野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して41年の野口内科です。
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食道静脈瘤

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2011091615225431721.gif1980年代初頭までは、胃・十二指腸潰瘍は治療の難しい疾患でした。
出血や繰り返す潰瘍、そして繰り返した結果十二指腸などによって狭窄を来した場合は外科的手術の対象でしたし、胃癌の際に「潰瘍ですから切りましょう」といったウソが通用した時代でもありました。
その後、H2ブロッカーPPI ( proton pump inhibitor ) といった酸分泌抑制薬の登場やピロリ菌と潰瘍の関連がわかり、胃・十二指腸潰瘍は基本的に薬で治る疾患になりました。

食道静脈瘤同様に昔に比べて減ってきているとはいえ、ひとたび潰瘍から出血すると緊急を要し、内視鏡医の出番が回ってきます。

潰瘍ができると必ず出血するわけではありません。
潰瘍の底にたまたま太めの血管が通っていてそれが破れて出血、というのが典型的なパターンです。
出血源を見つけてそこへ止血操作を施すのが我々の仕事ですが、一筋縄ではいかないのが臨床です。
胃の中が血液だらけで取り除かないと出血部位の特定ができないのに、血液の一部が固まっていて内視鏡の吸引口を詰まらせて作業が立ち往生するというようなことはしょっちゅうです。
出血源を特定したら止血操作。
クリップをかけたり、純エタノールや高張ナトリウム・エピネフリン液を注射したり、焼き固めたりという方法でほとんどの場合は血を止めることができます。

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肝不全に陥ったり、肝癌へと進展していったりするのと同じくらい、食道や胃の静脈瘤は肝硬変治療の問題点。
ひとたび血が噴き出すと生死に関わる大量の出血をきたすので、内視鏡医が最も緊迫感を強いられる疾患です。

SB.gif食道静脈瘤に対してその昔は、Sengstaken-Blakemore チューブなるものを活用して止血を期待するというのが唯一といっていい治療法でした。
右の写真をご覧下さい。
二つの風船が付いていますが、細長い方を食道部分で膨らまして出血部位を圧迫するわけです。
もう一つの丸い風船は胃の中で膨らませ、位置がずれないように利用します。
この仰々しいチューブを鼻から入れられる患者さんの苦痛も大きく、このチューブで長時間圧迫していると食道の壊死を起こしかねないので、本当に一時しのぎの処置法に過ぎませんでした。
内視鏡医のいる施設では、もはやこの道具の出番はほとんどないはずです。

EVL2.gifやがて、内視鏡下に静脈瘤部分に血管を固めてしまう薬剤を注射する方法が編み出されます。
内視鏡的硬化療法 ( Endoscopic injection sclerotherapy : EIS ) と言い、若干の合併症が懸念されるものの静脈瘤の消失率に優れます。
更に内視鏡的食道静脈瘤結紮術 ( Endoscopic variceal ligation : EVL ) という方法も考案されました。
これは内視鏡下に静脈瘤を輪ゴムで縛ってしまうものです。
左の写真の青いのが静脈瘤を縛りつけた輪ゴムです。
この処置を行なうと、静脈瘤がしばらくの間小さくなって出血リスクが遠のきます。
EIS に比べて操作が簡便なので、EVL で手っ取り早く処置してしまうことも多いのですが、将来にわたって根治できる保証があるわけではありません。

内視鏡処置以外の方法もあり、昔に比べて選択肢が増えてありがたいことです。
私の親類も昭和の終わりに食道静脈瘤からの出血で亡くなったのですが、あと数年違ったら運命が全く違っていたことと思います。

しかし、胃・食道静脈瘤に対する処置を行なう機会は随分減ってきました。
原因となるB型やC型肝炎に対する治療が進歩したことや、輸血などの医療行為で肝炎ウイルスに感染することがほぼ無くなり、日本人に多かったウイルス性の肝硬変が減少してきた結果、食道静脈瘤も減っているからです。

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