類があることが知られています。
成長因子で刺激を受けた細胞は、移動していったり、分裂して数を増やすなどして傷を塞ぎにかかります。
湿潤療法では滲み出してきた成長因子を、ハイドロコロイドが壊すことなくトラップして逃がさないので、傷が早く治るというわけです。

成長因子の一つに「上皮成長因子」(EGF)というものがあります。
これを発見した学者はノーベル賞を貰っていますが、
次の機会にこのEGFから見た、教科書にも載っていない意外な傷の治し方をお話します。

                                        続きはこちら




         □ 関連記事  EGFに関するこんな商品が出回っているようですが・・・



↑このページのトップヘ