201003111036594763.gif右の絵は、昨年発売された「マイナーエマージェンシー」という本の表紙に描かれているイラストですが、耳の中 ( 外耳道 ) にゴキブリが入っています。
これを見て思い出すのが・・・

・・・医者になって 2年目のことでした。
研修先の病院で当直をしていた夜、寝ている間に耳の中にゴキブリが入ったので何とかして欲しいと来られた男性がいました。
半信半疑で耳の中をペンライトで照らしてみると、確かに黒っぽいものが。
光を嫌う習性を持つゴキブリが更に奥に入ろうと暴れたのでしょうか、その男性が右のイラストの女性のように耳を押さえながらアーッと叫んで苦悶様の表情に変わりました。
我々の世代ならわかるでしょうが、キカイダーのジローがギルの悪魔の笛に苦しみ悶える様にそっくりでした。
光を当ててはまずいと、その場のとっさの判断で看護士にぬるま湯とストローを用意してもらいました。
そして、男性を落ち着かせてベッドに横に寝てもらい、人肌ほどのぬるま湯をストローの中に吸い込んで外耳道の中へポタリポタリと数滴垂らしていきました。
すると、ゴキブリがゆっくりと後ろ足から這い出してきたのです。
何が起ったのかわからなかったのでしょうか、ゴキブリは男性の耳たぶ ( 耳介 ) の上で一瞬きょとんと動きを止めていましたが、危機を察したのか慌てて男性の耳たぶから逃走開始。
次の瞬間、ベッドから起き上がった男性は片手に靴を持って「このヤロー」と大きな声で叫びながら診察室の床を早足で逃げるゴキブリを追いかけ出したのです。
しかし、ゴキブリのすばしっこさにはかなわず、この鬼ごっこの決着はついてしまったのです。
しばらくして落ち着いた男性は、有り難うございました、と礼を言って自宅へと戻っていきました。


「マイナーエマージェンシー」の中では、鉱油 ( 顕微鏡に使うオイル等 ) を外耳道に入れて虫を窒息させろと書いてあります。
また、ゴキブリではなかったのですが、キシロカインスプレーを噴霧して処置をした後輩医師もいます。
いずれも参考になる対処法だと思います。
なお、私がぬるま湯を使ったのは、水を外耳道に入れるとめまいを起こすことがあるからです。
熱湯を入れるのは論外です。


今でも不思議に思うのは、この男性、寝ている間に耳に入ったのがどうしてゴキブリと分かったのだろうかということです。
そして、本の表紙になるくらい耳にゴキブリが入るのはよくあることなのでしょうか ?