野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して41年の野口内科です。
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葛根湯

旅行に持っていくと便利先日、観光客の無理な要求に疲弊している竹富島の診療所の記事を読んで、嘆かわしく思いました。
その内容ですが、軽症なのに夜間診療を求められ、中には船やヘリを呼べという無茶な要求をする観光客がなど増え、医師離れを招いているというものでした。

旅行の際には、少々の体の不調には自分で対応できるように薬を持って行くのが望ましいと思います。

今回は、私が特にお勧めする3つの漢方薬を紹介しておきます。


① 五苓散

酔い止め・航空中耳炎・嘔吐・下痢・頭痛・二日酔い など応用範囲の広い薬です。

航空中耳炎とは、飛行機に搭乗中の圧変動に伴って起こる耳の痛みや詰まった感じなどのことを言います。
このような症状は多くの場合短時間で回復しますが、中には数日続く方もいらっしゃいます。
耳は音を聞いたり平衡感覚を司ったりする器官ですが、最近は気圧のセンサーとしての役割も注目されています。
飛行機に乗るとこのような症状を起こしやすい方や、乗り物酔いしやすい方などは、乗り物に乗る1時間ほど前に服用すると予防効果が得られます。
また、雨の降る前に起こるような頭痛など、気圧の低下で起こる様々な不調に対しても有効です。

普段と違う食事内容で嘔吐下痢などおなかが不調になることもあるでしょうし、羽目を外して普段よりもたくさん飲酒して二日酔いになることもあるでしょう。
様々な場面で利用できる五苓散は本当に便利な漢方薬です。


② 葛根湯

風邪の初期症状・肩こりなどに。

お土産をたくさん買い込んで重い荷物を持って移動する機会も増えて肩こりになったり、旅先の宿の枕が合わず首を痛めたりすることもあると思います。
そういう時に便利なのが葛根湯です。
葛根湯を服用すると、首や肩の皮膚温が上昇することが報告されています。
この付近の血流を改善する結果、痛みを緩和させる一助になっているものと考えられます。
私は、普段から肩こりを訴える方によく処方しています。

もちろん、風邪の初期症状にも使える葛根湯ですが、有効なのは風邪だけではないのです。



③ 芍薬甘草湯

腹痛・筋肉痛などに。

観光地巡りで普段よりも長い距離を歩く機会も増えます。
そうするとどうしても筋肉痛になったり、夜にこむら返りを起こしたりすることもあるでしょう。
そういう時に便利なのが芍薬甘草湯です。
予防効果もあるので、運動前にあらかじめ服用しておくといいですよ。

また腹痛にも有効である場合が多いです。

意識的に動かすことのできる横紋筋 ( 骨格筋 ) 、自律神経の支配の元で動く平滑筋。
そのどちらの痛みにも効いてくれるという不思議な作用を持ち、服用して2~3分もすると効果を発揮してくれるのが芍薬甘草湯の魅力です。


この3つの漢方薬だけで、旅行中に起こり得る体のハプニングをかなりカバーできます。
いずれも一般の薬局でも入手可能かと思いますが、市販されているものは我々が用いる半分の用量で提供されているものが多いので確認して下さい。
旅のお供に是非。

 ● 薬の説明書のイラスト 139 ●


GWまで鹿児島で開催されていた「若冲と琳派の雅の世界」展に足を運びました。
伊藤若冲と言えばまずニワトリの絵が頭に浮かびますが植物の描写も素晴らしく、今の時期を代表するボタンやシャクヤクといった花もよく題材として取り上げていますよね。
16日からの薬の説明書のイラストにはシャクヤクを選んでみました。

シャクヤクの根を加工したものは様々な漢方薬に含まれています。
こむら返りに効くよ、と先輩に薦められて私が医者になって初めて使った「芍薬甘草湯」のように製剤名にその名が使われているものもありますし、皆さんがよくご存知の「葛根湯」にも含まれています。
特に女性によく使われる漢方薬に混じっていることが多いので、興味のある方は調べてみてくださいね。


シャクヤク01

agml.gif先日、漢方薬の葛根湯が原因ではないかと考えられる胃炎の症例に遭遇しました。
前庭部を中心にしてびらんが目立っていました。

以前、葛根湯により急性胃粘膜病変 (AGML) を生じたとする文献を読んだことがあります。
葛根湯に含まれる麻黄
この中にプソイドエフェドリンという物質が存在します。
これに解熱鎮痛薬 (NSAIDs) 様の作用があるとされているのです。

このため私は麻黄を含有する漢方薬に関しては食後の服用を勧めています。
私自身花粉症なのですが、この時期お世話になる小青竜湯にも含まれています。
漢方薬は食前または食間に服用することとなっていますが、私の経験上食後に飲んでも十分に効いてくれています。

先の症例の方、検査の少し前に風邪気味で薬局で葛根湯を購入し食前に飲んでおられたようです。
漢方医に言わせると、症を間違えて処方するからだ、となるのでしょうが、薬局でも市販されている薬。
薬剤師さんや購入者自身が葛根湯に適した「実証」であるかどうかまで判断するのはむずかしいと思います。
漢方薬にも副作用があることは十分留意してください。

ちなみに、プソイドエフェドリンはオリンピックで禁止薬物に指定されています。
シドニー五輪の際、16歳の女子体操選手から検出され金メダルを剥奪されるという事件もありました。

(なお、写真と症例は関係ありません)

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