<< ジェネリック薬品を考える 第5回 >>


我々がよく処方する便秘薬の一つに「酸化マグネシウム」というものがあります。
シリーズ最後はこの酸化マグネシウムの後発品同士を比較してみます。

大腸は食べ物の残りかすから水分を吸収する役割があり、 上行結腸あたりではまだどろどろの内容物も直腸へと進む間に水分含有量が少なくなり便が形作られていきます。
酸化マグネシウムは、大腸が吸い上げようとする水分を抱え込んで離さないようにするので、残渣中の水分が保持され便が硬くならないようにしてくれます。
その結果、踏ん張らなくても排便できるようになるわけです。
これを我々は緩下作用と呼んでいます。

以前は
服用しづらい粉末しかなかった酸化マグネシウムですが、後発品メーカーが工夫して錠剤を発売しています。
代表的なのが「マグミット」と「マグラックス」です。
なぜ錠剤がそれまで無かったかというと、酸化マグネシウムは胃液中の塩酸と反応して塩化マグネシウムに変化する必要があるからです。
( MgO + 2HCl → MgCl2 + H2O )
詳しくは当ブログ「ニガリダイエットの正体」 に書いてありますのでそちらをご覧下さい。

せっかく登場した酸化マグネシウムの錠剤なのですが、両者には大きな違いがあります。
そのことを示した見事な論文がありますのでそちらをご覧下さい。( → 酸中和作用による酸化マグネシウム錠の品質評価
論文中から引用させてもらった写真を見ていただきたいと思います。マグミット
水に溶かした後の粒子の様子です。
「マグミット」( MM ) は細かい粒子になっていますが「マグラックス」( ML ) は粒子径が大きいまま。
塩酸を含む試験液と反応させると速やかにpHが変化するのは前者。
塩化マグネシウムが生成されないと
緩下作用が発揮できないわけですから、「マグミット」を「マグラックス」に変えた途端に便が出づらくなるとか、あるいはその逆のパターンも起こり得るということになります。

知ってか知らずか「マグラックス」のメーカーは後に細粒剤を出してきました。
錠剤の欠点を補いつつ、飲みやすさを追求して新たな剤形を作ってきたメーカーの姿勢には感服いたします。