野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して41年の野口内科です。
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胃食道逆流症

〔 まだまだ使えるH2ブロッカー ・ 第三回 〕


♦♦♦ 唾液も出す、胃も動かすニザチジン ♦♦♦

現在6種類あるH2ブロッカーの中で、ニザチジン ( 先発品名 アシノン ) には他にない特徴が2つあります。
それは、唾液分泌促進作用消化管運動亢進作用です。
いずれも副交感神経の働きが高まる結果として起こっていると推測されます。

シナプス副交感神経細胞の終末部分と臓器細胞の接合部分 ( シナプス ) にはわずかに隙間があります。
副交感神経の終末部分からこの隙間にアセチルコリンが出て、それを臓器側は受容体で受け取って副交感神経の意図を理解します。
隙間の部分にアセチルコリンがいつまでも残っていると、ずっと臓器を刺激し続けることになるので、アセチルコリンエステラーゼという物質が働いてアセチルコリンを分解してしまいます。
ニザチジンはこの掃除役であるアセチルコリンエステラーゼの邪魔をして、結果として副交感神経の働きを強化しているものと推測されています ( アセチルコリンエステラーゼ阻害作用と言います ) 。


♦♦♦ ニザチジンの強力な唾液分泌作用 ♦♦♦

ドライマウス ( 口腔内乾燥症 ) という言葉をよく耳にすると思いますし、実際ドライマウスでお困りの方も多いことでしょう。
欧米では4人に1人が罹っているとの報告もあるくらいよくみられる疾患で、原因としては、

① 加齢による唾液分泌の減少
② シェーグレン症候群
③ 逆流性食道炎や糖尿病など全身疾患に起因するもの
④ 薬の副作用
⑤ 咀嚼回数の減少
⑥ 口呼吸

などが挙げられます。
シェーグレン症候群は、唾液腺や涙腺などが障害される自己免疫性疾患です。

ドライマウス用の薬があるから、わざわざ胃薬であるニザチジンをチョイスする意味はないでしょ、と思われるかも知れません。
確かにニザチジンはドライマウスには適応がありませんが、ドライマウス用の薬も原則としてシェーグレン症候群にしか使えませんし、値段が高いです。
そして、何といってもニザチジンの唾液分泌刺激作用はこれらの薬を凌駕するものがあるのです。

それを示した論文をみてみましょう。( → 口腔内乾燥症に対する薬物治療の効果 )

1. シェーグレン症候群に伴う口腔内乾燥の改善薬である塩酸セビメリン ( エボザック )
2. ドライマウスに有効とされる麦門冬湯
3. ニザチジン

の3つの薬剤について、安静時唾液量とガムテストによる刺激唾液量を服用前と服用後90日後に比較したものです。
シェーグレン症候群治療に特化した塩酸セビメリンに比べ、ニザチジンによる唾液分泌増加量が優るのです。
恐らく、今存在する治療薬の中でニザチジンが最も強力に唾液分泌を促す作用を持つものと考えられます。
( グラフは論文の「薬剤投与前後における安静時唾液量の変化」より。クリックで拡大します。 )

唾液分泌のグラフ



♦♦♦ ニザチジンの消化管運動に対する作用 ♦♦♦

次に、ニザチジンの持つ消化管運動に対する作用について、ちょっと専門的になりますが解説します。
これまでに、胃排出能の促進・消化管運動の亢進などが報告されています。

胃の排出能とは、胃の出口に近い前庭部という部分の収縮で食べ物を十二指腸に送り出す能力のこと。
この働きがニザチジンによって高まることが動物やヒトを使った研究でわかっています。
犬を用いた実験で食後の胃の筋の収縮の強さをみたところ、ニザチジンの常用量 300mgは、イサプリド ( ガナトン ) やモサプリド ( ガスモチン ) の常用量の1.3倍程度の働きを有するようです。( → こちら )
イサプリドもモサプリドも消化管の動きを活発にする代表的な薬 ( 消化管運動機能改善薬 ) 
です

胃腸の運動また、動物実験で、胃のみならず小腸などの動きの活性化も観察されており、特に、IMCと呼ばれる動きが目立つようになります。
IMCとはInterdigestive migrating contraction の略。
空腹時に、胃・十二指腸から始まり小腸を伝って回腸末端に達すると、再び胃・十二指腸から新たな強い収縮の波が起こり・・と
繰り返していきます。
これをIMCと呼んでいます。
 ( → こちら )

さらに、下部食道括約筋 ( LES ) の部分にも作用します。
ニザチジンを服用すると、このLESの圧が通常よりも高くなります。
胃の入口がしっかり閉まるようになるというわけですね。
また、普段から食道と胃のつなぎ目の部分が一時的に緩む一過性LES弛緩 ( TLESR ) という現象がみられます。
この際に、胃液の逆流が発生すると考えられていますが、ニザチジンを服用するとこのTSLERが減り、食後の胃液の逆流も減ることが観察されています。 ( → こちら )

そして、機能性ディスペプシアに伴う様々な症状も緩和することが報告されています。( 後述 )


♦♦♦ ニザチジンから生み出された新薬 ♦♦♦

現在、機能性ディスペプシアにはアコチアミド ( アコファイド ) という治療薬があります。
この薬をニザチジンを販売しているメーカーが作ったと初めて聞いた時、アコチアミドはニザチジンをベースにしたんだろうなと推測しました。
併売している別のメーカーのMRさんに、そのことを質問したらよくわかっていませんでした。

しかし、このページを参照してみて下さい。 ( → こちら )
「ニザチジンの構造をヒントにH2受容体の作用をなくし、末梢コリンエステラーゼ作用を引き出すためにおよそ数千個の化合物を合成・スクリーニングを経て誕生した」と書いてあります。
それだけ、ニザチジンのアセチルコリンエステラーゼ阻害作用は魅力的だったのだと思います。

胃もたれ機能性ディスペプシアというのは、

① 食後の胃もたれ
② 早期飽満感
③ 心窩部痛
④ 心窩部の焼ける感じ

のうち少なくとも1つ以上の症状があって、その症状が重いため生活に悪影響を及ぼしており、症状が6カ月以上前からあり、3カ月以上症状が持続しているもので、内視鏡検査などをしても何も異常が見つからない場合に診断されます。
機能性ディスペプシアは「食後不定愁訴」と「心窩部痛症候群」の大きく2つに分類されます。
それについては10年ほど前に当ブログで解説していますので、参照して下さい。( それは本当に胃の痛み ?胃下垂と腹筋 )

アコチアミドは2013年に発売されましたが、処方するにあたって「上部消化管内視鏡検査等により,胃癌等の悪性疾患を含む器質的疾患を除外すること」という面倒くさい条件があります。
現状では内視鏡を扱う医師でないと処方しづらく、その点は何とか改善してほしいものだと思います。


♦♦♦ ニザチジンをどのように活用するか ♦♦♦

ニザチジンだけが持つ作用を有効に活用する使い方を紹介します。

逆流性食道炎まず、胃食道逆流症 ( 逆流性食道炎 ) の治療です。
逆流性食道炎の治療を2ヶ月間プロトンポンプインヒビターと呼ばれる酸分泌抑制薬で行なって治癒した患者さんを、その後H2ブロッカーであるファモチジンとニザチジンの2群に分けて6ヶ月維持療法を行い再発予防効果を検討した報告があります。
その結果、ファモチジンでは約70%で再発したのに対し、ニザチジンでの再発率は40%だったようです。

唾液中には重炭酸塩が含まれているので、逆流した胃酸を中和する作用が期待できます。
唾液の量が増えれば、中和できる胃酸の量も増えるわけです。
また、前述したようにLES圧が高まったりTLESRが減ったりする結果、胃酸の逆流する機会も少なくなります。
本来の酸分泌も抑える働きを持つニザチジンは、いろんな側面から逆流性食道炎治療の強い味方になると思います。


また、普段からH2ブロッカーとモサプリドなどの消化管運動機能改善薬を一緒に服用している方も多いと思います。
この場合、H2ブロッカーをニザチジンにしたら、消化管運動機能改善薬が不要になることはもうおわかりですね。
最近問題になっているポリファーマシーの解消に一役です。


♦♦♦ ニザチジン、これには注意 ♦♦♦

シメチジンの回でも解説しましたが、ニザチジンにはアルコールを代謝するアルコール脱水素酵素ADH)も阻害する作用があり、お酒に強い人が飲酒前にニザチジンを飲むと酔いやすくなります。
シメチジンと違ってCYPの阻害作用はないので、シメチジンほど悪酔いはしないと考えられます。


頭が混乱もう一つ気をつけたい点として、似たような一般名の薬剤があることです。
先発品名はテルネリンと言って、肩こりや腰痛、痙性麻痺などの症状に使われる薬があるのですが、この薬の一般名が「チザニジン」。
ニザチジンとは「ニ」と「チ」を入れ替えただけ、横文字でも「nizatidine」と「tizanidine」で、聞き間違いもしやすいと思いますので本当に気をつけたいところです。


次回は、私がよく使っているH2ブロッカーのもう一つ、ラフチジンについてです。 ( つづく )

〔まだまだ使えるH2ブロッカー・第一回〕シメチジン、面白い作用を持っているけど
〔まだまだ使えるH2ブロッカー・第二回〕シメチジン、厄介さが半端ない
〔まだまだ使えるH2ブロッカー・第四回〕ラフチジン、胃薬なのに痛みやしびれにも
 ※ 参考 胃薬なのに別の病気の治療に

きも『ピロリ菌除菌後、プロトンポンプ阻害薬 ( 以下 PPI ) を長期に服用すると胃がんのリスクが高まる( 本論文はこちら ) 。

先日、このような論文が Gut という雑誌に掲載されました。
PPIを長く連用するほど胃がんのリスクが高まり、ハザード比が1年以上で5.04、3年以上で8.34にもなるというもの。
PPIと同様に胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカーという種類の薬ではハザード比が0.72で、このような傾向はなかったようです。

我々、消化器医には衝撃的な内容です。
ピロリ菌の除菌は、胃・十二指腸潰瘍の再発や胃がんの発症を予防するために行うものです。
でも、菌がいなくなると胃が本来の働きを取り戻して酸分泌が活発になるため、胃もたれや胃食道逆流症 ( 逆流性食道炎 ) を起こすことがあります。
そのため、どうしても酸分泌を抑える薬が必要になるケースがあるのです。


以前から、酸分泌抑制薬の長期連用の安全性には疑問が投げかけられていました。
「手術で胃を全摘しても生きていられるし問題はないのでは」とは消化器疾患の分野で高名な先生の言葉なのですが、実際、臨床の場において長らく処方していて困る場面に出くわしたことはほとんどありません。
しかし、これまでに
・ビタミンB12や鉄の吸収阻害
・胃酸による殺菌作用の低下に伴う肺炎や腸管感染症の増加
・骨折や認知症の増加
などの可能性が指摘されています。

丁寧にみていくと、ビタミンや鉄の吸収阻害、感染症の増加のエビデンスはありませんし、骨折については増加と変化なしの相反する報告があります。
認知症に関しても、診療記録からPPIの服用の有無で認知症の発生率の差をみた研究で、因果関係をはっきりさせたものではありません。


今回の報告で、ハザード比があまりに大きいのには驚いたのですが、作用機序はまだ未解明ですし、あくまで『ピロリ菌除菌後』という状況下での話です。
今後の研究の進展を見守りたいと思います。

≪ 過去記事ウォッチング 5 ≫


咽喉頭異常感症という疾患はかつては神経症の一種とみなされていました。
先月診療所ライブラリで紹介した「心療内科がわかる本」の中でも精神科・心療内科領域で扱う疾患として取り上げられています。
しかしすべてではないにしても
胃食道逆流症の周辺症状として咽喉頭異常感をとらえるようになり、咽喉頭酸逆流症という呼称も生まれました。

4c99fdd2.gif2010年に書いた胃食道逆流症
というシリーズの第8回のど元で胃液が作られる !?」においては、私が内視鏡を始めた頃から注目していた食道入口部異所性胃粘膜 ( inlet patch ) を取り上げました。
内視鏡医もそれほど重要視する人は多くなかったのですが、2009年に Gastroenterology という雑誌にこの部分を焼灼してしまう治療法が一定の成果を上げることが紹介されたのは大きなインパクトがあったと思います。
詳しくは「のど元で・・・」を読んで下さいね。

なお、経鼻内視鏡で inlet patch の観察がしづらくなったのは近接してしまうせいだとこの記事の中で書きましたが、先日借りた視野角140度の最新機種では容易に観察することができましたのでこれまでの経鼻内視鏡のやや狭い視野角が問題だったようですね
。 
訂正しておきます。 

心療内科が ◆ 診療所ライブラリー 72 ◆ 


一般かかりつけ医と精神科・心療内科の先生との連携強化を目的とした「不眠ネットかごしま」という事業が準備段階にあります。
そんなこともあって今回ご紹介するのは「心療内科がわかる本」。
心療内科という診療科を正しく理解してもらうことを目的に書かれた本で、文章が重々しくないので単に読み物としても楽しめる内容になっています。 
心療内科で行われるカウンセリングの手法の一つ、交流分析について多くのページが割かれていますが、これは普段の社会環境の中での対人関係を築くのにも役に立つのではないでしょうか。

この本の中では具体的な疾患について心療内科の治療が奏功した例が多く提示されています。
しかし、書かれているもの全てが心療内科で治るとは限らないことは注意しておきましょう。
例えば、過敏性腸症候群 ( IBS )。
ストレスとは関係なく腸管の感染を起こした後にこの疾患に特徴的な症状が出ることがあるのです。
これを感染後過敏性腸症候群 ( Post infectious IBS ) と言い、研究者も注目している病態です。( 参考 → 過敏性腸症候群の治療薬 )
また、咽喉頭異常感症という疾患についても胃食道逆流症との関連が考えられるようになってきています。( 参考 → 胃食道逆流症の治療2のど元で胃液が作られる !? )
内科と心療内科が協調して疾患に悩む人たちが救えるようになるといいですね。

 → 心療内科がわかる本

201103221152494989.gif
これまで綴ってきたこのブログの中で一番アクセスが多い記事は、3年近く前に書いた「みぞおちに硬いしこりが・・・」なのですが、私が思っていた以上にアクセスをいただいているのが、ちょうど 1年前の「耳にゴキブリ」。
この記事の中で「本の表紙になるくらい耳にゴキブリが入るのはよくあることなのでしょうか ?」と書いたのですが、アクセスが多いということは実際にお困りの方が大勢いらっしゃるのでしょうね。

あと、年に 1回テーマを決めて書いているもの、例えば「胃食道逆流症」や「宿便について考える」なども根強く読まれています。

これまでの傾向を踏まえ、今後も充実した情報提供を心がけていきます。

201012231946275510.gif ◆ 診療所ライブラリー 57 ◆


今回は非売品のご紹介となります。

毎月、加入している学会から雑誌が郵送されてきますが、今年は日本消化器病学会から「患者さんと家族のための」というタイトルを持つガイドブックがいくつか送られてきています。
医師向けに作成された疾患のガイドラインを一般向けに解説したもの。
横書きで、図版が豊富で、Q&A方式で、まあまあわかりやすくなっています。
ただ、私に言わせればもっと平易な文章に出来たはず・・・。

「胃食道逆流症(GERD)」「消化性潰瘍」「胆石症」「慢性膵炎」についてのガイドブックを当院の診療所ライブラリに加えておきます。
これらは近いうちに日本消化器病学会のホームページでも公開できるよう準備中だそうで、こういう取り組みは評価してもいいと思います。


   → 患者さんと家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイドブック

  << 胃食道逆流症 第9回 >>


2010111715542930716.gifさて、5月末からぼちぼちと書いてきた胃食道逆流症に関する連載も最終回。
本来なら、第3回で取り上げるべきだったかも知れませんが、胃食道逆流症 ( GERD ) の食道外症状についての追加説明です。

♦♦ 胃液の逆流で口臭 !?

まず口臭について。

口臭の原因の8-9割は、歯周病や虫歯など口腔内にあるとされています。
あと、呼気ですよね。
ニンニクを食べて口臭がするのは、成分が血液を介して呼気に出るからです。
ガムを噛んで対策を講じる方もいると思いますが、あまり意味がないのです。

口臭が気になるので胃の検査をしてくれ、という方がたまにいらっしゃいますが、これまでは胃が原因のことは極めて少ないと説明してきました。
なぜなら、食道の入り口は物を飲み込むとき以外は閉じているので、臭いが漏れてくることはまず考えられないからです。
それに口臭を訴えてはおられるけれどもそれが他覚的に確認できない、自分だけが気にしている自臭症である場合が多いからです。

ところが、最近の研究で、口臭の一因となる舌の付け根付近の細菌増殖は GERD が原因と推定されるようになってきました。
口臭と GERD の関連性を示す報告が散見されるようになってきましたので、口臭を訴えられる方にも内視鏡検査をお勧めしております。
経鼻内視鏡だとある程度舌の付け根付近の観察もできますよ ( 経口だと無理です ) 。

♦♦ 胃液の逆流で歯ぎしり !?

そして、歯ぎしり

これは、地元鹿児島大学の歯学部の研究が有名です。
咬合不全の患者さんがたまたま GERD を合併していて、内科で酸分泌抑制薬を処方してもらったところ、顎の痛みが軽くなっただけでなく、薬の内服前に比べて歯ぎしりの回数が著しく減ったことから研究がスタートしたようです。
GERD を治療すると歯ぎしりは減り、逆に酸の逆流によって食道内のpHが低くなるのに合わせて歯ぎしりが活発になることもデータで示し、その関連性を見事に証明しています。
歯ぎしりによって唾液の分泌を促し、GERD の症状を緩和しようとしているのでは、と推測されています。

個人的には、幼児の歯ぎしりが GERD に関連したものなのかどうか気になります。
もしそうだとしたら、GERD はかなり若年の世代においてもしっかり治療しなくてはならない疾患ということになりますよね。


GERD は直接生命に危険を及ぼすような疾患ではありませんが、口臭や歯ぎしりなども含め生活の質に関わってくる疾患です。
これまでのこのシリーズを改めて読んでいただき、少しでも気になることがあれば、GERD の診断にはうってつけの経鼻内視鏡による検査を是非お勧めします。



  << 胃食道逆流症 第8回 >>


♦♦ 食道の入り口で胃液が…

のどの部分の違和感があるのに検査をしても何も所見を見いだせないものを咽喉頭異常感症と呼び、この原因の一つに胃食道逆流症 ( GERD ) がなり得えます。
胃液が鼻や耳にまで影響を及ぼすことはこのシリーズ第3回で述べた通りです。
ところで胃液を作る場所は胃だけではなく、食道の入り口でも作られるとしたら・・・、そんなことあるのでしょうか。

20101026161538356.gif♦♦ 食道入口部異所性胃粘膜の写真

内視鏡で検査を行なうと右の写真のように食道の入り口に胃粘膜を見つけることがあります。
左右両側にあるやや赤い部分がそれ。
これを食道入口部異所性胃粘膜 ( 通称 Inlet patch ) と呼びます。
GERD の分野で著名なある先生にこの inlet patch についていくつか質問をぶつけたことがありますが、先天性のものだし酸分泌をすることもないので問題ないでしょうとにべもない返事でした。

でもここで inlet patch について深く掘り下げてみましょう。

♦♦ どうしてできる ? 食道入口部異所性胃粘膜

胎児の時代に食道が作られるとき、表面の円柱上皮が扁平上皮に置き換わってくる現象が食道の中部付近から始まり徐々に口の方と胃の方に進んでいきますが、進み方が不完全で食道の入り口に取り残された円柱上皮がこの inlet patch になるというのが定説です。
Inlet patch の細胞を詳しく調べた研究でグルカゴンというホルモンを分泌する細胞を見いだすことがあるそうです。
グルカゴンは成人では膵臓で作られますが、胎生初期の胃ではグルカゴンを作る細胞が存在するものの成長とともに消失することから、inlet patch が胎生期の粘膜の名残りであるという説を支持するものになっています。
でも、inlet patch は胃の上部の噴門腺領域の粘膜に似ていて胎生期の円柱上皮とは異なるので先天性ではないとする説も存在します。

♦♦ 食道入口部異所性胃粘膜の治療は ?

この inlet patch の組織を採取して顕微鏡で調べると胃酸を分泌する壁細胞が見つかることがあります。
胃液がわざわざ胃から逆流してこなくても食道入口部で酸が分泌されれば、のどの不快感を起こすであろうことは想像できますよね。
これまでそのような症状があって inlet patch がある人に PPI ( proton pump inhibitor ) などの酸分泌抑制薬を投与して症状が治まる人を何例も経験しています。
また、この異常感がありなおかつ PPI でも治らない人に対して inlet patch を電気的に焼いてしまうことで治療する方法も昨年紹介されました。( Gastroenterology. 2009 Aug;137(2):440-4 )
この場合、悪さをしているのは酸ではなく粘液ではないかと推測されています。

♦♦ 案外多い食道入口部異所性胃粘膜
さて、inlet patch がどのくらいの頻度で見つかるのかというと報告で大きなばらつきがあって 0.1 - 20 % と200倍の開きがあります。
日本人を対象とした内視鏡での検討では 14.2%、つまり 7人に1人の割合で発見されるようです。( Progress of Digestive Endoscopy 2005 ; 66 : 19-21 )
海外の報告は一桁台が多いのですが、日本人に多いのか海外の内視鏡レベルが低いのかのどちらかでしょう。

♦♦ まだまだ研究の余地がある食道入口部異所性胃粘膜

Inlet patch 部分へのピロリ菌感染や癌の発生などの報告もありますし、先の日本人での内視鏡検討では高齢者の方の頻度がやや低いそうで、かなり長い時間をかけて食道粘膜が完成していくのか、はたまた若い世代に GERD が多いことと関連するのかなど興味は尽きないのですが、消化器をやっている医師の間でもあまり重要視されていないのが現状です。
本当に先天的なものとしていいのか ( Barrett 上皮のように後天的なものがないか ? )、GERD の食道外病変と同様の症状にどのくらい関与するのか、どうして inlet patch が生じやすい方向があるのか ( 3-4時方向と9-10時方向に多い印象です ) など inlet patch には研究の余地はたくさんあります。

食道胃接合部の観察には経鼻内視鏡が優れているということはシリーズ第4回で書きました。
実は経鼻内視鏡を導入するときに、反射が少ないことから inlet patch の観察もしやすくなるのではと期待していましたが、逆に近接してしまいちょっぴり苦労しています。
しかし食道入口部の観察も念を入れてやっておりますので、咽喉頭異常感症の症状があって内視鏡を受けられたことのない方は是非検査を。





  << 胃食道逆流症 第6回 >>


GERD.gif食道と胃の境界部分が緩んでしまい、胃の内容物が食道に逆流することが 胃食道逆流症 ( GERD ) の原因であることはこのシリーズ第2回目で詳しく解説しました。
ですから、この緩みを改善することが根本的な治療となるわけですが、現在のところそれに対する有効な手段がありません。
内視鏡による治療や手術があることはあるのですがあまり一般的とは言えません。
でも一応解説しておきますね。

♦♦ GERDの内視鏡による治療

まず、内視鏡を用いた治療について。
緩くなった食道と胃の境界部分の補強を目的に様々な方法が編み出されました。
内視鏡の先端に器具を装着し糸で縫い縮める方法や、電気で焼いたり薬剤を局所に注射したりして内壁を肥厚させる方法などがあります。
しかし、いずれも採算性や安全性の問題から機器の供給が止まっていますので、現時点で内視鏡による治療はできないのです。
ただ、今後新しい機器や手段が出てくるものと思われます。
ちなみに、内視鏡治療を行なって半年後に薬を使わずに済むようになるのは6割から8割というデータが示されていました。

♦♦ GERDの手術

次に手術ですが、噴門形成術という方法が行なわれます。
欧米ではよく行われているようですが、日本で実施している施設ははごく限定的で症例数も多くはありません。
肥満をベースとした欧米の逆流性食道炎は重症例が多いことも日本との事情の相違でしょう。
体に大きな負担をかけてまで優先して行なうべき手段ではないと考えます。

♦♦ GERDに使う内服薬

そういうこともあって治療の基本は薬剤と日常のセルフケアが主体となります。
症状を改善させるのに最も期待が持てるのが内服薬の使用です。

逆流してくる胃液の酸度が弱ければ食道が傷つきにくく、症状も緩和されることが期待されるわけですから、治療薬として一番に用いられるのは PPI ( proton pump inhibitor ) と呼ばれる酸分泌の抑制効果が高い薬剤です。
PPI については 2年前に当ブログの記事にしたことがありますのでそちらを参考にして下さい。( → こちら )
また酸分泌を抑える目的で H2 ブロッカーという種類の薬も使われますが、使っているうちに効果が弱くなってくる傾向があります。

上記 2種類の薬は胃液を作る細胞に働きかけて胃酸を分泌させないようにしますので、既に分泌されてしまっている胃液には全く役に立ちません。
実際、服用してもらって自覚症状が落ち着くのに数日かかります。
液体の制酸剤や酸化マグネシウムがすぐに胃酸と反応して中和する作用があり、補助的に使うことがあります。
( なお、酸化マグネシウムには逆流性食道炎に対する直接の適応はありません。)

アルギン酸ナトリウムにも「逆流性食道炎における自覚症状の改善」という効能があります。
これも当ブログを書き始めて間もない頃に記事にしていますが ( → こちら )、一つには逆流性食道炎でてきた食道の傷の部分に成分が付着して保護する作用があるものと思われます。
そしてもう一つ。
実は逆流して悪さをするのは胃酸だけとは限りません。
胆汁や膵液といった消化液の逆流も GERD の原因になると考えられており、これが原因だと PPI や H2ブロッカーは全く歯が立たないわけです。
しかし、アルギン酸ナトリウムは胆汁酸と結合することがわかっており、その効果が期待できるわけです。
また膵液に関しては、カモスタットという薬に膵液中のトリプシンという酵素の働きを邪魔する作用がり、「術後逆流性食道炎」という病気に限って使うことが出来ます。

余談ですがカモスタットの商品名はフォイパンと発音するのに「フオイパン」と「オ」を小さく書きません。

長くなるので続きは次回にしましょう。

  << 胃食道逆流症 第5回 >>


経鼻内視鏡を行なう際に、大きく息を吸い込んでもらって食道と胃の境界部分を詳細に観察することを前回、述べました。
逆流性食道炎の場合、内視鏡で実際どのような変化が認められるのか、興味あるところだと思います。
Los Angels 分類別に写真を並べてもいいのですが、今回あえて一例だけ提示させていただきます。

♦♦ 提示した内視鏡像について

201008182132092576.gif泡がついていたり、下部がぼけていたりで掲載するのは恥ずかしい写真なのですがお許しくださいね。
さて、内視鏡検査において食道病変の場所を時計の文字盤に例えて示すのが慣例となっています。
写真の真上を12時の方向、真下を6時の方向とするわけです。
ちなみに12時方向はおなか側、6時方向は背中側、3時方向は右手側、9時の方向は左手側になります。
提示した写真の1時の方向に白く見えるのは潰瘍です。( 白い矢印 )
逆流性食道炎による潰瘍やびらんは Los Angels 分類の A や B の場合、2時方向を中心とした右上方の胃粘膜のひだの上にできやすいことがわかっています。
この理由につていははっきりわかっていませんが、この症例は典型的な例ですね。

この症例でもう一つ注目していただきたいのは食道粘膜と胃粘膜の境界 ( Squamo-columnar junction : SCJ ) です。
3時の方向 ( 青い矢印 ) の辺りと比べてみて下さい。
中央に見える胃の入り口を中心に考えると11時の方向と6時から9時にかけての方向 ( 黄色い矢印 ) にこの SCJ が極端にずれ込んでいますよね。
この症例の方は食後すぐに左を下にして横になる ( 左側臥位 ) 習慣があるとのことでした。
SCJ が3時方向に極端にずれている方に尋ねてみると食後の右側臥位がお好みというパターンが多いです。
逆流してきた胃酸にさらされて元々存在していた食道の細胞が胃の細胞に置き換わることで境界部分がずれたように見えてくるわけです。
ですからこの境界の偏りは食後や就寝時の体位が影響するのではないかと思われます。
内視鏡をすることでその人の普段の過ごし方もわかってしまうなんて面白いと思いませんか ?

しかし、私がこの症例でもっと面白いと思っているのは、この左方向を中心とした SCJ の大きなずれがあるにもかかわらず、潰瘍ができているのがあくまで右上だということです。
逆流性食道炎における粘膜傷害の発生にはいろいろな因子が複雑に絡み合っているのでしょうね。

なおこの症例の方、薬だけでなく食後にすぐ横ならないことを守ってもらい、減量もがんばってもらった結果、1時方向の潰瘍はすっかり消えてしまいました。

次回は胃食道逆流症の治療について。


  << 胃食道逆流症 第4回 >>


症状から胃食道逆流症 ( GERD ) が疑われる場合に優先してチョイスされる検査は内視鏡になります。
GERD に関しては採血やレントゲン、透視などからはほとんど得られる情報はありません。

♦♦ GERDの内視鏡分類について

内視鏡検査によって、異常が見つからない非びらん性胃食道逆流症 ( NERD ) なのか、はっきりとした傷がある逆流性食道炎 ( RE ) なのかがわかります。
後者の場合、内視鏡検査でさらに重症度の判定を行うことができます。
一般的に Los Angels 分類というものが使われています。( 右下図 )

2010072812462623081.gif専門的になるので簡潔に説明しますが、Grade A と B は縦方向の傷同士がつながっておらず、長さが5mmあるかないかで分類しています。
Grade C と D になると長さに関係なく、縦方向の傷が互いにつながってきたもので全周の75%に及ぶか及ばないかで区別してあります。
日本においてはさらに色調変化型 ( Grade M )、内視鏡的に異常のないもの ( Grade N ) を加えて活用しているのが一般的です。

♦♦ 経鼻内視鏡で胃と食道の境界をつぶさに観察できる

さて、GERD の診断確定のために重要となるのは食道と胃の境界部分の観察です。
これには経口よりも経鼻内視鏡の方が優れていると私は考えています。
写真をご覧ください。
同じ被験者で同じ場所を写したものです。
EC.gif左の写真ではほとんど見えていない食道と胃の粘膜の境界部分が右の写真でははっきりと見えています。
実は、最初左の写真の状態だったのですが、息を大きく吸い込んでもらうことで右のような状態になるのです。
こうすることで RE による傷があるかどうかのキモである食道と胃の境界をつぶさに調べることができるわけです。
鹿児島では経口内視鏡をするのに鎮静剤の注射をする施設がほとんどです。
意識がもうろうとしている時に検査を受けられている方に息を吸い込んで、と言ってもまず実行できません。
鎮静剤を使わないで経口内視鏡を行なう場合でもその余裕がなかったり、反射でげっぷが出たりしてゆっくり観察ができないことが多いのです。
苦痛を与えずにつぶさに観察でき、かつ検査を受けられる方にもじっくりとこの部分の傷の状態を見て納得してもらえるわけで、経鼻内視鏡は GERD の診断にまさにうってつけだと思います。

♦♦ 内視鏡検査中のげっぷ

なお、内視鏡検査の際にげっぷを我慢しろと言われたことはないでしょうか。
咽頭部の刺激による反射で起こるのも理由の一つですが、食道裂孔ヘルニアの方はげっぷが出る傾向が強いように思います。
私はげっぷも GERD の原因となる食道裂孔ヘルニアの所見の一つとみなしています。
胃の入り口を閉める筋力が落ちているわけですから、げっぷをするな、と野暮ったい無理強いをすることはまずありません。
げっぷをすると空気が抜けて胃の壁が近接してしまいますし、壁が激しく動いて観察に時間がかかってしまうために指示をするわけですけど、我慢しろと言われても無理なものは無理ですものね。


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2010070914065018686.gif♦♦ 胃液の逆流で起こる様々な症状

前回述べましたように、胃液が食道に逆流して胸やけや呑酸といった症状が起こることは納得できることと思います。
しかし、それ以外にも実にさまざまな症状が生じることがわかってきています。
それは・・・
胸痛、慢性の咳や喘息、咽喉頭症状、睡眠障害、中耳炎、虫歯、副鼻腔炎、肺炎や肺線維症などです。

♦♦ 逆流で中耳炎が…

中耳炎に関しては、中耳の浸出液を調べたらペプシンが検出され、胃薬を服用させて症状が改善したという報告がいくつかあります。
ペプシンは胃の主細胞だけが作る消化酵素で通常は中耳に存在しないはずですから、胃液の逆流が中耳炎の原因の一つになっていることは否定できません。

♦♦ 逆流で虫歯も…

虫歯と胃液の関係については今盛んに歯磨きのテレビCMでアピールされています。
体の中で最も硬い組織である歯のエナメル質の最大の弱点が酸ということもあって胃酸との関連性に興味が持たれたのでしょうが、胃食道逆流症 ( GERD ) で歯牙酸食の頻度が高いことが報告されています。
胃酸を中和する唾液が存在する口腔内で虫歯のすべての原因が GERD にあるわけでもないでしょうが、原因の一つとなりうると考えられています。

♦♦ その他にこんな症状も

他の疾患や症状についても、GERDの有無でグループ分けをしてGERDがあるとこれらの症状を有するものが多いこと、胃薬で症状が治る割合が高いことなどからGERDとの関連が推測されています。

実際、心臓の痛みだと思っていろいろ調べたけれども異常がなく胃薬を飲んだら胸痛が治った、とか慢性的に悩まされていた咳が胃薬で落ち着いたとかいう例をこれまでいくつか経験しています。

また、高度の貧血をきたす場合もあります。
胃液の逆流が原因で下部食道に高度の炎症をきたして慢性的にじわじわ出血している例を主に腰の曲がった高齢者で見受けることがあります。

胃酸の逆流が単に胸やけ程度にとどまらない多様な食道外病変を引き起こすことは理解いただけたと思います。
このGERDをチェックするのに重要なのはやはり内視鏡による検査となりますが、普通の経口内視鏡よりも経鼻内視鏡の方が威力を発揮します。
これについては次回。


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胃食道逆流症 ( GERD ) は、塩酸や蛋白分解酵素であるペプシンを含んだ胃液が食道に逆流することで生じます。
最近では胃液以外の逆流も注目されているのですが、これは機会があればお話します。
胃自身がどうして消化されないかというと、別に分泌される粘液の膜で表面を覆って保護しているからですが、食道にはそのような仕組みがありません。
このため強い消化液である胃液が食道に逆流してくると、傷ついたり様々な症状が生じたりするのです。

201006151614253985.gif♦♦ 胃液の逆流が起こる原因

逆流が起こる原因として下部食道括約筋部 ( LES ) の閉まりの低下が挙げられます。
この部分、本来は食道自体の筋肉による圧迫と横隔膜による食道の圧迫の二つが協調することで胃内容物の逆流を防いでいるのですが、この二つの圧迫部位がずれてしまうことがあります。
食道が横隔膜を貫く食道裂孔という場所から胃の一部が食道の方へずり上がってしまう現象を食道裂孔ヘルニアと呼んでいます。
右の図の左側が正常、右側がヘルニアの生じた食道と胃と横隔膜の関係になります。
本来なら食道下端が横隔膜に靭帯で固定されているのですが、飲み込む動作の度に食道が縮まりますし、加齢によって靭帯の働きも落ちてくるためずれが生じてしまうのです。
食道裂孔ヘルニアによって十分な圧が得られなくなり逆流を招くのです。
これとは別に一過性のLES弛緩というものがあります。
これは高脂肪摂取、大量の食物の摂取、胃運動機能の低下等で起こると考えられています。

♦♦ GERD の症状

GERDの症状として胸やけ呑酸 ( どんさん ) と呼ばれるものがあります。
前者は「心窩部から胸骨後方にかけて上方に向かって広がる熱感を伴う不快症状」、後者は「口腔咽頭への胃液の逆流によって自覚される苦酸っぱい不快な味覚、あるいは咽頭刺激症状」という定義がなされています。
「胸やけとはどんな症状のことですか」と聞いてみると、吐き気やおなかが張って苦しい状態のことを指す人もいれば、胸やけなのにそれ以外の言葉で表現する人もいることが分かっており、症状の定義があるのはおおいに助かります。
「下痢をしました」との訴えの方の話をよく聞いてみると、普段より便の回数が多かっただけで便そのものはいつもと形状が変わらない、というケースを経験したことがあります。
つらい症状を表現する時に患者と医師の間で言葉の認識に大きな食い違いがあっては診断や治療に支障が出てしまいますよね。
ちなみに、週 2回以上の胸やけ症状発現を病的なものとみなします。

♦♦ GERD の分類

GERDのうち内視鏡検査で食道粘膜に明らかな病変を見出せるものを逆流性食道炎、肉眼的に異常を認めないものを非びらん性胃食道逆流症と呼んでいます。
症状が同じでも内視鏡によって病変が確認できるかどうかで疾患名が変わってくるわけですが、これはまた別の回で。

胃液が逆流する現象で上のような症状が生じることは容易に理解できると思いますが、見当のつかないような症状が起こることもあります。
このことについて次回お話します。

♦♦ GERD の定義

なお、GERDは以下のように定義されています。
食道粘膜傷害性のある胃内容物の食道内への逆流によって
 ① 胸やけや呑酸などの定型的な自覚症状
 ② 下部食道粘膜のびらん潰瘍などの食道粘膜傷害
のいずれか、あるいは両方があるもの

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2010051422303218312.gif内視鏡を扱うようになってからちょうど20年経ちました。
この間に内視鏡の機器自体も進化して、観察・診断が中心だった用途が治療の領域にまで広がってきています。

わずか20年の間に日本の消化器疾患も随分様変わりしてきました。
内視鏡に携わり始めた頃は胃・十二指腸潰瘍の症例は日常茶飯事で、肝硬変に伴う食道静脈瘤も珍しくはなかったのですが、最近これらの疾患にお目にかかる機会がめっきり少なくなってきています。

逆に増加の一途を辿っているものもあります。
それを代表するのが胃食道逆流症
日本人の 2-3 割がこの疾患に伴う症状を自覚しているとされ、胃・十二指腸潰瘍の症例数よりも多くなってきました。
実際、上部消化管内視鏡検査をすると 15% 前後の人に食道炎の所見が確認できるとも言われていますが、今年はこの疾患について数回に分けて当ブログ上で考察していきたいと思います。


5f9d2xnu.gif「ムカムカする」「胃が重い」「胃がもたれる」「酸っぱいものが上がってくる」・・・。
胸やけとは具体的にどのような症状を言うのかを患者さんに聞くと、実は胃のもたれや吐き気、腹部膨満感などを表現していることもあるため、真の胸やけ症状であるかどうかを判別するのも医師の問診上の大切なポイントとなります。
このことは先日紹介した本にも記載されています。

先週参加した講演会では、この点について面白い話がありました。

それは、胸やけについて看護師や医学部の学生にもアンケートをとったところ、消化器医との間に認識の開きがあるというものでした。
胸やけを起こす代表的な疾患である胃食道逆流症 (逆流性食道炎)の病態から考えて、胸やけとはこのような症状だろうと医師の間では概ね共通した概念を持っているのですが、医療現場にいる人たちとの間にもズレがあるというのは大変興味深い話でした。

また今月上旬に新聞にも載った胃癌の内視鏡的術後の除菌についても話がありました。
早期胃癌を内視鏡で治療した後にピロリ菌の除菌をする群としない群に分け、3年間経過をみたものです。
除菌した群で癌の再発が4%にみられたのに対し除菌しない群ではその3倍の12%に達したということでした。
除菌しても再発があるのは、ピロリ菌感染で既に癌が生じた人を対象としており胃粘膜の状態が相当悪いからだと考えられます。
除菌しても 5年くらいは年に 1回の内視鏡で経過をみていくことが望ましいだろうという意見で、これは日常の診療に大いに参考にすべきものでした。


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