野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して42年の野口内科です。
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8月14日・15日はお盆休みをいただきます。ご了承下さい。



胃の模型写真に撮ったのは、胃潰瘍の説明に使ってくださいともらった胃の模型。
裏側には別の模型があり、逆流性食道炎にも使えるようになっています。

これに限らずほとんどの胃の構造模型にみられる間違いがあるのですが、わかりますでしょうか。
それは胃の中全体に気持ち悪いくらいに作られているヒダです。

周囲が赤く真ん中が白いの胃潰瘍のある部分を胃角部と言います。
これよりも左側、胃の出口である幽門にかけての部分は幽門前庭部と名付けられていますが、内視鏡で観察すると縦方向のヒダはこれほどはっきりと存在しません。

胃のヒダ実際の内視鏡画像を提示します。
上の弧を描いている部分が胃角部です。
その真下の部分から手前の胃体部にはヒダが確認できますが、その奥の前庭部ではヒダが追えなくなるのがおわかりでしょう。

ヒダにはどのような役割があるのでしょうか。
特殊な検査で確認されているのは、胃体部では食べ物が行ったり来たりしていること。
ヒダが食べ物の流れをガイドしている可能性があります。 
また、食べ物の有無で胃の大きさが変化しますが、 その際の蛇腹のような役割もあるのでないかと思います。
内視鏡検査では胃の動きを止める注射をしますし、食べ物があると視界不良なので絶食の状態で観察をします。
なので、検査中に消化の際の動きを肉眼で観察するのはまず無理。


前庭部では歯磨き粉チューブを絞るようなとでも表現しましょうか、砂時計のようなくびれができてそれが幽門へ向かって動いていきます。 
この動きは、注射していても観察できる場合があります。
幽門に近いほど輪状筋と呼ばれる胃の筋肉が発達していて、次の十二指腸へ内容物を送り込むような運動をするわけです。
この途中で縦方向のヒダが一時的に現れますが、普段はつるんとしています。
胃は入り口付近と出口付近で運動だけでなく、粘膜の細胞レベルでも随分違った性格を持っています。

胃の動きが乱れることが機能性ディスペプシアと呼ばれる疾患の一因とも考えられています。
消化管の運動と症状との関連性が簡単に調べられる検査法が開発されると面白いのになと思っています。 

 ● 薬の説明書のイラスト 80 ●


薬の説明書のイラスト、例年12月は前半も後半もクリスマスにちなんだものを選んでいました。
今年はご覧の通り、です。
12月11日を「胃にいい」と読ませて胃腸の日なんだそうです。
消化器を専門にしているものの初めて知りましたし、調べた限り特別なイベントはないようですね。

年末は飲み会も多いと思いますが、消化器も十分にいたわってあげて下さい。


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2009042620190414222.gif今月20日の地元新聞の「論点」という欄ににピロリ菌に関する話が載っていました。
書いたのは藤田紘一郎先生で、著書の一つをこのブログで取り上げたとこがあります。
主に寄生虫学を専門とする先生で、寄生虫や細菌と人間との共生のメリットを伝導していることで有名な先生です。

ただ今回の「ピロリ菌とストレス社会」と銘打った論説は、看過できない間違いの多い内容です。
ほぼ同じ内容で日本経済新聞の4月5日のコラムにも書かれているようですが、著名な先生の文章ゆえ、一般の方が誤解されては困ります。
書かれた文章のどのような点が問題なのかをいくつか指摘しておきます。


●「漱石の胃壁にはピロリ菌がすみ着いていたことは間違いない」
夏目漱石の遺体は東大で解剖されたため標本が残っており、ピロリ菌がいたのは確認済みのことです。

●「昔の日本人はほぼ100%ピロリ菌に感染していたのに、現在ほど騒がれなかったのはなぜだろうか」
今よりも感染率は高かったと思いますが、ほぼ100%感染していたというデータを私は知りません。
ピロリ菌が発見されたのは1982年 (論文として公表されたのは1983年) で、そこから胃の様々な疾患を引き起こすことがわかってきたのは最近になってからであり、昔は騒がれていなかったのは当然ではないでしょうか。

●「ストレスが絶えず胃に加わり、胃壁が荒れてくると、ピロリ菌が悪さを始め」
ストレスがなくても、ピロリ菌に感染するだけで胃炎が引き起こされる現象は最初に発見したマーシャル博士が自らの体をもって証明しています。

●「ピロリ菌は胃粘膜を軟らかくし、胃酸が食道に逆流するのを防ぐ」
胃粘膜が軟らかくなるというのは一体どういう事でしょうか ?
理解に苦しみます。
胃酸の食道への逆流は物理的なことであり、ピロリ菌がいてもいなくても起こる現象です。

●「ストレスがなく、胃の症状が全く無い人からピロリ菌を完全に除去すると、かえって弊害が出てくることになる」
ピロリ感染者のうちおよそ4%は胃がんを発症するされ、人類の胃からピロリ菌がいなくなれば胃がんは90%以上減少すると言われています。
ピロリ菌がいなければ夏目漱石は胃潰瘍で命を落とすことなく、もっと多くの名作を世に出していたのではないでしょうか。

●「ピロリ菌は胃によいことをしていたということだ」
数多くの研究報告から、ピロリ菌が胃によいことをしているなんて消化器医は誰も考えていません。
ピロリ菌が感染していて何一ついいことはありません。
弊害が余りにも大き過ぎます。

●「これまで高齢者にしかみられなかった食道裂孔ヘルニアに二十代、三十代の若者がかなりの割合で罹患している」
昔でも若い人に食道裂孔ヘルニアはあったし、ピロリ菌がいないことが理由でヘルニアが増えたわけではありません。
肥満者の増加など、別の要因でも食道裂孔ヘルニアが増えているのです。

●「ピロリ菌を完全に除去してしまうと、逆に胃が不健康になり、収縮しなくなる。そうすると胃は胃酸をどんどん出すようになって・・・」
ピロリ菌の存在によって、胃が不健康になり、本来出るべき胃酸が十分に出なくなっているのです。
ピロリ菌を除菌すると、胃が健康を取り戻し、胃酸の分泌や胃の動きが正常化するのです。
収縮しなくなるって一体何のことなのかさっぱりわかりません。


指摘しておきたい部分まだまだあるのですが、ピロリ菌と人間とは決して「共生」関係でないことは十分に理解しておいてください。
同じように、我が先輩も日記の中で反論していますのでご参考に。(こてる先生の日記!)

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藤田先生が寄生虫の研究の道に足を踏み入れたのは、学生時代に奄美群島の風土病の調査団に参加してフィラリア症を目の当たりにしたからだそうです。
鹿児島とも無縁ではないのですね。
その分野でのお話は今後も楽しみにしています。

iugfeigj.gif《 心窩部にまつわる話 1 》  


多くの方を診察していると、いろいろと面白い場面に遭遇することがあります。
例えばこんなちぐはぐな会話。


「3日程前から胃が痛いんです。」
「そのおなかの痛みは食事と関係ありますか ?」
「おなかじゃありません。胃です !!」


胃もおなかの臓器の一部と私は認識しています。
しかし、胃とおなかをその人なりに区別する基準を持っておられる方がたまにいらっしゃるのです。
いわゆるみぞおちの辺り、その部位に限定した症状であることを訴えたいことは十分に伝わります。
医学的にこの場所を「心窩部 (しんかぶ)」と言います。
図のように腹部を9等分した時に、Aの部分に該当しますが、明確な境界線があるわけではありません。

「窩」という漢字は一般にはなじみが薄いと思いますが、医学の世界ではよく見かけます。
「膝窩」「眼窩」「ダグラス窩」「梨状窩」・・・。
要するに窪みを形成している場所を指し示す際に用いられています。( 現代人では窪んでいない人が多いですが )
みぞおちになぜ「心」の字が使われているのかはよくわかりません。
体の中心という意味だと理解しているのですが、もしかしたら東洋医学と絡んでいるのかも知れません。

ちなみにみぞおちは漢字で「鳩尾」。
このあたりの形状が鳩の尻尾に似ていることからこのように書くそうですが、似ていますか ?

そんな心窩部にまつわる話を何回かに分けて述べてみたいと思います。


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