野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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漢方

 ◆ 診療所ライブラリー 211 ◆


大人女子のゆるっと漢方生活漢方薬は誰にでも同じように効果が期待できるものではなく、体質に応じて選択しなくてはなりません。
一例として防風通聖散を取り上げてみます。
ダイエット効果に期待して処方を希望される方がチラホラいらっしゃるのですが、体質に合わないと下痢や吐き気、動悸などの不具合を経験するだけに終わってしまうことがあります。

今回紹介する本では、中年女性に起こりやすい体の不調を、気虚・気滞・血虚・瘀血・陰虚・痰湿の6つの体質から解説してあります。
具体的な症状がどんな体質から起こっているのか、そのタイプ別に日常的にできる対処法や食べるべき食材などを紹介しています。
平易な文章ですし、一つの体質が様々な体の不具合を起こしていることが容易に理解していただけるのではないかと思います。

面白いことに、漢方薬については一切書かれていません。
この本を通してご自身がどのタイプの体質なのかを知ると、薬に頼らなくても楽に過ごせるようになるのではないでしょうか。

 ◆ 診療所ライブラリー 205 ◆


漢方撲滅の実相江戸時代、漢方と蘭学が中心だった日本の医療に大きな変化が出てきたのは、幕末から明治初期に各地で戦乱が増えたことが最も大きな要因です。
戦場で傷つく兵士の対応には、外科学に大きくアドバンテージのあった西洋の医学は欠かせないものになっていきます。
明治の世になって富国強兵を進める政府には、細菌学などで先進的であったドイツの医学が魅力的に映り、兵制に組み込む形でドイツ医学を模範に近代化を進めていくのです。

その過程で、西洋の文明とは成り立ちを異にする漢方がないがしろにされ、明治28年の医師免許規則改正法案の議論の中で漢方が完全否定されます。
国会が漢方を蹂躙したのです。

当時はアスピリンすら存在しなかったので、熱が出ても西洋医学では太刀打ちできませんでした。
一方、漢方は昔から葛根湯や柴胡桂枝湯などで熱を下げる手段を持っていたのですけれどもね。

幕末から明治にかけてのその過程を詳細に調べて書かれた本書。
医療者がもっと漢方に一定の評価をもつきっかけにしていただきたい良書です。

 ◆ 診療所ライブラリー 177 ◆


ふだん漢方「医療機関を応援します」
先日、鹿児島市茶業振興会より、ほうじ茶をいただきました。
この場を借りて、改めて御礼申し上げます。

鹿児島がお茶の生産地であることは意外と知られていません。
生産量は静岡県に次いで第2位で、2019年は静岡県が29500トン、鹿児島県が28500トンでした。
2020年のデータはまだ出ていませんが、鹿児島県がトップに躍り出たのではないかと囁かれています。


今回紹介する本では、漢方の基本的な考え方をわかりやすく解説した上で、普段の食事に採り入れたい食材や工夫が紹介されています。
ほうじ茶を使ったアイデアも紹介されています。
ほうじ茶に、黒糖+シナモン+牛乳、甘酒+ゆず皮、など。
それぞれ、熱を生み出せる状態を作ったり、汗をかいた後の補給にと目的を持ったブレンドです。

我々が処方する漢方のエキス剤の紹介はほとんどなし。
普段の養生のためにも、是非活用してみたい一冊です。

 ◆ 診療所ライブラリー 115 ◆


漢方今回紹介するのは、日本で独自の発展を遂げた漢方の歴史を中国との交流や古くから伝わる医書などを紹介しながらまとめてある「新版 漢方の歴史」。

医学の発達した現代社会であっても、健康や病については多くの人の関心事です。
事実、世の中に出回っている情報で最も多いのは医学に関わるものだとされています。
古代においても我々と病との戦いは重要な地位を占め、薬草の蒐集や蓄積された知識の書籍化などが国家レベルで行なわれていたことが本書にてわかります。
随所にちりばめられたエピソードも興味深いものが多数掲載されています。
戦国武将を次々と治療した医家の話など、歴史の教科書や小説を読んでもまずお目にかかることはありません。
また、徳川家康が健康マニアで薬草を栽培させ、自ら薬を調合していたなんて初めて知りましたし、よく耳にする「毒をもって毒を制す」という言葉の由来がどこにあるのかも知ることができました。

日本の歴史を医学という面から眺めるのもまた面白いものだな、と思いながらあっという間に読み進めることのできる一冊でした。

  → 新版 漢方の歴史

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2010100617293027853.gif♦♦ GERDに使う漢方薬

前回に引き続き、治療薬のお話です。
消化器病の分野で作用機序の解明が進められつつある漢方薬の一つに六君子湯があります。
主に胃においての研究が多いのですが、食道においてもいくつかの報告があります。
内視鏡検査で異常を認めない非びらん性胃食道逆流症 ( NERD ) において、PPI ( proton pump inhibitor ) でも症状の改善しない例では食道の運動機能が低下していることがわかっていますが、六君子湯はこの食道の運動機能を改善します。
また、胃の内圧を下げる作用もあり、間接的に食道への逆流を防いでいると考えられます。

私が注目しているのは半夏厚朴湯という漢方薬です。
昔から、のどの違和感があっても検査で何も所見がない咽喉頭異常感症という病気にこの薬剤がよく使われてきました。
シリーズ第3回胃食道逆流症 ( GERD ) の食道外症状について書きましたが、GERD により咽喉頭異常感症が引き起こされることもわかっていますし、実際に半夏厚朴湯を投与してこの食道外症状が緩和されるケースを何度も経験してきおり、治療の有効な手段の一つと考えています。
この漢方薬も科学的に薬効薬理が明らかになることを望みます。

♦♦ GERDを悪化させる可能性のある薬剤

薬で一つ注意していただきたいのは、降圧薬の中でカルシウム拮抗薬と呼ばれるものです。
血管の筋肉が収縮するのを妨げることで血圧を下げるのですが、下部食道括約筋部 ( LES ) の圧も下げてしまい胸やけを悪化させてしまう可能性があります。

♦♦ 日常における注意点

次に日常生活におけるセルフケアについてです。

まずは姿勢ですが、病気の性格上、前屈みになったり食後すぐに横になったりするのは好ましくありません。
ベルトやコルセットなどをきつく締めつけないことも肝要です。
また、就寝時に上半身を高くして左を下にして寝ると逆流を起こしにくくすると考えられています。
液体をすするように飲むのも空気を多く取り込んでげっぷや逆流の元になるとされています。
そしておなかについた脂肪も大敵。
肥満の方は減量に努めることも大事で、最も重要なポイントです。
シリーズ第5回で紹介した症例もスリムな体形になったことが治癒の一番の要因だと考えています。

♦♦ 注意したい食べ物について

胸やけを起こしやすくする食べ物もあります。
肉や揚げ物、ケーキなど脂肪の多いものの刺激でコレシストキニンというホルモンが活発に分泌されるようになり消化を助けるのですが、このホルモンは LES の圧も下げてしまいます。
酸の強いもの、辛いもの、熱いものも大敵で、いずれも胸やけを感じる神経を刺激することがわかっています。
あんこやあんみつなど甘いものも胸やけの原因となります。
糖分が胃液に溶けると浸透圧の高い液になりこれが逆流すると胸やけを起こすとされています。
コーヒーも胸やけを起こすのですが、コーヒー中の3つの成分により胃酸分泌が刺激されることがつい最近判明しています。( http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm?i=20100401hj001hj )
この記事によると胸やけを起こしにくいコーヒーも実現可能となっていますね。
タバコやアルコールも好ましくないとされていますのでご注意ください。

なお、食後にガムを噛むと症状緩和の一助になりますので試してみてください。
唾液が増えると、胃酸を中和したり逆流した酸を胃に押し戻したりする作用が期待できるのです。



2010071016573417738.gifかつて、漢方薬メーカーの担当の方と次のような会話をした覚えがあります。
「それにしても柴胡の入っている漢方薬は薬価が高いねぇ」
「はい、原料を輸入に頼ってまして」
「そう。いい商売になりそうだから私が柴胡の栽培始めたら、買ってくれる ?」

9日の朝のNHKのニュースで、8割を中国からの輸入に頼っている漢方の原料の値段が最近著しく上がっていることがレポートされていました。
輸入される生薬の不足や価格の高騰は以前から懸念されていたことで、ちょうど1年前にはツムラが財政破綻した夕張に漢方生薬の生産拠点を置き、手始めにセンキュウの栽培を始めています。
一方、某医学部生から、葉タバコの栽培を生薬の栽培に切り替えてはどうかという面白い提言もなされています。
( http://medg.jp/mt/2010/05/vol-161.html )
葉タバコに限らず、活用されていない田畑を活用するのもいいかも知れませんよね。

臨床現場で漢方薬の活躍する場面は日に日に増えてきています。
生薬栽培、大きなビジネスチャンスだと思いますが、皆様いかが ?

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