IB-Stim-CloseUp-Palcement-Web先日、アメリカ食品衛生局 ( FDA ) が、耳の後ろに弱い電気刺激を与えて過敏性腸症候群 ( irritable bowel syndrome : IBS ) の腹痛を緩和させるというデバイスを認可しました。

          FDAのニュースリリース ( → こちら )
          メーカーのサイト ( → こちら )

このデバイスを3週間使うと、少なくとも3割は激痛から開放されるようです。
右の写真はメーカーのHPにあったものです。

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正確なメカニズムはわかっていないようですが、電気刺激が脳の扁桃体と呼ばれる場所や脊髄をコントロールするようです。
扁桃体は、情動反応の処理や記憶形成などに重要な役割を持っていて、生命を脅かすような恐怖や苦痛を学習し、危険を予知・回避する行動に結びつける働きがあります。
慢性的に痛みが繰り返されると、痛みを学習した扁桃体が興奮しやすくなります。
また、痛みだけでなく抑うつや不安などの情動も扁桃体で処理されるので、これらの陰性の情動が痛みに大きく関わってきます。



さて、最新のIBSの診断基準を示します。
ROME IV基準によると、

週に1回以上の腹痛が3ヶ月以上続き、

 ① 排便により症状が改善すること
 ② 排便頻度が症状の変化に関連するこ
 ③ 便の形状 ( 外観 ) が症状の変化に関連すること

以上3つの排便異常のうち2つの以上の項目を満たし、症状は6ヶ月以上前から出現していること

となっています。
やや理解しにくい文章ですが、簡単に表現すると「腹痛を伴う慢性的な便通異常」となります。

腹痛症状の強い人になると、職場や学校にたどり着くまでに何度もトイレに駆け込んだり、腹痛のため不登校になってしまう場合もあります。
このように、IBSは生活の質にも大きく関わってくる疾患です。
今回米国で認可されたデバイス、確実性はないものの、痛みの軽減で救われる方が増えるようなので期待したいです。

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IBSは日本においては15%近くの方が罹っているとされていますが、日常生活に支障をきたしているのに病院を受診されないままの方が多いです。
ありふれた疾患なのに関心を持つ医師が少ないのも残念なことで、不必要な検査を繰り返したり、IBSでない患者をIBSと診断したりするケースも見受けます。


日本には、有り難いことにIBSにみられる腹痛や便通異常をコントロールしてくれる漢方薬が存在します。
正しく診断し、これらの漢方薬を中心に既存のIBS治療薬を上手に組み合わせると、とても楽に過ごせるようになります。
IBSに悩んでおられる方は、一度当院にご相談下さい。



なお、耳を刺激するデバイスは、最初にオピオイドの離脱症状を軽減させるために使われ始めたようです。
また、耳から迷走神経を電気刺激して、心房細動を治療しようというデバイスも開発中とか。( → こちら )
耳にはたくさんのツボがありますから、今後いろんな症状を緩和するデバイスが続々と出てくるかも知れませんね。