野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して42年の野口内科です。
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鉄欠乏性貧血

 ◆ 診療所ライブラリー 131 ◆

貧血大国
消化器疾患を扱っていると、無縁でいられないのが貧血
大量の吐血・下血はもちろん、本人も気付かぬままに消化管からじわじわと出血が続くことも、貧血を招く原因となります。
内視鏡による止血操作や貧血治療は日常茶飯事のことです。

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貧血はありふれた疾患であるにもかかわらず、はっきりとした診断基準がありません。
WHOによる貧血の定義は、血液中のヘモグロビン ( 血色素 : 以下Hb ) が減ることをいい、その数値が示されています。
しかし、この数値をわずかに下回った程度では全く自覚症状はないはず。
ある教科書には「末梢組織に十分な酸素を運ぶだけの赤血球の量が維持できない状態」を貧血と定義していて具体的な数値はありません。
数値だけでなく、動悸や息切れといった酸素が全身に十分量行き渡らない結果として起こる症状の有無も大事なポイントになるのです。

貧血の中で最もよくみられる鉄欠乏性貧血も同様に数値的な明確な定義がありません。
Hb・MCV・血清鉄・フェリチン・TIBC・UIBCといった項目を参考に、年齢や臨床症状などを加味して治療をやっていきますが、医師によっても考え方がまちまち。
何でこの程度の数値で鉄剤が処方されてるんだろう、と思うこともしばしばあります。

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今回紹介する「貧血大国・日本」では、貧血について多角的に捉えてとことん掘り下げています。
妊娠中の貧血は子供の将来にも悪影響を及ぼすのに、鉄不足を予防する公的対策が日本には欠けていることを、世界各地の取組みとの比較で浮き彫りにしているのは、他の本にない特徴かと思います。
また、海苔に意外と鉄分が含まれているというの知りませんでした。
おにぎりに海苔を巻いたり、ふりかけを活用したりするのもいい方法なのですね。

私にも参考になる部分が多かったですし、貧血に悩む方には是非一読をお勧めしたい本です。

  << 出血をきたす消化器疾患 第6回 >>


2011100310151718350.gif主題からは少し話がそれますが、触れておきたいことがあります。
それは鉄欠乏性貧血ピロリ菌の関係についてです。

ヘリコバクター・ピロリは、胃炎や胃・十二指腸潰瘍の原因になっていることはご存知だと思いますが、特発性血小板減少性紫斑病という血液疾患にも関与していることが示唆されており、昨年からは除菌療法の保険適応疾患に加わっています。

ピロリ菌の感染と鉄欠乏性貧血の関係についてのレポートも相次いでいます。
特に小児や10代の若年者で鉄剤の投与でも治療の難しいケースで、除菌をすることで貧血が改善するという報告が多いように思います。
中には鉄剤を投与せず、除菌するだけで貧血が治ってしまったという例もあります。

感染によりラクトフェリンという物質が胃の中で増えていることとの関連やピロリ菌が鉄を横取りして生きているのではないかということが言われています。
しかし、保菌者が必ずしも貧血になるわけではないので、ピロリ菌による鉄欠乏性貧血についてはまだまだ研究り余地がありそうですね。


なお、新しい情報はこちらに。→ 貧血と脳貧血を混同して生じている誤解


  参考 → http://www.kyodo.co.jp/kkservice/byouki/





  << 出血をきたす消化器疾患 第2回 >>


2011071219105823694.gif出血をきたす消化管疾患について話を進める前に、貧血について少し触れておきましょう。
消化管出血と貧血は切っても切れない関係にありますので。

貧血はヘモグロビン ( 血色素 ) が少なくなることを言い、赤血球数は問いません。
貧血の際には、やや強めの動作をしたときにたやすく動悸や息切れを感じるようになります。
100m全力疾走した後は心拍数が上がったり息がハーハーしたりしますが、酸素の需要が増したときに少ないヘモグロビンを有効活用して供給しようとするために、そのような症状が容易に出るわけですね。
他には疲れやすいとか頭痛、めまいといった症状あります。

ところが一般の方の中には、立ちくらみのことを貧血という言葉で表現し、医療機関を訪れるケースが結構見受けられます。
立ちくらみは、ヘモグロビンがたっぷり存在していても起こる症状なのです。
脳貧血」という俗称を医療関係者も使うことも混乱の一因だと思いますが、立ちくらみは「起立性低血圧」、小児ならば「起立性調節障害」等の疾患に該当することが多いと考えられます。

WHOの診断基準ではヘモグロビン値が、成人男性で13g/dl 未満成人女性で 12g/dl 未満を貧血と定義しています。
しかしこの基準を満たせば即治療というものでもありません。
同じヘモグロビン値でも、怪我などでの急性出血の場合と知らぬ間に緩やかに貧血が進行する場合とでは、症状が異なります。
仮にヘモグロビン値が9g/dlであったとします。
急性出血の場合なら患者さんは青ざめ、動けばフラフラ。
これに対して緩やかに進行した場合、全く症状を自覚しない方が結構いらっしゃいます。
従って、検査値だけではなく、原因や日常生活上の自覚症状の有無などを鑑みて治療法や治療のタイミングを探っていきます。

さて、臨床上もっともよく見られる貧血は「鉄欠乏性貧血」です。
さまざまな原因で生じますが、消化管からの慢性的な出血も疑っていかなくてはならない病態です。
診断基準は日本鉄バイオサイエンス学会が作成したものがあります。

 ①ヘモグロビン < 12g/dl、②総鉄結合能 ≧ 360μg/dl、③血清フェリチン < 12ng/ml

血清鉄の多寡が含まれていない点は注目ですね。
②③は鉄欠乏性貧血を疑わない限り、一般的な採血では通常調べない項目です。
しかし、①はごく普通に調べる検査項目ですし、同時に算出され赤血球の大きさをみる平均赤血球容積 ( MCV ) という指標があるのですが、これである程度鉄欠乏状態を推測することができます。
MCV の基準値は 90±10 fl 。
鉄欠乏性貧血ではどういうわけか赤血球が小さくなるので、80以下と低い数値を示すことが多いのです。
鉄欠乏性貧血の場合、ヘモグロビン値が一桁になったあたりで治療を始めることが基本。
しかし、なぜ鉄が少ない状態を招いているのか、その原因を明らかにするために一度は消化管も精査する必要があります。

  参考 → http://jbis.sub.jp/fe/04-01/0042.html

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