野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して41年の野口内科です。
  医療・健康に関する情報はもちろん、近隣の話題、音楽・本のことなどを綴ってまいります。

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漢方

 ◆ 診療所ライブラリー 115 ◆


漢方今回紹介するのは、日本で独自の発展を遂げた漢方の歴史を中国との交流や古くから伝わる医書などを紹介しながらまとめてある「新版 漢方の歴史」。

医学の発達した現代社会であっても、健康や病については多くの人の関心事です。
事実、世の中に出回っている情報で最も多いのは医学に関わるものだとされています。
古代においても我々と病との戦いは重要な地位を占め、薬草の蒐集や蓄積された知識の書籍化などが国家レベルで行なわれていたことが本書にてわかります。
随所にちりばめられたエピソードも興味深いものが多数掲載されています。
戦国武将を次々と治療した医家の話など、歴史の教科書や小説を読んでもまずお目にかかることはありません。
また、徳川家康が健康マニアで薬草を栽培させ、自ら薬を調合していたなんて初めて知りましたし、よく耳にする「毒をもって毒を制す」という言葉の由来がどこにあるのかも知ることができました。

日本の歴史を医学という面から眺めるのもまた面白いものだな、と思いながらあっという間に読み進めることのできる一冊でした。

  → 新版 漢方の歴史

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2010100617293027853.gif♦♦ GERDに使う漢方薬

前回に引き続き、治療薬のお話です。
消化器病の分野で作用機序の解明が進められつつある漢方薬の一つに六君子湯があります。
主に胃においての研究が多いのですが、食道においてもいくつかの報告があります。
内視鏡検査で異常を認めない非びらん性胃食道逆流症 ( NERD ) において、PPI ( proton pump inhibitor ) でも症状の改善しない例では食道の運動機能が低下していることがわかっていますが、六君子湯はこの食道の運動機能を改善します。
また、胃の内圧を下げる作用もあり、間接的に食道への逆流を防いでいると考えられます。

私が注目しているのは半夏厚朴湯という漢方薬です。
昔から、のどの違和感があっても検査で何も所見がない咽喉頭異常感症という病気にこの薬剤がよく使われてきました。
シリーズ第3回胃食道逆流症 ( GERD ) の食道外症状について書きましたが、GERD により咽喉頭異常感症が引き起こされることもわかっていますし、実際に半夏厚朴湯を投与してこの食道外症状が緩和されるケースを何度も経験してきおり、治療の有効な手段の一つと考えています。
この漢方薬も科学的に薬効薬理が明らかになることを望みます。

♦♦ GERDを悪化させる可能性のある薬剤

薬で一つ注意していただきたいのは、降圧薬の中でカルシウム拮抗薬と呼ばれるものです。
血管の筋肉が収縮するのを妨げることで血圧を下げるのですが、下部食道括約筋部 ( LES ) の圧も下げてしまい胸やけを悪化させてしまう可能性があります。

♦♦ 日常における注意点

次に日常生活におけるセルフケアについてです。

まずは姿勢ですが、病気の性格上、前屈みになったり食後すぐに横になったりするのは好ましくありません。
ベルトやコルセットなどをきつく締めつけないことも肝要です。
また、就寝時に上半身を高くして左を下にして寝ると逆流を起こしにくくすると考えられています。
液体をすするように飲むのも空気を多く取り込んでげっぷや逆流の元になるとされています。
そしておなかについた脂肪も大敵。
肥満の方は減量に努めることも大事で、最も重要なポイントです。
シリーズ第5回で紹介した症例もスリムな体形になったことが治癒の一番の要因だと考えています。

♦♦ 注意したい食べ物について

胸やけを起こしやすくする食べ物もあります。
肉や揚げ物、ケーキなど脂肪の多いものの刺激でコレシストキニンというホルモンが活発に分泌されるようになり消化を助けるのですが、このホルモンは LES の圧も下げてしまいます。
酸の強いもの、辛いもの、熱いものも大敵で、いずれも胸やけを感じる神経を刺激することがわかっています。
あんこやあんみつなど甘いものも胸やけの原因となります。
糖分が胃液に溶けると浸透圧の高い液になりこれが逆流すると胸やけを起こすとされています。
コーヒーも胸やけを起こすのですが、コーヒー中の3つの成分により胃酸分泌が刺激されることがつい最近判明しています。( http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm?i=20100401hj001hj )
この記事によると胸やけを起こしにくいコーヒーも実現可能となっていますね。
タバコやアルコールも好ましくないとされていますのでご注意ください。

なお、食後にガムを噛むと症状緩和の一助になりますので試してみてください。
唾液が増えると、胃酸を中和したり逆流した酸を胃に押し戻したりする作用が期待できるのです。



2010071016573417738.gifかつて、漢方薬メーカーの担当の方と次のような会話をした覚えがあります。
「それにしても柴胡の入っている漢方薬は薬価が高いねぇ」
「はい、原料を輸入に頼ってまして」
「そう。いい商売になりそうだから私が柴胡の栽培始めたら、買ってくれる ?」

9日の朝のNHKのニュースで、8割を中国からの輸入に頼っている漢方の原料の値段が最近著しく上がっていることがレポートされていました。
輸入される生薬の不足や価格の高騰は以前から懸念されていたことで、ちょうど1年前にはツムラが財政破綻した夕張に漢方生薬の生産拠点を置き、手始めにセンキュウの栽培を始めています。
一方、某医学部生から、葉タバコの栽培を生薬の栽培に切り替えてはどうかという面白い提言もなされています。
( http://medg.jp/mt/2010/05/vol-161.html )
葉タバコに限らず、活用されていない田畑を活用するのもいいかも知れませんよね。

臨床現場で漢方薬の活躍する場面は日に日に増えてきています。
生薬栽培、大きなビジネスチャンスだと思いますが、皆様いかが ?

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